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「自信」の概念分析:中堅助産師の自信への適用可能性

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「自信」の概念分析:中堅助産師の自信への適用可能性

Concept analysis of ‘self-confidence’:

the applicability of self-confidence to mid-career midwives

石 川 智 恵(Chie ISHIKAWA)

*1, 2 抄  録 目 的 自信の概念を概念分析によって明らかにし,この概念を適用して中堅助産師の自信の構造とその構造 を用いた研究の方向性を考察する。 方 法

助産学,看護学,教育学,心理学分野に関する国内外の論文を検索し,Walker & Avant(2008)の方 法に沿って概念分析を行った。そして,①自信の概念の用いられ方,②関連する概念,③自信の属性, ④自信の概念的定義,⑤モデル例,境界例,相反例,⑥自信の先行要件,帰結,影響因子を明らかに し,この概念を適用して中堅助産師の自信の構造とその構造を用いた研究の方向性,及び今後の課題に ついて考察した。 結 果 自信は,ある特定の行動や能力に対する確信と,自分の価値に対する確信を含む包括的な概念であ り,状況や文脈によって変化するという不確実性を持つ。 属性は,①ある特定の行動や能力に対する確信,②自分の価値に対する確信,③不確実性である。先 行要件は,ある役割や課題に取り組んでいる中で,それについて周囲から期待を寄せられたり,自分の 目標を持つが,同時に周囲の期待に応えたり自分の目標に到達するのに不安を抱く状況である。帰結 は,自分の思考や感情が肯定的に変化し,自分の成長を実感し,困難な状況や変革に挑戦できるように なることである。影響因子は,①困難な状況を克服する経験や成功体験を含む経験の内容とその意味づ け,②経験による熟達,③専門的知識と技術の保有,④自らを客観的に評価できる能力,⑤他者期待及 び自己期待の充足度,⑥他者からの評価,⑦周囲のサポート,⑧職場等その人を取り巻く環境である。 結 論 自信の概念を適用して中堅助産師の自信の構造を提示することで,今後の研究の方向性として,それ を用いて中堅助産師の自信を明らかにするための尺度開発が示唆された。また,自信の不確実性という 特性を活かして,自信とそれに影響する因子との関係性を明らかにすることによって,現在の中堅助産 師の自信に影響する課題も明らかにすることができる。 今後は,中堅助産師が「自信がない」と語る言葉に込められた意味について明らかにし,中堅助産師 2018年2月5日受付 2018 年7月26日採用 2018 年11月30日早期公開

*1長野赤十字看護専門学校(The Nagano Red Cross Nursing School)

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に必要な自信について,さらに検討する必要がある。 キーワード:中堅助産師,自信,概念,概念分析

Abstract Purpose

This study aimed to analyze the concept of self-confidence in order to discuss the structure of career mid-wives' self-confidence and the possible direction of future research.

Methods

Walker and Avant's (2008) approach to concept analysis was used to review the literature on confidence, self-efficacy and self-esteem. The analysis focused on midwifery, nursing, education and psychology. In addition, the fol-lowing areas were explored 1) the application of the concept of self-confidence; 2) related concepts; 3) attributes; 4) operational definition; 5) model cases, borderline cases, and contrary cases; and 6) antecedents, consequences, and related factors. In addition, the structure of mid-career midwives' self-confidence as defined by this concept analysis was used to discuss the direction of future research.

Results

The operational definition of the comprehensive concept of self-confidence is confidence about one's specific behavior, competence, and value. The concept of self-confidence includes uncertainty due to change in conditions and context. The attributes of the concept are confidence about one's behavior, confidence in one's own value, and un-certainty. The antecedent of the concept is the feeling of anxiety in a situation in which one has perceived the expectations of others regarding one's ability to achieve a goal. The consequences of the concept are perceiving positive change in thoughts and development and being able to test one's ability to solve problems and improve. The factors affecting the concept are interpretation of experience, mastery due to experience, knowledge and skill, ability to self-evaluate, appropriateness of one's own expectations and the expectations of others, evaluation by others, sup-port from others, and environment around the individual (including the workplace).

Conclusion

The concept of self-confidence suggests the structure of mid-career midwives' self-confidence. In addition, it can contribute to the development of a scale for evaluating mid-career midwives' self-confidence, and help clarify the problems faced by mid-career midwives by revealing the factors affecting mid-career midwives' self-confidence. How-ever, it remains necessary to identify the appropriate level of self-confidence that mid-career midwives who say‘I don't have self-confidence’ must have.

Key words: mid-career midwife, self-confidence, concept, concept analysis

Ⅰ.は じ め に

現在我が国の周産期医療は,産科医不足とそれに伴 う産科施設の減少と集約化,産科病棟の混合病棟化の 加速,ハイリスク妊産婦の増加,助産師の偏在(江 藤,2015)といった多くの問題を抱えている。そし て,この状況を改善するために,厚生労働省は 2008 年に「院内助産所・助産外来施設整備事業」を開始し, 全国の病院や診療所に院内助産や助産外来の開設を推 進している。これによって産科医と助産師が互いの専 門性を発揮しながら協働し,全ての母子が安全に安心 して過ごせるように質の高い医療とケアを提供できる ようになる。しかし,分娩を取り扱う病院のうち,院 内助産を実施している病院は,2011年が10.2%,2014 年が 12%,2016年が12.7% であり(日本看護協会健康 政策部助産師課,2017),院内助産はまだ軌道に乗っ ているとは言い難い。 岸田他(2007)は,産科閉鎖に対する助産師の思い として,「自立するだけの力不足と自信のなさ」を挙 げ,渡邊他(2012)は院内助産を開設する上でのマイ ナス要因として,「助産師の責任に対する不安」を挙げ ている。このように,院内助産が増加しない背景に は,病院勤務助産師が助産師として自信を持てていな いことが考えられる。 筆者が病院勤務助産師に話を聴いた時も,助産師と しての経験年数に関わらず,どの人も「自信がない」 と語った。その中で,助産師としての経験を積み, チームリーダーとして病棟の中心的な役割を担う中堅 以上の助産師であっても「自信がない」と言っていた。 そこから,中堅助産師がなぜ「自信がない」と言うの

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かを明らかにしたいと考えた。 日本看護協会が作成した助産師のキャリアパス(日 本助産実践能力推進協議会,2015)によると,中堅と 言われる時期は,「実践能力強化・拡大とライフイベ ントの調和期」から「役割(視野)拡大期」にかけての 時期である。中堅助産師は病棟のチームリーダーとし て,後輩の指導,病棟の助産ケアや業務改善の中心的 役割を担う存在である。このような病棟の中心的な存 在であり,責任ある役割を担っている中堅助産師が自 信を持てないことは大きな問題である。彼女達の働き 方は後輩や病棟全体に大きな影響を及ぼすため,中堅 助産師が自信を持ち生き生きと働けるようにすること は急務の課題であると考える。 看護学,助産学では,「自己効力感」を明らかにする 研 究(有 田 他, 2014; 江 本, 2000; Erlen, et al. 2010;Hildingsson, et al. 2015;池田他,2011;入山 他,2012;金岡,2011;加藤,2003;北村,2014; Lauder, et al. 2008;Li, et al. 2011;宮本他,2006;宮 岡他,2015;中田,2008,2015;小谷野,1999;佐野 他, 2011; 佐 藤 他, 2016; 清 水 他, 2015; 鈴 木, 2013;谷山他,2013;坪井他,2001;魚尾他,2011; 吉田他,2011),及び「自尊感情」を明らかにする研究 (井関他,2011;大森他,2012;鶴田他,2013;浦山 他,2013;山田,2015;山下他,2013)はみられる。 しかし,「自信」の概念分析を行い,それを明確に定義 している研究は見当たらない。人は自信について語る 時は,「自己効力感」や「自尊感情」という言葉ではな く,「自信」という言葉を使う。従って,人々が使う 「自信」を明らかにするためには,概念分析を行い, 明確に定義する必要がある。 本研究は,自信の概念的定義を概念分析によって明 らかにし,この概念を適用して中堅助産師の自信の構 造とその構造を用いた研究の方向性を考察することを 目的とする。中堅助産師の自信の構造を明らかにする ことは,中堅助産師の自信の実態とその影響要因を明 らかにする研究につながり,それによって中堅助産師 に対する継続教育や支援体制を確立する一助になると 考える。

Ⅱ.方   法

概念分析は Walker & Avant(2008)の概念分析の方 法に沿って行った。この方法は理論のなかの曖昧な概 念 を 再 定 義 す る 際 に 有 用 で あ る と 言 わ れ て お り

(Walker & Avant,2005/2008),さまざまな意味で使 われている「自信」の定義を明らかにするためには有 用な方法であると考えたからである。この方法に 沿って,①自信の概念の用いられ方,②関連する概 念,③自信の属性,④自信の概念的定義,⑤モデル 例,境界例,相反例,⑥自信の先行要件,帰結,影響 因子を明らかにし,この概念を適用して中堅助産師の 自信の構造とその構造を用いた研究の方向性,及び今 後の課題について考察した。 検索年度は制限せず,2017年までの看護/助産学,教 育学,心理学の領域の文献を検索対象にした。検索に 使 用 し た デ ー タ ベ ー ス は,「医 学 中 央 雑 誌」「CiNii Articles」「CINAHL」「MEDLINE」である。検索のキー ワードは,「医学中央雑誌」では「自信and助産師」「自信 and看護師」,「CiNii Articles」では「自信」,「CINAHL」 「MEDLINE」では「confidence」とした。「医学中央雑誌」 「CiNii Articles」からの検索結果は,会議録,表題の適 切でないもの,及び研究論文の形態をなしていないも の を 除 外 し, 17 編 を 分 析 対 象 と し た。「CINAHL」 「MEDLINE」からの検索結果は,抄録から適切な内容 のもの6編を分析対象とした。 また,関連する概念として,「自己効力感」「自尊感 情」に関する文献も検索した。検索年度は制限せず, 2017年までの看護/助産学の領域の文献を検索対象に した。検索に使用したデータベースは,「自信」の検索 同 様,「医 学 中 央 雑 誌」「CiNii Articles」「CINAHL」 「MEDLINE」を用いて,「自己効力感」「自尊感情」 「self-efficacy」「self-esteem」のキーワードで検索した。そし て「自信」の検索過程と同様に文献を絞り込み,最終 的に国内文献 30 編,海外文献 4 編を分析対象にした。 分析の過程では,概念分析の研究法と助産師事情に精 通した看護学研究者からスーパーバイズを受けた。

Ⅲ.結   果

A.自信の概念の用いられ方 1.自信の一般的な意味 自信は,広辞苑(2018)では「①自分の能力や価値 を確信すること」「②自分の正しさを信じて疑わない 心」と述べている。また心理学辞典(1999)では,「『自 己』についての肯定的な評価ではあるが,分野や領域 を限定して用いられることが多い」と述べており,類 似の言葉として「自尊感情」「自己効力感」「コンピテ

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ンシー」を挙げている。一方英語では自信を「confi-dence」あるいは「self-confidence」と言う。「confidence」 を新英和辞典(1985)で調べると,①信任,信頼,信 用,②自信,③大胆さ,度胸,厚かましさ,④確実 性,確信等の意味があり,「self-confidence」は,①自 信,②自己過信,うぬぼれという意味がある。このよ うに自信とは,自分の特定の能力や行動,あるいは自 分そのものに対する確信であり,肯定的にも否定的に も使われる。心理学,教育学,看護/助産学における 「自信」に関する研究を表1に示す。 2.心理学における自信 心理学において「自信」をテーマにした研究を概観 し,自信がどのように定義されているかを述べる。池 田他(2005a, 2005b, 2006)は,企業におけるリーダー の自信を明らかにした。リーダーの自信には能力 ベースの自信と行動ベースの自信があるが,能力 ベースの自信は幅広く,それを測定することは難しい ため,具体的なリーダーとしての役割行動に焦点を当 てた行動ベースの自信をリーダーの自信として定義し ている。そしてリーダーの自信を「リーダーとして職 場やチームの課題を遂行していく上で必要とされる役 割行動を確実に実行できると考える度合い」(池田他, 2005a,p. 121)と定義し,他者との関係性への自信と 課題の遂行への自信から成ると述べている。畑野 (2010)は,青年期後期におけるコミュニケーション に対する自信と,アイデンティティとの関連性を明ら かにした。この研究では自信を「他者から認められて いる,自分が自分であるという確信」(畑野,2010, p. 404)と定義している。高井(2011)は,青年期から 高齢期にかけての自信感形成要因とその発達的変化を 明らかにした。自信を自信感という言葉を用いて表現 し,「自分のあり方に自信をもっている感覚,あるい は,自分に対して自信をもって生きていると感じられ ること」(高井,2011,p. 47)と定義している。そして 自信感は自己肯定感,人間関係構築力,有能感,立ち 直り力から成ると述べている。中西他(2015)は,あ る行動を選択する際の意思決定への自信が後悔に与え る影響について明らかにしているが,自信は定義して いない。以上の研究から,心理学では自信を,特定の 行動に対する確信と,自分そのものに対する確信の2 つの意味で用いられていることが明らかになった。 3.教育学における自信 教育学において「自信」をテーマにした研究を概観 し,自信がどのように定義されているかを述べる。伊 佐(2016)は,大学生の海外研修による自信感と自信 感を形成する要因について明らかにした。ここでは, 自信感を前述の高井(2011)の定義を用いて定義して いる。横嶋他(2016)は,小学生を対象に自己信頼感 (自信)の育成を目的としたプログラムを実践し,そ れによる子供達の自信の向上を明らかにした。ここで は,自信を「自分には外界をコントロールする力があ るという感覚」(横嶋他,2016,p. 13)と定義し,他者 比較からの優越性から来る相対的な特性ではなく,絶 対的に規定されるものであり,自己受容に近い概念で あると述べている。横山(2017)は,大学のサークル リーダーに教育プログラㇺを実践することにより, リーダーとしての自信がどのように変化するかを明ら かにした。この研究での自信は池田他(2005a, 2005b, 2006)のリーダーとしての自信の定義を用いて定義し て い る。 ま た, 文 部 科 学 省 国 立 教 育 政 策 研 究 所 (2015)は,子供の社会性の基礎を育成するために必 要な自信は「自己有用感」であると述べ,自己有用感 を育成することの必要性を提言している。そして自己 有用感を「人の役に立った,人から感謝された,人か ら認められたという感覚であり,自分と他者との関係 を自他共に肯定的に受け入れることで生まれる,自己 に対する肯定的評価」(文部科学省国立教育政策研究 所,2015)と定義している。以上の研究から,教育学 では自信を,心理学同様,特定の行動に対する確信 と,自分そのもの対する確信の2つの意味で自信を用 いていることが明らかになった。 4.看護/助産学における自信 看護/助産学において「自信」をテーマにした研究を 概観し,自信がどのように定義されているかを述べ る。横田他(2013)は,看護師の勤務帯リーダーとし ての自信とそれに影響する要因を明らかにした。そし て,看護師の勤務帯リーダーとしての自信を「勤務帯 リーダーとして必要とされる役割行動を確実に実行で きると考えている度合い」(横田他,2013,p. 17)と定 義しており,池田他(2005a, 2005b, 2006)のリーダー と し て の 自 信 の 定 義 を 参 考 に し て い る。 鈴 木 他 (2009)は,母親としての自信を得るプロセスを質的 に明らかにした。ここでは,母親としての自信を「母 親として子どもが求めていることを理解し,子どもが 求める関わりができること」(鈴木他,2009,p. 252) と定義している。小林(2010)は,海外の「母親とし ての自信」を測定する尺度を日本語版に翻訳作成し, その信頼性と妥当性を検討した。この研究における母 親としての自信を「母親が育児すること,子どもを理

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表 1 自 信 に 関 する 文 献 著 者 名( 発 行 年 ) 学 術 領 域 定 義 先 行 要 件 影 響 因 子 帰 結 池 田 浩 , 古 川 久 敬 ( 2005a ) 心 理 学 リーダーとして 職 場 やチームの 課 題 を 遂 行 していく 上 で 必 要 とされる 役 割 行 動 を 確 実 に 実 行 できると 考 える 度 合 い 企 業 組 織 を 取 り 巻 く 環 境 が 刻 々と 変 化 し ている 中 で , リーダーは 新 規 かつ 困 難 な 課 題 にさらされ , 将 来 に 不 透 明 さを 感 じ , 不 安 を 高 じさせている 状 況 リーダーが 日 々 直 面 する 職 務 上 の 経 験 とその 経 験 の 内 的 処 理 期 待 の 充 足 度 集 団 や 組 織 のパフォーマンスの 達 成 に 向 かう 行 動 を 積 極 的 に 遂 行 する。 変 革 志 向 的 な 行 動 に 着 手 する。 池 田 浩 , 古 川 久 敬 ( 2005b ) 心 理 学 リーダーとして 職 場 やチームの 課 題 を 遂 行 していく 上 で 必 要 とされる 役 割 行 動 を 確 実 に 実 行 できると 考 える 可 能 感 同 じ 状 況 におかれて 類 似 する 目 標 を 設 定 しても , リーダーによって 役 割 行 動 の 発 揮 される 水 準 に 差 がある。 管 理 職 の 経 験 年 数 課 題 特 性 に 応 じて 何 が 必 要 な 行 動 である のかを 判 断 し , そこで 相 応 しいと 考 えら れる 行 動 を 柔 軟 に 使 い 分 けて 行 使 でき る 。 池 田 浩 , 古 川 久 敬 ( 2006 ) 心 理 学 リーダーに 必 要 とされる 具 体 的 な 役 割 行 動 についての 可 能 感 同 じ 状 況 におかれて 類 似 する 目 標 を 設 定 しても , リーダーによって 役 割 行 動 の 発 揮 される 水 準 に 差 がある。 他 者 期 待 および 自 己 期 待 の 充 足 畑 野 快( 2010 ) 心 理 学 他 者 から 認 められている , 自 分 が 自 分 であ るという 確 信 アイデンティティ 形 成 のために , 現 実 ・ 社 会 での 他 者 との 関 係 性 の 構 築 の 必 要 性 自 らを 客 観 的 にモニターするセルフ ・モニタリング 能 力 自 尊 心 「 社 会 でもやっていける」 という 未来 ・ 社 会 への 適 応 感 が 強 くなる。 高 井 範 子( 2011 ) 心 理 学 自 分 のあり 方 に 自 信 を もって いる 感 覚 , ある いは , 自 分 に 対 して 自 信 をも って 生 きてい る と 感 じられていること。 人 生 における 困 難 を 乗 り 越 える 状 況 自 己 の 内 なる 可 能 性 を 試 そうとする 状 況 性 差 , 年 齢 過 去 の 経 験( 困 難 克 服 経 験 , 達 成 経 験 ) 失 敗 を 恐 れず 自 律 的 に 生 き , 生 き 方 態 度 も 意 欲 的 で 忍 耐 強 い。 日 々の 生 活 に 充 実 感 や 幸 福 感 ・ 満 足 感 を 感 じており , 将 来 展 望 も 肯 定 的 であり , 過 去 も 受 容 できている 中 西 大 輔 , 井 川 純 一 , 志 和 資 朗( 2015 ) 心 理 学 行 動 するかどうかの 意 思 決 定 を 迫 られる 状 況 行 動 の 有 無 に 関 わらず , 意 思 決 定 時 の 自 信 が 強 いほど , 結 果 に 対 する 後 悔 は 少 な い。 文 部 科 学 省 国 立 教 育 政 策 研 究 所   生 徒 指 導 ・ 進 路 指 導 研 究 センター ( 2015 ) 教 育 学 自 己 有 用 感 : 人 の 役 に 立 った , 人 から 感 謝 された , 人 から 認 められたという 感 覚 子 供 達 が「 人 と 関 わりたい」 という 意 欲 が 低 下 しており , 人 間関 係 の 希 薄 化 , 他人 を 傷 つける 行 為 , ルールを 守 らない 行 動 , 集 団 への 参 加 を 妨 げるという 問 題 が 起 こっている。 子 供 の 努力 や 工 夫 を 認 めること 自 尊 感 情 の 獲 得 社 会 性 の 基 礎 を 形 成 する。 伊佐 雅 子( 2016 ) 教 育 学 自 信 感 : 自 分 のあり 方 に 自 信 を 持 っている 感 覚 , あるいは 自 分 に 対 して 自 信 を 持 って 生 きていると 感 じられていること 短 期 海 外 留 学 で , 異 なる 文 化 の 習 慣 や 考 え 方 に 触 れる 経 験 や , カルチャー ショックやトラブルに 遭遇 する 経 験 をす ること。 語 学 力 現 地 の 人 との 相 互交 流 カルチャーショックやトラブルを 乗 り 越 える 経 験 キャリアプランにおける 国 際 志 向 性 の 上 昇 横 嶋 敬 行 , 村 上 祐 介 , 内 田 香 奈 子 , 山 崎 勝 之 ( 2016 ) 教 育 学 自 分 には 外 界 をコントロールする 力 がある という 感 覚 。 他 者 比 較 による 相 対 的 な 特 性 ではなく , 絶 対 的 に 規 定 される 自 信 子 供 の 学 校 不 適 応 の 問 題 情 動 や 感 情 を 喚 起 させる 教 育 他 者 との 相 互 作 用 自 律 的 な 性 格 の 形 成 学 校 不 適 応 の 予 防 学 習 意 欲 の 向 上 横 山 孝 行( 2017 ) 教 育 学 リーダーに 必 要 とされる 具 体 的 な 役 割 行 動 の 可 能 感 大 学 でサークルに 入 らない 学 生 や 退部 す る 学 生 , 廃 部 する 団 体 が 増 加 している。 リーダーシップ 行 動 に 関 する 知 識 の 有 無 さまざまな 人 との 相 互 理 解 の 経 験 効 果 的 なリーダーシップ 行 動 を 発 揮 し , 困 難 な 状 況 でもチャレンジや 努力 をす る。 Blrth, R., Creedy, D. K., Dennis, C. L., Moyle, W., Pratt, J. & Vries, S. M. D. ( 2002 ) 助 産 学 母 乳 育 児 の 自 己 効力 感 として 定 義 しており , 母 親 の 授 乳 する 能 力 の 認 識 であり , その 行 動 がある 結 果( 授 乳 の 継続 )を 生 み 出 すのを 助 けると 信 じること。 母 乳 育 児 を 継続 する 中 で 困 難 さに 立 ち 向 かおうとしている。 過 去 の 母 乳 育 児 体 験 とその 意 味 づけ 代 理 体 験( ピアサポート ) 言語 的 説 得( 重 要 他 者 からの 励 まし ) 生 理 的 反 応 母 乳 育 児 の 継続 と 程 度( 母 乳 だけ ~ ビン 哺 乳 ) 初 めての 母 親 の 母 乳 育 児 の 能 力 への 自 信 グレッグ 美 鈴( 2005 ) 看 護 学 自 己 存 在 価 値 の 実 感 : 自 己 の 有 用 感 を 持 ち , 自 分 の 努力 ・ 成 長 を 実 感 できること 経 験 豊 富 な 看 護 師 の 離 職 が 組 織 の 看 護 実 践 の 質 への 影 響 , 現 任 教 育 にかかる 日数 と 経 費 の 投 資 に 影 響 がある。 専 門 的 知 識 ・ 技 術 の 保 有 患 者 ・ 家 族 の 肯 定 的 フィードバック チームで 実 施 したケアへの 満 足 能 力 を 発 揮 するチャンス 組 織 へのコミットメント ( 個 人 が 所 属 す る 組 織 への 気 持 ちのつながりを 作 り , そ の 場 で 能 力 を 発 揮 し , 組 織 に 貢 献 しよう とする。 )

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Warren, P. L. ( 2005 ) 助 産 学 自 己 効力 感 として 定 義 し , 初 産 婦 が 新 生 児 のケアに 必 要 なタスクを 整 理 して 実 行 する 能 力 における 信 念 。 母 親 という 新 たな 役 割 と 責 任 を 担 うこと に 不 安 がある。 評 価 的 サポート ( 肯 定 的 なフィード バック ) 情 報 的 サポート ( 情 報 提 供 ) 母 親 役 割 への 適 応 母 親 としての 肯 定 的 な 体 験 青 山 美 智 代 , 伊 藤 明 子 , 三 毛 美 恵 子 , 須 藤 聖 子 , 林有 学( 2007 ) 看 護 学 確 信 度 : 対 象 が 反 応 の 正 確 さを 自 己 評 価 し た 結 果 であり , 自 信 の 程 度 である。 看 護 技 術 の 修 得 において , 技 術 修 得 の 判 断 の 未 熟 さと 練 習 過 程 における 認 知 領 域 と 精 神 運 動 領 域 の 結 び 付 けが 弱 く , 効 果 的 な 自 己 学 習 が 難 しい 学 生 個 別 的 な 学 習 支 援 反 省 的 な 振 り 返 りを 促 進 し , 自 分 の 傾 向 を 理 解 する。 根 拠 に 裏 づけられた 行 動 をとる。 看 護 技 術 の 修 得 度 を 高 める 修 得 レベルに 対 して 正 しく 判 断 し , それ に 対 する 自 信 が 持 てる。 鈴 木 由 紀 乃 , 小 林 康 江 ( 2009 ) 助 産 学 母 親 として 子 どもを 求 めていることを 理 解 し , 子 どもが 求 める 関 わりができること 初 めての 育 児 で 母 としての 情 緒 の 変 化 や 子 どもとの 関 係 を 確 立 させる 中 で , 不 安 や 困 難 を 体 験 する。 試 行 錯 誤 する 体 験 自 分 に 確 証 を 得 るための 拠 り 所 母 親 への 適 応 肯 定 的 な 親 子 関 係 の 構 築 小 林 康 江( 2010 ) 助 産 学 母 親 が , 育 児 や 子 どもを 理 解 することの 能 力 を 認 識 していること 母 親 役 割 に 適 応 しようとしている。 健 康 な 母 子 関 係 母 親 としての 適 応 Mur doch , M . R . & Fr anc k, L. S. ( 20 11 ) 助 産 学 母 親 になるプロセスの 中 で , 感 情 が 揺 れ 動 く。 新 生 児 の 健 康 医 学 的 処 置 家 族 や 専 門 家 によるサポート 横 田 ひろみ , 齋 藤 久 美 子 ( 2013 ) 看 護 学 勤務 帯 リーダーとして 必 要 とされる 役 割 行 動 を 確 実 に 実 行 できると 考 えている 度 合 新 たな 役 割 を 課 せられることによる 負 担 やストレスがある。 ステップアップの 一 段 階 にいる。 臨 床 経 験 年 数 役 割 の 委 譲 看 護 師 としての 成 長 より 広 範 なリーダーシップ 能 力 の 発 揮 Bedwell, C., McGowan, L. & Lavender, D. T. ( 2015 ) 助 産 学 しばしば 自 己 効力 感 という 言 葉 で 置 き 換 え られる。 困 難 な 環 境 でリーダーとしての 役 割 を 遂 行 することへのストレスを 感 じている。 同 僚 の 影 響 職 場 の 衝 突 経 験 による 熟 達 自 律 性 仕事 の 満 足 度 の 向 上 レジリエンス 専門 職 としてのアイデンティティ 助 産 師 としての 実 践 Cummins, A. M., W ilson, E. D. & Homer, C. S. E. ( 2015 ) 助 産 学 卒 業 後 間 もない 時 期 で , これから 独 り 立 ちをしようとしている。 継続 ケアの 体 験 女 性 との 関 係 助 産 師 としての 成 長 自 立 性 「 本 当 の 助 産 師 になる」 という 自 覚 Kessler, J. L. & Phillippi, J. C. ( 2015 ) 助 産 学 助 産 師 のコアコンピテンシーにあるプラ イマリーケア 領 域 の 実 践 を 行 える 助 産 師 の 不 足 教 育 課 程 において 専 用 のプライマ リーケア 実 習 を 体 験 すること 体 験 の 量 助 産 実 践 の 幅 が 広 がる。 前 原 邦 江 , 森 恵 美 , 土 屋 雅 子 , 坂 上 明 子 , 岩 田 裕 子 , 小 澤 治 美 他( 2015 ) 助 産 学 初 めての 育 児 体 験 で 自 信 が 持 てない。 家 事 ・ 育 児 の 手 段 的 サポート 疲 労 , 既 往 歴 頑 張 りを 認 める 評 価 的 サポート 産 後 1ヵ 月 時 の 母 乳 栄 養 の 確 立 母 親 役 割 の 自 信 の 向 上 清 水 嘉 子( 2015 ) 助 産 学 母 親 が 育 児 すること , 子 どもを 理 解 するこ とができる 能 力 を 母 親 が 認 識 していること 子 どもを 育 てる 中 で , 悩 みや 関 係 性 の 変 化 を 体 験 する。 相 談 者 や 支 援 者 の 存 在 育 児 の 喜 び 育 児 不 安 の 低 下 抑 うつ 状 態 , 気 力 の 減 退 , 慢 性 疲 労 等 蓄 積 的 疲 労 の 低 下

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解することができる能力を母親が認識していること」 (小林,2010,p. 34)と定義している。清水(2015)は, 母親の育児への自信の確立のための要因を明らかにし, 母親としての自信を前述の小林の定義と同様の定義を 用いている。また,自信を自己効力感という言葉で定 義している研究もある(Bedwell, et al. 2015;Blrth, et al. 2002;Warren,2005)。さらに,自信を定義してい ない研究もある(Cummins, et al. 2015;Kessler, et al. 2015;前原他,2015;Murdoch, et al. 2011)。以上の研 究から,看護/助産学における自信は,ある特定の行動 や能力に対する確信という意味で用いられていること が明らかになった。 また,自信がつくことそのものを結果として挙げて いる(Blrth, et al. 2002;前原他,2015)ように,自信 があるからその行動をしているわけではなく,自信が ない中でも行動し,その過程で自信がどのように確立 していくのかを明らかにしている研究もある。このこ とから,自信は初めからあるわけではなく,行動する 過程で培われるものと考える。 5.自信の不確実性 自信は脆いものと述べたり(Bedwell, et al. 2015), 懸念と自信は連続体の中にあり,さまざまな因子に よってどちらにもなり得ると述べている(Murdoch, et al. 2011)研究もある。高井(2011)は,「自信も一旦 もったならば終生維持できるという保証はない。その 人の取り巻く時系列的な状況変数の変化によって自信 感が揺らぐこともあろう。」(p. 56)と述べている。こ のように,一度自信を持ってもそれは永続的なわけで はなく,文脈や状況が変われば自信を失うこともあ る。従って,自信とは,文脈や状況によって変化する 不確実性のあるものと考えられる。 6.自信と自己有用感 教育学において,子供の社会性の基礎を育成するた めに必要な自信を「自己有用感」とし,「人の役に立っ た,人から感謝された,人から認められたという感 覚」と述べているものもある(文部科学省国立教育政 策研究所,2015)。また,グレッグ(2005)は,自己の 存在価値の実感を,自己の有用感を持ち自分の努力・ 成長を実感できることとし,自己の有用感,自分の努 力・成長の実感,他者による良い評価・承認で構成し ている。 これまで述べた研究における自信の多くは,自分で 自分を認めるだけでなく,他者から認められることで も培われる自信である。従って,他者による評価や承 認によって,自分が他者にとって価値ある存在である という自己有用感も,自信を構成する概念であると考 える。 7.自信と自己過信 自信には自己過信やうぬぼれといった否定的な意味 もある。このような否定的な意味で用いられるのはど のような時だろうか。池田他(2005a)は,「リーダー行 動に関するリーダーの自己評価と部下や上司による他 者評価との間には乖離が存在」(p. 128)し,「他者評価 に比べて自己を過度に高く評価するリーダーほどパ フォーマンスが低く,そしてあまり効果的と評価され ない」(同)と述べている。自信とは自分が自分(の能 力や行動)を信じることなので,その人が「自信があ る」と言っても,他者の評価は高くない場合もある。 しかし,これまで述べた研究は,企業やサークルの リーダー,育児をしている母親,看護師,助産師等を 対象にし,他者との関係性の中での自信に焦点を当て たものが多い。そしてこの自信は,他者から認められ ることによって培われる自信である。一方,自己過信 やうぬぼれと言った意味の自信は,他者がどのように 評価しようとも,自分が「これでよい」と思うことで ある。 B.関連する概念 自信に関連する概念として,「自己効力感」と「自尊 感情」がある。それぞれの概念について文献検討を行 い,自信との類似点と相違点を明らかにする。 1.自己効力感 自己効力感は心理学者Banduraによって提唱された 概念であり,自己評価に基づく動機づけ面を重視して いる(桜井,1999)。人間の行動を決定する要因には, 行動がある結果を導くだろうと予測する「結果予期 (outcome expectation)」と,結果を産み出すのに必要 な行動をうまく実施できると確信する「効力予期 (efficacy expectation)」があり,自己効力感は効力予期 のことを言う(Bandura, 1977)。そして,自己効力感 は行動を始めたりそれを持続させたりすることに影響 を及ぼし,自己効力感が高いと,その行動に多大な努 力を費やしたり,困難な状況に直面した時もそれに立 ち向かうことができる(Bandura, 1977)。また,自己 効力感は 4 つの主要な影響力,制御体験,代理体験, 社会的説得,生理的,感情的状態によって育てていく ことができる(Bandura 1995/1997)。さらに,自己効 力感には①特定の行動に影響する確信(task-specific)

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と,②長期的な一般化した行動に影響する確信(一般 性self-efficacy)という2つの水準がある。 自己効力感は,特定の行動や一般化した行動と いった,行動に焦点を当てている。これは自信の「あ る特定の行動に対する確信」と類似する点である。し かし,自信は行動のみに焦点を当てているわけではな い。自信は行動以外に能力や自分の価値に対する確信 でもあるため,行動のみに焦点を当てている自己効力 感と異なる点である。また,自己効力感は行動への動 機づけであるため,自己効力感がないと行動にはつな がらない。一方,自信は初めからあるわけではなく, 行動する過程で培われるものである。これも自信と異 なる点である。 2.自尊感情 自尊感情とはトータルな自己評価であり(桜井, 1999),Rosenberg(1965)が「自己に対する肯定的ま たは否定的な態度」として定義している概念が広く知 られている(桜井,2000)。Rosenberg は自尊感情の 2 つの側面を指摘し,ひとつは個人が自分を「とてもよ い(very good)」と感じる側面であり,これは他人に 対する「自信」や「優越感」を意味する。もうひとつは 自分が「これでよい(good enough)」と感じる側面であ り,「自己受容」を意味する。Rosenberg の自尊感情尺 度は後者の自尊感情を対象にしている。 自尊感情は自己の全体についての肯定的または否定 的な感情である。これは,自信の概念における「自分 の価値に対する確信」と類似する点である。しかし, 自信の「特定の行動や能力に対する確信」は,自尊感 情には含まれず,異なる点である。また,Rosenberg の自尊心尺度には,自己と他者あるいは社会との関係 のあり方について言及した項目はない(伊藤,1994, p. 211)と述べられているように,「自己受容」を意味 した自尊感情は,他者との関係性の中で培われるもの ではないと考える。一方,多くの研究で述べられてい る自信は,他者との関係性の中で,他者から認められ たり,他者にとっての自分の存在価値を見出すことに よって培われるものであり,このことも異なる点で ある。 C.自信の属性 自信の属性は,「ある特定の行動や能力に対する確 信」,「自分の価値に対する確信」,「不確実性」である。 「ある特定の行動や能力に対する確信」は,特定の行 動を実行できるという確信と,特定の能力を有してい るという確信である。「自分の価値に対する確信」は, 自分のあり方そのものに対する確信である。これは, 自分で自分を認めるだけでなく,他者から認められる ことで,他者にとって自分が価値ある存在だと確信で きることでもある。「不確実性」は,いったん自信を持 てば永続するものではなく,その時々の状況や文脈 の影響を受けて自信の度合いが変化するということで ある。 D.自信の概念的定義 自信の概念的定義を,ある特定の行動や能力に対す る確信と,自分の価値に対する確信を含む包括的な概 念とする。また,自信は初めからあるわけではなく, 行動する過程で培われる。さらに,自信は状況や文脈 によって変化するという不確実性を持つ。 E.モデル例,境界例,相反例 1.モデル例 Aさんは病院に勤務する中堅助産師である。Aさん は,病棟での助産ケアの中心的役割を担っており,妊 産婦,後輩,上司,医師からの信頼も厚い。A さん は,現在の病棟で助産師として働くことに「自信があ る」と言う。しかし,その中でも,経腟分娩の介助に ついては,「今の医師がちゃんといてくれる状況であ れば大丈夫だけど,医師がいない状況で介助するのは 自信がない。」と言う。 Aさんが話す自信には,病棟で自分が他者から認め られているという自信と,病棟での助産実践能力に対 する自信が含まれている。これは,自信の属性である 「ある特定の行動や能力に対する確信」と「自分の価値 に対する確信」に相当する。一方,同じ経腟分娩の介 助であっても,医師がいるところでの経腟分娩であれ ば自信があるが,医師がいない状況での経腟分娩は自 信がないと言う。これは,自信の属性である,状況や 文脈の影響を受けて自信の度合いが変化するという不 確実性に相当する。この事例は,自信の属性である 「ある特定の行動や能力に対する確信」と「自分の価値 に対する確信」の全てを含む。 2.境界例 Bさんは,病院に勤務する中堅助産師である。Bさ んは,病棟での助産ケアは優れており,妊産婦からも 肯定的な評価を得ている。しかし,Bさんは今の自分 に「自信がない」と言っていた。B さんは妊娠中であ り,もうすぐ産休に入る予定である。しかし,産休が

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なければ担っていたチームリーダーや,助産外来から はずされてしまった。Bさんは,「産休に入ることで, 自分は組織にとって不要な人間だ」という思いが募 り,それが「自信がない」という発言になっていた。 Bさんは,「ある特定の行動や能力に対する確信」は あるが,「自分の価値に対する確信」はない。この事例 は,自信の全ての属性を含んでいるわけではないた め,境界例である。 3.相反例 Cさんは病院に勤務する中堅助産師である。Cさん は学校卒業後ずっと同じ病棟で働いている。C さん は,助産師としての実践能力を向上するための自己研 鑽は積まず,チームのリーダー役割を担ったり,後輩 の育成に携わったりすることに消極的である。病棟の 業務改善にも関心がなく,日々決められた仕事をこな しているという感じである。妊産婦や同僚,医師から の評価も低いが,Cさんは「何も困ってないので,今 のままでいい。」と言う。 Cさんは,助産師としての実践能力や中堅助産師と しての役割行動,自分の病棟における存在価値と いったことは考えていない。従って,自信の全ての属 性を含んでいないため,相反例とする。 F.自信の先行要件,帰結,影響因子 1.先行要件 自信/confidenceに関する先行研究によると,自信の 先行要件として,母親が母乳育児を行う中で困難さに 直面している状況(Blrth, et al. 2002),母親が育児を 行う中で,子供との関係を築いたり母親という新たな 役割と責任を担うことに対して,不安などさまざまな 感情を体験する状況(前原他,2015;Murdoch, et al. 2011; 清 水, 2015; 鈴 木 他, 2009; Warren, 2005), 企業を取り巻く環境が刻々と変化している中で, リーダーはさまざまな困難な課題に直面し,将来に不 透 明 さ や 不 安 を 感 じ て い る 状 況(池 田 他, 2005a, 2005b, 2006),看護師が勤務帯リーダーという役割を 担うことに負担やストレスを感じている状況(横田 他,2013),新人助産師が独り立ちするにあたり,自 分の未熟さを自覚し不安を抱いている状況(Cummins, et al. 2015),助産師が困難な環境で分娩期ケアという 役割を遂行することへのストレスを感じている状況 (Bedwell, et al. 2015),助産師のプライマリーケア領 域 に お け る 実 践 能 力 が 不 足 し て い る と い う 状 況 (Kessler, et al. 2015)が挙げられている。人はある役 割を遂行したり課題に取り組む時,周囲から期待を寄 せられたり,自分自身「こうありたい」という目標を 持ち,それに向かって取り組み始める。しかし同時 に,自分が周囲の期待に応えられるのか,自分の能力 がその役割や課題に取り組むのに十分なのか,取り組 んだ結果がどうなるのかに対して不安も抱く。 以上のことから,自信の先行要件を,ある役割や課 題に取り組んでいる中で,それについて周囲から期待 を寄せられたり,自分自身「こうありたい」という目 標を持っている。しかし,同時に周囲の期待に応えた り自分の目標に到達するのに,自分の能力が十分なの か,また起こる結果に不安を抱く状況とする。 2.帰結 自信/confidenceに関する先行研究によると,自信の 帰結として,思考の変化(鈴木他,2009),新たな生活 の 構築 や 適 応(畑 野, 2011; 小林,2010; 鈴 木 他, 2009;Warren, 2005),不安や抑うつ状態の低下(清水, 2015),仕事満足度の向上と専門職としてのアイデン ティティの確立(Bedwell, et al. 2015;Cummins, et al. 2015),助産師あるいは看護師としての成長(Cummins, et al. 2015;Kessler, et al. 2015;横田他,2013),自律 性の形成(Cummins, et al. 2015;高井,2011;横嶋他, 2016),リーダーシップの発揮(池田他,2005b;横田 他,2013;横山,2017),変革志向的な行動への着手 (池田他,2005a),失敗を恐れず,困難な状況への挑戦 (高井,2011,横山,2017)が挙げられている。また, 自信は行動や役割を遂行する過程で培われるものであ ると捉えられていることから,自信がつくことそのも のが帰結として挙げられている研究もある(Blrth, et al. 2002;前原他,2015)。 これらのことから,自信の帰結は,自分自身の思考 と感情の肯定的な変化や成長を実感することである。 そして,困難な状況や変革に挑戦できるようになるこ とである。 しかし,時には客観的な行動や他者からの評価と, 自分自身の実感が一致しないこともある。青山他 (2007)は,自信を対象が自分の能力に対する確信度 という言葉を用いて定義し,看護大学生の看護技術の 修得における確信度を調べた。その結果,確信度と他 者による客観的な評価は必ずしも一致するわけではな く,客観的な評価は低くても個人特性としての迷いが なければ確信度は高かった。また,三隅他(1972)は, 企業の監督の監督行動について,監督自身の自己評価 と部下の評価を比較し,認知的不一致が認められたこ

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と を 明 ら か に し た。 さ ら に, 池 田 他(2005a)は, リーダー行動に関するリーダーの自己評価と部下や上 司による他者評価との間には乖離が存在することを指 摘している。このように自己評価と他者評価は必ずし も一致しないこともあり,時には過大評価や過小評価 につながることもある。 以上のことから,自信の帰結は,自分の思考や感情 が肯定的に変化し,自分の成長を実感し,困難な状況 や変革に挑戦できるようになることである。しかし時 には客観的な行動や他者からの評価と一致しないこと があり,「(周囲から見て)できているのに,自信がな い」と感じたり,「(周囲から見て)できていないのに, 自信がある」と感じることもある。 3.影響因子 自信/confidenceに関する先行研究によると,自信の 影響因子として,困難な状況を克服する経験(伊佐, 2016;鈴木他,2009),経験とその意味づけ(Blrth, et al. 2002; Cummins, et al. 2015; 池 田 他, 2005a; Kessler, et al. 2015;高井,2011),成功体験(前原他, 2015),経験による熟達(Bedwell, et al. 2015;池田他, 2005b; 横 田 他, 2013), 専 門 的 知 識 と 技 術 の 保 有 (伊佐,2016;横山,2017),自らを客観的に評価でき る能力(畑野,2010),他者期待及び自己期待の充足度 (池田他,2005a, 2006),他者からの評価(Cummins, et al. 2015),周囲のサポート(Blrth, et al. 2002;前原 他,2015;Murdoch, et al. 2011;清水,2015;Warren, 2005),職 場 の環 境(Bedwell, et al. 2015)が 挙 げら れる。 自信には,経験が大きな影響を及ぼしている。自己 効力感の認識に影響するものとして,思考プロセスが 行動をコントロールすることで行動達成が導かれると いう「制御体験」や,他者の体験を見本にした「代理 体験」が影響する(江本,2000)。しかし,自信は単に 成功体験だけでなく,失敗体験から自己に役立つ教訓 を学習し,そして後続する経験で自己の教訓を生かし な が ら 成 功 経 験 を 経 て 獲 得 す る(池 田 他, 2005a, p. 127)と言われている。そしてこれらは代理体験で は決して獲得されるものではなく,自分自身が経験す る中で獲得されると考える。また,他者からの評価及 び他者期待の充足度や,自己期待の充足度は,自信の 先行要件に関係する。自信の先行要件は,ある役割や 課題に取り組んでいる中で,それについて周囲から期 待を寄せられたり,自分自身「こうありたい」という 目標を持つが,同時に周囲の期待に応えたり自分の目 標に到達するのに,自分の能力が十分なのか,また起 こる結果に不安を抱く状況である。このような不安を 抱きながらその役割や課題に取り組み,他者から肯定 的なフィードバックを得ることで他者からの期待に応 えられていると実感したり,自分自身の目標に近づけ ていると実感し,その結果自信が獲得される。以上の ことから,自信の影響因子は,困難な状況を克服する 経験や成功体験を含む経験の内容とその意味づけ,経 験による熟達,専門的知識と技術の保有,自らを客観 的に評価できる能力,他者期待及び自己期待の充足 度,他者からの評価,周囲のサポート,職場等その人 を取り巻く環境であると考える。 以上の自信の属性,先行要件,帰結,影響因子か ら,自信の概念の構造を図1に示す。<自信>は状況 や文脈によって変化するという「不確実性」を持つ。 図 1 では<自信>が「不確実性」という球の上に乗っ ており,その球によって「自信あり」にも「自信なし」 にも傾く様子を表現した。<先行要件>や<影響因 子>は<自信>の全体にかかっており,<帰結>は 「自信あり」から発生していると表現した。

Ⅳ.考   察

A.中堅助産師の自信の構造 概念分析で明らかになった自信の概念から,中堅助 産師の自信の構造を図2のように考えた。 <先行要件>は,中堅助産師が「中堅助産師に求め られている役割の遂行と組織の課題に取り組んでい る」状況であり,そこには「周囲からの期待と『助産 師としてこうありたい』という自分の目標」が存在し ている。しかし,同時に「周囲の期待に応えられるか 自分の目標に到達できるか,結果がどうなるかという 不安」も持っている。 <中堅助産師の自信>は,「助産実践能力と中堅助 産師に求められる役割を遂行することに対する確信」 と,「組織における自分の存在価値に対する確信」で構 成されている。中堅助産師には助産実践能力だけでな く,組織においてチームのリーダーとしての役割を担 うことが求められている。宮中他(2002)によると, 中堅助産師に求められる役割とは,病棟のリーダーや コーディネーターとして,病棟のケアを見直したり, 他職種との調整ができ,実習指導や後輩指導を行うこ とである。そして,小泉(2010)によると,病院勤務 助産師における中堅の段階では,自分の行うケアに自

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信を持て,助産師であることに満足感を抱いている一 方で,中堅として果たさなければならない役割や,自 分の能力を超えた役割を期待されることに負担感も抱 いている。従って,中堅助産師の自信には,助産実践 能力だけではなく,中堅助産師に求められている役割 遂行に対する確信もあると考える。また,「組織にお ける自分の存在価値に対する確信」とは,自分が組織 の中で価値ある存在だと実感できることである。 自信があることの<帰結>は,「助産師としての有 用感」「自分の助産ケアの質向上への意欲」「組織の改 革への意欲」である。「助産師としての有用感」とは, 自分の行ったことが対象や組織に良い影響をもたら し,それによって自分の成長も実感することである。 「自分の助産ケアの質向上への意欲」とは,自分が助 産師としてもっと成長したいと自己研鑽し続ける意欲 である。また,グレッグ(2005)は,自己の存在価値 の実感が組織コミットメントの中心であるとしてお り,自信を構成する「組織における自分の存在価値に 対する確信」があると,組織に貢献しようという思い を強く持ち,「組織の改革への意欲」につながると考え る。このように,中堅助産師の自信は,自身の成長だ けでなく,組織の成長にもつながると考える。 自信の<影響因子>は,「失敗経験の克服や成功体 験を含む助産師としての経験の内容とその意味づけ」 「ライフイベントが仕事に与える影響」,「助産師とし ての経験による熟達」「助産実践に関する専門的知識 と技術の保有」「自らを客観的に評価できる能力」「他 者期待及び自己期待の充足度」「ケアの対象者,同僚, 上司,医師からの評価」「周囲のサポート」「組織の体 制,周産期医療の動向による組織の変化」である。中 堅となる時期は結婚や出産といった個人のライフイベ ントが重なり,それによって助産師としてのキャリア を中断することに焦りや不安を感じる一方で,その経 験が助産師として働く上で役立つことも多い。従っ て,「経験の内容とその意味づけ」には,助産師として の経験だけでなく,個人のライフイベントの経験も含 㸺 ඛ ⾜ せ ௳ 㸼 ᙺ ๭ ࡸ ㄢ 㢟 ࡟ ྲྀ ࡾ ⤌ ࢇ ࡛ ࠸ ࡿ ࠋ ࿘ ᅖ ࠿ ࡽ ࡢ ᮇ ᚅ ࡜ ⮬ ศ ࡢ ┠ ᶆ ࡀ ࠶ ࡿ ࠋ ᮇ ᚅ ࡟ ᛂ ࠼ ࡽ ࢀ ࡿ ࠿ ⮬ ศ ࡢ ┠ ᶆ ࡟ ฿ 㐩 ࡛ ࡁ ࡿ ࠿ ࠊ ⤖ ᯝ ࡀ ࡝ ࠺ ࡞ ࡿ ࠿ ࡜ ࠸ ࠺ ୙ Ᏻ ࡀ ࠶ ࡿ ࠋ 㸺 ᖐ ⤖ 㸼 ⮬ ศ ࡢ ᛮ ⪃ ࡸ ឤ ᝟ ࡢ ⫯ ᐃ ⓗ ࡞ ኚ ໬ ࡜ ᡂ 㛗 ࡢ ᐇ ឤ ᅔ 㞴 ࡞ ≧ ἣ ࡸ ኚ 㠉 ࡟ ᣮ ᡓ ࡛ ࡁ ࡿ ࡼ ࠺ ࡟ ࡞ ࡿ ࠋ 㸺 ⮬ ಙ 㸼 㸺 ᙳ 㡪 ᅉ Ꮚ 㸼 ᅔ 㞴 ࡞ ≧ ἣ ࢆ ඞ ᭹ ࡍ ࡿ ⤒ 㦂 ࡸ ᡂ ຌ య 㦂 ࢆ ྵ ࡴ ⤒ 㦂 ࡢ ෆ ᐜ ࡜ ࡑ ࡢ ព ࿡ ࡙ ࡅ ⤒ 㦂 ࡟ ࡼ ࡿ ⇍ 㐩 ᑓ 㛛 ⓗ ▱ ㆑ ࡜ ᢏ ⾡ ࡢ ಖ ᭷ ⮬ ࡽ ࢆ ᐈ ほ ⓗ ࡟ ホ ౯ ࡛ ࡁ ࡿ ⬟ ຊ ௚ ⪅ ᮇ ᚅ ཬ ࡧ ⮬ ᕫ ᮇ ᚅ ࡢ ඘ ㊊ ᗘ ௚ ⪅ ࠿ ࡽ ࡢ ホ ౯ ࿘ ᅖ ࡢ ࢧ ࣏ ࣮ ࢺ ⫋ ሙ ➼ ࡑ ࡢ ே ࢆ ྲྀ ࡾ ᕳ ࡃ ⎔ ቃ ≉ ᐃ ࡢ ⾜ ື ࡸ ⬟ ຊ ࡟ ᑐ ࡍ ࡿ ☜ ಙ ⮬ ศ ࡢ ౯ ್ ࡟ ᑐ ࡍ ࡿ ☜ ಙ ⮬ ಙ ࡞ ࡋ ⮬ ಙ ࠶ ࡾ ୙ ☜ ᐇ ᛶ ≧ ἣ ࣭ ᩥ ⬦ 図1 「自信」の概念の構造

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まれると考える。また,現在の周産期医療の動向の著 しい変化を受けて,分娩取り扱いの制限や休止等,組 織も変化している。そして助産師の働き方も組織の変 化に大きな影響を受けている。従って,「職場等その 人を取り巻く環境」には,中堅助産師が働く「組織の 体制」だけでなく,「周産期医療の動向による組織の変 化」も含まれると考える。 B.中堅助産師の自信の構造を用いた研究の方向性 現在,全国で延べ11,002人の助産師が助産実践能力 習熟段階(クリニカルラダー)のレベルIIIに認証され ている(日本助産評価機構,2018)。レベル III に認証 された助産師は自律して助産実践業務が行える助産師 であり,まさに中堅助産師に求められることと一致す る。クリニカルラダーで認証される内容は,「助産師の コア・コンピテンシー」(日本助産師会,2009)で提言 されている助産実践能力である。しかし,中堅助産師 の自信には,助産実践能力の他にも,組織から求めら れている中堅助産師としての役割遂行,自分の組織に おける存在価値が含まれ,助産師が「自信がある」ある いは「自信がない」と言う時には,必ずしも助産実践能 力に対してだけとは限らない。従って,中堅助産師の 自信の構造を用いて,中堅助産師の自信を測定する尺 度を開発することで,中堅助産師の自信の実態を明ら かにすることができると考える。また,その尺度を用 いて助産師としての自信について一つ一つ自分自身に 問いかけることによって,現在の助産師としての自分 を客観的に振り返ることもできる。それが自己研鑽に つながると考える。さらに,自信は状況や文脈の影響 を受けやすいという不確実性を持つ。つまり,現在の その人の自信はその人が置かれている状況の影響を受 けている。自信とそれに影響する因子との関係性を明 㸺 ඛ ⾜ せ ௳ 㸼 ୰ ሀ ຓ ⏘ ᖌ ࡟ ồ ࡵ ࡽ ࢀ ࡚ ࠸ ࡿ ᙺ ๭ ࡢ 㐙 ⾜ ࡜ ⤌ ⧊ ࡢ ㄢ 㢟 ࡟ ྲྀ ࡾ ⤌ ࢇ ࡛ ࠸ ࡿ ࠋ ࿘ ᅖ ࠿ ࡽ ࡢ ᮇ ᚅ ࡜ ࠕ ຓ ⏘ ᖌ ࡜ ࡋ ࡚ ࡇ ࠺ ࠶ ࡾ ࡓ ࠸ ࠖ ࡜ ࠸ ࠺ ⮬ ศ ࡢ ┠ ᶆ ࡀ ࠶ ࡿ ࠋ ࿘ ᅖ ࡢ ᮇ ᚅ ࡟ ᛂ ࠼ ࡽ ࢀ ࡿ ࠿ ⮬ ศ ࡢ ┠ ᶆ ࡟ ฿ 㐩 ࡛ ࡁ ࡿ ࠿ ࠊ ⤖ ᯝ ࡀ ࡝ ࠺ ࡞ ࡿ ࠿ ࡜ ࠸ ࠺ ୙ Ᏻ ࡀ ࠶ ࡿ ࠋ 㸺 ᖐ ⤖ 㸼 ຓ ⏘ ᖌ ࡜ ࡋ ࡚ ࡢ ᭷ ⏝ ឤ ⮬ ศ ࡢ ຓ ⏘ ࢣ ࢔ ࡢ ㉁ ྥ ୖ ࡬ ࡢ ព ḧ ⤌ ⧊ ࡢ ᨵ 㠉 ࡬ ࡢ ព ḧ 㸺 ୰ ሀ ຓ ⏘ ᖌ ࡢ ⮬ ಙ 㸼 㸺 ᙳ 㡪 ᅉ Ꮚ 㸼 ኻ ᩋ ⤒ 㦂 ࡢ ඞ ᭹ ࡸ ᡂ ຌ య 㦂 ࢆ ྵ ࡴ ຓ ⏘ ᖌ ࡜ ࡋ ࡚ ࡢ ⤒ 㦂 ࡢ ෆ ᐜ ࡜ ࡑ ࡢ ព ࿡ ࡙ ࡅ ࣛ ࢖ ࣇ ࢖ ࣋ ࣥ ࢺ ࡀ ௙ ஦ ࡟ ୚ ࠼ ࡿ ᙳ 㡪 ຓ ⏘ ᖌ ࡜ ࡋ ࡚ ࡢ ⤒ 㦂 ࡟ ࡼ ࡿ ⇍ 㐩 ຓ ⏘ ᐇ ㊶ ࡟ 㛵 ࡍ ࡿ ᑓ 㛛 ⓗ ▱ ㆑ ࡜ ᢏ ⾡ ࡢ ಖ ᭷ ⮬ ࡽ ࢆ ᐈ ほ ⓗ ࡟ ホ ౯ ࡛ ࡁ ࡿ ⬟ ຊ ௚ ⪅ ᮇ ᚅ ཬ ࡧ ⮬ ᕫ ᮇ ᚅ ࡢ ඘ ㊊ ᗘ ࢣ ࢔ ࡢ ᑐ ㇟ ⪅ ࠊ ྠ ൉ ࠊ ୖ ྖ ࠊ ་ ᖌ ࠿ ࡽ ࡢ ホ ౯ ࿘ ᅖ ࡢ ࢧ ࣏ ࣮ ࢺ ⤌ ⧊ ࡢ య ไ ࠊ ࿘ ⏘ ᮇ ་ ⒪ ࡢ ື ྥ ࡟ ࡼ ࡿ ⤌ ⧊ ࡢ ኚ ໬ ຓ ⏘ ᐇ ㊶ ⬟ ຊ ࡸ ୰ ሀ ຓ ⏘ ᖌ ࡟ ồ ࡵ ࡽ ࢀ ࡿ ᙺ ๭ ࢆ 㐙 ⾜ ࡍ ࡿ ࡇ ࡜ ࡟ ᑐ ࡍ ࡿ ☜ ಙ ⤌ ⧊ ࡟ ࠾ ࡅ ࡿ ⮬ ศ ࡢ Ꮡ ᅾ ౯ ್ ࡟ ᑐ ࡍ ࡿ ☜ ಙ ⮬ ಙ ࡞ ࡋ ⮬ ಙ ࠶ ࡾ ୙ ☜ ᐇ ᛶ ≧ ἣ ࣭ ᩥ ⬦ 図2 「中堅助産師の自信」の概念の構造

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らかにすることで,現在の中堅助産師の置かれている 状況や課題も明らかにすることができると考える。 病院の周産期医療は多くの課題を抱えている。この 中で,中堅助産師の多くは自信のなさを抱えながら も,自分の役割を遂行している。現在の病院の周産期 医療が抱える課題を解決するためには,組織の中心的 役割を担う中堅助産師全体の活性化が急務であると考 える。そのために,中堅助産師の自信と,それに影響 する因子を明らかにすることで,現在の中堅助産師の 自信の実態と,その背景にある課題を見出すことがで きる。それによって,中堅助産師に対する継続教育や 支援体制を確立する一助になると考える。 C.今後の課題 一方,自信には自己過信の意味もある。筆者が話を 聴いた中堅助産師の中にも,自分の現状に甘んじるこ となく自己研鑽し続けなければいけないという思いか ら「自信がない」と語っている者もおり,自信を自己 過信として捉える場合もあることが明らかになった。 今後は,「自信がない」と語ることに込められた意味も 明らかにし,概念分析で明らかにされた自信の帰結に つながるような中堅助産師に必要な自信について,さ らに検討する必要がある。

Ⅴ.結   論

本研究は,自信の概念を概念分析によって明らかに し,この概念を適用して中堅助産師の自信の構造とそ の構造を用いた研究の方向性を考察した。その結果, 以下のことが明らかになった。 自信とは,ある特定の行動や能力に対する確信と, 自分の価値に対する確信を含む包括的な概念であり, 状況や文脈によって変化するという不確実性を持つも のである。そして自信を持つことによって,自分の思 考や感情が肯定的に変化し,自分の成長を実感し,困 難な状況や変革に挑戦できるようになる。また,自信 は,経験の内容とその意味づけ,経験による熟達,必 要な知識と技術の保有,客観的に自己を評価できる能 力,他者期待及び自己期待の充足度,周囲のサポート によって影響を受ける。 自信の概念を適用して中堅助産師の自信の構造を提 示することで,中堅助産師の自信の実態を明らかにす るための尺度を開発することができることが示唆され た。また,自信の不確実性という特性を活かして,自 信とそれに影響する因子との関係性を明らかにするこ とによって,現在の中堅助産師の自信に影響する課題 も明らかにすることができると示唆された。今後は, 中堅助産師が「自信がない」と語る言葉に込められた 意味について明らかにし,中堅助産師に必要な自信に ついて,さらに検討する必要がある。 謝 辞 本研究論文をまとめるにあたりご指導下さいまし た,日本赤十字看護大学佐々木幾美教授に心より感謝 申し上げます。 利益相反 本研究に利益相反はありません。 文 献 青山美智代,伊藤明子,三毛美恵子,須藤聖子,林有学 (2007).看護技術の修得における確信度を用いた認 知領域と精神運動領域の評価.日本看護学教育学会 誌,17(1),1-10. 有田真己,竹中晃二,島崎崇史(2014).高齢者における 在宅運動セルフ・エフィカシー尺度の開発.理学療 法学,41(6),338-346.

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