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香港特別行政区政府 食物及衛生局

サンドラ・リー事務次官

○(神奈川県知事) 世界の国々で受動喫煙防止対策が進み、アジアでも香港やシンガポールなどで取 組みが進められています。残念ながら日本はたばこ対策が遅れています。そこで、神奈川県が、公 共的施設での喫煙を規制する条例を制定し、それを全国に広げ、最終的には国を動かしていきたい と考えています。 本日は、受動喫煙防止、貴政府の条例に対する考え方、条例制定の経緯、今後の受動喫煙防止対 策への取組みなどについて、ご教示ください。 -(事務次官)ようこそいらっしゃいました。神奈川県の条例制定の取組みを支援したいと思います。 香港政府は、20 年ほど前からたばこ規制対策に取り組んでいます。私達は 1980 年代後半から、 喫煙が健康に与える影響についてキャンペーンを行ってきました。そして、たばこ広告やたばこ事 業者がスポーツ活動のスポンサーとなることを禁止しました。その 20 年の積み重ねの上に、多く の公共的施設での禁煙を実施しました。 ○ 事業者団体や議会の反応はどうでしたか。 - 飲食店やナイトクラブへの対応が課題でしたが、結果として、多くのレストランで条例は大歓迎 を受けたのです。条例の施行により、お客さんが増えたからです。 理由は二つあります。一つ目は、レストランが禁煙区域に指定されてから、子供連れの家族が今 まで以上に外食するようになったことです。もう一つは、お客さんはそれまで、コーヒー1 杯で 2 時間近くレストランにいてたばこを吸っていました。しかし、今はレストランの中ではたばこが吸 えないので、コーヒーを飲み終えたらすぐに出て行かなければなりません。そのため、客の回転率 が上がったのです。 香港の条例は、室内での喫煙を禁止しています。レストラン、オフィス、公共施設など、さまざ まです。大学を含めたすべての学校、病院なども禁煙です。従業員宿舎の共用部分も禁煙です。ホ テルの場合は、喫煙できる部屋はあります。 屋外でも、海水浴場や公園は禁煙です。公園の場合は、全体の面積からみるとほんの一部分のエ リアだけは喫煙できることになっていますが、スポーツをする場所や子どもの遊び場があるならば その公園はすべて禁煙です。 私たちの次の目標は、バス停や、バスとタクシー共用のターミナルなど、交通のインターチェン ジに禁煙を広めることです。 ○ 現在は、ナイトクラブ、バー、マッサージルーム、麻雀店などは、喫煙できるようですね。 - ただし、これらの施設は、2009 年 7 月から禁煙になります。このような施設に猶予を与えたの は、営業場所をリース契約で借りており、もし禁煙となると来店客が減少して利益が減少すること が考えられるけれども、リース契約を中止することができないと、これらの施設の要望があったか らです。ただ、そういう場所は、18 歳未満は入ってはいけないところです。 また、職員が毎日すべての施設を巡回してチェックすることはできません。ですから、条例では、 施設の経営者やマネージャーに対して、喫煙をやめさせる権限を与えています。喫煙をやめさせる ときにけんかになったりすると、警察を呼ぶ権限もあります。また、警察が来るまでに、その人を 留めておく権限もあります。 ○ トラブルになったケースはあるのでしょうか。

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- 問題は起きていません。衆人の目があるからなのでしょうね。 隣の人が、たばこをやめなさいと注意することが多いですね。ですから、施設のマネージャーは 喫煙を注意する必要がないときもあります。 ところで、対象施設で喫煙した場合の罰金は5,000 香港ドルですが、その場で渡されたチケット を持って裁判所に出廷しないといけないのです。これは厳しく実行させています。 ただ、禁煙場所で喫煙者を見つけたら、職員がその場でチケットを渡し、1,500 香港ドルの定額 の反則金を21 日以内に払うような制度に変更することを検討しています。 ○ 施設内での喫煙を許してしまった場合に、施設のオーナーには罰則はないのでしょうか。 - 施設のオーナーなどには罰則はありません。彼らは警察やたばこコントロールオフィス(食物及 衛生局の下の衛生署の中に設置された組織)の職員ではありませんが、喫煙をやめさせる権限があ ります。もし拒否されたら、警察に連絡する権利や警察が来るまでその人を留める権限もあります。 違反した喫煙者が逮捕された場合に、オーナーは証人として出廷しないといけません。 ○ 施設の中に、部屋を分けた喫煙室を造ることは認めているのでしょうか。 - 喫煙室を造ることについて検討したのですが、実際には難しい点が多いですね。喫煙室の設置費 だけでなく、フィルターの交換などの維持管理に多額の費用がかかるのです。何よりも、喫煙室内 の濃度が非常に高くなる。そして喫煙者自身だけでなく、喫煙室の掃除をする人など、室内の他人 にも影響を与えることになるからです。 また、施設の中で喫煙室を設けることを認めると、事業者の間で競争が激しくなりますね。小規 模事業者は、高額なコストを負担する余裕が少ないですから。 香港の喫煙人口が80 万人と、15 歳以上の人口の 14%にまで減少したことは、触れておくべきで しょう。ですから、施設の中に喫煙室を造ることは大きなニーズではありません。オフィスやレス トランでたばこを吸いたくなったら、外に出て吸う。本当に普通のことになっています。 ○ 1階にあるレストランは、屋外席を設けて、そこでの喫煙は可能なのですね。 - 周りの壁すべてがないのが屋外ととらえています。壁が三方にあって、一面だけオープンの場合 は屋内ととらえています。 禁煙場所の指定に加え、私たちはたばこ販売対策の強化も行っています。18 歳以下へのたばこ販 売は禁止ですが、この運用を強化していますし、たばこ広告に対しても本当に厳しくコントロール しています。また、必ずたばこの箱に50%ほどの面積を使って、大きく読めるような字で、たばこ は健康に害がある旨の警告文を記載しなければいけないのです。 香港市民の協力も重要です。例えば薬剤師が、ボランティアとして禁煙のお手伝いをしてくれて いるのです。喫煙をやめたい人に対して、無料でアドバイスしてくれています。 ○ これまでも喫煙率は低下してきているようですが、条例を制定して以降、低下傾向はさらに強まっ たのでしょうか。 - 条例の施行から間もないので、データを持ち合わせておりません。たばこの販売量から見ても、 喫煙者の増減は正確には分かりません。観光客が購入するたばこがカウントされるからです。 ただし、私共の禁煙ホットラインに電話してくる人の数は、42%も増えています。私たちは喫煙 対策の効果が出ているということを確信しています。 なお、条例を遵守しているレストランは全体で95%程度という調査結果が出ています。

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○ この条例を制定した目的をお伺いします。目的の一つは、受動喫煙から市民の健康を守ることだ と思います。もう一つは、香港が国際都市として確固たる地位を占めるためには、喫煙のルールが しっかりしていることが必要なことや、空気がきれいで健康な都市だという都市のイメージアップ のためという視点もあったのではないかと思うのですが。 - まさにそのとおりです。市民が健康であるためには、受動喫煙からも守らないといけません。 そして、私たちは香港のイメージを健康な街として強調していこうと考えています。香港 18 区 がそれぞれ健康について啓発活動を行い、健康な街にしていこうという呼びかけをしています。 ○ 今後の受動喫煙防止対策はどのようにお考えですか。 - スモークフリーが一番望ましいのでしょうね。でも、現実はそうはいきません。比率的には小さ くても、たばこを吸う人は必ず存在するからです。何十年もたばこを吸っている人たちが、たばこ をやめることは非常に難しいことかもしれません。ただ、若い人たちが喫煙を始めないようにする ことを望んでいます。 ○ たばこ規制を強めると税収が減ってしまうという批判はありましたか。 - 香港でもそのような議論がありました。でも、たばこ税収よりも、医療費のほうが掛かります。 私たちは、喫煙を抑制するため、たばこ税を上げることもしています。 また、難しいことですが、観光客に対する免税たばこの販売禁止を検討しています。そうなった 場合、たばこ税収入が激減することも承知しています。 ○ 街頭のいろいろなところに灰皿が置いてありますよね。それを設置する費用や清掃のための費用 はどのようにしているのでしょうか。 - 香港では、灰皿がごみ箱の上についています。街をきれいにするために、いろいろな所にごみ箱 を置いています。そのごみ箱の上に灰皿を付けても、費用はそう掛かりません。また、ごみ箱を 清掃するために人を雇っていますので、余分なお金は使いません。 ごみ箱には、喫煙しないようにというポスターを貼っています。 室内はほぼ完全に禁煙ですから、たばこを吸う場合には外に出なくてはいけません。外で喫煙す ると、誰もが手の届く所に灰皿がなければ、街が汚れてしまいます。そういうことを防ぐために、 やっぱり灰皿を置かざるを得ない。 ○ 大変有意義なお話をありがとうございました。先日、条例の基本的な考え方を発表したところ、 賛否両論さまざまな意見が寄せられています。今後こうした意見も踏まえながら、条例の検討を進め ていきたいと考えています。できるだけ多くの皆さんからご意見を伺い、ご理解いただける内容にし ていきたいと考えています。 - 神奈川県の成功をお祈りします。 私たちが成功した要因の一つは、お医者さんだけでなく、映画スターなどが条例の宣伝をしてく れたことだと思います。若い人たちは、映画スター、ミュージシャンなどにとても憧れているので す。そういう人たちが宣伝をしてくれると、若い人たちの心に響くのです。 最後に、条例の施行日は 2007 年1月1日の深夜です。いろいろな人から、正月を迎えてみんな とたばこを吸って酒を飲んでいる時に、実施するのはおかしいとか、無理じゃないか、という声が ありました。でも実際には、喫煙者は条例を守って、外に出てたばこを吸ったので、条例は問題な く施行されました。

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香港特別行政区政府 衛生署

顧問(非伝染性疾患担当) Dr.TH・リュン氏

たばこ規制室 Dr.クリスティーヌ・ウォン氏

○(神奈川県知事) 本当にお忙しい中、お時間を頂き、ありがとうございます。 神奈川県では、日本で初めて公共的施設での喫煙を規制する条例の制定を検討しており、大きな 議論を巻き起こしています。 条例の対象範囲や違反行為に対する対応など具体的な運用などについて、ご教示ください。 ■(リュン氏) 私たちたばこ規制室は、2001年に衛生署に設置されました。私たちの使命は、市民 の健康を守るため、香港に禁煙文化を普及することです。 香港の15歳以上の人口に占める喫煙率は、低下していく傾向にあります。1980年代の喫煙率は 約23%、2005年には14%まで下がりました。 香港初の包括的なたばこ規制の法律である喫煙(公衆衛生)条例は、1980年代初期に施行されま した。当初は公共交通機関、映画館、エレベーターなどに導入され、1990年代には、ショッピング センターやゲームセンターなど、さらに多くの公共施設に拡大されました。過去20年間、学校教育 やキャンペーンを通じて禁煙文化を啓発しています。 条例は、2006年に大改正し、新たな規制要項の大部分は2007年1月1日から施行しました。新 しい条例では、禁煙場所の範囲を広げるとともに、たばこ会社には各パッケージに絵入りの健康被 害警告の記載を義務付けました。また、小規模小売店はたばこの広告禁止から除外されていました が、以降は禁止となりました。そして、新しい条例の下、当室が施行のための業務を開始したので す。 禁煙場所の拡大についてですが、職場やレストラン、カラオケボックス、店舗、ショッピングセ ンター、市場、エレベーターなどを含む公共施設の、すべての室内が対象です。学校、大学、公園、 ビーチやスタジアムでは、屋内でも屋外でも喫煙は禁止されています。 経過措置として、ナイトクラブ、麻雀店、公衆浴場、クラブ内の指定のマージャン室、マッサー ジ店、18歳未満入店禁止のバー、この6業種の施設については、2009年6月30日まで禁煙条例の実 施を延期しています。禁煙の延期が認められたバーでは、軽食のスナック類以外の食べ物を提供し てはいけません。 検査員は、条例で定められた禁煙場所で監視を行い、違反を取り締まる権限を与えられています。 禁煙条例に違反した場合は誰でも、裁判所からの召喚に応じなければなりません。そして審問の上、 裁定を受けます。起訴手続きを簡素化するため、現在、禁煙違反に対し定額の反則金を払わせるシ ステムを作っており、違反者は定額の罰金を直接払うことで、法的責任を果たすことになります。 条例改正に当たっては、テレビ・ラジオを使って、様々な啓発活動を実施しました。また、レス トラン、ショッピングセンターなどの施設でスムーズに禁煙条例を施行するため、施設の管理者を 対象にセミナーを開催しました。さらに、医師、歯科医、薬剤師による、一般向けの禁煙サービス を実施しました。また、条例改正の効果を測定するため、評価調査を行っています。 ○ ジャッキー・チェンがPRをしていますね。 ◆(ウォン氏) 彼にたばこをやめた経験を話してもらい、テレビCMで放送したのです。彼は、意

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志が固ければ禁煙は成功しますよと呼び掛けてくれたのです。 条例に対する市民の反応ですが、世論調査を行った結果、90%以上の市民が禁煙を支持していま した。またレストランで条例遵守の調査を行ったところ、およそ95%のレストランが禁煙になった ことが分かりました。 ○ 逆に言うと5%のレストランでは、たばこを吸う人がまだいたということですか。 ◆ 95%以上のレストランでは喫煙はありませんでしたが、いくつかのレストランではまだたばこを 吸う人がいました。条例の遵守率は高く、これは海外と同程度だと思います。 ○ レストランのオーナーや管理者に対する罰則はないのですか? ■ 香港では、現在法律にそのような規定はありません。しかし、他国の経験から見て、施設管理者 に法的責任を課すのは効果的な手段であるといえるでしょう。 現在罰金は裁判所により決定されていますが、今後は、1,500香港ドル(約20,000円)程度の 定額反則金を課す方向で準備を進めています。 ところで、私たちは、外食産業の経済的データについても調査しました。施行前の2006年と施行 後の2007年を比較すると、レストランの数、売り上げ、従業員の数は、すべてにおいて増加が認め られました。禁煙によってレストランの売り上げが悪くなるわけではありません。 香港の喫煙率は14%で、世界でも低い地域の一つですが、1980年代はもっと高かったのです。 当時、私たちは啓発による禁煙の促進により力を入れていました。法による規制は受け入れられな かったのです。 そこで、80年代後半と90年代を通し、私たちは立法局に働きかけ、議員に対し様々なデータを提 示し、喫煙率を更に下げるためには条例によらないと難しいことや、喫煙者が病気になったときの 診療費について説明しました。 喫煙率は、啓発と教育によりある程度下げることができますが、率を更に下げようとする場合、 法的アプローチが不可欠です。 喫煙率を低下させるポイントは、三つあります。 一つは、政府全体のサポートが必要です。たばこ規制のための総合的な政策を確立するには、衛 生署だけでなく、政府全体が一丸となって取組まなければなりません。 二つ目は、社会の様々な部門との協働が重要だということです。例えば、私たちは禁煙条例の対 象となる施設の管理者に対し、セミナーやワークショップを行い、また実施に関するガイドライン を示しました。2006年10月の条例改正時には、従業員、マネージャー、オーナー等を対象に勉強 会やセミナーを開催し、飲食業界の協力を呼びかけました。事業者の協力がなければ、香港の禁煙 の取組みはこれほど成功しなかったでしょう。 三つ目は、たばこを吸わない文化づくりです。香港では、たばこ規制を進めるにあたり段階的か つ多面的なアプローチでのぞみました。屋内などではたばこを吸ってはいけないんだな、と常に意 識する環境づくりが大切です。 ○ 飲食業界の反応について教えてください。例えば喫茶店に、コーヒーを飲みながらたばこを吸う ことを楽しみに来るお客さんがいます。バーも酒を飲みながらたばこを吸う人がたくさんいますね。

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このような店では、お客さんを含めて施設の反対が強いのです。憩いの場を提供することは構わな いではないか、喫煙を規制するとたばこを楽しみにしている人が来なくなるので売り上げが落ちて しまう、という意見です。このような意見は香港ではなかったのでしょうか。 ■ 香港でも同様の反対がありました。しかし、すべての店を一律に禁煙すれば、平等な条件で競争 することができます。実際、多くの人から、もしレストランを禁煙にしたら、外食の機会が増える だろうという声がありました。 ○ 公園や海水浴場も禁煙の対象にしている理由を教えてください。また、禁煙ではなく完全分煙な らいいではないかという意見は出なかったのでしょうか。 ■ 子どもを副流煙から守るため、子どもがよく行くところは禁煙にすべきだとの提案は、議員から 出されたものでした。このため、子どもたちの遊び場や海水浴場は全て完全禁煙になり、一方、い くつかの大きな公園では喫煙エリアを設けてもよいことになりました。 ○ レストランについては、売り上げが伸びているというお話がありましたが、アイルランドやイン グランドでは、バーなどは売り上げが落ちたという報告もあると聞いています。2009年7月にバー やナイトクラブも禁煙にする予定のようですが、見込みはどうでしょうか。 ■ 飲食業界が一番心配しているのは、売り上げが落ちないかどうかです。ですから、私たちは条例 改正の過程で外食産業の代表者とワーキング・グループを設置しました。事業者の方たちからは、 業界や一般の人々に対して、たばこ規制についてのメッセージをより効果的に伝えるにはどうした らいいのかという前向きな意見が出まして、「禁煙レストラン・オープン・デー」を設け、宣伝活動 を行うなどの取り組みが生まれました。 バーやナイトクラブの来店者の多くは喫煙者ですが、ほとんどが条例を守るだろうと考えていま す。このような施設においても、条例の実施はスムーズにいくだろうと考えていますし、検査員が 取締り中に抵抗を受けたりした場合は、香港警察も応援してくれます。 ○ たばこ規制室の体制を教えてください。 ◆ スタッフは約100名で、そのうち80名が検査員です。また、医師が6名います。 検査員はソフトな応対を心掛けており、違反者もほとんどが協力的なので、取り締まりはスムー ズに行っています。香港特別行政区政府は禁煙条例の実施に非常に熱心に取り組んでいます。また、 警察官に来てもらい、検査員に取締りの職場研修を行っています。 ○ 本日は、大変有意義なお話を頂きました。本当にありがとうございました。受動喫煙防止につい て先進的な取組みをされており、大変感銘を受けました。皆さんの取組みを参考にして、神奈川県 は日本で初めて公共的施設での喫煙を規制する条例を制定したいと思いますので、ご支援いただけ ればと思います。 ■ 私たちの経験をお話しできたことをうれしく思っておりますし、知事さんの勇気に感心いたしま した。

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香港日本料理店協会

○(神奈川県知事) 神奈川県ではがん対策に力を入れています。中でも予防が大変重要であり、その 一環として、受動喫煙の防止にしっかり取り組まないといけません。そこで公共的施設での喫煙を 規制する条例を検討しています。検討に当たっては、主にレストラン、バー、娯楽施設から、「条例 で喫煙が規制されるとお客さんが減り売上が落ちてしまうのではないか」という懸念の声が出てい ます。 こうしたことから、香港日本料理店協会の皆さんには、ぜひ、香港の禁煙条例が飲食店などの経 営に対してどのような影響が出ているのか、また、日本で同様の条例を施行する場合に、どのよう な点に気を付けたらいいのかなどをご指導いただきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。 -(香港日本料理店協会) 禁煙については、タイが香港よりも2年前に実施しています。香港の人か ら見れば、タイは多少香港よりも経済的には遅れているけれども、そういう国でさえ、禁煙が実行 されています。シンガポールはその前から実行されています。 施行前には、事業者の方はいろいろ心配しました。特に、お客さんに注意する時はどのようにす ればよいのか戸惑いました。 香港と日本の大きな違いの1つは、香港の市民あるいは香港で居住権を持っている方は、すべて IDカード持っているのです。香港のすべての人が、IDカードを携帯しなければいけないという 条例があるのです。ですから、警察から提示を求められた際には、住民であればIDカードを見せ る義務があります。観光客の場合はパスポートを常に携帯する義務があります。条例違反した人を 告発するときに、相手の身分を把握できるシステムになっているのです。 またもう1つは、香港のレストラン、バー、カラオケ、麻雀店の許可は全て、政府が個人に免許 を与える形になっています。そして、香港の条例の罰則は罰金と実刑なのです。ですから、法人を 罰則の対象にするのではなく、個人が対象なのです。そして、施設を管理する者(authorized person) が指定され、その者に違反者に対する警告の権限が委任されます。例えば店でたばこを吸ったお客 さんに注意した際に、相手が注意に従わなかった場合、「あなたのIDカード出しなさい」と言うこ ともできるのです。IDカードの内容を記録する権限もあります。それをたばこコントロールオフ ィスに申告するのです。そこが今度は警察に通報するなどします。 この条例の施行には段階がありました。最初は、部分的禁煙でした。200 席以上のレストランの 場合ですと、たばこを吸える場所と完全禁煙のスペースを作るよう考慮しなさい、という規定があ りました。そして、2007 年 1 月 1 日からすべて禁煙になったのです。 ○ まず分煙を実施したということですね。 - そうです。一番反対が激しかったのは娯楽施設。そして、酒を提供する店、カラオケ店などです。 こうしたところは2年間の猶予が与えられました。 条例を制定するよりも、どのように実行するのかという点が大変ですね。 authorized person は日本の厚生労働省に当たる「食物及衛生局」に登録されています。一つの 店に最低3名が登録されています。誰かしら休みに入りますからね。だから、店には常にauthorized person がいることになります。

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○ authorized person は研修なども受けるのでしょうか。 - ええ。3年ほど前から行われています。 ○ 香港にはこういう仕組みがあるので、実行しやすい面があるのですね。違反した人に対する罰金 の徴収はどのように行われているのですか。 - authorized person には罰金徴収の権限はありません。罰金はあくまで裁判所が行うのです。政 府は、来年から一定額をその場で徴収できるようにする方向で検討しているようです。 ○ 観光客とトラブルになったことはありますか。特にお客さんが日本人の場合はどうですか。 - 注意すると、たいがい皆さんは言うことを聞いてくれます。 去年の1 月 1 日の施行に当たっては、前日の営業が終わった際に灰皿を全部撤去しました。香港 の喫煙率は14%に対して、日本は40%弱(男性。全体では 23.8%)ですから、その差は絶対ある と思います。だから香港ではやりやすかったのではないかと思います。 施行前のお話ですが、電話予約の際、ほとんどの香港人は禁煙席をリクエストします。当局から、 半分、最低でも3分の1は禁煙席を設けなさいという指導に従っていましたが、予約の段階で禁煙 席がいっぱいになっていました。 このような状況でしたから、条例による禁煙の実施については、あまり懸念していませんでした が、1日あたりの日本人の来店客が、ちょっと減っています。禁煙の影響ではないかと思いますが、 その代わりに、香港の人が増えているのです。妊婦の方が来店するようになりました。今までは禁 煙席があっても、隣で吸われてしまうとなかなか来にくかったと思います ○ 日本人客は、自宅でたばこを吸って酒を飲んでいるということでしょうか。 - そうですね。あと、バーだと来年の7月まで猶予があります。 日本の駐在員の方は、今まで3回の来店が2回になったように感じます。たばこが吸えるところ へ行っているのだそうです。日本人の場合は、喫煙者と非喫煙者が一緒に来店し、隣でたばこを吸っ ていても気になるようでもないんですね。ところが香港の人は、たばこに対してはっきり言います。 ○ 売り上げは全く変わらないのですね。たばこコントロールオフィスの方が言っていましたが、今 までたばこの煙があるから、と躊躇していた妊婦の方や家族連れの方が、禁煙にしたら、「みんなで 外食しよう」と。ファミリー客が増えたと言うんですね。 - それは確かにあります。特に週末や祭日に家族連れが増えました。 日本でも恐らく同じことになるのだろうと思いますが、そういう説明をしてもなかなか理解され にくいのではないかと感じます。 ○ 売り上げの問題も、日本の飲食店の方に説明してもなかなか信じてくれません。絶対に客は減る、 売り上げは下がる、その分の補償はどうしてくれるのか、というお話になってしまうことが多いの です。 - 売り上げの減少は一時的かもしれませんが、日本の場合はその一時的は長いかもしれませんね。 香港は、一つの島と半島から成り立っていますから、ほかに行けるところがないのです。神奈川

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県の場合は東京などに行けますよね。 ○ 条例に反対する人の中には、喫茶店を営んでいる方もいます。お客さんはコーヒーを飲みながら たばこを吸って、雑誌を読んで時間を過ごしている。それなのに、そのたばこを奪われたら、コー ヒーだけで来るお客さんはいなくなってしまうではないか、だから反対だとおっしゃる方がいます。 大手の喫茶店では、企業により禁煙、分煙、完全分煙と対応が三者三様なのです。大きなチェー ン店の場合は、資本力もあるし、社会情勢の変化への対応も比較的容易にできる部分もあると思う のですが、街の喫茶店は抵抗感があるようです。喫茶店への影響について教えていただけますか。 - 他国では施行後1カ月は 15%前後、多いところは 20%くらい、売り上げが減り、2カ月目から 3カ月目になると、だんだん影響がなくなり、半年ぐらい経つと禁煙化の影響はほとんどないと聞 いておりました。しかし、香港では好景気の影響も有り、立地により多少違いは有りますが客数は 施行前と変わらず伸びており、禁煙の悪影響は無く逆にプラスでした。 当時の新聞では、飲食業界のうち3割は来店客が減少、4割はあまり影響がない、3割は増えた という発表がありました。 もともと喫煙席はそれほど埋まらなかったので、すべて禁煙席になったら、たばこを吸わない人 が従来の喫煙席に座るようになったということと、たばこを吸う人は比較的短時間で席を立つので、 回転が良くなったからだと思います。 影響が一番大きかったのがカラオケボックスで、半数は客数が減ったようです。しかしほとんど の店で売り上げは回復しているようです。つぶれたという話はあまり聞きません。 ○ 日本でこういうルールを導入する場合に、どのようなところに気をつけたらよいでしょうか。 - 子どもの将来のことをしっかり見据えることが必要ではないでしょうか。食堂の入口は、席から そんなに遠くないので、外に出れば吸えるわけです。そこに灰皿を用意しておいて、そへ行って吸っ て、また戻る。わずか数分間のことですから慣れの問題でしょうね。 ただし、今、香港で一番困っているのは、レストランやショッピングセンターの入口の灰皿には 吸い殻が山となっています。近くに行くと、たばこの臭いでもう通りたくないですよね。 ところで、日本では、よく行政の責任にする傾向がありますね。信号機が故障していたので車に ひかれた。なんで信号を直さなかったのかと。では自分の健康は自分で守らないのでしょうか。中 国では自分の身は自分で守るという意識です。 禁煙にするという方向性はいいことだと思います。ただし、喫煙室を作ることも一つの方法では ないでしょうか。 ○ 私たちもそれを考えたのですが、狭いレストランでは、完全分煙の部屋を作るのはなかなか難し いですよね。広い店は作れるけれども、それだと不公平じゃないかと。資本力のあるレストランは 対応が可能だけれども、資本力がないレストランは対応できないではないかと。だから、一律規制 だと、全員に平等だと思うのです。 - 段階的な導入ということも考えられますね。 ○ 来年から適用になるバーや麻雀店はスムーズにいくと思われますか。

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- 難しい部分もあるのではないでしょうか。ただし、店舗の入口には、来年から完全に禁煙になり ます、という貼紙の掲示が義務付けられているのです。これが店舗の許認可と連動しているので、 従わざるを得ないというのが香港の状況です。日本ではそれがありませんね。

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