マト栽培における現地実証の取組みを紹介する. 2 自動調光システムとは 1)システムの概要 本システムは制御部と駆動部に分けられる.制御 部は日射量センサーと制御盤で構成され(商品名: 日射操作くん,製造:㈱寿エンジニアリング,取扱: 大信産業㈱),設定した感知間隔で日射量を感知し, 制御盤の設定値に基づき駆動部の遮光資材を自動開 閉する.また,AC200V 用の制御盤は 1 台で 1 基, DC24V 用の制御盤は 2 基のモーターを制御でき, DC24V 用は増設器により多数のモーターが接続可 能である.駆動部は,DC24V または AC200V の駆 動モーターで内張り資材を開閉する市販のカーテン 装置が利用でき,一般的なアーチ型パイプハウスや 重装備なガラス施設にも設置が可能である(第 2 図). なお,本システムに関して,「トマト栽培用自動 調光制御方法およびその装置」(特許 6210384 号, 1 は じ め に 広島県のトマトおよびミニトマトの生産は,栽培 面積 57 ha,生産量 6,944 t,生産額 25.3 億円(2017 年) であり,そのうち県中北部高冷地の夏秋期での生産 が約 60% を占めている.しかし,県内の高冷地に おいても,近年の温暖化に伴い,夏季の高温や強日 射による着果不良や裂果,尻腐れ果等の障害果が多 発し,収量および品質の低下が問題となっている. 一般的な対策としては,寒冷紗等の被覆による遮 光や吹付け方式の遮光資材の活用等が挙げられる が,継続的な遮光は曇雨天が続くと,日射量不足に よる徒長,光合成量の不足による収量低下の発生が 懸念される.そこで,広島県立総合技術研究所農業 技術センター(以下,広島総研農技セ)は,中小規 模のパイプハウスにも導入でき,天候や日射量に合 わせて遮光資材を自動開閉することでハウス内の光 環境条件を最適な条件に近づける「自動調光システ ム」を開発した(第 1 図). ここでは,自動調光システムの概要と夏秋ミニト 新近畿中国四国農業研究 3 67-70,(2020) 〔普及活動レポート〕
自動調光システムを活用した夏秋トマト
およびミニトマトの生産安定
山口寛直
広島県西部農業技術指導所 【 A 】 【 B 】 昼:保温資材を開放 第 1 図 「自動調光システム」の概要 ※原図は広島総研農技セ 第 2 図 「自動調光システム」の構成 ※原図は広島総研農技セ2)システムによる効果 広島総研農技セが 2014~2015 年に場内(東広島 市,標高 224 m)において実施した夏秋トマトの栽 培試験では,約 15% の増収効果が確認されている (第 4 図). また,強日射で果皮が硬化して発生する裂果や高 温時の尻腐れ果の発生が,軽減される傾向にある. ただし,2014 年の桃太郎サニーにおいては,規格外 果の発生や裂果率に明確な差は認められない(第 4 図). 3 夏秋ミニトマト栽培における現地実証 1)産地の概況,背景 西部農業技術指導所(以下,西部指導所)管内の 山県郡北広島町および安芸高田市では,夏秋ミニト マトを栽培する農業者が JA 広島北部ミニトマトグ ループを組織し,活動している(栽培戸数:36 戸, 栽培面積:3.8 ha,共販額:1.0 億円,2018 年). 西部指導所では,本グループを対象とし,「新規 就農者の確保・育成」と「収量・品質の向上による 担い手農業者の経営確立」を目標に普及活動を展開 している. 北広島町の「新規就農者認定研修生制度」と連携 した新規就農者の確保・育成の取組みでは,西部指 導所が座学や営農計画の作成を,グループ内のトッ プクラスの農業者が実地研修を分担している.2012 年の制度開始以降,ミニトマト栽培では 3 人の若手 の新規就農者が定着している(研修制度全体では 9 人). 一方,近年の温暖化に伴い,夏季の高温や強日射 による着果不良や障害果の発生が問題となってい る.特に,主力品種‘サンチェリーピュア’での「つ やなし果」の多発は深刻であり,担い手農業者の経 営確立のみならず,産地振興の大きな問題となって いる. 2)つやなし果の発生要因 つやなし果は,①着果管理が不十分なこと,②高 温のため受粉できないこと,もしくは着果しても肥 大しないこと,の 2 つが主な発生要因として考えら れている. 特許権者:広島県)および「ハウス栽培制御装置及 び方法」(特許 6252959 号,特許権者:広島県)の 2 件の特許が登録されている. 本システムは,設定した日射量の上限値および下 限値に応じて遮光資材が自動的に開閉するものであ る(第 3 図).設定した上限値および下限値の間の 日射量を不感帯とし,この範囲で日射量が増減して も,それまでの状態を維持することにより,遮光資 材の頻繁な開閉によるトラブルを避けることが可能 となっている. また,本システムは日射による制御の他に時間制 御も可能である.季節と目的に応じて資材を使い分 けることにより,夏季の日射量制御による遮光,冬 季の時間制御による保温が可能である(第 1 図). さらに,遮光と保温の兼用資材の利用により,日中 の遮光と夜間の保温を組み合わせた施設内管理も可 能である. 遮光資材を開閉する際の設定値(日射量の上限値 と下限値)および感知間隔は,栽培する品目や環境 条件に応じて自由に設定できる.開閉設定値は,光 強度および気温と光合成速度や蒸散速度との測定結 果に基づいて決定する.感知間隔は,光強度の増減 に伴う光合成速度と蒸散速度の変化を指標として決 定する.感知間隔は 1 分単位で自由に設定できるが, 施設内の光環境を均平化するため,遮光資材の展開 (収納)に要する時間より長く設定することが望ま しい.トマトでは,光強度の変化に伴う光合成速度 と蒸散速度の応答は非常に速く,いずれも 2 分でほ ぼ定常状態に達する(データ省略).このことから, 感知間隔は 2 分が最適であるが,前述のとおり遮光 資材の展開(収納)に要する時間を考慮して,5~ 10 分程度に設定することが適切である. 第 3 図 システムの一日の動作イメージ ※原図は広島総研農技セ 新近畿中国四国農業研究 第 3 号(2020) 68
表の通りであった. ハウス内照度の栽培期間を通しての変化幅は,慣 行区に比べ調光区が小さくなった(データ省略). つやなし果の発生率は慣行区に比べ調光区が低く なり,本システムが,つやなし果の発生抑制に有効 であることが確認された.調光区の可販果収量およ び総収量は慣行区と同程度であり,本システムによ る増収効果は確認されなかった(第 1 表). 従来,生産者は日射量を気にしながら遮光資材を 手動開閉しており,本システムの導入により,この 労力が削減されることを高く評価した . ①はホルモン処理を丁寧に行うことによって発生 を軽減することが可能である.②の対策としては, 遮光資材の利用,換気や循環扇による送風等の暑熱 対策が有効である. 3)システムの現地実証の取組みと成果 本システムによる,つやなし果の発生抑制効果お よび増収効果の確認を目的に,広島総研農技セと連 携し,2018 年に現地実証を行った. 現地実証は,新規就農者認定研修生制度を利用し て 2016 年に就農した北広島町(旧 千代田町)の O 氏のハウス(5 a × 2 棟)で行った.耕種概要は第 1 0 10 20 30 0 2 4 6 8 10 12 無遮光 遮光 調光 無遮光 遮光 調光 無遮光 遮光 調光 無遮光 遮光 調光 裂 果率 ( % ) 収 量 ( kg / 株 ) 可販果 規格外 裂果率 りんか409 桃太郎サニー りんか409 桃太郎サニー 2014 2015 第 4 図 遮光方法および品種が夏秋トマトの収量に及ぼす影響(広島総研農技セ) ※規格外品: 尻腐れ果,乱形果,チャック果,窓空き果,10 mm 以上の放射状裂果,同心円状裂果の 合計重量 【耕種概要】 2014 年:播種 3/26,定植 5/14,収穫 6/27~12/15 2015 年:播種 3/25,定植 5/11,収穫 6/26~11/30 栽植密度:200 株 /a(株間 35 cm) 養液土耕によるベッド栽培(0~300 mgN/ 株・日) 【遮光区および調光区の概要】 遮光資材の遮光率:35%(ら~くらくスーパーホワイト,製造:日本ワイドクロス㈱) 遮光区の遮光:7/19~8/31 調光区の稼働:5/11~11/30 【調光区の設定】 2014 年:下限 45 klx,上限 65 klx,感知間隔 5 分 2015 年:下限 50 klx,上限 67.5 klx,感知間隔 10 分 の設定により,自動で日射を制御した. 69 山口:自動調光システムを活用したトマトの生産安定
り作業環境の改善につながるとの評価を得ており, この点から本システムの普及性は高いものと考え る. 今後は,夏秋トマトおよびミニトマトだけではな く,県北部の夏イチゴや県中部の水耕ネギへの普及 が考えられる.また,県南部のハウスレモンや収穫 期後半が初夏にあたる促成トマト等への展開も期待 できる. 4 普及と今後の展開 夏秋ミニトマトの現地実証では,本システムによ る増収効果は確認できなかった.しかしながら,つ やなし果の発生率は低下しており,本システムの有 用性が一定程度確認できたものと考える. さらに,ハウス内の強日射が回避されることによ 遮 光 処 理 可 販 果 収 量 (g ) 総 収 量 (g ) つ や な し 果 率 ( % ) 慣 行 区 1 , 1 8 2 ± 2 7Z 1 , 2 3 7 ± 2 5 2 . 5 ± 0 . 8 調 光 区 1 , 1 8 9 ± 3 5 1 , 2 1 3 ± 3 7 0 . 4 ± 0 . 7 第 1 表 遮光方法の違いが夏秋ミニトマトの収量およびつやなし果の発生に及ぼす影響 ※収量:株毎に任意の 3 果房を選定して 5 株調査した. Z:標準誤差 【耕種概要】 品種:‘サンチェリーピュア’ 定植:4/19,収穫:6/26~8/31 仕立て方法:1 株 2 本仕立て 肥培管理:現地慣行に基づく養液土耕栽培 ホルモン処理: トマトトーン(石原バイオサイエンス㈱)100 倍液を,開花した花に 1 週間に 1 回 0.5 ml 噴霧した. 【慣行区および調光区の概要】 遮光資材の遮光率:35%(ら~くらくスーパーホワイト,製造:日本ワイドクロス㈱) 慣行区の遮光:6~8 月下旬の間,遮光資材を手動開閉した. 調光区の稼働;4/19~8/31 の間,上限 85 klx,下限 65 klx で自動で日射を制御した. 新近畿中国四国農業研究 第 3 号(2020) 70