抵当権の時効 ( 一 ) 香川 崇 キーワード

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全文

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富 山 大 学 紀 要. 富 大 経 済 論 集

第63巻第 3 号抜刷 (2018年3月)

富山大学経済学部

香 川   崇

抵当権の時効(一)

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抵当権の時効(一)

香 川   崇

キーワード:抵当権,消滅時効,取得時効 一 はじめに 1 わが国における抵当権の時効に関する解釈 2 フランス民法典における抵当権の時効,地役権の時効 3 本稿における研究対象 二 フランス民法典制定前における抵当権の時効 1 ローマ法 2 パリ慣習法と学説の展開 3 小括 三 フランス民法典の起草過程 1 共和歴 8 年委員会による草案 2 破毀裁判所による提案 3 コンセイユデタと護民院での議論 四 フランス民法典制定後の展開 1 19 世紀前半における学説判例の展開 以上,本号 2 19 世紀における担保法改正 3 1955 年の登記制度改正までの学説判例の展開 4 2006 年の担保法改正 5 小括 五 まとめにかえて

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一 はじめに

1 わが国における抵当権の時効に関する解釈 わが国の民法第 396 条と第 397 条は,抵当権の時効を定めている。判例・通 説によれば,抵当不動産の所有権が債務者または物上保証人の所有に属してい る場合は,被担保債権が消滅時効にかからない限り,抵当権だけが独立して消 滅時効により消滅することはない(第 396 条)。民法第 397 条は,抵当不動産 の所有権が第三取得者の手に移った場合に適用されず,第三取得者は民法第 167 条第 2 項によって抵当権の消滅時効を援用できる1。民法第 397 条は,抵 当不動産が時効取得された場合に,抵当権のついた所有権が反射的に消滅する ことを前提としている。すなわち,我妻栄は,取得時効の効果を原始取得と捉 え,取得される所有権の範囲は,取得時効の基礎となる占有の状態によって定 まり,前の所有者の許でその所有権に存した制限によって,影響を受けること はないという。そして,承役地の時効取得によって地役権の消滅を認めた民法 第 289 条は当然の規定,民法第 397 条は,債務者ないし設定者が時効取得して も抵当権の消滅を認めないという例外を定めた規定であると解している2 もっとも,来栖三郎は,民法第 396 条と第 397 条がフランス民法に由来する 規定であるとする。すなわち,民法第 396 条は,抵当不動産が債務者および抵 当権設定者の手許にある場合の規定であり,民法第 397 条は,抵当不動産が第 三者の手に移った場合には抵当権が被担保債権から独立して消滅することが あり,その場合の要件を規定したものと解する3。また,金山直樹も,民法第 397 条がフランス民法典制定前の学説(特にポティエの見解)に由来すると指 摘する4 2 フランス民法典における抵当権の時効,地役権の時効 それでは,フランス民法典において抵当権の時効につき,どのような条文が 定められているのであろうか。本稿に必要な限りで,フランス民法典における 時効制度,抵当権の時効,地役権の時効について見ることとする。以下,フラ ンス民法典の条文は条数のみにて引用する。

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(一)取得時効 まず,取得時効につき,フランス民法典は長期と短期の二種類の取得時効を 定める。長期取得時効(旧第 2262 条,現第 2272 条第 1 項)は,30 年の占有 継続を要件とする。短期取得時効(旧第 2265 条)は,不動産の所在する控訴 院の管轄区域内に真の所有者が居住する場合は 10 年,管轄外に真の所有者が 居住する場合は 20 年の占有継続を要件としていた。なお,2008 年の時効法改 正により,この区別は廃止され,10 年の占有継続が短期取得時効の要件とさ れている(現第 2272 条第 2 項)。更に,占有者が正権原(juste titre)に基づ いて善意で占有を開始したことも,短期取得時効の要件である(旧第 2265 条, 現第 2272 条)。正権原は,所有権を取得させる行為のことであり,条文上,正 権原の謄記(transcription)は短期取得時効の成立要件とされていない。占 有者の善意は推定される(旧第 2268 条,現第 2274 条)。なお,占有者が前主 の所有権に疑いを持っている場合,その占有者は悪意であったと解される5 消滅時効につき,フランス民法典は 30 年の時効期間を原則としていた(旧 第 2262 条)。その後,2008 年改正により,時効期間が改められた。すなわち, 人的訴権は 5 年(現第 2224 条),不動産に関する物的訴権は 30 年(現第 2227 条) の消滅時効にかかることとなった6 (二)抵当権の時効 フランス法において,抵当権には,約定抵当権のみならず,裁判上の抵当権, 法定抵当権がある。法定抵当権とは,被後見人のための抵当権,妻の法定抵当 権等である。旧第 2180 条は,抵当権の消滅を定めていた。その中でもわが国 の民法第 396 条,第 397 条と関連するのは,旧第 2180 条(現 2488 条)第 4 号 第2文,同条同号第3文であった。なお,旧第 2180 条(現 2488 条)第 4 号第 3 文は,正権原を成立要件とする短期取得時効の定める期間経過を主張する場 合には,正権原の謄記(transcription)の時がその期間の起算点となるとし ている。 「旧第 2180 条 先取特権及び抵当権は,以下の事由によって消滅する。

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一 主たる債務の消滅 二 債権者による抵当権の放棄 三 第三取得者による,取得した財産を滌除するために規定される方式及び条 件の履践 四 時効 時効は,債務者の手中にある財産については,抵当権又は先取特権をもたら す訴権の時効について定める期間の経過によって,その者のために完成する。 第三取得者(tiers détenteur)の手中にある財産については,時効は,その 者のための所有権の時効について定める期間の経過によって,その者のために 完成する。時効は,権原(証書)(titre)を前提とする場合には,その権原(証書) (titre)が不動産所在地の抵当権保存所において公示された日からでなければ, 進行を開始しない。 債権者が行う登記(inscription)は,債務者又は第三取得者のために法律が 定める時効の進行を中断しない。」 フランスでは,2006 年 3 月 23 日に大幅な担保法改正が実施されたものの7 抵当権の時効に関する旧第 2180 条第 4 号は,現第 2488 条第 4 号として維持さ れている。 (三)地役権 わが国の民法第 289 条との関係上,フランスにおける地役権の時効に関する 規定も見ることとする8 地役権とは,ある不動産につき,他の所有者に帰属する不動産(héritage) の使用および便益のために課せられる負担である(第 637 条)。地役権には, 継続地役権と不継続地役権,表現地役権と非表現地役権がある。 第 706 条は,地役権は 30 年の不行使で消滅すると定める。この 30 年の起算 点は,不継続地役権の場合,それを享受することを止めた時,継続地役権の場 合,地役に反する行為が行われた時である(第 707 条)。また,継続かつ表現 の地役権は 30 年の占有継続によって時効取得できる(第 690 条)。

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3 本稿における研究対象 来栖が正当にも指摘するとおり,わが国の第 396 条と第 397 条はフランス民 法典の旧第 2180 条第 4 号に由来する。それゆえ,フランス法における抵当権 の時効に関する研究は,わが国の解釈に有益な示唆を与えるであろう。もっと も,金山直樹は,抵当権の設定された土地を債務者が占有する場合の時効に関 するフランス民法典制定前における解釈を明らかにしている9。また,古積健 三郎及び草野元己は,20 世紀フランスにおける旧第 2180 条第 4 号の解釈を明 らかにしている10。そこで,本稿では,抵当権の設定された土地を第三取得者 が占有する場合に関するフランス民法典制定前の議論及び 19 世紀フランスに おける議論を中心的に検討することとしたい。また,現第 2488 条第 4 号に関 する近時の議論についても検討をすることとする。

二 フランス民法典制定前における抵当権の時効

1 ローマ法 フランス民法制定前の諸学説を見る前に,それら学説において理解されてい たところのローマ法を一瞥しておきたい。 (一)時効制度

手中物(res mancipi)11については,使用取得(usucapio)が定められていた。

使用取得の成立要件は,正権原(適法な権原)があり,かつ善意の占有が継続

すること(動産の場合は 1 年,不動産の場合は 2 年)であった12。使用取得は

所有権取得方法であったが,抗弁でもあった。この抗弁は滅却的抗弁(exception

peremptoire)であると解されていた13

手中物以外の物については,長期間の前書(praescriptio longi temporis) が認められていた。長期間の前書の成立要件は,正権原があり,善意の占有が

継続すること(不在でない者の間で 10 年,不在者間で 20 年)であった14。占

有期間が満了すると,占有者は,所有者からの所有物返還訴権を排除するため の訴訟不受理事由(fin de non-recevoir)を得ることができ,この抗弁は延期

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的抗弁(exception temporelle)であると解された15。もっとも,後になって,

長期間の前書が完成後に占有者が占有を失った場合に,占有者がその物を取り

戻すための訴権が与えられたといわれる16

他にも,最長期間の前書(praescriptio longissimi temporis)が認められて いた。これは,物的訴権,人的訴権及び混合訴権に関する 30 年の時効である。 最長期間の前書の効果は,長期間の前書と同様であるが17,最長期間の前書は, 権原も善意も成立要件としていないと解されていた18 ユスティニアヌス帝において,使用取得と長期間の前書は統一され,動産の 取得時効の時効期間が 3 年,不動産の取得時効の時効期間が現在者間で 10 年, 不在者間で 20 年とされた。これによって,長期間の前書には所有権の取得方 法としての効力が与えられることになった19 (二)土地に設定された権利と時効 抵当権の設定された不動産を占有する者が債務者の場合,抵当権は 40 年の 時効にかかる20。抵当権の設定された不動産を占有する者が第三取得者の場合, 第三取得者が正権原を有し,かつ善意であれば,抵当権は現在者間で 10 年又 は不在者間で 20 年の消滅時効にかかる21 地役権には,農業用地役権(servitude rustique)と建物用地役権(servitude urbaine)があったとされる。農業地役権とは,土地に関する地役権であり, 建物用地役権とは,建物に関するものであり,眺望地役権などが含まれる22 農業地役権も建物地役権も,現在者間で 10 年,不在者間で 20 年の時効にかか る23。もっとも,建物地役権の消滅は,使用取得の要件に従うものとされる。 すなわち,建物地役権が消滅するためには,単なる地役権の不使用だけでなく, 地役権と相容れない行為がなされる必要がある24 2 パリ慣習法と学説の展開25 パリ慣習法第 113 条は短期取得時効による所有権取得を定め,同第 114 条は, 同第 113 条の時効が完成した場合に,占有された土地に設定された抵当権が消 滅すると定める。そこで,まず,パリ慣習法の解釈を明らかにし,次に,パリ

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慣習法以外の学説について検討する。 (一)パリ慣習法に関する学説 (1)所有権の取得時効 パリ慣習法第 113 条と第 118 条は取得時効を定めるものである。 パリ慣習法第 113 条〔短期取得時効〕「不動産(héritage)又はラント(rente)を 正権原かつ善意で占有する者が,現在者(presens)間では 10 年間,不在者(absens) 間では 20 年間,占有者によっても占有者の前主によっても,自由でかつ妨害される ことなく(franchement et sans inquiétation)占有を継続したとき,未成年者でなく, 特権を持たない者に対して,占有者は不動産又はラントに関する時効を取得する。」 パリ慣習法第 118 条〔長期取得時効〕「不動産,ラント又はその他の時効可 能な物を占有する者が,占有者によっても占有者の前主によっても,30 年間, 自由(franchement),公然かつ妨害なき(sans inquiétation)占有を継続し たとき,占有者は,未成年者でなく,特権を持たない者に対して,権原の存在 を明らかにできなくとも,時効を取得する。」 パリ慣習法第 113 条,118 条は,取得時効が未成年者や禁治産者に対して進 行しないとする。これは「訴えることのできない者に対して時効は進行しない (Contra non valentem agere non currit praescriptio)」という法諺に基づく

ものである26。自由(franchement)かつ妨害なき(sans inquiétation)占有 とは,中断なく継続した占有のことをいう27。そして,特権とは,教会のこと を意味しており,教会財産に対しては 40 年の時効のみが認められる28 パリ慣習法第 113 条の取得時効は,善意と正権原を成立要件とするという点 で同第 118 条の取得時効と異なる。パリ慣習法第 113 条の善意の要件について は,取得時の善意だけでよいとする説と 10 年又は 20 年の全期間の善意を要す るという説があった。デュプレシは,一時でも悪意になったならば,その悪意 が時効を完全に排除するとして,全期間の善意が必要であるという29。正権原 とは,占有者が所有権を得たと信じさせるためのものをいう。つまり,法的に 所有権を移転させる性質を通常有するものでなければならない30。また,「現

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在者間」とは,占有者と所有者が同一のバイアジュ(baillage)31 の管轄地域 に留まる場合のことであり,「不在者間」とは,占有者又は所有者が別のバイ アジュの管轄地域に留まる場合のことをいう32 パリ慣習法第 118 条の効果につき,フェリエールとブルジョンは,30 年の 占有が権原に値するという。すなわち,30 年の時効は,不動産に関する所有 物返還請求訴権について定められた存続期間のことであり,滅却的抗弁となる。 これに対して,パリ慣習法第 113 条の効果は,所有権の取得であると解される。 すなわち,パリ慣習法第 113 条の時効の趣旨は,正権原に基づき善意で 10 年 または 20 年平穏に占有をした者に所有権を確保することにあり,不完全であっ た取得を補うものである33 (2)抵当権の時効 パリ慣習法第 114 条は短期取得時効の完成による抵当権とラント(rente) の消滅を定めており,同第 115 条はその例外を定めるものである。 パリ慣習法第 114 条〔抵当権の時効〕「不動産(héritage)又はラント(rente) を正権原かつ善意で占有する者が,未成年者でなく,特権を持たない者で,ラ ントや抵当権に関する自由かつ平穏で妨害なく,占有者およびその前主によっ て,不在者でない者との間では 10 年間,不在者との間では 20 年間占有を継続 したとき,占有者は,その不動産又はラントにつき設定された全てのラントや 抵当権に対する時効を取得する。」 パリ慣習法第 115 条「ラント設定者が,第三取得者に背いて,ラントを弁済 したときでも,前条の時効は完成する。賃貸借(location),用益権(usufruit) の留置,容仮占有の設定等その他同様の方法によって,ラントの債務者が不動 産の占有の保持を継続したために,ラントの債権者が土地の譲渡を認識できな い正当な原因があるとき,時効は,その期間中進行しない。」 (ア)土地ラント制度 パリ慣習法第 114 条は,ラントの時効消滅についても定めている34。ラント

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後述のように,ポティエは,土地ラントに関する体系書において,パリ慣習法 第 115 条の解説をしている。そこで,本稿では,特に,土地ラント制度につい て見ることとしたい。 土地ラントとは,土地所有者が,毎年一定額の金銭等(年賦金)の支払いを 受ける権利を留保して土地所有権を譲渡する取引において,譲渡人に留保され た年賦金徴収権である。土地の所持者は,所持期間中に生じた果実を収取して いることに対応して,土地を所持する期間中に弁済期が到来した年賦金の弁済 について,人的義務を負う。土地負担は土地によって支払われるべきものであ り,譲渡人は,新たな取得者に対して土地を追及することができる35 ポティエによれば,抵当権は人的債務を担保するためのものであり,土地に 関する付随的債務であるが,土地ラントは,土地に関する主たる債務である。 それは,土地の年賦金を支払うべき占有者の所為によってのみ,土地がその債 務から解放されるという性質を有するからである36 土地ラントからは,三つの訴権が生じる。すなわち,過去の利息に関する抵 当訴権(action hypothéquaire),第三取得者が所持している期間中に発生し た利息に対する純粋な人的訴権,将来の利息に対する訴権である37 土地ラントの債権者は,現在の占有者が包括承継人でない限り,占有者の前 主において発生した年賦金を現在の占有者に対して請求できない。しかし,債 権者が抵当訴権を有する場合はこの限りでない。この抵当訴権は,土地に対す る割り付け(affectiation)によって生じる。土地ラントの債権者がこの訴権 を行使した場合,占有者の前主が個人的に負担する年賦金に関する検索の抗弁 を受けない。通常,抵当不動産の占有者は,被担保債権の債務者に関する検索 の抗弁を援用できると解されていたので,土地ラントから生じる抵当訴権は, 単なる抵当訴権を超えるものと位置づけられていた38 (イ)抵当権の時効に関する学説 (a)抵当権の消滅時効の時効期間 パリ慣習法第 114 条でいう善意は,抵当権又はラントの存在を知らないこと

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をいう。抵当権の設定された土地を占有する者が債務者であった場合,その債 務者は抵当権を認識しているのであるから,パリ慣習法第 114 条の時効が妥当 しない39 一般の訴権の消滅時効の時効期間は 30 年であるが,抵当権の設定された土 地を占有する者が債務者であった場合,抵当権の消滅時効の時効期間は 40 年 であるとされる40。なお,ブルジョンは,この場合,抵当権が約定抵当権であっ たならば,その抵当権の被担保債権の消滅時効の時効期間も 40 年に伸張され るとする41 (b)抵当権の消滅時効を中断させる方法 ロワゾは,抵当権の時効の中断方法として,抵当権宣言訴権(action en déclaration d’ hypothèque)の存在を認める。抵当権宣言訴権は,財産が債務 又はラントに基づく抵当権が設定されていることを宣言(déclarer)するもの である。 ロワゾは,この訴権がフランス法において発展したものであるという。フラ ンス民法典制定前において,抵当権の時効の起算点につき,債務者への検索の 日から進行するという学説と第三取得者が占有を開始した日から進行するとい う学説があった。ある研究者42 は,抵当権の追及のために債務者の全財産の 一般的検索が必要であることを前提に,検索がなされて初めて抵当権の時効が 進行を開始するという。これは,法諺「訴えることのできない者に対して時効 は進行しない」を基礎とするものである。しかし,この主張を認めると,100 年間占有を継続していたとしても,第三取得者は古いラントのための訴訟に召 喚されることになる。 この不都合に対して,フランス法は,抵当権宣言訴権を導入した。この訴権 は,時効を妨げ,中断するためのものである。債務者への検索がなされず,被 担保債権が請求可能にならない期間でも,債権者はこの訴権を行使できる。全 ての期間,抵当権宣言訴権を行使することができるのであるから,この場合の 債権者において法諺「訴えることのできない者に対して時効は進行しない」は

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妥当しない43 ブルジョンも,被担保債権の時効が停止している場合でも,第三取得者に おいて抵当権に関する時効が完成する余地があることから,中断訴権(action en interruption)が認められるとする。この訴権は,条件や期限が到来する 前でも行使できる。中断訴権が行使されることで,短期取得時効はもはや進行 せず,30 年若しくは最も長い時効期間を要することになる44。それは,中断 訴権に基づく訴え提起によって,占有者は悪意の占有者になるからである45 (c)パリ慣習法第 114 条の効果 多くの学説は,パリ慣習法第 113 条の効果と同第 114 条の効果を区別する。 フェリエールは,パリ慣習法第 113 条が占有者に対して土地の所有権を取 得させるのに対して,パリ慣習法第 114 条が占有者に対して解放(décharge) を取得させるとする46 デュプレシは,パリ慣習法第 114 条における時効を消滅時効に分類する。す なわち,全ての占有者は,所有権の取得時効と同じ要件でもって,抵当権とラ ントからの解放の時効を享受することができる。もっとも,この時効は,所有 権の取得時効と同じ要件であるから,抵当権の設定された土地を占有している 者が所有者でない場合,占有者は抵当権からの解放だけでなく,所有権を取得 することになる47 また,ブロドーは,パリ慣習法第 114 条によって,抵当権に関する抗弁が占 有者に与えられるとする48 (d)パリ慣習法第 115 条の解釈 フェリエールによれば,パリ慣習法第 115 条前段は,ラントの利息支払いが 善意の第三者の時効取得を妨げない事を定めるものであり,正当なものである。 第三取得者には,正権原があり,善意があるのだから,落ち度がない。むしろ, この時効は,ラントの債権者の懈怠に帰責されることになる。すなわち,ラン トが支払われている間であっても,ラントの債権者には,抵当権宣言訴権があ り,これによって時効を容易に中断できる49

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これに対して,パリ慣習法第 115 条後段は,債権者が財産の譲渡を認識して いないことにつき正当な原因がある場合,時効は債権者に対して進行しない事 を定める規定である。時効は,単に占有者の善意だけではなく,占有を奪われ た者の懈怠も基礎とする。ラントの債権者が財産の譲渡を知らないことにつき 正当な原因がある場合,その者に抵当訴権の時効消滅を帰せしめることができ ない。本条は,まさにこのことを示している。賃貸借や使用権(usufruit)の 留置,容仮占有の設定その他の方法によって,債務者が売却後も占有を留めた 場合,ラントの債権者は,債務者が占有を継続していると見ているため,時効 を中断することができない50 なお,デュプレシは,父が自己の有する財産を息子に贈与した場合にもこの 規定が適用されるとする。この場合,必然的に,息子は贈与者の相続人となり, 容易にフロードを見いだしうるものであり,譲渡を知らないことにつき正当な 原因があるとする51 (e)パリ慣習法第 115 条の適用範囲 パリ慣習法第 115 条は,その文言上,ラントに関する消滅時効のみを適用対 象としている。そのため,デュプレシは,これを字義通り解して,パリ慣習法 第 115 条がラントに対してのみ適用されると考える52 (3)地役権の時効 地役権には,農業用地役権と建物用地役権があるとされる。そして,地役権は, 継続かつ表現の地役権と不継続かつ非表現の地役権に類型化される。継続かつ 表現の地役権とは,眺望地役(servitude de vue),屋根の注瀉の地役(servitude d’ égout)等のように,人の所為を要することなく保存され,認識される地役 権である。不継続かつ非表現の地役権とは,通行地役権等のように,認識され ず,明白でなく,人の所為がなければ保存されないものである53 パリ慣習法第 186 条は,地役権が約定によってのみ設定可能であり,占有に よっては取得できないことと,30 年の消滅時効にかかることを定める54

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(二)その他の学説 (1)ドマ ドマは,抵当訴権の消滅時効の時効期間が 40 年であるとする。これは,債 務者に対してだけでなく,債務者が生存する場合の第三取得者においても同様 である55。また,時効によって地役権からの解放(affranchissement)を取得 するという56 (2)デュノー デュノーは,約定抵当権の時効期間は 40 年であり,それに合わせて被担保 債権の時効期間も 40 年に伸張されるとする57。なお,抵当権が法定抵当権や 裁判上の抵当権の場合,その消滅時効の時効期間は,30 年となる58。もっとも, 正権原によって 10 年間占有を継続する善意の取得者は,所有権を取得すると 共に,土地に設定された負担や抵当権に対する時効も取得するという59 デュノーは,フラッシュ・コンテ慣習法において,地役権の消滅時効の時効 期間が 30 年であるという60。地役権は,建物用地役権と農業用地役権に区別 され,後者は単なる権利不行使によって時効消滅するが,前者は自由を求める 側の異議(opposition, contradiction)が必要である。農業用地役権は,地役 権者の行為を基礎としており,その行使が継続しないのであれば,その地役権 を失う。しかし,建物用地役権の行使は,いったん設定した後も継続し,何 らの新たな行為や継続的な行為も必要としない。そして,その地役権の負担 (patience)は,地役権を負う者が何らかの外部的行為によって,もはや地役 権を負担しないことを示さない限り,継続しているものと推定される61 (3)ポティエ (ア)取得時効 ポティエは,短期取得時効も長期取得時効も占有者に対して所有権を取得さ せる制度であると考える62。そして,取得時効には,①所有権取得という効果 と,②自由かつ完全な所有権を取得させるという効果があるとする。②の効果 とは,土地を取得させる契約において占有者に示されておらず,占有者が認識

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していないラントや抵当権などの負担を消滅させるというものである63 (イ)抵当権の消滅時効 ポティエは,抵当不動産が第三取得者によって占有されている場合と債務者 によって占有されている場合に分けて論ずる。 (a)第三取得者によって抵当不動産が占有されている場合 抵当権の設定を知らずに不動産の占有を継続した第三取得者は,取得時効 によって抵当権から解放される。この時効は,債務に条件が設定され,かつ その条件が成就していない場合であっても,債権者に対して進行する。債権 者は抵当権につき法諺「訴えることのできない者に対して時効は進行しない」 を主張することはできない。債権者は,条件成就前,債務者に対する抵当訴 権を行使できないとしても,少なくとも,中断のための訴権を行使すること ができるのであるから,その訴権を行使しない以上,抵当権を失うという責 を帰せられてもやむをえない64 (b)債務者によって抵当不動産が占有されている場合 債務者が抵当権の負担つきで不動産を占有している場合,債務者は取得時効 による抵当権からの解放を得られない。被担保債権に関する訴権は人的訴権で あり,人的訴権の消滅時効の時効期間は 30 年である。もっとも,この時効は, 訴権の不受理事由であって,人的訴権それ自体を消滅させるものではない。そ こで,ユスティニアヌス帝は,債務者が抵当権設定者である場合のために,抵 当訴権に関する 40 年の時効を定める。 なお,ポティエは,いくつかの慣習法において,約定抵当権が 40 年の時効, 法定抵当権又は裁判上の抵当権が人的訴権と同じく 30 年の時効にかかるとし ている65 (ウ)土地ラントの時効 ポティエは,パリ慣習法第 115 条後段の趣旨を法諺「訴えることのできない 者に対して時効は進行しない」に求める。すなわち,ラントの債権者が占有者 に対してラントの承認を追及できない正当な原因のある場合,法諺「訴えるこ

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とのできない者に対して時効は進行しない」に従って,時効はその妨害が継続 する限り進行しない66 (エ)地役権の消滅 地役権は,原則として,30 年の時効によって消滅する67。もっとも,ポティ エは,承役地につき短期取得時効が完成した場合に,地役権も消滅するという。 すなわち,取得した財産に地役権や用益権等が負担させられている場合,短期 取得時効によって,占有者は地役権等の負担からの解放を得られる。なお,こ の解釈は,地役権に関する 30 年の消滅時効を定めたパリ慣習法と抵触しない。 それは,パリ慣習法第 186 条は,地役権の不行使による時効を定めるにすぎな いからである68 3 小括 パリ慣習法第 113 条は短期取得時効,同第 118 条は長期取得時効を定めてい た。そして,パリ慣習法第 114 条は,同第 113 条の要件を備えた場合,占有さ れた土地に設定されていた抵当権とラントが消滅することを定める。パリ慣習 法に関する学説の中には,パリ慣習法第 114 条の時効を抵当権の消滅時効と解 するものもあった。また,地役権はパリ慣習法第 186 条による 30 年の消滅時 効にかかると考えられており,パリ慣習法第 114 条に相当する規定は地役権に ついて存在しなかった。 これに対して,ポティエは,取得時効による所有権取得という観点から,パ リ慣習法第 114 条を体系化するものといえる。すなわち,取得時効には,所有 権の取得という効果と,自由かつ完全な所有権の取得という効果があるとし, パリ慣習法第 114 条は,後者の効果を定めたものと位置づける。そして,取得 時効の効果によって消滅する物的負担には,抵当権のみならず,地役権も含ま れると解する。そのため,占有した土地に地役権が設定されていた場合も,短 期取得時効の完成によって,30 年の時効の到来を待つことなく,地役権が消 滅するとしている。

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三 フランス民法典の起草過程

69 1 共和歴 8 年委員会による草案 共和歴 8 年委員会による草案第 6 章「先取特権と抵当権」は,時効が先取特 権と抵当権の消滅原因の一つであるとする(共和歴 8 年委員会による草案第 6 章(以下,「委員会案」という)第 75 条)。そして,同案は,時効による先取 特権と抵当権の消滅として,以下のような条文を定めた70 委員会案第 79 条 「第三取得者に対して,以下の例外を除いて,所有権の取 得時効と同一の場合でかつ,同一の要件の下で,先取特権の訴権又は抵当訴権 は,10 年又は 20 年,もしくは 30 年の時効にかかる。」 委員会案第 80 条 「第三取得者に対する先取特権に基づく訴権又は抵当訴権 の時効は,抵当権を主張する債権者による単なる催告や申請によって中断しな い。第三取得者からの借主に対する差押えについても同様である。 第 三 取 得 者 に 対 す る 適 式 な 抵 当 権 宣 言 請 求(demande en déclaration d'hypothèque)が必要である。」 委員会案第 81 条 「賃貸借又は用益権(usufruit)の留保その他同様の方法 によって,債務者が不動産の占有を留めていたために,債権者が譲渡を認識で きない正当な原因があったときは,時効はその期間進行しない。」 委員会案第 82 条 「第三取得者による承認又は新たな権原証書(titre nouvel),もしくは,第三取得者に対して言い渡された判決は,第三取得者に 個人的な債務を課すものであり,その場合,債務は 30 年の時効にかかる。」 委員会案第 83 条 「被担保債権に条件又は期限(à temps)が付されており, 条件が成就しない場合や期限が到来しなくとも,時効は第三取得者に対して進 行する。但し,債権者は条件付又は期限付き抵当権の宣言のために第三取得者 を召喚できる。この請求を認容した判決は抵当訴権に 30 年の期間を与える。」 委員会案第 79 条は,パリ慣習法第 114 条,委員会案第 81 条はパリ慣習法第 115 条後段を踏まえたものであり,委員会案第 80 条第 2 項と第 83 条は,時効 の中断のための抵当権宣言訴権を認めている71。このように,委員会案は,フ

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ランス民法典制定前の慣習法や学説を反映したものであったといえよう。 2 破棄裁判所による提案 破棄裁判所は,共和歴 8 年委員会による草案に対して対案を自ら作成し提出して いた(これを「破棄裁判所案」という)72。破棄裁判所案第 89 条第 3 号は,抵当 権の時効を定めるものであり,旧第 2180 条第 4 号とほぼ同一の規定であった73 破棄裁判所案第 89 条第 3 号「時効 先取特権又は抵当権は,財産が債務者の手中にある場合,人的訴権に定めら れた期間によってのみ消滅する。 先取特権又は抵当権は,財産が第三取得者の手中にある場合,第三取得者の ための所有権の取得時効のために定められた期間によってのみ消滅する。その 時効は,抵当権保存台帳(register du conservateur)にその所有の権原(証書) (titre)を公示させた日からでなければ,進行を開始しない。 債権者による登記は,債務者又は第三取得者のために法律により定められた 時効の進行を中断しない。」 なお,抵当権の設定された財産の取得者による謄記(transcription)は,抵 当権を消滅させるものではない。もっとも,取得者が謄記をすると,法定の期 間内に債権者に通知されるとする74 3 コンセイユデタと護民院での議論 第 6 章「先取特権と抵当権」については,共和歴 12 年雨月 7 日(西暦 1804 年 2 月 28 日)からコンセイユデタにて議論が開始された。その際に提出された 草案(以下では,「草案」という)第 89 条第 3 号は,破毀裁判所案第 89 条第 3 号第 3 文後段の内容を「時効が権原(証書)(titre)を前提とする場合,抵当権 保存台帳において,公示された日からでなければ,時効は進行を開始しない。」 としたが,それ以外は破毀裁判所案第 89 条第 3 号とほぼ同じものであった75 護民院において,時効に関する規定を別にして,いくつかの消滅原因を本条 に関連づける必要があるとの意見があった76。これを受けて,滌除による抵当 権の消滅が草案第 89 条に追加されたため,草案第 89 条第 3 号は,修正案第

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89 条第 4 号となった77。修正案第 89 条第 4 号は,草案第 89 条第 3 号第 3 文 の語順等を若干修正したものの,実質的には同じ内容を有するものであった。 グルニエは護民院において第 6 章「特権と抵当権」について報告をした。そ の報告において,グルニエは,抵当権の消滅に関する規定は特別な説明を要し ないと述べる。抵当権を一般的な権利と同一視しないことは不可能であり,抵 当権の消滅に関する規定の中に,民法典で既に確認されたところの,一般的な 権利の消滅方法や時効に関する諸原則が見出されるからである78。護民院は共 和歴 12 年風月 26 日(西暦 1804 年 3 月 27 日)に修正案を可決し,修正案第 89 条第 4 号は旧第 2180 条第 4 号となった。

四 フランス民法典制定後の展開

フランス民法典は,1804 年に制定されたが,19 世紀半ばに,担保法に関す る改正草案が提示された。もっとも,この草案は立法に至らなかった。その後, 抵当権を含めた物権の公示に関して 1855 年と 1955 年に大きな改革があった。 そして,2006 年,担保法に関する大きな改正が行われた。 そこで,本稿では,最初に,19 世紀半ばの担保法改正草案に至るまでの抵 当権の時効に関する学説判例を検討し,次に担保法改正草案における抵当権の 時効を見る。そして,1955 年の公示制度改革に至るまでの抵当権の時効に関 する学説判例の展開を明らかにした上で,2006 年の担保法改正における抵当 権の時効の意義を検討することとしたい。 1 19 世紀前半における学説判例の展開 1804 年の民法典において,抵当権には,約定抵当権,裁判上の抵当権,法 定抵当権があるとされた。抵当権者が第三取得者へ抵当権を主張するためには, 原則として,抵当権の登記を備える必要がある(旧第 2166 条)。もっとも,未 成年者,禁治産者及び寡婦は,抵当権の登記がなくとも,第三取得者に対して 法定抵当権を主張できる(旧第 2135 条 1 項)79

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(一)抵当権の時効(旧第 2180 条第 4 号)に関する解釈の展開 (1)議論の前提:短期取得時効の効果 トロロンは,短期取得時効の唯一の目的は,不動産の取得を確固たるものに することであり,第三取得者の手中における自由を維持することであるという。 すなわち,短期取得時効は,第三取得者のために,第三取得者が現れる前に設 定された物的負担や権利を消滅させる。旧第 2265 条は,「不動産の所有権」の 時効であると定めているが,これは民法典編纂の過誤であり,パリ慣習法を忘 れたものである。抵当権に関する旧第 2180 条は,現在の民法典がパリ慣習法 と同じ精神であることの証拠であり,仮に,物的負担が消滅しないとすれば, 時効はその目的を達成することができないであろうという80 (2)短期取得時効の完成による地役権の消滅 第 706 条は,地役権が 30 年の不使用によって消滅するとしている。19 世紀 前半の判例及び学説においては,承役地について短期取得時効が完成した場合 に,短期取得時効によって地役権が消滅するのかが問題となった。短期取得時 効の完成による抵当権の消滅を認めると,第 706 条の期間よりも早く,10 年 又は 20 年の短期取得時効の完成による地役権の消滅を認めることになる。 判例は,地役権の承役地について短期取得時効が完成したとしても,短期 取得時効によって地役権が消滅しないとしていた(Cass. Civ., 31 déc. 1845, S. 1846.105)。しかし,学説は,地役権の承役地について短期取得時効が完成し た場合,短期取得時効によって地役権が消滅すると解する。すなわち,トロロ ンは,不動産が自由なもの(franc et libre)として取得された場合,短期取得 時効は,全ての支分権(démembrement)を所有権に戻し,全ての負担から 所有権を解放するという81。地役権は支分権であるから82,短期取得時効の完 成によって消滅することになる83 デュラントンによれば,地役権は抵当権と同じく物権であるから,抵当権 の設定された土地の取得者にとって有利な制度は,地役権の設定された土地 の取得者においても認められるべきである。つまり,地役権の場合も抵当権

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と同様に,不動産を時効取得した者はその不動産を所有権に関する制限なく 全面的に(dans son entier)取得することになる。そうすると,第 706 条の 定める消滅時効との関係が問題となるが,第 706 条の定める消滅時効は,地 役権を設定した者のみが援用できる時効であり,上記の解釈は第 706 条の時 効と両立する84 (3)旧第 2180 条による抵当権の消滅の基礎 デュラントンは,旧第 2180 条第 4 号第 3 文が,取得時効の完成による抵当 権の消滅を定めていると解する。占有者が所有者でない者から不動産を得た場 合,占有者は不動産を取得する。占有者が所有者又は所有者でない者から不動 産を得た場合,不動産に関する自由(franchise),言い換えると抵当権の負担 からの自由を取得するという85 これに対して,グルニエは,取得時効の完成によって抵当権が消滅するとい う考え方が誤りであり,旧第 2180 条第 4 号第 3 文が抵当権の消滅時効を定め た規定であると解する。グルニエによれば,抵当権は債権者の権利であって, 所有権とは全く異なるものである。そのため,所有権が時効取得されたとして も,抵当権は維持される。民法典には,抵当権の時効を所有権の取得時効に従 わせる意図がなく,民法典は,ただ,二種類の時効がその期間という点におい て,同じ時間の経過に従うことを望むに過ぎないという86 なお,デルバンクールは,旧第 2180 条第 4 号第 3 文の抵当権の時効のうち, 長期取得時効の完成を要件とする時効が抵当権の消滅時効,短期取得時効の完 成を要件とする時効が自由の取得時効を定めたものと解する87 (4)抵当権の時効の中断 (ア)占有者が債務者の場合 旧第 2180 条第 4 号第 2 文は,①抵当権の存在が,被担保債権に関する人的 訴権と同じ期間内に限定されるということを意味する。また,被担保債権に関 する人的訴権の保全行為が,抵当訴権も保全するという意味で,抵当訴権は, 人的訴権と密接に結びつけられている。すなわち,②債務者に対する被担保債

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権の消滅時効の中断は抵当権の時効にも及ぶ。これは抵当権の附従性の一つを

構成すると解される88

(イ)占有者が第三取得者の場合 (a)被担保債権の消滅時効の援用可能性

判例(Cass., Civ., 25 avril 1826, Rep., no142.)と学説は,第三取得者が被担保

債権の時効消滅を援用して,抵当権の消滅を主張することができるとする89 (b)抵当権の時効の中断方法 第三取得者が抵当不動産を占有している場合,被担保債権の消滅時効の中断 は,抵当権の時効に及ばない。そのため,被担保債権の消滅時効が中断され, 被担保債権が存続する場合であっても,抵当権それ自体の時効が完成し,抵当 権が時効消滅しうる90。そのため,第三取得者に対する抵当権の時効を中断す る方法を明らかにする必要がある。第三取得者に対する抵当権の時効を中断す る方法には,第三取得者による抵当権の承認と,抵当権の承認を求める訴えの みが認められる。第三取得者が任意に抵当権の承認をしない場合に,抵当権者 は,抵当権宣言訴権を用いることになる91 (5)抵当権の時効の停止 旧第 2257 条は,条件成就・期限到来まで時効の進行が停止することを定め たものである。学説上,被担保債権に期限又は停止条件が設定されている場合, 被担保債権の期限到来又は条件成就まで旧第 2180 条第 4 号第 3 文の時効が停 止するのかが問題となった。 デュラントンは,旧第 2257 条が期限や停止条件の設定された債権に対して 適用されるものであり,第三取得者に適用されるものではないとする92。また, トロロンも,条件付の被担保債権の債権者には,法諺「訴えることのできない 者に対して時効は進行しない」が妥当しないという。それは,条件付の債権 の債権者は,旧第 1180 条に基づいて保存行為をなすことが可能であり,旧第 2180 条第 4 号第 3 文の時効を中断することができるからである93

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(6)旧第 2180 条の要件に関する解釈 (ア)正権原の謄記の趣旨 旧第 2265 条は,条文上,正権原を短期取得時効の成立要件としているが, 正権原の謄記の必要性については言及していない。しかし,旧第 2180 条第 4 号第 3 文は,条文上,短期消滅時効の完成による抵当権の消滅を主張する場合, 正権原の謄記の時をその時効の起算点とする。 トロロンは,旧第 2180 条第 4 号第 3 文がパリ慣習法第 115 条に由来すると いう。すなわち,旧第 2180 条第 4 号第 3 文の謄記要件は,正権原の謄記によっ て第三取得者への譲渡を抵当権者に知らせるために定められたものであり,債 権者に権利を保持し,時効を中断するために必要な方法をとらせるためのもの であるとする94 (イ)第三取得者の善意 学説において,抵当権が登記されていた場合に,この登記が抵当権について の第三取得者の認識,すなわち悪意を推定するのかが議論された。 (a)抵当権の登記は第三取得者の悪意を推定するとする説 デュラントンは,抵当権の登記によって第三取得者の悪意が推定されるとす る。その上で,民法典の起草者は,旧第 2180 条第 4 号第 3 文における短期取 得時効の成立要件として第三取得者の善意を要求していないと解する95 (b)抵当権の登記は第三取得者の悪意を推定しないとする説 他方,抵当権の登記は第三取得者の悪意を推定しないという説もある。もっ とも,この説は,第三取得者が抵当権の登記を認識していた場合の解釈につき, 見解が分かれる。 グルニエは,抵当権の登記に関する第三取得者の認識が,原則として,第三取 得者の悪意を構成しないという。しかし,登記された債権者に対して債務者が弁 済をしたと信ずる正当な理由が第三取得者にない場合には,第三取得者は悪意で あったと扱われるという96 デルバンクールは,第三取得者が正権原を謄記する際に抵当権の登記を認識

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したとしても,その認識が抵当権に関する第三取得者の悪意を構成しないとす る。それは,第三取得者は,売主が債務を弁済したと考えることができるから である。それゆえ,売買契約において,抵当権の負担付で売買契約が締結され る旨表示されていた場合に限って,第三取得者が悪意と推定されるとする97 以上に対して,トロロンは,抵当権の登記が,抵当権の存在に関する最も明 確な徴表であり,第三取得者にその権利の正当性を疑わしめるに十分であると いう。それゆえ,抵当権の設定された土地を取得する契約の締結時において, 第三取得者が抵当権の登記又は抵当権を認識していた場合,第三取得者のその 認識は抵当権の時効のために必要な善意を妨げる。なお,第三取得者の善意は 常に推定されるのであるから,抵当権者は,第三取得者が土地を取得した時に 抵当権の登記を認識していたことを立証しなければならない。 トロロンは,抵当権の登記に対する認識が抵当権に関する悪意に相当すると 解したとしても,旧第 2180 条第 4 号第 3 文を死文化させないとする。それは, ①債権者が,抵当権の登記又は抵当権に対する第三取得者の認識を立証できな い可能性がある,②登記が不要な法定抵当権においては,常に不知が推定され る,③第三取得者が売買契約を締結した時点で,抵当権が登記されておらず, 第三取得者の売買契約締結時に隠れたものとなる場合もあるからである。 また,トロロンは,グルニエの見解に対して,占有者が,「被担保債権が弁 済されていたと信じていた」と主張することはできないとする。「弁済した」 という仮定と「弁済がなかった」という仮定は,同じ程度,確からしい(probable) ものであり,「弁済がなかった」という仮定は,通常,買主を著しく不安にさせる。 第三取得者におけるこの不安感は,否定しえないものであり,取得時における 善意を排除するのに十分である98 (二)抵当権制度改正に向けての動向99 (1)ドクルドマンシュによる提案 1826 年,カジミール・ペリエ(Casimir PERRIER)は,抵当権に関する問題, すなわち,①フランスの抵当貸付に関する立法的かつ行政的な瑕疵と欠缺は何

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か,②資本をこの種の用途に向かわせることを妨げる障害物は何か,③最後に, この点に関して,最も完全な立法的なプランであり,かつ国庫の必要,借主の 必要および貸主が要求する担保と最も調和した立法的プランを形成するため に,定められる最も良い規定とは何かという問題についての懸賞論文を行った。 懸賞論文には,多数の応募があったものの,そのいずれも懸賞を獲得するこ とはできなかった。もっとも,応募論文の中で最も注目された論文は,ドク ルドマンシュの論文であり,従来の抵当制度の問題点を明らかにするもので あった100。本稿は,抵当権の時効に関するものであるから,ドクルドマンシュ の論文の概略を紹介した上で,ドクルドマンシュの論文における抵当権の時効 に関する立法提案を見ることとしたい。 ドクルドマンシュは,取得者にとっても,抵当権を担保とする貸主にとって も,安全がないことが現行法の問題であるという101。すなわち,いかなる場 合においても,取得者は追奪又は隠れた負担に晒されうる。取得時効は,追奪 からの保護方法として位置づけられる。しかし,第三者が必ずしも認識できな い事情によって,取得時効は中断され,時効期間が延長されてしまう。ドクル ドマンシュは,このような現行法の瑕疵は,人の身分または能力および不動産 所有権の確認または変更を目的とするすべての証書を公示することによって修 正できるという102 以上の主張に基づいて,ドクルドマンシュは抵当権の改正草案を示している。 改正草案中,抵当権の時効に関する条文としては,登記の効力に関する草案第 96 条がある。ドクルドマンシュによる改正草案の第 96 条は,「登記は更新に 従わない。登記は,第三者に対しても,登記が保持の目的とされた権利のため の期間によってのみ時効にかかる」というものである。ドクルドマンシュは, 旧第 2154 条が抵当権の登記を一定期間ごとに更新する事が義務づけているが, これは不便であるという。そのため,抵当権者が権原証書を登記した場合,そ の登記は更新する必要がないこと,そして,登記は,その保全の目的とされた 権利に関する時効にかかることを定めた。

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草案第 96 条でいう時効につき,ドクルドマンシュは,債務者と同じ時効期 間(すなわち,30 年の時効期間)の時効を想定する。現行法では,抵当権者が, 抵当権の時効を妨げるために,10 年ごとに抵当不動産の第三取得者に対して 抵当権宣言訴権を行使しなければならない。そこで,ドクルドマンシュは,登 記された債権者をこの義務から解放するために,抵当権が登記されている場合, 第三取得者が抵当権の登記を知っていたと推定する。そして,その推定の結果, 第三取得者は,債務者よりも短期の抵当権の時効を援用することができなくな ると述べる103 (2)1841 年の抵当権に関するアンケート

1841 年 5 月 7 日,国璽尚書(Garde des Sceaux)104であるマルタン・デュ・

ノール(Martin du NORD)は,破毀院の院長および検事長,控訴院の院長 および検事長,各大学の法学部長に対して,抵当権制度の不備・欠陥とその改 善の方法について意見を求めた105。アンケートへの回答内容は多岐に及ぶが, 本稿では,アンケートへの回答の中でも抵当権の時効に関する回答を見ること としたい。 (ア)中断事由の拡大 まず,アンケートへの回答の中でも,中断事由の拡大を求めた回答を見るこ ととする。 (a)抵当権宣言訴権 オルレアン控訴院は,抵当権者が,第三取得者に対して抵当権の承認を求め る訴権を有することを認める規定の必要性を説く。すなわち,被担保債権の履 行期が到来していない場合,債権者は,抵当訴権を行使できず,時効を中断さ せることができない。もっとも,判例は,時効の中断方法として抵当権宣言訴 権を認めている。そこで,これらの判例を追認して,旧第 2180 条に「但し, 債務の期限が到来していない場合で,第三取得者に対して,不動産が抵当権に 割り当てられていることを裁判所に宣言させた債権者についてはこの限りでは ない。」との条項を追加すべきであると提案する106

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また,ルーアン控訴院は ,抵当権宣言訴権を認めた判例を明示的に確認す べきであるとし,時効を妨げるために,債権者は,第三取得者の費用で,抵当 権の承認を要求することができることを定めるべきであるという107 (b)抵当権の登記による時効中断 アンケートへの回答の中には,抵当権の登記による時効中断を提案するもの があった。メス控訴院は,債権者が抵当権を登記したならば,抵当権の時効が 中断されるべきであるという。それは,その登記をした債権者は,抵当権を保 全するためになすべき全ての方法をなしていたといえるからである。また,公 示システムの下では,第三取得者は容易に抵当権や物的負担を認識できるので, 占有者が善意を主張することができない。これらの理由から,メス控訴院は, 旧第 2180 条第 4 号第 4 文の削除を提案する108 (c)裁判外の行為による時効中断 グルノーブル控訴院は,「時効は,その抵当権の維持を望む債権者の表明を 含む裁判外の行為(acte extrajudiciaire)の通知によって,第三取得者に対し て中断される。」という条文を追加することを提案する109。また,ストラスブー ル大学法学部は,旧第 2180 条第 4 号第 4 文を,「債権者によってなされた登記 又は更新された登記につき,第三取得者になされた通知は,時効の進行を中断 する。」に置き換えることを提案する110 (イ)短期取得時効の完成による抵当権の消滅の帰趨 いくつかの控訴院や法学部は,登記がなされている抵当権が,短期取得時効 の完成によって消滅することを問題視する。 メス控訴院は,公示制度の下では,第三取得者は容易に抵当権や物的負担を認 識できるので,時効において占有者の善意を主張することができないという111 また,ルーアン控訴院も,短期取得時効の完成による抵当権の消滅を認めな い。短期取得時効は不動産の所有者との関係において正当であるという。それ は,実際,所有権は,社会秩序と密接に関係しており,不確実性が継続しない ことが求められるからである。しかし,抵当権者との関係においては,これと

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同等の利益状況が存在しない。すなわち,抵当権の登記は取得者を悪意にさせ るかもしれない。また,抵当権者は,ほとんど常に,抵当不動産の譲渡を認識 していない。 もっとも,ルーアン控訴院は,登記や人的訴権の時効と調和す ることから,第三取得者に 30 年の長期取得時効の完成を認めることに躊躇は ないという。それゆえ,旧第 2180 条において,第三取得者の許に不動産が存 する場合,抵当権は,その契約の謄記の時から 30 年の時効にかかると定める べきであるとする112 カーン大学法学部も,短期取得時効の完成による抵当権の消滅を否定する。 抵当権の登記によって,取得者は不動産に関する負担を容易に知りうるのであ り,抵当権の登記を見ようとしなかった者の不知を善意とみることはできない。 そこで,旧第 2180 条第 4 号を改め,抵当権は,第三取得者につき,債権が条 件又は期限付きであったとしても,30 年の時効によって消滅することを定め るべきであるという113 そして,ストラスブール大学法学部は,不動産に関する抵当権の登記につい て認識した第三取得者を,抵当権につき不知と扱うべきではないとして,旧第 2180 条第 4 号第 3 文に続けて「第三取得者の謄記の時点において存在した抵 当権の登記は,不動産に設定された抵当権について善意で取得したと扱うこと を妨げる。」という条項を挿入することを提案する。この規定は,登記された 抵当権に関する短期消滅時効の完成による消滅を妨げる。しかし,登記を要し ない法定抵当の場合には,短期取得時効の完成による抵当権の消滅が認められ る余地があるという114 [未完] (本研究は JSPS 科研費 JP15K03198 の助成を受けたものである) 提出年月日:2017 年 12 月 18 日

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       1 大判昭 15・11・26 民集 19 巻 2100 頁及び大判昭 15・8・12 民集 19 巻 1338 頁,我妻栄『新訂  担保物権法』(岩波書店,1968 年)421 頁以下,高木多喜男『担保物権法〔第 4 版〕』(有 斐閣,2005 年)286 頁。 2 我妻・前掲注(1)423頁,同『新訂 民法総則』(岩波書店,1965年)481頁。この理論 につき検討するものとして,道垣内弘人「時効取得が原始取得であること」法教302号46頁 (2005年)がある。 3 来栖三郎「判批」判民昭和15年度76事件535頁,同117事件835頁〔『来栖三郎著作集I』 (信山社,2004年)所収633頁,639頁〕。

4 Frédéric ZENATI et Naoki KANAYAMA, Entretiens sur la prescription, Himeji international forum of law and politics., No 2., 1995, p. 89.

5 拙稿「短期取得時効について(1)(2・完)」富大経済論集49巻1号73頁,3号517頁(2004 年),金山直樹『時効における理論と解釈』(有斐閣,2009年)142頁以下,林田光弘「取得 時効の要件となる占有の客観的要素」法雑61巻1・2号231頁(2014年),特に253頁以下。 6 金山直樹=香川崇「フランスの新時効法」金山直樹編『消滅時効法の現状と改正提言』(商 事法務,2008年)165頁,拙稿「時効法の改正--民事時効改正に関する2008年6月17日の法 律第561号」日仏法学26号167頁(2011年)。 7 2006年担保法改正に関する研究として,山野目章夫ほか「ミニ・シンポジウム 2006年 フランス担保法改編の概要とその思想的含意」比較法研究69号144頁(2007年),同「2006 年フランス担保法改正の概要」ジュリ1335号32頁(2007年),平野裕之=片山直也「フラ ンス担保法改正オルドナンス(担保に関する2006年3月23日のオルドナンス2006-346号) による民法典等の改正及びその報告書」慶応法学8号163頁(2007年),同「フランス担保 法改正予備草案:フランス司法省担保法改正作業グループ報告書及び条文訳」慶応法学9号 203頁(2008年)がある。 8 フランスにおける地役権に関する研究としては,川島武宜編『注釈民法(七)物権(二)』 (有斐閣,1983年)473頁[稲本洋之助],武林悦子「地役権の沿革」愛知学院大学大学院 法研会論集13巻1・2号75頁(1998年),同「地役権の時効取得」愛知学院大学大学院法研 会論集15巻1・2号33頁(2000年),同「フランスにおける地役権の法的性質」愛知学院大 学大学院法研会論集16巻1・2号101頁(2001年),吉井啓子「地役権概念の再検討̶フラン ス法からの考察̶」同志社法学60巻7号293頁(2009年)がある。 9 金山直樹『時効理論展開の軌跡』(信山社,1994年)185頁以下。 10 古積健三郎『換価権としての抵当権』(弘文堂,2013年)292頁,草野元己「抵当権と時効」 玉田弘毅先生古稀記念論文集編集代表人編『現代民法学の諸問題』(信山社,1998年)45頁。 11 手中物とは,具体的に,イタリアの土地,地役権,奴隷,背及び頸で馴養し得べき四足動 物をいう(原田慶吉『ローマ法』(有斐閣,1955年)74頁)。

12 Robert-Joseph POTHIER, Œuvres de Pothier, annotées et mises en corrélation avec le Code civil et la législation actuelle, par M. BUGNET, t.9., 1846, Traité de la prescription, p.318., no 2 ; François Ignace DUNOD de Charnage, Traités des prescriptions, de

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13 Julien BRODEAU, Coustume de la prévosté et vicomté de Paris, t.2., 2e éd., 1669, pp.

152 et s.

14 Claude de FERRIERE, Corps et compilation de tous les commentateurs anciens et modernes sur la coutume de Paris., t.2., 2e éd., 1714, p.318., no10. なお,ポティエは正権原

が成立要件でなかったとする(POTHIER, supra note 12, p.318., no3.)。

15 POTHIER, supra note 12, p.318., no3 ; BRODEAU, supra note 13, p.152. なお,フランス

民法典制定前における訴訟不受理事由や抗弁の意義の多様性については,金山・前掲注(9) 200頁以下参照。

16 POTHIER, supra note 12, p.318., no3 ; DUNOD., supra note 12, p.6.

17 DUNOD, supra note 12, p.6 ; BRODEAU, supra note 13., p.152. 18 FERRIERE, supra note 14, p.425., no1.

19 BRODEAU, supra note 13., p.153.

20 Robert-Joseph POTHIER, Œuvres de Pothier, annotées et mises en corrélation avec le Code civil et la législation actuelle, par M. BUGNET, t.9., 1846, Traité du l’ hypothèque, pp.480 et s, no206 ; FERRIERE, supra note 14., p.319., no12.

21 DUNOD, supra note 12., pp. 174 et s. 22 FERRIERE, supra note 14., p.1477, nos12 et s.

23 DUNOD, supra note 12, p. 294 ; Claude SERRES, Les institutions du droit françois suivant l'odre de celles de justinien, 3e éd., 1778, p.144.

24 FERRIERE, supra note 14., p.1527., no4.

25 フランス民法典制定前の法状況に関する極めて詳細な研究としては,金山直樹『時効理論 展開の軌跡』(信山社,1994年)185頁以下がある。本稿は,同研究の内容を再確認しつつ, パリ慣習法に関する研究を追加したものにすぎない。

26 Claude DUPLESSIS, Œuvres de M.Duplessis, Traitez [de Mr Duplessis] sur la

coutume de Paris,1699, p.230. 同法諺に関する研究としては,拙稿「消滅時効の起算点・停 止に関する基礎的考察−フランス法における『訴えることのできない者に対して時効は進行 しない(Contra non valentem agere non currit praescriptio)』の意義(1)(2・完)」富大 経済論集54巻1号69頁(2008年),54巻3号55頁(2009年)がある。

27 FERRIERE, supra note 14., p.331., no1 et p.425., no1.

28 DUPLESSIS, supra note 26., p.231. 29 DUPLESSIS, supra note 26., p.230. 30 DUPLESSIS, supra note 26., p.230.

31 当時の最下級の裁判所はプレヴォテであり,バイアジュはプレヴォテの上級裁判所にあた る(野田良之『フランス法概論 上巻』(有斐閣,1970年)422頁)。

32 DUPLESSIS, supra note 26., p.231. 民法典制定後の学説であるが,Gabriel BAUDRY-LACANTINERIE et Albert TISSSIER, Traité théorique et pratique de droit civil, t.28, 3e

éd., 1905, p.532., no690.もバイアジュの管轄が基準となっていたという。

33 金山・前掲注(9)56頁,89頁以下。

34 ラント制度に関する研究としては,森田修「一六世紀フランスにおける担保権実行̶ラン ト契約を素材として̶」日仏21号5頁以下(1998年),阿部祐介「抵当権の「追及権」につ

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いて̶抵当権実行制度の再定位のために(1)∼(7)」法学協会雑誌129巻11号1頁,12号 94頁(2012年 ),130巻1号185頁,5号55頁,6号83頁,11号1頁,12号1頁(2013年 ) が ある。本稿における土地ラントの記述は,以上の論文の内容を再確認するものにすぎない。 35 阿部・前掲注(34)「抵当権の「追及権」について(2)」103頁以下。

36 Robert-Joseph POTHIER, Œuvres de Pothier, annotées et mises en corrélation avec le Code civil et la législation actuelle, par M. BUGNET, t.4., 1847, Traité du contrat de bail à rente, p.178., no19.

37 Charles LOYSEAU, Les oeuvres de maistre Charles LOYSEAU, nouv éd, 1666, p. 59., no4. 阿部・前掲注(34)「抵当権の「追及権」について(2)」129頁。

38 POTHIER, supra note 36., p.201., no90.

39 FERRIERE, supra note 14, p.382., nos7 et s., ; DUPLESSIS, supra note 26, p.241.

40 BOURJON, Le droit commun de la France et la coutume de Paris réduites en principes, t.2., nouv éd., 1770., p.565., no5 ; FERRIERE, supra note 14., p. 298., no36.

41 BOURJON, loc.cit.

42 LOYSEAU, supra note 37, p.60., no14.は,アレクサンデル・デ・イモラ(アレクサンデル・

タルタグヌス)の学説(Consiliorum seu Responsorum, liber 5, Conseil 58.)を引用して いる。

43 LOYSEAU, supra note 42., p.61., no19 ; FERRIERE, supra note, pp.60 et s. nos10 et s,

44 BOURJON, supra note 40., pp.547-548., nos7 et s.

45 BOURJON, supra note 40., p.663., no6.

46 FERRIERE, supra note 14., p.381., no1.

47 DUPLESSIS, supra note 26., p.236 et p.241. ブルジョンも,占有者が土地を土地ラント の負担なきものとして占有する場合,占有者は土地ラントに対する時効を得,時効の効果に よって訴権から解放されるとする(BOURJON, supra note 40., p. 653., no4.)。

48 BRODEAU, supra note 13., p.159. また,パリ慣習法114条によって第三取得者に対して 抵当権への防御方法が与えられるとする説もある(Gabriel ARGOU, Institution au droit françois. t.1., 1753, pp. 246 et s.)。

49 FERRIERE, supra note 14, p.393., no4 ; LOYSEAU, supra note 42., p.61. no19,

50 FERRIERE, supra note, p.394. no8.ブロドーは,時効の性質に着目する。すなわち,時

効は憎むべきものであり,第三者の財産を失わせるものであるから,現実的,実際的で物質 的な占有でなければ時効は進行しないという(BRODEAU, supra note13, p. 166.)。 51 DUPLESSIS, supra note 26, p. 241.

52 DUPLESSIS, supra note 26, p. 242.

53 FERRIERE, supra note 14, p. 1482., nos18 et s.

54 BOURJON, supra note 40., p. 3., no7.

55 Jean DOMAT, Loix civlies dans leur ordre naturel, le droit et public, legume delectus, nouv éd., t.1., 1756, p.215., no9.

56 DOMAT, supra note 55., pp.117-118., no11-13.

57 DUNOD, supra note 12., p. 208. 58 DUNOD, supra note 12., p. 308.

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