報 告
大
腿
骨
頚 部 骨 折 患
者
の
体 カ
ー
術 後 早 期
の
運 動
負 荷 試
験
に よ る
検
討
*一
遠 近 高 明
】)逢 坂 悟
郎
2)要 旨
大 腿 骨
頚部
骨 折患 者
で は受 傷 後
の安
静 臥 床に伴 う 廃 用 症 候群
の予防
が 大変
重 要で あ る。
そこ で,
本 研 究
は大
腿骨
頚 部 骨折 愚 者
の術 後 早 期
の体 力
を明
ら か に す ること を 目的
とし
た。56
名
の大 腿 骨 頚 部骨 折 患 者
に対
し て,
術 後1
週 間 以内
に 運動 負 荷 試 験
を施 行
し た。
運動 負 荷 試 験
に は 上肢
エ ル ゴ メー
ター
(
自 転 車
エ ル ゴ メー
ター
を 応 用 し た もの)
を使 用
し,
最
高 酸 素 摂 取 量 を 求め,
被 検 者
を年 齢 別
.
身
体 機 能 別 に分 類
し各 群 を比 較 検 討
し た。
結 果,
(
1
) 年 齢 別
に身 体 機 能
ご との最 高 酸 素 摂 取 量
(
peak
†
02
/kg
)
を見
た場 合
, 70歳 代 群
・
80
歳代
群で ラ ン クJ
のpeak
亨
02
/kg
が ラ ン クA
と 比較
し て有 意
に高 値 を示
してい た。
(
2
)
身
体 機 能 別
に年 齢
ご との peak▽
02
/kg
を 見
た場 合
,
60
歳 代 群 の ラ ン クJ
のpeak
VO2
/kg
値
が70
歳 代群
,
80
歳 代 群
の ラン クJ
に比較
して 有 意 に高 値 を示
してい た。 以 上 より
術 後の大 腿骨 頚 部 骨 折 患 者
で は.
年 齢
が70
歳
以上,
又は身 体 機
能 がラ ンクA
の 者で体 力 低
下が著
しい と考
え ら れ た。 キー
ワー
ド大 腿 骨 頚 部 骨 折
,
体 力
,
運動 負 荷 試 験
は じ め に超 高 齢 化 社 会
を ま ち か にひかえ
,
我
が国
の寝
た き り原因
の第
3
位
とい わ れ る 骨 折 D,
な かでも大 腿 骨 頚 部 骨
折(
以 下頚 部 骨 折 )
患者
の 増 加 は大 き
な社 会 問 題
にな り
つ つあ
る。萵 齢 患 者
では疾 病
の 重 度 重 症化 を き
た し やす
い こと
や老 化
に よ る身 体 機 能
の低
下 な ど で,廃 用 症 候 群 が
若 年 者 に比べ短 期 間
のう
ちに重 度 化 し やす
い。
そ
の た め,
高 齢 患 者
で は廃 用 症 候 群
の予 防
が最 優 先
さ れ るべき
であ
る が,
臨 床 場 面
では必 ず
しも
全て成 功 し てい る わ け で は ない 2)。
頚 部
骨 折 愚 者 に対 す
る治 療
でも 早 期 離 床
が 重要
視 さ れ,
寝 た き り に な らぬ よう
,
いかに廃
用 症 候 群 を 防 止 し受 傷
前の 身 体 機 能 に近
づ け る か が治 療
目標
の一
つと
な る。一
般 的 に 頚部
骨 折患 者
に対 す
る理 学 療 法
で は術 前
か らベ ッ ドサ イ ドに て運動 療 法 を 開 始 し
,
術 後 も早
期 か ら関 節
可 動 域 運 動,
筋 力 強 化 運 動,
歩 行
運動 な
どが行
わ れ “}
》
hysicalFi1ness
ofPatients
wilh Femeral Neck Frac匸ure:
TheResults of
Postoperative
Enforced Exereise Testings 1) 箕 面 市 立 病 院 リハ
ビリテー
ショ ン部(〒562
−
OOM 大 阪 府 筴 面 市 萱 野5
−
7−
1)Takaaki Tochika
,
RPT
:Minoh
City Hospitat.
Department of Rehabilitation2) 同 リ
ハ
ビリテー
ション科Goro
Ohsaka
.
MD ;MinohCity
Hospital
,
Rehabititation Medicine(受 付日 2001年2月16日 /受 理 日
2002
年8
月10日) る。 し か し,
頚部
骨 折に限 ら ず,
従 来よ り理学 療 法
で は,
疾 患
に より生 じ
る障 害
を如 何
に 軽減 す
る か が最 大
の関 心
事
で あ り.
体 力
に関 す
る問
題 は 疾患
に より直 接 引 き起
こ さ れる障 害
で は ない だ けに,
こ れ ま で は 重 要視
され て こ な かっ た感
があ
る 3) 。し
か し,
現 実
的 に は, 頚 部骨 折 患
者で は 術前
術後
の安 静 臥 床
に よる体
力の低
下 や,
加 齢
に よ る体 力
の低
下,転 倒 後 症 候
群によ る不
活 動 性の影 響
な どの 問 題 も多
い 。 よっ て,
著 者
ら は頚 部 骨
折 患 者の身
体機 能
の回 復 を 図 る ため に は,
従 来
よ り施
行 さ れて き た ト レー
ニ ング 内容
に 加 え, 頚 部骨 折 患 者
の体 力
面に関 して の評 価
,
ト レー
ニ ング が 必要
であ
る と考
えて いる。体 力
を 構 成 す
る要 素
には,
全 身 持 久 力,
筋 力
(
持 久 力
,
瞬 発
力 )
,
柔 軟 性
,
協 調 性
,
平 衡 性,敏 捷 性
,
な ど の が あ げられ
る。
これま
で に頚 部 骨 折 患 者
に対 す
る廃 用 症 候 群
の 問 題や体 力
に関
する報 告 は 見 ら れ た ものの 5),
頚 部 骨 折
愚 者
の体 力
につ いて定 量
的 に示
し た報 告
は著 者
の知
る 限 り認
め ら れな
い。今
回の研究
目的
は,
術 後 早
期の頚 部 骨 折 患者
の年
齢,
身体
機 能 面
の違
いによ
る体 力 (
こ こで は 全身
持 久 力 を 意
味 す る) 値 を
明 ら かにし
,
従 来
より同 疾
患 に施
行 さ れ てき
た理 学 療 法
の内 容
に加 え
,体 力 面
に関
す る トレー
ニ ン グの必要 性
を考
え る一
ヒでの一
指 標 とす
る こ とであ
る。240 理 学 療 法 学
第
29
巻 第7号
表1 被 検 者 情 報60
〜
69
歳70
〜
79歳80
〜
89
歳 90〜
99歳 tot.
lt n 年齢 (
歳 )
身 長 (cm )体
重 (kg
)5
1564
.
0
±2
.
6
74
.
7
±2
.
6
152.
2±4
.
8
151
.
2
±5.
248
.
7
±10
.
1
47.
3
±13.
3 3ユ5
5683.
9
±2991
.
2
±止.
8 80.
3± 7.
6 147.
6±6.
8
148
.
8
ヨ:2
.
8
149.
1±6
,
1
4旦2
:ヒ9
.
0
40
,
5
ヨ:11.
1 43、
4±iO.
8
人 工 骨頭 置 換 術 ガンマー
ネ イル術 式
CCHSCHS
ウも
l11 663017842
1400 261983 臥 床 期 間 (日)10
.
2±6.
1#9
.
6
±3
.
2
# 10.
6±3.
6# 14.
0±5
.
8
#10
.
6
±4.
0平 均値
±標 準 偏 差.
# n.
s.
CCHS
;cannu ]ated cancel [ouship
screw,
CHS
;compressionhip
screw.
表2
障 害 老 人の 日常 生 活 自立度
(
寝たき り度 ) 判 定 基 準 生 ランクJ
何ら かの 障 害 等 を 有す
る が,
日常 生 恬はほ ぼ 活 自立 してお り独 力で外出 す る皇
1.
交 通 機 関 等 を利用 して外出する ユ 2.
隣 近 所へ な ら 外 出 す る 準 寝 ラン クA
屋 内で生 活は概ね自立 し てい るが,
介 助 な し には 外 出 しない た1
.
介助 に よ り外出 し,
日中は ほ とん どべ き り2
.
ッ ド か ら 離 れて生活 する 外出の頻 度が少 な く,
日中 も寝た り起 きた りの生活 をしてい る ラン クB 屋内での生活は何ら かの介 助 を要 し,
日中 も ベ ッ ドの上で の生 活 が 主 体である が座 位を保 つ 寝 た 1.
車 椅 子に 移 乗し,
食 事,
排 泄 はベ ッ ド か ら離れて行 う き2
.
介 助 に よ り車 椅 子に移 乗す
る り ラ ン ク C ユ日中ベ ッ ド 上で過ごし,
排 泄,
食事,
着 替 に おい て介 助 を要 する 1.
自力で寝 返 りを うつ 2,
自力で は寝 返 り も うた ない 表3 群・
ランク 別 被 検 者 数 ラ ン クJ
ラン クA
ラン クB
・
C
tota] 60歳 代 群70
歳 代 群 80歳 代 群90
歳 代 群55220
010950000
515315 total 32 240
56 対象
対 象
は平 成
10
年
から平 成
13
年
の 間 に 当 院 に 入 院 し た頚 部 骨
折患
者の う ち,
脳梗
塞やパー
キ ン ソ ン病
な どの中
枢 性 疾 患
を 有 す る者
を除 き
,
重 度
の痴
呆 症 状 な どの合 併
症
が なく
運 動負 荷
試験
(
以 下負
荷 試 験 ) が 可能
であ
っ た56
名 で あっ た。
被 検 者
は全
例 女 性。
平 均 年 齢
80
.
3
±7.
6
歳
,
平 均 身 長
149
,
1
±6.
lcm ,
平 均体
重43
.
4
±10
.
8kg ,
平 均 臥床
日数
10
.
6
± 4,
0
日 で,
術 式 な どの情 報
は表
に示 し た(
表
1
)
。方
法1
.
被 検者
の分 類
被 検 者 を 年 齢
別 に60〜
69
歳 まで を60
歳 代 群 と
し,
以一
ド各 年 代
別に70
歳 代 群,
80
歳 代 群,
90
歳 代 群
の 4群 に分 類 し た。ま
た, 身体 機
能の分 類
には厚 生 省
が定
め る障 害 老 人
の 日常 生 活 自
立 度(
寝
たき り度 ) 判 定 基 準 を 使
用 し(
表
2
)
,
被 検
者 本 人 と 家 族 か ら 入院 直 後
ま たは理学 療 法 開 始 直 後
に受 傷 前
の身
体 活動
状況
を聴 取 し
,
ラン クJ
・A ・
B
・
C
に分 類
し た(
表
3
>
。
2
.
運動 装 置
お よ び.
運動
肢 位自転 車
エ ルゴメー
ター
(
COMBI
社
,
232CxL
)
をテー
ブル上の端
に固定
し,
ペ ダル部 分 を手 掌
で握 り
や すい よう
に処 理
し た。 肢 位 は 肩甲
上腕 関 節
とアー
ム クラ ンク の回 転 軸
の高 さ を
一
致
さ せ,
肘 関 節
をほ ぼ伸
展 位 に して肩関 節 屈 曲
90
度で 両 上肢
が水 平 挙 上 位
の状 態
の車椅 子
座位
とし
た6 ) 7)。
車 椅 子
は床 面
が 上 下移 動
可 能 な昇 降 式
車 椅 子 を使
用 し,
足底 接
地 し た姿 勢
で背 も た れ か ら体 幹
を
離 し た 肢位
で評 価 を 施 行
し た(
図1
)
。
3.
負 荷
試 験 の手
順頚
部 骨 折 患 者
は,
整 形 外 科
に 入 院後 速
や かに リハ ビ リ テー
ショ ン科
を受 診
し,
理 学療 法
を 術前
ベ ッ ド サ イ ドか ら開
始 し た。負 荷 試 験
は 術 後 ユ週 間 以 内に施 行
した。
負
荷 試 験
の プロ トコー
ル は3
分 間休 息 期 間 後
,
Owatt
で ウ オー
ム ア ッ プを
3
分
間,
以 後5watt
/min の ランプ 負 荷 法に て行
い,
クラ ンクの 回 転 数 は50
〜
60rpm
と し症 候限 界 性 最 大
運動
を 行 わ せ た。
な
お,
今
回使
用 し た自
転車
エ ル ゴ メー
ター
は機
器の 特 性 上Owatt
負
荷 に は な り え ない た め,
ウ オー
ムア ップ 中は,
検 者
が他 動 にて駆 動 す
ること
でOwatt
負 荷
にな
る よう 調 節
し た。酸 素 摂 取 量
の測 定
に は ミナ ト医科 学 社 製
の(
AE280
−S
) を 使 用 し, ブレ スバ イ ブレス 法に て最 高 酸 素 摂
取 量(
peak寸
02
)
値
,
最 高
心拍
数(
peakHR
) 値 な ど を 求
め た。
表4
年 代 別
・
ラン ク別 peak †Oz
/kg
{ml /min /kg
} ランクj
ランクA
60歳 代 群70
歳 代 群80
歳代 群 90歳代群 15、
5士2
.
3一
蝶
靄
:
:
:
:
10.
0±2.
9 平 均 値±標 準 偏 差.
<0
.
05,
IPkp〈0.
01.
表5
年
代 別・
ランク別peakHR
(beat
/min )ランク
J
ランクA
60
歳 代 群70
歳 代 群80
歳 代 群90
歳 代 群128
.
0
±32
,
3
113
.
2
±31
、
O
lO6
.
7
±19
、
4
97
、
5
±16
.
2
88
、
6
±22
.
9
118
.
6
±24
.
3
図1 運 動 負 荷 試 験の場 面負 荷 試 験
の中 止 基 準
はク ラ ン ク の回 転 数
が40rpm
を 下ま
わっ た時 点
とし
た。ま
た,
負 荷 試 験
は医 師 立 ち会
い のも と
で行
い,
万
が一
に備 え
て救 急 用
ベ ッド
,
酸 素 吸 入
な ど を 用意
し,安 全
面 に は細
心の注 意 を
は らい行
っ た。な お,
今
回の 研究
に お け る統 計 学
的 処 理と
して,各
測定 項
目 に おい て60
歳
,
70
歳
,80
歳 代 群
の ラン クJ
と
70
歳,
80
歳,
90
歳代
群の ラ ンクA
の3
群 間の 比 較 統計
処 理 をKruskal
−
Wal1is
検 定
を 用い て行
い,
有
意 差の認 め ら れ たも
の に対
して2
群間
の比較 統 計
処 理 と してMann
−
Whitney
U
test
を 用
い て行
っ た。ま
た,
70
歳 代 群
の ラ ン クJ
と ランクA
,
80
歳 代 群
の ラン クJ
と ラン クA
の各 群
の ラン ク間の 比較 統 計 処
理 にも
Mann
−
Whitney
U
亡estを
用い て 比較 検 討 を行
っ た。統 計 的 有 意 水 準
は5
% 以 下と
し た。ま
た,
今
回の研 究
の 目的
,
負 荷 試 験
の内 容
な ど は 本 人,
家 族 に 説 明 し 了 解 を 得 た う え で 施 行 し た。
結
果1
.
年 代 別
peak 守02
/kg
(
ml /min /kg
)
(表
4
)
各 群
ご とに ラン クを 比 較 し
た結 果
,
70
歳 代 群
の ラ ン クJ
と ラ ン クA
のpeak
守
02
/kg
値
で は,
それ ぞ れll
.
3
±2
.
9
と8.
0
±1
.
4
で有 意 差
が認
め ら れ(
p
〈0
.
05
)
,
80
歳 代 群
の ランクJ
と ランクA
のpeak
†
02
/kg
値
でも
,
そ れ ぞ れ10
.
7
±2
.
7
と7
.
9
±1
,
3
と 有 意 差 が 認 め ら れ た(
P
〈O.
Ol
)
o2
,
ラン ク別peak 亨02
/kg
(
ml /min /kg
) (
表4
)
ラ ン ク
J
の各
群の peak亨
02
/kg
値
を見
た場 合
,
60
歳
代
群 で15
,
5
±2
,
3
,
70
歳 代 群
1L3
±2
.
9
,
80
歳 代 群
10
,
7
±2
,
7
であ り
3
群 間
で有 意 差
が認
め られ(
p
〈0,
05
)
,60
歳 代 群
と70
歳 代 群 問
,60
歳 代 群 と
80
歳 代 群
問の 双 平 均 値±標 準偏 差.
ランクJ
の60・
70・
80歳代群の3群 問,
ラン クA
の 60・
70・
80歳 代 群の 3群問で有 意 差は認め ら れなか っ た.
70歳 代 群の ラ ン クJ
とラ ン クAの 2群 問,
80歳 代 群 の ラン クJ
と ラン クA の 2群 間でも有 意 差は認め ら れなかっ た.
方 と も
に有 意 差
が認
めら
れた (
p
〈0.
05
)
。一
方
,
ラ ン クJ
の70
歳 代 群と80
歳 代 群 問で はpeak
VO2
/kg
値
に有
意 差 は 認 め ら れ な かっ た。
ま た, ラン クA
の各
群の peakVO2
/kg 値
を み た場 合
,
70
歳 代 群
で8
.
0
±M
,
80
歳 代 群
7
.
9
±1
.
3
,
90
歳 代
群でIO
.
0
±2
,
9
と3
群問
で有
意差
は認
め ら れな
かっ た。3.
peak
HR
(
beat
/min) (
表
5
)
ラ ン ク
J
で は60
歳 代 群 は
ユ28,
0
±32.
3,70
歳 代 群
ll3
.
2
±31.
O,80
歳 代群
106
,
7
± 19.
4
で あ り3
群
間に有 意
差
は 認 め ら れ な かっ た。
ラン クA
で は70
歳 代 群 は
97
.
5
±162
,
80
歳
{弋 君羊
88
.
6
±22
.
9
,
90
歳
f
弋 群
118
.
6
±24
.
3
であ り,
3
群 問に有 意 差 は 認 め ら れ な かっ た。
ま た,
70
歳 代 群
の ラ ンクJ
とラ ンクA
の ラ ンク間
と80
歳代
群 の ラ ン クJ
とラ ンクA
の2
ラ ン ク問
におい ても有
意 差 は認
め ら れな
かっ た。考
察
L
peak
丶
ン
02
/kgl
直
一
般 的 に体 力
を客 観
的 に表
す指
標 と し て,
最 大酸 素 摂
取
量(
Maximum
Oxygen
Uptake
:VO2max
)
が使
用 され る。
VO2max
は負 荷
量 を増 加
しても酸 素 摂 取
量 が そ れ以 上
増 加
し えな
い状 態
,
す な
わち 頭 打
ちの 状 態(
levehng
off)
とな
っ た時 点
で の酸 素 摂 取 量 (
寸02
)
と242
理学 療 法 学第
29
巻第7号ら
,
体 重
lkg
あ
た りの†
02max
が 人の有 酸素
的 作 業 能 力の 最 も よい 指 標 と して 国 際 的に もひ ろ く用い ら れている9)。 し か し
,
高 齢 者
や疾 患
を有 す
る患 者
で はΨ
O
.がleveling
offす
る まで の負 荷 試 験
を行 う
こ とは困 難
であ
り
,
通常
はVOL
,max で はな く
peak
VO2
を測 定 す
る に と どま
っ て い る 10) 。peak
VO2
と
は単
に一
定
の最 大 と言 え
る運動 努 力
を し た さいに得 ら れ る 最 高の魚
)211)と さ れ る。本
研究
の被 検
者で あ る 頚 部 骨 折 患 者 で も,
且eveling ofEす
るま
での負 荷 試
験を 行 う
こ と は難
しい。
よっ て,
今 回 は 体 力 指 標 と してpeak
VO2
/kg
を 測定
し た。
本 研 究
の被 検 者
の体 力 値
を見
て いく際
に,
今 回
の被 検
者
の体 力 値
が,一
般
の健 常 高 齢 者
と比
して どの程 度
であ
るか把
握す
る こと が重 要
であ
る。一
般 健 常 者
に おけ
る先
行 研 究
の多 く
はVO2max
値
に関 す
る報 告
が主
であ り
,
自転 車
エ ルゴメー
ター
や トレッ ドミルを使
用 し た報 告
が ほ とん どであ
る。
その 中 に は亨
02max
値 (
ml /min /kg
)
を 年 齢
に よ り予 測 す る 予 測式
がBruce
ら12)に よ り求
め ら れて お り,
非 活
動 者 女 性70
歳 と80
歳で算
出す
る と,
そ れ ぞ れ17
.
2
,
13
.
8
と予 測
さ れ る。本 邦
の成 人 男 女
の†
02max
値
で は,
70
歳 以 上の者
の一
般 水 準
で女 性
14
、
6
−一
20
.
1
という報 告
13) もみ ら れ る。通 常
,
上肢
エ ル ゴ メー
ター
使 用
に よる負 荷 試 験
か ら得
ら れ たVO2max
値
は自転 車
エ ル ゴ メー
ター
使 用 時
の6 〜7
割
6)14)と考 え
ら れ て おり
,
こ の点 を 考 慮
した場合
,
本 邦の報
告 例 か ら70
歳
以 上 の女 性
で は10.
2〜 14,
1
程 度
で あ る と 予 測 で き る。 よっ て,
本 研 究
の被 検 者
か ら得
ら れ た値
は,
VO2max
値
とpeak
VO2
値の違 いに よ り 若 干 低 値 を 示 すこ と を 加 味 し た と し て も,全 般 的 に
低
い値
を示
しており
,
特
に peakVO
.
/kg
値
が10
.
0
を 下 ま わっ てい る よう
なラ ン クA
の頚 部 骨 折 患 者において は一
般 健 常 者に比 して体 力
の低
下 が著
しい と考
え ら れ た。本 研 究
の結 果
か ら見
て いく
と,
年 代 別
に各
ラ ン クご と のpeak
VO
?/kg
値
をみ た場
合,
70
歳代
群,
80
歳 代
群双
方
とも
ラン クJ
と ラン クA
の間
で有 意 差 を 認
め た。 こ の一
つの要 因 と
して,
頚 部 骨 折 患 者
の受 傷 機 転
と受 傷 前
の身 体 機 能
レベ ル の違
い が 原 因 に あ げ ら れ る。
70
歳代
群
,
80
歳 代 群
の ランクJ
の受 傷 機 転
は,
屋 外 歩 行 中のつ まづ き,
滑 り,
階 段 な ど か らの 転 落 な どで あっ た。
70
歳代
群,80
歳 代
群の ラン クA
の受 傷 機 転
は,
自宅 居 室
内
に て,
ベ ッ ドか らの移 乗 時,
室 内 移動 動 作 時
のつ まず
き,
滑 り,
バ ラ ン ス を 崩 し た な どで あっ た。 ラ ン クJ
で は歩 行 機 能
が良 好
であ
る た め活 動 量 も比 較 的 多 く保 た れ
ており
,
身
辺動 作
におい て も家
人の介 助 な し
で自
立し
て い る。
対
して,
ラ ンクA
で は歩 行
量も 自 宅 内
の範
囲で極 端
に制 限 さ れ
,
加 え
て身 辺 動 作 も家 人
の介 助
に よ る場
合
が多
い。 つま り
,
日常
生活
で の活 動 量
の違
い が体 力
にも強 く影 響
を与 え
て い る と考
えら れ る。安 村
ら 15) も 握力
の弱
い者
で頚 部 骨 折
の受 傷 機 転
の多 く を 占
め る転 倒
の発
生 頻度
が高
い こ と をあ げ
て い るが,
転 倒 を起
こす 者
の多 く
は,
加 齢
や身 体 活 動 性
の低
下に伴
い,
下 肢 筋力 低
下 や,
平 衡 機 能
,
柔 軟 性
,
握 力
の低 下
とい っ たいわ ゆ る総
合 的
な体 力
の低
下 し た 者 が多
い と考 え
ら れる。
ラン ク 別に
各
年
代 ご との peak†
02
/kg
値 を み た場
合 で は,
ランクJ
の60
歳
代
群
と70
歳 代 群
間,60
歳代
群 と80
歳 代 群の 問で 有 意 差 を 認 め た が,
70
歳代
群 と80
歳代
群問
で は有 意 差
は認
め ら れな
かっ た。ま
た,
ラン クA
で は70
歳 代 群
,
80
歳 代 群
,
90
歳 代 群
の3
群 問
では有 意
差
は認
め ら れな
か っ た。通 常
,体 力
は年 齢
と とも
に低
下傾 向 を 示
し,
加 齢
に伴 う
VO2max
の低
下 は1
年
で約
1
% で,
70歳 以 上
で は さ ら に低
下率
が大 き く
な る16)。
つ ま り,70
歳
以 上の術 後
の 頚部 骨
折患 者
で は体 力
の低
下 が著
しい と考
え ら れ, 屋内
生 活 が 中 心 で あっ た者
で は,
さ ら に 体力
の 低 下 傾向
が 著 明で ある と考
え ら れる。
ま た,
ラ ンクA
はラ ン クJ
に 比 して極 端
にpeak
VO2
/kg
値 が
低
下 して い るこ と か ら,
屋内
生活 中心
の者
では,
身体 的
活 動 性
の低
下に伴
い,
筋 力 低
下や酸 素 輸
送系
の障 害
なども起
こっ てい るも
のと考 え
られ た
。2
.
peak
HR
通 常
,
体 力
の ない人の peakHR
は体 力
の あ る 人 に 比 し て低
い値 を
示す
。 その た め,
著 者
ら はpeakHR
の実
測 値 か ら も 日 常 生 活 自立 度の違い に よ る 体 力 低 下の傾 向 が 判断
さ れ る と予 測
して い た。 し か し,
今 回
のpeak
HR
の結 呆
で は,
ラ ン クJ,
ラ ン クA
におけ
る,
そ
れぞ
れの3
群 間の比 較で は 有 意 差 は認
め ら れ なかっ た。
ま た,
70
歳 代
群,
80
歳 代 群
とも
に ラ ン クJ
と ラ ン クA
の問
に有 意 差
は認
め ら れな
か っ た。 し たが っ て,
今
回の結
果 か ら は 日常
生活
自 立度
の違
い に よ るpeak
HR
に有 意 差
は認
めら
れず
,
peak
HR
は頚 部 肯 折 患 者
の体 力
の程 度
を示 す
一
指 標
に はな ら ない という
結 果 と なっ た。
理 由 と し て,今
回のpeak
HR
の標 準 偏 差
の値
が
玲
2
か ら32.
3
ま でと
いう結
果 か ら も わ か る よう
に,
高 齢の頚 部 骨 折 患者
に お け るpeakHR
は 個 人 差 が 非 常に大 きい こ と が考
え ら れ た。
心 拍 数 は 運
動
処方 す
る場 合
の負 荷
量の決 定 因子
と して も よ く活
用 さ れる。
ア メ リ カ スポー
ツ医 学 会
に お ける運動 処 方
の指 針
に よる と,
高 齢 者
に対 す
る運 動 処 方
で は,65
歳
以 上の最 大 心 拍 数
は かな り
の変 動
があ
る た め,
可能
な とき
は年 齢
か ら予 測 した最 大 心拍
数よ り も実 測の 最大 心 拍 数 を用
い る ほう
が よいと
し ている。
ま た,
同様
の理 由
で高 齢 者
に トレー
ニ ング心 拍 数 を
設定 す
るには,
最 大 心拍
数 か ら直 接
パー
セ ン ト と して求
め る より も心 拍 数
予備 法 を 勧
め てい る】7)。
この よう
に,
今 回
の高 齢 頚 部
骨 折 患 者
に おい ても
心拍
数の変
動 が 大き
かっ たこ とか ら,年
齡 か ら推 測 さ れ るpeakHR
に対 す
るパー
セ ン ト値
で負
荷 量 を 決定 す
るこ と は実 際 的
と はいえず
,
可能
であ れ
ばpeak
HR
の実 測 値 を 計 測
し 心拍 数
予備 法
か らの 目 標 心拍 数 範 囲
を参 考
に負 荷 量
を決 定
す ること
が適 当
で あ る と考 え られ
た(
次 式
)
。 目標 心 拍 数 範 囲
=
[(
最 大
心拍 数
一
安
静 時 心 拍 数>
xO
.
50 〜O.
85
]
+安 静 時
心 拍 数3
.
今 後
の方 向 性こ
れ ま
で,
頚 部骨 折 患 者
に対 す
る術 後
の 理学
療
法
で は,
受 傷 前
の歩 行 機 能
や 日常 生 活 動 作
の獲 得
を 主 目 的 に施 行
され てき
た。
た だ,
これ らの視 点
は 主に身 体
機
能
の表 面
上を と
らえ
た だ けの もので あっ た。理 学 療 法
を施 行
す る 上 で身 体 機 能
と体 力
は 同 じ よう
に重 要 視 す
る必 要
が あり
,
体力
の低
下 は その ま ま 歩 行 機 能 な ど身体 活 動
その も の に影 響 を 及
ぼす
。し
た がっ て,
歩
行 機 能 を維 持 し低 下
さ せ ない よう
にす
る た め には,
従 来の パ ワー
とし
て の筋
力
や室 内
での短 距 離
の歩 行 能 力
に対 す る 評価
や トレー
ニ ング だ け で な く,
心 肺 機 能
や全 身 持 久 力
とい っ た 側面
にも注 意
を 払 うべ き で あ る。
近 年
,
高 齢 者
に対す
る持 久 力
トレー
ニ ン グの 有 効 性につ い て の報 告
IS)も多
く,
我 々も頚 部 骨 折 患 者
に 対 し て,
術 後 早 期
か ら有 酸 素
運動
を処
方
し,
その結 果
peak ▽
02
/kg
値
と歩 行 機 能
面で 良 好 な 結 果を認
めて い る 19>。今 後
は,従 来
より頚 部 骨
折 患 者 に対
して行
わ れて き た ト レー
ニ ング内 容
に と ら わ れず
,
よ り早 期 か ら離 床
を促
し 廃 用 症 候 群 の 予 防に努
め ると と も に,術 後
の頚 部 骨 折 患 者
では 同年
代の健 常 高 齢 者
に比 して体 力 低
下 して い る という 点
に留
意 す る 必要
があ
る。 ま た,
70
歳 以 上 の頚 部 骨
折 患 者や受 傷 前の身 体 機 能
が屋 内
自 立 レベ ル以 下の患 者
で は,
特
に体 力
が 低 下 して い る こ と を 念 頭 に置 き
,
積 極 的
に体 力 向
上 に向
け て アプ
ロー
チ していく
必要
が あ ると考 え
ら れた。
今 後
の課
題 と し て,本
研究
の被 検 者
は全 例
が女 性
で あ り,
男 性 頚 部 骨
折 患 者の術 後
の体 力
レベ ル の把 握
が 必要
であ
る。稿 を終 え
る にあ
たり
,
ご 指導 頂
い た箕 面 市 立 病 院
リハ ビ リ テー
シ ョ ン セ ン ター
所 長
亀 井
正幸
先 生,大 阪 大 学
大学 院 医 学 系 研 究 科 器 官 制 御 外 科
学 講座
清 水 信 幸 先 生
に感 謝 致
します
。 文 献1
) 鈴 木 友 理 子.
安
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他 :高 齢 者の転 倒・
骨折 を め ぐって
.
日本醫事
新 報3975
:15
−
20
.
2000
.
2) 岩 月 宏 泰,
岩月 順 子・
他 :高 齢 患 者の廃 用 症 候群の側 面 と理学 療 法
.
理 学 療 法ジャー
ナル29
(12):840
−
845
.
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理学 療 法ジャー
ナル28
(6
):378
−
382
.
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総 合 リハ ビ リ テー
シ ョ ン26
(
5)
:413
−
418
,
1998
.
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.
佐 藤 哲 也・
他 :超 高 齢患者のベ ッ ド上 訓 練 に よる体 力
,
心肺 機 能の維 持.
関 節 外 科 16(ll)
:39
−
43
.
1997
.
6
) 州 崎 俊 男,
須 釜聡
・
他 :上・
下 肢エ ル ゴ メー
ター
運 動が呼 吸 循 環 系に 及 ぼす 影 響
一
最 大 運 動にお け る 比 較一.
運 動 生 理 9:183−
186.
1994.
7
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辻英 次
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他 :慢 性 閉 塞 性 肺 疾 患 患 者に対す る腕エ ル ゴメ
ー
ター
負
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理学療 法 学27
(学 会 特 別 号Ne.
2>:
244
ge#fftu7
bl29grg7e
<Abstract>
Physical
Fitness
ofPatients
withFemoral
Neck
Fracture:
The
Results
ofPostoperative
Enforced
Exercise
Testings
Takaaki
TOCHIKA.
RPT
Minoh
Cdy
Hbspital,
Departinent
ofRehabilitation
Goro
OHSAKA,
MD
Minoh
Cdy
Hospital.
Rehabilitation
Medicine
It
is
veryimpor
±antto
preventpatients
withfemoral
neckfracture
from
developing
disuse
.syndrome
due
to
bed
rest.This
studyinvesti'gated
postoperativephysical
fitness
of patients withfemoral
neckfracture.
We
performed
the
exercisetesting
with arm ergometry on56
patients withfemoral
neckfracture
(age
=80.3
±7.6
years
old[mean
±SEM])
within one weekaiter
the operation.In
the
・exercise
testing, the maximum02
uptake(peak
V021kg
[mllminlkg])
was measured.The
,subjects were
divided
based
onthe
age andADL
classification,then
peakV02/kg
was comparedamong groups.