• 検索結果がありません。

2. 強震記録と表面波の伝播方向図 -1 に新潟県中越地震の震央と観測点 ( 都土研構内 ) の位置を示す 24 年 1 月 23 日に発生した新潟県中越地震 (M6.8 震源深さ 13km 震央位置 N E ) では 新潟県川口町で最大加速度 1675gal(EW 方

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "2. 強震記録と表面波の伝播方向図 -1 に新潟県中越地震の震央と観測点 ( 都土研構内 ) の位置を示す 24 年 1 月 23 日に発生した新潟県中越地震 (M6.8 震源深さ 13km 震央位置 N E ) では 新潟県川口町で最大加速度 1675gal(EW 方"

Copied!
6
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

平17. 都土木技研年報 ISSN 0387-2416 Annual Report

I.C.E. of TMG 2005

18.東京で観測された新潟県中越地震強震波形の長周期成分解析

Long Period Ingredient Analysis of the Mid Niigata Prefecture Earthquake in 2004 Wave Form Observed in Tokyo

地象部 廣島 実、小川 好、岡田佳久 1. はじめに この報告は、2004 年 10 月 23 日に発生した新潟県 中越地震の際に、東京で観測された強震記録の長周 期成分について解析したものである。 地震波は、実体波と表面波に大別される。このう ち、一般に耐震設計上問題となる大きな地震動は、 震源が近い場合の実体波、特に横ゆれの原因となる SH波である。一方、表面波は、震源近くでは実体 波の振幅に比べて大きくないことから、耐震工学上 問題とならないが、震源から遠く離れた堆積平野な どの観測地点では、表面波の伝播するときの距離減 衰が実体波に比べて小さいことや、卓越周期が深い 堆積層の地盤を反映することなどの理由で、長周期 の表面波が大きな振幅で観測されることがある1)2) この種の表面波は、その卓越周期が実体波の約 1 秒以下に対し、関東平野では数秒~10 秒程度と長周 期であるのが特徴であり、近年の構造物の大型化に ともない、耐震工学の対象の範疇になってきている。 実際、過去の被害地震の中には表面波によるものと 考えられる事例がいくつか報告例えば 3)されており、東 京が位置する関東平野などの堆積平野では、地震の 発生位置によっては、表面波による地震被害も懸念 される。 先般の新潟県中越地震の震央は、東京から約 200km の遠方に位置し、震源深さも 13km と比較的浅い地震 であった。これは、上述した長周期が卓越する地震 条件と合致しており、当所で得られた新潟県中越地 震の強震波形では、周期 4~6 秒前後の長周期帯に表 面波に起因すると考えられる卓越周期が現れている。 一方、阪神淡路大震災以後、正確な地震動予測の ための深部地下構造調査が、全国の主要都市部を対 象に各自治体によっておこなわれた。この成果とし て、観測地点における地震基盤面までの深部地下構 造が明らかにされ 4)、表面波の理論分散曲線や卓越 周期を解析的に求めることが可能となった。 本報告では、当所で得られた波形のうち、主要動 に後続する長周期の波動が表面波(ラブ波とレイリ ー波)であることを確認するとともに、上述した深 部地下構造モデル等を用い、長周期成分の卓越周期 について解析を試みた。 新潟 茨城 栃木 群馬 埼玉 山梨 神奈川 千葉 長野 東京 N35° 観測点 震央 新潟市 長岡市 前橋市 さいたま市 N36° N37° N38° E138° N35° N36° N37° N38° E138° E140° 長野市 日本海 太平洋 E139° E139° E140° 0 50 100 150km 震源位置:北緯37°17.3’ 東経138°52.2’ 震源深さ:13km 地震の規模:M6.8 位置:北緯35°39’ 東経139°49’ 機種:SMAC-MDU (都土研構内:東京都江東区新砂1) 福島 図-1 新潟県中越地震の震央と観測点(都 土研構内)の位置

(2)

2. 強震記録と表面波の伝播方向 図-1 に新潟県中越地震の震央と観測点(都土研構 内)の位置を示す。2004 年 10 月 23 日に発生した新 潟県中越地震(M6.8、震源深さ 13km、震央位置 N37° 17.3’ E138°52.2’)では、新潟県川口町で最大加 速度 1675gal(EW 方向)、震度7を記録した。観測 点(位置 N35°39’ E139°49’、 機種:SMAC-MDU) が位置する東京は、震央から約 200km の南東方向で あり、震度4(大手町)を記録している。図-2 に観測 点での強震記録を示す。加速度時刻歴波形について みると、NS 成分で最大加速度 20gal 程度であるが、 継続時間 100 秒付近以降にも振幅が継続している。 フーリエスペクトルは、各成分とも実体波に起因す ると考えられる卓越周期が 1 秒以下に見られるもの の、NS 成分で 5.5 秒、EW 成分で 6.5 秒、UD 成分で 3.5、5.0 秒付近に卓越周期が認められる。これは、 実体波と異なる表面波が励起された結果の卓越周期 と推測される。 図-3 に、新潟県中越地震の震央からの表面波の伝 播方向を示す。観測地点からみた震央方向は、真北 から約 30°の北西方向である。表面波が震央方向か ら伝播されると仮定すれば、その進行方向は概ね北 から南方向である。したがって、表面波のうちレイ リー波については、その振動の運動方向が表面波の 進行方向の鉛直面となるので、強震記録の NS, UD 成 分に顕著に現れることになる。同様に、ラブ波の振 動の運動方向は表面波の進行方向に直角の水平面と なるため、強震記録の EW 成分に着目する。 3.強震記録の長周期成分解析 3.1 粘弾性(1 自由度1質点系)モデルの速度応 答波形 図-2 の観測点の強震波形の各周期成分の特性を抽 出するため、1自由度質点系の応答が狭帯域フィル ターになることを利用して、固有周期が 1 から 10 秒 までの応答波形を減衰定数 10%として計算した。図 -4(1)(2)(3)に3成分の速度応答波形を示す。周期 1 秒の応答波形では、各成分とも継続時間の初期に主 要動が認められ、継続時間とともに振幅が収束して いく典型的な実体波の応答を示している。一方、周 期 5 秒以上になると、各成分とも継続時間 100 秒付 近から大きな振幅が認められる。これは、実体波よ り遅れてくる表面波の長周期成分が励起された結果 と考えられる。 図-5 は、強震記録の 50~100 秒と 100~150 秒を 抽出した各成分についてのフーリエスペクトルであ る。NS 成分については周期 5.5 秒の卓越周期が、EW N(北) 南(S) 西(W) 東(E) 表面波の伝 播方向 ラブ波による振動の運動方向 レイリー波による振動の運動方向 北(N) 南(S) 上(U) 下(D) 表面波の伝播方向 レイリー波による振動の運動方向 図-3 表面波の伝播方向 -30 -20 -10 0 10 20 30 加 速度 (g al ) 土研:GL-NS -30 -20 -10 0 10 20 30 加 速度 (g al ) max:15.8gal 土研:GL-EW -30 -20 -10 0 10 20 30 0 20 40 60 80 100 120 140 160 180 時間(sec) 加 速度 (g al ) max:5.51gal 土研:GL-UD max:20.1gal 0 5 10 15 20 25 30 35 40 0.1 1 10 周期(sec) フ ー リ エ ス ペ ク トル (g al * s) 土研:GL-NS 土研:GL-EW 土研:GL-UD 図-2 観測点(土研)の加速度時刻歴波形とフーリエ スペクトル

(3)

成分では周期 6.5 秒の卓越周期が 50~100 秒に比べ、 100~150 秒間に大きな振幅となっている。これは、 長周期成分が遅れて励起されていることを示してお り、地震継続時間の後半部のほとんどの揺れは表面 波によるものであったことを示唆している。一方、 UD 成分については、継続時間 50 秒以降に長周期成 分が卓越しており、50~100 秒間では周期 3.5 秒に、 100~150 秒間では周期 5 秒に卓越周期が認められる。 3.2 観測された長周期成分の位相差 図-6 は、図-4 で示した 1 質点系の速度応答波形の うち、周期 5~10 秒の各周期について観測記録 50~ 100 秒の部分を抽出し、NS 成分と UD 成分を比較した ものである。この図から、すべての周期で NS 成分の 位相に対して UD 成分の位相差は概ね(1/2)πとな っている。したがって、地表面の運動方向は N→D→ S→U の順番となり、表面波の進行方向 N→S に対し て逆回転の円運動(または楕円運動)となる。これ 土研NS:1秒 土研NS:2秒 土研NS:3秒 土研NS:4秒 土研NS:5秒 土研NS:6秒 土研NS:7秒 土研NS:8秒 土研NS:9秒 土研NS:10秒 0 20 40 60 80 100 120 140 160 180 200 時間(sec) 図-4(1) 各周期の速度応答波形(NS 成分) 土研EW:1秒 土研EW:2秒 土研EW:3秒 土研EW:4秒 土研EW:5秒 土研EW:6秒 土研EW:7秒 土研EW:8秒 土研EW:9秒 土研EW:10秒 0 20 40 60 80 100 120 140 160 180 200 時間(sec) 図-4(2) 各周期の速度応答波形(EW 成分)

(4)

は、レイリー波の地表付近での理論的な運動方向と 一致しており、観測された長周期成分の NS、UD 方向 が、レイリー波の挙動である可能性を裏付けている。 4. 深部地下構造モデルから計算的に求めた理 論分散曲線および表面波の卓越周期 ここでは、地震基盤面を含む深度約 3000m付近ま でを対象とした関東平野(東京都)地下構造調査 4) で明らかになった地下構造モデルを用い、観測地点 での表面波の理論分散曲線および卓越周期について 解析を行った。 ここで表面波の分散とは、実体波にはない表面波 特有の性質で、周波数によって速度が異なることを いう(速度の周波数依存性)。この分散は、地下構 造に対応して決まることがわかっており、下式の関 係がある。 )} , , ( ) 2 , 2 , 2 ( ), 1 , 1 , 1 {( ) ( n hn Vsn h Vs h Vs F fn f V     ・・・          ここに Vs は S 波速度、h は層厚、ρは密度である (ただし、レイリー波は、P 波速度 Vp も必要)。すな 土研UD:1秒 土研UD:2秒 土研UD:3秒 土研UD:4秒 土研UD:5秒 土研UD:6秒 土研UD:7秒 土研UD:8秒 土研UD:9秒 土研UD:10秒 0 20 40 60 80 100 120 140 160 180 200 時間(sec) 図-4(3) 各周期の速度応答波形(UD 成分) 土研:NS 0 0.05 0.1 0.15 0.2 0.25 0.3 0.35 0.4 1 10 周期(sec) フ ー リ エ ス ペ ク トル (g al ・ s) 50-100(sec) 100-150(sec) 土研:UD 0 0.02 0.04 0.06 0.08 0.1 0.12 0.14 1 10 周期(sec) フ ー リ エ ス ペ ク トル (g al ・ s) 50-100(sec) 100-150(sec) 土研:EW 0 0.05 0.1 0.15 0.2 0.25 0.3 1 10 周期(sec) フ ー リ エ ス ペ ク トル (g al ・ s) 50-100(sec) 100-150(sec) 図-5 観測記録(50-150sec)のフーリエスペクトル

(5)

わち、地下構造の各パラメータが既知であれば、分 散曲線は計算で求めることができる。 表-1 は、理論分散曲線を求める際に使用した地下 構造モデルと計算条件の一覧である。深度 170m 以深 (層番号 5 以上)については、上記調査結果(強震観測 地点の近傍である江東区東陽で実施された微動アレ ー探査結果による)を元に設定した。観測地点付近の 深部地下構造についてみると、深度 2500m 以深(層番 号 8)が地震基盤面とされる先新第三系基盤である。 その上部(層番号 7)に層厚約 800m の三浦層群、さら に上部(層番号 6)は下部上総層群である。なお、深 度 170m より以浅については、観測地点の位置で実施 された大深度地盤ボーリング調査結果 5)をもとに設 定した。 図-7 に理論分散曲線の計算結果を示す。なお、表 面波の位相速度 U の計算は、水平な地層モデルに対 して平面で伝播する表面波を想定した正規モード解 で行った。また、群速度 U は円振動数ωの波数ξに よる微分(dω/dξ)で求まり、位相速度 c との関係は 下式のとおりである。 c d d U   / , ξ   / ここに、上式で求めた群速度Uの極値が、卓越周 期(卓越振動数)となる。図に示す計算結果では、 レイリー波の卓越周期は約 4 秒である。これは、前 述した強震記録のレイリー波の挙動と考えられる NS 成分および UD 成分の卓越周期 5.5 秒、5 秒に対し、 土研:5秒 -0.06 -0.04 -0.02 0 0.02 0.04 0.06 50 60 70 80 90 100 時間(sec) 速度 (m / s) NS UD 土研:6秒 -0.06 -0.04 -0.02 0 0.02 0.04 0.06 50 60 70 80 90 100 時間(sec) 速度 (m / s) 土研:7秒 -0.06 -0.04 -0.02 0 0.02 0.04 0.06 50 60 70 80 90 100 時間(sec) 速度 (m / s) 土研:8秒 -0.04 -0.03 -0.02 -0.01 0 0.01 0.02 0.03 0.04 50 60 70 80 90 100 時間(sec) 速度 (m / s) 土研:9秒 -0.04 -0.03 -0.02 -0.01 0 0.01 0.02 0.03 0.04 50 60 70 80 90 100 時間(sec) 速度 (m / s) 土研:10秒 -0.04 -0.03 -0.02 -0.01 0 0.01 0.02 0.03 0.04 50 60 70 80 90 100 時間(sec) 速度 (m / s) 図-6 NS-UD 成分波形比較

(6)

概ね近い値となっている。同様に、ラブ波の計算結 果については卓越周期約 7 秒であり、強震記録のう ちラブ波の運動方向を顕著に示す EW 成分の卓越周 期 6.5 秒と近い値となった。 5. まとめ 検討結果をまとめると次のとおりである。 東京で観測された新潟県中越地震の強震記録では、 表面波によると推定される長周期成 分が卓越し、観測地点と震央方向の関 係から、強震記録の NS、UD 成分をレ イリー波、EW 方向をラブ波の運動方向 と仮定して各成分の周期特性を解析 した。 ① その結果、継続時間 100~150 秒 の後半部分では、周期 4 秒以上の長 周期の卓越周期が励起され、その周 期は、NS 成分で 5.5 秒、EW 成分で 6.5 秒、UD 成分で 5 秒であった。 ② また、強震記録の長周期成分のう ち、NS、UD 成分の位相差は(1/2)πで あり、レイリー波の理論的な運動方 向と一致した。 ③ 一方、実測された地震基盤を含む 大深度地盤モデルを用い、表面波の 理論分散曲線を計算した結果、レイ リー波の卓越周期は約 4 秒、ラブ波卓越周期は約 7 秒となり、強震記録の卓越周期と近い値となった。 以上の検討結果から、東京で観測された新潟県中 越地震の地震動は、表面波による長周期成分が卓越 していたことをある程度確認できた。 このことは、今後、地震発生が懸念される例えば、 東海、東南海地震や宮城県沖地震など東京から遠方 の巨大地震の際に、関東平野での長周期による地震 被害について検討の必要性が示唆されるものである。 表-1 地盤モデルと計算条件 深度 層厚 密度 S波速度 P波速度 (m) (m) ρ(t/m3) Vs(m/s) Vp(m/s) 1 27.8 27.8 1.6 111 1300 2 50.9 23.1 1.61 230 1500 3 121.6 70.7 1.99 393 1800 4 170 48.4 1.98 487 1800 5 502 332 1.7 740 1990 6 1617 1115 2 920 2250 7 2411 794 2.1 1590 3240 8 2411> 2.5 3230 5630 層番 号 ラブ波:土研 0 500 1000 1500 2000 2500 3000 0.1 1 振動数(Hz) 速度 (m / s) 位相速度群速度 レイリー波:土研 0 500 1000 1500 2000 2500 3000 0.1 1 振動数(Hz) 速度 (m / s) 位相速度 群速度 ラブ波:土研 0 500 1000 1500 2000 2500 3000 1 10 周期(sec) 速度 (m / s) 位相速度 群速度 レイリー波:土研 0 500 1000 1500 2000 2500 3000 1 10 周期(sec) 速度 (m / s) 位相速度 群速度 図-7 分散曲線(計算結果) 参考文献 1) 小川好(1979):表面波による粘弾性地盤の地震応答の研究、昭 54.都土木技研年報、269-287 2) 小川好(1993):ロマ・プリータ地震で観測された表面波の特性、平 5.都土木技研年報、267-274 3) 工藤一嘉(1986):やや長周期の地震動、土木学会日本海中部地震震害調査委員会編集、1983 年会日本海中部地震震害調査報告書、土木 学会、70-77 4) 東京都土木技術研究所(2004):「平成 15 年度 地震関係基礎調査交付金 23 区内微動アレイ探査委託(その 2)報告書」平成 16 年 3 月 5) 東京都土木技術研究所(1996):「東京都(区部)大深度地下地盤図-東京都地質図集6-」、平成 8 年 3 月 6) 嶋悦三:わかりやすい地震学、鹿島出版会

参照

関連したドキュメント

 宮城県岩沼市で、東日本大震災直後の避難所生活の中、地元の青年に

東京都北区地域防災計画においては、首都直下地震のうち北区で最大の被害が想定され

Using the CMT analysis for aftershocks (M j >3.0) of 2004 Mid Niigata earthquake (M j 6.8) carried out by National Research Institute for Earth Science and Disaster Prevention

In this study, spatial variation of fault mechanism and stress ˆeld are studied by analyzing accumulated CMT data to estimate areas and mechanism of future events in the southern

発電所名 所在県 除雪日数 中津川第一発電所 新潟県 26日 信濃川発電所 新潟県 9日 小野川発電所 福島県 4日 水上発電所 群馬県 3日

本報告書は、 「平成 23 年東北地方太平洋沖地震における福島第一原子力 発電所及び福島第二原子力発電所の地震観測記録の分析結果を踏まえた

後方支援拠点 従来から継続している対応 新潟県中越沖地震等を踏まえた対策

本検討では,2.2 で示した地震応答解析モデルを用いて,基準地震動 Ss による地震応答 解析を実施し,