社 会 生 活 に い き る 読 解 力 向 上 推 進 事 業
指 導 案 ( 音 楽 10)
Ⅰ 単元,題材について 1.単元名,題材名 「鑑賞 音楽のよさや美しさを味わう」 2.実施時期 1学期後半~2学期前半 3.単元,題材の目標及び指導内容(学習指導要領の指導事項等) 強弱の変化を聴き取って,「浜辺の歌」の表現の工夫をする。 4.単元,題材の特徴 新学習指導要領では,我が国の歌曲の共通教材が示されている。その中の1曲である「浜辺 の歌」は,旋律の抑揚を生かしながらフレーズやフレーズ内の強弱を考えるのに適した教材で ある。旋律線の流れからフレーズ内の強弱が付けやすい。また,二部形式(AA’BA’)に なっており,Bの部分は旋律や伴奏により,変化を感じやすい。 本課題では,曲全体に強弱が付いている曲の聴取,そしてフレーズ内の強弱を感じる曲の聴 取を行う。その中で,フレーズを感じ取り,フレーズにおいて強弱を工夫して表現していく。 生徒自らが音楽を形づくっている要素や表現の違いに気付き,工夫する楽しさを感じ取らせた い。 さらに,学習の発展として,新学習指導要領【B鑑賞-(1)ア】「音楽を形づくっている 要素や構造と曲想とのかかわりを理解して聴き,根拠をもって批評するなどして,音楽のよさ や美しさを味わうこと。」の実現をはかるため,同じ曲で異なる表現の演奏を聴かせ,自分た ちのイメージに合う好きな表現について,その演奏の好きなところを紹介文として書くことに より,学習を深めることができると考える。 5.単元,題材の指導計画例(全5時間) 学習過程 内 容 1次 ・歌詞の意味を理解しながら,「浜辺の歌」を斉唱で歌えるようにする。 (1時間)・少人数グループ(4~6人)で歌えるように練習する。 ・「ラデツキー行進曲」を聴き,楽曲全体の強弱の変化を感じ取る。 2次 ・「早春賦」を聴き,フレーズの強弱の変化を感受し,楽譜に書き込む。 (3時間) ・「浜辺の歌」の強弱について考え,意見交換をする。 ・グループごとに「浜辺の歌」の強弱を工夫したものをもとに,表現活動を 行う。 ・グループごとに発表する。聴き合いながら,他のグループの工夫やよさを まとめる。 3次 ・さまざまなプロの演奏家の「浜辺の歌」の演奏を聴き,自分が好きな演奏 (1時間) はどれか,またそれはどうしてかという内容による批評文を書く。 新〔A表現(1)ア 歌詞の内容や曲想を味わい,曲にふさわしい表現を工夫して歌う こと。〕 〔B鑑賞(1)ア 音楽を形づくっている要素や構造と曲想とのかかわりを理解して 聴き,根拠をもって批評をするなどして,音楽のよさや美しさを味わうこと。〕Ⅱ 本時の授業について 1.課題名 歌唱『浜辺の歌』で,自分のイメージにあった音楽表現の工夫をする。 2.本時の目標 (1)教科の目標 ①鑑賞曲を聴き,音楽を形づくっている要素である「強弱」を知覚し,感受する。 ②フレーズの強弱の変化を工夫して,歌唱表現をする。 (2)付けたい「読解力」 ①2つの鑑賞曲(『ラデツキー行進曲』『早春賦』)から,楽曲全体の強弱の変化とフレーズ内 の強弱の変化を聴き取り,言葉で表現したり,楽譜に音楽記号を使って書き込める力。(① -ア) ②聴取した要素を使って,『浜辺の歌』の表現を工夫し,まとめる力。それを持ち寄って,意 見交換をする力。(②-ア)① 3.指導の内容と教材のかかわり (1)使用テキスト ・【表現教材】『浜辺の歌』 林古渓作詞/成田為三作曲 (教育芸術社「中学生の音楽2・3上」) ・【鑑賞教材】『ラデツキー行進曲』 J.B.シュトラウス作曲 『早春賦』 吉丸一昌作詞/中田章作曲 (教育芸術社「中学生の音楽2・3下」) (2)指導の重点 ・鑑賞曲から音楽を形づくっている要素を聴取させる。 同じメロディーが,pとfを繰り返す楽曲の構成になっている『ラデツキー行進曲』(C D)で,“強弱”の表現要素を聴き取らせる。その後,『早春賦』(教師の範唱)を使い, フレーズの中の強弱の変化を聴取させる。(4小節のフレーズと2小節のフレーズの2つ のパターン〈次ページ楽譜参照〉)わかりやすくするために,まずパターン1を聴き取ら せ,その後パターン2を聴取する。数回同じものをじっくり聴き取らせ,音楽を形づくっ ている要素に気付かせる過程を大切に指導する。 ・ワークシート②の最後で,2つのパターンの違いを理解していく学習中で,曲のまとまり (フレーズ)ということに着目させ指導していくことにより,言葉による説明がしやすく なる。 〈パターン1〉
〈パターン2〉 ・歌唱曲の表現を工夫する。 感受した要素(強弱)をもとに,『浜辺の歌』の楽譜に考えた強弱を書き込む。フレーズ を意識させながら,強弱記号のfやpなどやcresc. decresc.を考えさせていく。グルー プの話し合いでは表現のあり方を考え,グループでの練習を通してひとつの表現にまとめ ていく。練習をする中で,教師がグループ巡回し,アドバイスを与えたり,具体的な技術 的な指導を行う。自分たちのグループの意図した表現が,人に伝わるような演奏をすると いう観点で指導したい。 ・表現による違いを感じ取る。 さまざまなプロの演奏家による『浜辺の歌』の演奏を鑑賞し,自分の好きな表現の演奏は どれか,またそれはなぜかという内容の批評文を書かせる。(3人くらいの表現が違う演 奏家のCDを選び,聴かせる〈資料(2)参照〉) (3)ここで行う言語活動 ・曲の表現のもととなる音楽を形づくっている要素に気付き,表現の工夫を行ったり,表現の あり方について考えをまとめ,意見交換をしたりすること。 4.展開案 過程 主な学習内容と学習活動 教師の働きかけ ◇学習活動における具体の評価規準 導入 1本時の学習内容・めあてを確認 ・鑑賞曲を聴いて,曲のイメージなどを感じ取 する。 っていくことを知らせる。 展開 2「早春賦」を聴き,フレーズ内 ・「早春賦」を教師の範唱により,8小節目ま の強弱を感じ取る。 で,2つのパターンの違いがわかりやすいよ 〔パターン1〕4小節のフレーズ うに演奏する。 〔パターン2〕2小節のフレーズ ・パターン1を聴取してからパターン2へ移 聴き取り,各自ワークシート る。 ②に記入する。 ・生徒の発言の中から,曲のまとまり(フレー ズ)や楽曲が意図する強弱について感じ取り, 理解できるように指導する。 3感じ取ったものをもとに表現の ・2で感受したことを用いながら,フレーズを 工夫をする。 どこまでにするかに着目させる。 (1)歌唱曲「浜辺の歌」に,各自ワ ・生徒が強弱記号を記入する様子を観察しなが ークシート③の中に強弱記号を ら,参考となるものを取り上げ表現のあり方 記入する。 を実際に歌唱して紹介する。 (2)ワークシート等に記入した個人 ・意見交換をしながら一つの表現にまとめられ の考えをもとに,意見交換をす るように,グループを巡回し,アドバイスを る。話し合いをし,実際にグル 与える。グループで,試行錯誤しながら,自
ープで表現のあり方を試しなが 分たちのイメージ合う表現のあり方を工夫し らまとめる。 ていく。 (グループ内の誰かの表現でもよいこととす る。) ◇聴取した強弱を使いながら,曲にあった表現 を工夫している。(観察) 終末 4学習のまとめと次回の内容を知 ・今日の活動の様子を振り返り,教師によるま る。 とめを行う。 ・歌唱曲「浜辺の歌」をグループで表現を付け て練習していくことを確認する。 *音楽の指導案(本時の展開案)については,県教育課程研究委員会等でも推奨する形式を提示している。今回 の展開案例もその形式を踏まえて作成した。 5.評価について (1)教科目標の評価 観点 評価規準 A(十分満足の状況) C(努力を要する場合) 評価方法 (概ね満足できる状況) *支援の手だて 関心 ・歌唱表現の工夫をし ・意欲的に授業に参 ・消極的な生徒には,声を ・観察 意欲 ようとし,グループ 加 し , グ ル ー プ 内 かける。 態度 で話し合いをしてい で 積 極 的 に 話 し 合 る。 いをしている。 感受 ・楽曲にふさわしい強 ・ 曲 全 体 の 強 弱 や フ ・強弱が聴き取れるよう, ・ワークシート 表現 弱の変化を感じ取っ レ ー ズ 内 の 強 弱 に ポイントを指導する。 ・観察(話 の 工 夫 て聴いている。 気付く。 ・強弱をワークシートに記 し 合 い ・楽曲の強弱を感じ取 ・ 聴 き 取 っ た も の を 入させ,話し合いへの参 の様子) り,表現の工夫をし も と に , 自 分 な り 加を促す。 ようとしている。 の 根 拠 を も っ て 表 現 の 工 夫 を し て い る。 表現 ・楽譜に記入した強弱 ・ 楽 譜 に 記 入 し た 強 ・強弱の表現をつけて歌え ・観察 技能 の記号を生かして表 弱 記 号 を も と に , ない生徒とともに歌唱し 現している。 自 分 の 歌 い 方 を 工 ながら指導する。 夫している。 鑑賞 ・楽曲の意図する音楽 ・強弱やフレーズな ・音楽を形づくっている要 ・ワークシート を形づくっている要 ど に 関 連 し た 記 述 素を聴き取るポイントを ・観察 素を聴き取って,味 や 発 言 を 積 極 的 に アドバイスする。 わっている。 し , よ さ を 味 わ っ ている。 (2)付けさせたい読解力の評価 観点 概ね満足できる状況 支援の手だて 評価方法 ①-ア ・楽曲から,強弱の変化や ・何度かじっくり聴かせ,気付 ・発言 フレーズを聴き取り,言 かない場合は,聴き取るポイ ・ワークシートの 語や音楽記号で表現して ントをアドバイスする。 記入内容 いる。
②-ア ・楽曲の表現を工夫したこ ・聴取したことをもとに,考え ・ワークシートの とを楽譜に書いたり,意 させていく。 記入内容 見交換したりして表現し ・意見交換ができるように,グ ・グループでの話 ている。 ループを巡回し,アドバイス し合いの観察 を与える。 6.資料 (1)ワークシート①~⑤ (2)この題材で使用するCDの参考 『ラデツキー行進曲』 ウィンナ・ワルツ集/スィトナー指揮 徳間ジャパンコミュニケーションズ 『浜辺の歌』 鮫島有美子(ソプラノ) 「日本のうたベスト」DENON より 唐沢まゆこ(ソプラノ)
「dear FUTURE Mayuko Karasawa」 Universal music より 岡本知高 (ソプラニスタ)
「Sopranista TOMOTAKA OKAMOTO」 Universal music より
※ここに出したのは一例ですので,他に生徒にわかりやすい演奏がありましたら, そちらをご活用下さい。