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日本甲殻類学会 ReportCarcinological Society of Japan
報告
Cancer 27: 51–53 (2018)与那国島沿岸域におけるオカヤドカリ類の分布
Distribution of terrestrial hermit crabs on the coast of Yonagunijima Island
in the Yaeyama Islands, Ryukyu Archipelago, Japan
三田哲也
1*・浜崎活幸
1・原田靖子
1・團 重樹
1・北田修一
1Tetsuya Sanda
1*, Katsuyuki Hamasaki
1, Yasuko Harada
1, Shigeki Dan
1and Shuichi Kitada
1はじめに オカヤドカリ類は十脚目異尾下目オカヤドカリ科 Coenobitidaeに属する陸生の甲殻類であり,熱帯から 亜熱帯の島嶼域に広く分布し(Hartnoll, 1988),日 本では南西諸島や小笠原諸島を中心に生息している (鹿児島県教育委員会,1987;沖縄県教育委員会, 1987,2006;東京都教育委員会,1987).日本国内 に生息するオカヤドカリ科のうち,オカヤドカリ属 Coenobitaは天然記念物に指定されており,ヤシガニ Birgus latroは資源の減少が危惧されている.著者ら が所属する東京海洋大学増殖生態学研究室では,オ カヤドカリ類の生息域内保全を進める基礎として国 内における地理的分布調査を実施しており,これま でに石垣島,西表島,鳩間島,八丈島,父島沿岸域 における分布状況を報告した(藤河ら,2017;三田 ら,2018;水流ら,2018).本稿では,与那国島沿 岸域で実施した調査結果を報告する. 材料と方法 調査地点として,自動車によるアクセスが可能な 海岸5 ヵ所を設定した(図1).St. 1:河口に位置す るビーチで,グンバイヒルガオが繁茂する.St. 2: 石灰岩の岩礁の間に形成された小規模なビーチで, グンバイヒルガオやアダン,クサトベラなどが少量 見られ,北側には海岸林がある.St. 3:アダン,ク サトベラ,モンパノキ,グンバイヒルガオなどが見 られるビーチで,背部は緩やかな岩盤の斜面となっ ている.St. 4:海岸の両側が石灰岩の岩礁で形成さ れたビーチで,陸側には堤防があり,その周辺にク サトベラ,モンパノキ,オオハマボウなどが見られ る.St. 5:草本の繁茂するビーチで,陸側には堤防 がある. 調査は2014年7月5日から7日にかけて行った. 昼間と夜間に,それぞれ3名が各調査点において30 分程度かけて目視による探索を行うとともに,養鶏 用飼料と九官鳥用飼料を入れた6L容量のプラスチッ ク製バケツを地中に水平に埋めたベイトトラップを 各地点で2つ,日没前に設置し,翌朝回収した.夜 間調査時には光源として懐中電灯 (白色LED灯) を 用いた. 捕獲したヤシガニは後甲長を測定した.オカヤド カリ類はNakasone (1988),朝倉(2004)に従い外部 形態によって種を判別し,前甲長を測定した.なお, 体サイズ測定のために宿貝から個体を引き出す必要 があるが,それが困難な場合もあったことから,藤 河ら(2017)に従って個体が宿貝に入っても測定可 1 東京海洋大学海洋生物資源学部門 〒108–8477 東京都港区港南4–5–7
Department of Marine Biosciences, Tokyo University of Marine Science and Technology, 4–5–7 Konan, Minato, Tokyo 108–8477, Japan
E-mail: [email protected]
* 現所属 (Present address):国立研究開発法人水産研究・
教育機構 西海区水産研究所 亜熱帯研究センター 〒907–0451 沖縄県石垣市浮海大田148
Research Center for Subtropical Fisheries, Seikai National Fisheries Research Institute, Japan Fisheries Research and Education Agency, 148 Fukai-Ota, Ishigaki, Okinawa 907–0451, Japan
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Cancer 27 (2018) 三田哲也・浜崎活幸・原田靖子・團 重樹・北田修一 能な左第3歩脚指節の下縁に沿った長さを測定し, 前甲長に換算した.捕獲個体は,体サイズ測定後に 調査場所で放した.調査期間中の気温と相対湿度の 平均値は,日中が31.7°Cと67.3%,夜間が30.4°Cと 86.5%であった.なお,調査は沖縄県教育委員会と文 化庁の許可を得て実施した (2受庁財第4号の2058). 結果と考察 ヤシガニ(2個体)とオカヤドカリ属4種,すな わちオオナキオカヤドカリC. brevimanus(6個体), オカヤドカリC. cavipes(15個体),ムラサキオカヤ ドカリC. purpureus(3個体),ナキオカヤドカリC. rugosus(482個体)が捕獲された.地点別・種別の 捕獲個体数を図2に,捕獲したオカヤドカリ類の前 甲幅組成を図3に示す.また,ヤシガニ2個体の後 甲長は36.6 mmと41.5 mmであった. オカヤドカリ類では過去に行われた調査と同様の 種が確認された(沖縄県教育委員会,1987,2006). 全ての調査地点でナキオカヤドカリが優占し,オカ ヤドカリ,オオナキオカヤドカリ,ムラサキオカヤ ドカリ,ヤシガニの順で捕獲個体数が多かった.全 捕獲数509個体のうち,ナキオカヤドカリが94.9% で優占したことは,沖縄県教育委員会 (1987, 2006) と藤河ら(2017)による八重山諸島での調査結果と 同様の傾向であった.特に,日中に確認された39個 体はすべてがナキオカヤドカリであった. 本調査では,オカヤドカリ類の宿貝を同定しな かったが,捕獲されたオカヤドカリのほとんどが外 来の淡水性巻貝であるスクミリンゴガイPomacea canaliculataを宿貝として利用していた.この宿貝選 好性は,オカヤドカリが最も内陸まで生息すること に関連しているものと考えられる(沖縄県教育委員 会,2006).与那国島では過去に,スクミリンゴガ 図1. 与那国島における調査地点(グーグルアース). 図2. 調査地点別の捕獲個体数.53
Cancer 27 (2018) 与那国島のオカヤドカリ類 イが水田に大量発生したことが知られている(八重 山毎日新聞,ジャンボタニシが異常繁殖,生産部会 が 一 斉 防 除 http://www.y-mainichi.co.jp/news/3237/ 2018年1月17日アクセス).小笠原諸島父島では, ムラサキオカヤドカリはアフリカマイマイAchatina fulicaの貝殻を利用して大型化したが (林ら,1990), 現在アフリカマイマイの減少にともなう新規宿貝の 供給が大幅に減っているようであり,ムラサキオカ ヤドカリの小型化と個体群の縮小が起こる可能性が 指摘されている (三田ら,2018).与那国島における オカヤドカリ個体群の動態を把握するには,今後ス クミリンゴガイによる宿貝供給の実態を定量調査す る必要がある. 文 献 朝倉 彰,2004.ヤドカリ類の分類学,最近の話題― オカヤドカリ科.海洋と生物,26: 83–89. 藤河俊介・浜崎活幸・三田哲也・石山尚樹・水流拓 馬・團 重樹・北田修一,2017.石垣島と西表島 沿岸域におけるオカヤドカリ類の分布特性.日本 生物地理学会会報,71: 25–38.Hartnoll, R. G., 1988. Evolution, systematic, and geographical distribution. In Burggren, W. W. & McMahon, B. R. (Eds),
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Nakasone, Y., 1988. Land hermit crabs from the Ryukyus, Japan, with a description of a new species from the Philippines (Crustacea, Decapoda, Coenobitidae). Zoo-logical Science, 5: 165–178. 沖縄県教育委員会,1987.沖縄県天然記念物調査シ リーズ第29集 あまん オカヤドカリ生息実態調 査報告.緑林堂書店,宜野湾.254 pp. 沖縄県教育委員会,2006.沖縄県天然記念物調査シ リーズ第43集 オカヤドカリ生息実態調査報告書 II.沖縄県教育委員会,那覇.262 pp. 三田哲也・浜崎活幸・飯塚千香子・北田修一,2018. 父島と八丈島沿岸域におけるオカヤドカリ類の分 布.日本生物地理学会会報,72: 65–74. 東京都教育委員会,1987.小笠原諸島オカヤドカリ生 息状況調査報告.東京都教育庁社会教育部文化課, 東京.98 pp. 水流拓馬・浜崎活幸・三田哲也・藤河俊介・北田修一, 2018.鳩間島におけるオカヤドカリ類の分布.日 本生物地理学会会報,72: 75–85. 図3. 捕獲した個体の前甲長組成.