J. Jpn. Bronchoesophagol. Soc. Vol. 36 No. 2 Symposium I: Mucociliary Transport-Fundamental and Clinical Aspects- 4. An Analysis of Beat Pattern and M

J. Jpn. Bronchoesophagol. Soc. Vol. 36 No. 2 日 気 食 会 報, 36(2), 1985 pp. 79-84 シン ポ ジウムI: 粘液線毛輸送系とそ の病 態

4. 気 道 線 毛 運 動 の 実 際

Symposium I: Mucociliary Transport-Fundamental and Clinical Aspects-4. An Analysis of Beat Pattern and Metachrony of Human

Respiratory Cilia by Video Tape Recording Hiroshi Kawada, M. D., Ritsu Kudo, M. D.,

Masahiko Kawakami, M. D. and Takao Takizawa, M. D. First Department of Internal Medicine, Tokyo Women's Medical College, Tokyo A video camera with high photosensitivity, a 100X objective and a microscope equipped with Nomarski differential interference contrast were used to record the movement of human respiratory cilia as seen from the side of the cell surface clearly. By using a fiber guide light source, the reflected light from the human bronchial membrane obtained by a bronchofiber-scope allowed the surface observation of the human respiratory cilia. A surface view of the cilia of the cases without bronchial diseases showed metachronal waves with an ileoplectic fashion. An activity on the epithelial surface was comprised in many small patches. Each

of those has an area covering only one or two cells. The metachronal waves generally traveled about one cell length before disappearing. Cilia of a case with inner dynein arm defect moved stiffly with reduced amplitude, but, metachronal coordination was maintained.

In a case of chronic bronchitis, the direction of the effective stroke of ciliary beat in areas having immature short cilia was variable and irregular. The dynamics of human respiratory

cilia have been previously described by studying mainly the side view.

These results indicate that the surface view of respiratory cilia as well as the side view of those is very important to show the metachronal waves and the precise direction of the effective stroke. Key words: ヒ ト気 道 線 毛, 線 毛 運 動, ビ デ オ 録 画, 継 時 波, 気 道 疾 患 は じ め に 従 来 線 毛 運 動 の 実 際 の 動 きに 関 す る報 告 は生 物 学 領 域 で 主 に ゾ ウ リム シ (Paramecium cau-datum) らの 単 細 胞 生 物 を用 い行 な わ れ て きた が1), この 場 合 の 線 毛 は水 中 で遊 泳 す る た め の swimming cilia で あ る。 一 方 気 道 線 毛 は 単 細 胞 生 物 の 線 毛 と は 違 い mucus propelling cilia の 性 格 を有 し 粘 液 輸 送 と い う 重 要 な 働 き を 行 な っ て い る。 気 道 線 毛 運 動 の 映 像 化 に よ る 検 索 は ゾ ウ リ ム シ ら の 線 毛 運 動 に 比 し 歴 史 が 浅 く詳 細 な 報 告 は 1976年 cheung ら2)の16mmシ ネ に よ る 家 兎 気 *東京 女子 医 科大学 第一 内科

線 毛 運 動 に 関 す る論 文 が 最 初 で あ る。 今 回著 者 ら は光 学 ビデ オ 系 を 用 い 家 兎 お よ び ヒ ト気 道 線 毛 運 動 を録 画 し そ の動 き につ い て検 討 し た。 と

くに(1)対物100× 油 浸 レ ン ズ使 用 に よ る高 解 像 高 倍 率 で の 録 画, Dyskinetic ciliary syn-drom の 異 常 線 毛 運 動, 落 射 光 に よ る 気 道 粘 膜 表 面 の観 察 (主 に継 時 波 の観 察), 家 兎 気 管 上 皮 の培 養 に よ り得 られ た 幼 若 線 毛 の 動 き, に 焦 点 を あ わ せ 検 討 した の で報 告 す る。 1. 方 法 i)症 例 の 内訳

Dyskinetic ciliary syndrome は3例 で, out-er dynein arm 欠 損, innout-er dynein arm 欠 損, 両 dynein arm 欠 損 の各1例 で あ る。 こ れ ら の 症 例 の 気 管 分 岐 部, 右 上 葉 支 口, 右 中葉 支 口生 検 組 織 あ る い は気 管 遠 位 部 を擦 過 し得 られ た 線 毛細 胞 を検 索 資 料 と した。 そ の 他 慢性 気 管 支 炎4例, 末 梢 孤 立性 陰 影 例2例 に つ い て も同 様 の資 料 を採 取 した。 ii) 光 学 ビデ オ 系 に よ る観 察 法 気 道 線 毛 運 動 を光 学 ビデ オ 系 を用 い て録 画 す る場 合 に留 意 す る基 礎 的 事 項 に つ い て は す で に 著 者 らの 文献3)に述 べ て あ る の で こ こで は ヒ ト 気 道 粘 膜 表 面 の観 察 法 に つ い て 記 載 す る。 ヒ ト 気 道 粘 膜 は穴 あ き鉗 子 を用 い採 取 し, 実 体 顕 微 鏡 下 に199培 地 中 で 注 意 深 く伸 展 さ せ た もの を 用 い た (Fig. 1)。 この 資 料 を ス ラ イ ドガ ラ ス 上 に粘 膜 表 面 が 上 とな る よ う に お き側 方 か ら フ ァ イバ ー オ プ テ ィ ッ ク ス照 明 装 置(オ リ ンパ ス製) を あ て, 原 則 と して 室 温 下 で観 察 し た。 対 物 レ ン ズ は作 動 距 離 の長 いニ コ ン金 属 顕 微 鏡 用 の 対 物 レ ンズ (40×) を使 用 し た。 また 弾 性 線 維 束 に沿 い細 くひ も状 に 作 製 し た組 織 片 や 擦 過 で 得 られ た線 毛 細 胞 浮 遊 液 を カバ ー グ ラ ス下 に お く こ とに よ り透 過 光 で の photometer に よ る周 波 数 測 定 や側 面 よ り観 察 した 線 毛運 動 の 録 画 が 可 能 とな っ た。 iii) 家 兎 気 管 上 皮 の 培 養 方 法 は stoner ら4)ら の 気 管 上 皮 培 養 法 を 参 考 に した。2kg前 後 の雄 家 兎 気 管 粘 膜 を無 菌 的 に と りだ し1mm角 程 度 に細 切 し滅 菌 カ バ ー ガ ラ ス に付 着 さ せ これ を35mmプ ラ ス チ ッ ク 培 養 皿 に入 れ10%牛 胎 児 血 清 加199培 地 中 で5 %co237. c下 で 培 養 し た。 培 養 液 は 組 織 片 の 先 端 が わ ず か に 浸 る 程 度 に し2日 に1回 の 割 で 培 養 液 の 半 量 を 交 換 し た。 培 養7日 ∼10日 目 に 組 織 片 周 辺 に monolayer と な っ て 増 殖 し た 新 生 線 毛 細 胞 の 幼 若 線 毛 の 動 き を 検 討 し た。 2. Dyskinetic ciliary syndrome の 気 道 線

毛 運 動

Dyskinetic ciliary syndrome の 異 常 線 毛 運 動 を 述 べ る 前 に 擦 過 に よ り得 ら れ た 正 常 な 動 き を 示 す ヒ ト気 道 線 毛 の ビ デ オ 静 止 画 像 を 示 す (Fig. 2)。 周 波 数 は8. 6Hz/秒 で 有 効 打 お よ び 回 復 打 の 終 了 時 の 像 が 明 ら か と な っ て い る。 第1例 は situs inversus, 気 管 支 拡 張 症, 慢 性 副 鼻 膣 炎, 男 子 不 妊 症 を 有 す る4l歳 男 性dynein arm欠 損 例 で あ る。 擦 過 に よ り採 取 さ れ た 気 道 線 毛 は 全 く動 き を 示 さ な か っ た。 細 毛 細 胞 の ト Fig. 1気 管 支鏡 下 に鉗子 で採 取 され た人 非 気管 支 疾患例 の気 道粘膜。 矢印 は 鉗子の 当た っ た部分 で左右 方 向 に弾性 線 維束 を認 め る。 Fig. 21は 有 効 打 終 了 時 の ビ デ オ 録 画 静 止 像。 2は 回 復 打 終 了 時 の 静 止 画 像 で1よ り1/15 秒 後 の写 真。 (Original magnification x 625)

日気 食 会 報, 36(2), 1985 リパ ン ブ ル ー 染 色 を 行 な っ た が viability は8 割 程 度 保 た れ てお り, 線 毛 運 動 の 欠 如 は細 胞 の 変 性 に起 因 す る もの で は な く dynein arm欠 損 とい う構 造 異 常 が 原 因 と考 え られ た。 第2例 は 気 管 支 拡 張 症, 慢 性 副 鼻 腔 炎 を有 す る25歳 女 性 outer dynein arm 欠 損 例 で 擦 過 に よ り採 取 さ れ た気 道 線 毛 は そ の 多 くが 全 く動 き を示 さ な か った が, 一 部 で は個 々 の線 毛 が 関 連 性 の 欠 如 し た 不 規 則 な 動 き を示 して い た。 周 波 数 も お そ く l∼2Hz/秒 で 刻 々 変 化 して い た(Fig. 3)。 第3 例 は situs invertus, 慢 性 中 耳 炎, 気 管 支 拡 張 症

を有 す る25歳 女 性 inner dynein arm 欠 損 例 で 擦 過 に よ り得 られ た気 道 線 毛 は振 幅 が 小 さ く先 端 に至 る まで 直 線 化 した ぎ こ ち な い動 き を示 し た。 しか し隣 り合 う線 毛 間 に は莇 調 運 動 が 認 め られ た (Fig. 4)。 周 波 数 は2. 6Hz/秒 で あ っ た。 さ ら に こ の例 の 生 検 に よ り得 られ た粘 膜 表 面 の 線 毛 の 動 きを録 画 後, 微 速 度 に して 検 討 す る と, 有 効 打 の 方 向 に 対 し右 側 方 に向 か う波 の 出 現 消 失 が 反 復 さ れ て い るの が確 認 され 後 に述 べ る継 時 波 と推 定 さ れ た。 同 一 検 体 の 透 過 型 電 顕 像 で も inner dynein arm の欠 損 を確 認 して お り, inner dynein arm は 継 時 波 の発 生 に直 接 関 わ る線 毛 内 構 造 で は な い こ と も推 定 さ れ る。 ま た 近 年 Rossman ら5)6)は dynein arm 欠損 例 の 鼻 腔 粘 膜 線 毛 の運 動様 式 に つ い て 著 者 と同様 光 学 ビデ オ 装 置 を用 い検 討 し周 波 数 は約6Hz/秒 で 線 毛 先 端 部 が 固 定 さ れ た vibration の 動 きや 先 端 部 が 左 右 に均 等 に回 旋 す る動 きが み られ る と 報 告 して い る が, 著 者 らの症 例 で は いず れ の 動 き も観 察 さ れ な か った。 この理 由 とし て は検 体 採 取 部 位 の違 い や 気 道 感 染 の線 毛運 動 に及 ぼ す 影 響 な どが 考 慮 され, 今 後 症 例 を重 ね 検 討 した い と考 え る。 3。 ヒ ト気 道 粘 膜 表 面 よ り観 察 した線 毛 運 動 -継 時 波 の 観 察-一 つ の線 毛 の グ ル ー プ と隣 り ど う しの 線 毛 が 次 々 と位相 をず らせ な が ら動 く場 合 これ らの 線 毛 は継 時 的 に打 っ て い る と い い, 出現 す る波 を 継 時 波 と よぶ。 著 者 の 経験 に よ る と粘 膜 表 面 の 継 時 波 を正 確 に と らえ るた め に は, 気 道 粘膜 面 上 の粘 液 の 除 去, 録 画 を も とに した微 速 度 画 像 の 解 析, 落 射 光 方 式 に よ る観 察 が 重 要 と思 わ れ る。 以 上 の 点 をふ まえ非 気 道 疾 患 例 の気 道粘 膜 表 面 を観 察 す る と粘 液 穎 粒 の 輸 送 さ れ る 方 向, っ ま り有 効 打 の 方 向 とは逆 の 向 き に す ば や い 動 きが 観 察 され た。 従 来 この 動 きが 継 時 波 で あ る とす る 考 え もあ っ たが 実 際 は有 効 打 の時 間 に比 し回復 打 の 時 間 が 長 くか か り視 覚 上 回復 打 の 動 き が と ら え や す い た め で あ る と推 定 さ れ て い る7)。著者が 録 画 を微 速 度 に し て検 討 す る と, は じ め て有 効 打 方 向 に対 し右 側 方 に向 か う波 の 出 現, 消 失 が 反復 され て い る の が 確 認 され 継 時 波 と推 定 さ れ た (Fig. 5, 6)。 また その 進 行 距 離 は 細 胞1個 ほ どの 長 さ で あ り波 の 幅 は細 胞1個

Fig. 3 Primary ciliary dyskinesia (outer dynein arm 欠 損 例)1/15秒 毎 の 録 画 静 止 像 で 各 々 の 線 毛 は 協 調 運 動 が 全 く認 め ら れ ず 不 規 則 で 互 い に か ら ま る よ う な動 き を 示 し た。 右 は こ の 例 の 透 過 電 顕 像。

Fig. 4 Primary ciliary dyskinesia (inner dynein arm 欠 損 例)1/30秒 毎 の 録 画 静 止 像 を 示 した。 各 々 の 線 毛 は 協 調 す る 動 き を示 す が 先 端 に至 る まで 変 化 の 少 な い 動 きで 幅 も小 さ い。 右 は この 例 の 透 過 型 電 顕 像 で あ る。 (Original magnification x 625) Fig. 5有 効 打 の方 向 に対 し右側 方 に継時 波 の出現 消 失が くりか えされ る こと を示 す。継 時波 の走 行距 離 はお お よそ細 胞1個 ほ どの長 さで あ る。 右 は この部 分 の録面 静止像。 ヒ ト正 常気道 粘膜 →Effectve stroke の 方 向 →Metachronism の 方 向 (Original magnification x 250) Fig. 6各 々 の 継 時 波 が 左 方 へ 向 か い 移 動 す る の が 観 察 され た。 継 時 波 の 長 さ は細 胞1個 ∼ 数 個 ほ どで あ り走 行 距 離 は細 胞1個 ほ ど で あ っ た。 右 は こ の 部 分 の 録 画 静 止 像。 (Original magnification x 125)

日気 食 会 報, 36(2), 1985 ∼ 数 個 程 度 で あ っ た(Fig. 6)。Iravaniら10)は rat の 気 道 粘 膜 を観 察 し個 々 の 継 時 波 の 出 現 す る領 域 は線 毛 細 胞 数 個 か ら数 百 個 の 広 い領 域 に も認 め られ る と述 べ, 継 時 波 の 進 む方 向 と有 効 打 方 向 は一 致 す る と い う見 解も7)示 し て い る。 しか し線 毛 の動 き, あ る い は粘 液 の 動 き, いず れ の 動 き を観 察 して い る の か 必 ず し も明 瞭 で は な く録 画 に よ る解 析 も行 な って い な い。 一 方 家 兎 気 道 線 毛 の 継 時 波 に関 す る Slelgh ら7)の最 近 の 報 告 に よ る と観 察 方 法 は透 過 光 を 用 い て お り 著 者 とは異 な る も の の, 有 効 打 方 向 に対 し右 側 や や 後 方 寄 りに 向 か う継 時 波 が 確 認 さ れ て お り, そ の発 生 領 域 も多 くは細 胞1∼2個 の小 範 囲 で ヒ ト気 道 粘 膜 に 関 す る著 者 の 成 績 とお お む ね 一 致 し て い る。 ま た Marino ら9)は人 気 道 線 毛 の継 時 波 に つ き検 討 を加 え, 継 時 波 の長 さ は 4.2μ∼7.4μ で進 行 距 離 は お お よ そ 継 時 波 の2 倍 程 度 の 長 さ で あ る と報 告 して い る。 4. 慢 性 気 管 支 炎 例 の気 道 粘 膜 表 面 よ り観 察 した線 毛 運 動 Fig. 7は 無線 毛 領 域 に 介 在 す る丈 の 低 い まば ら な線 毛 領 域 の 運 動 様 式 を録 画 しそ の 静 止 画 像 お よ び微 速 度 像 を も とに作 製 した トレ ー ス像 で あ る。 有 効 打 の 方 向 は部 位 に よ り大 き く異 な っ て お り粘 液 輸 送 は この よ うな部 位 で 停 滞 す る こ とが 推 定 され た。 後 述 す る家 兎 気 管 上 皮 の 培 養 に よ り出現 した 幻 若 線 毛 は個 々 の領 域 が 周 囲 の 線 毛 領 域 と関連 性 の な い独 自の 動 き を示 して お り, この 点 を考 慮 す る と前 述 の 所 見 は再 生 幼 若 線 毛 の 特 微 と推 定 す る こ と も可 能 で あ ろ う。 Iravaniら10)11)も寒冷 環 境 下 や 加 齢 に よ り rat に気 管 支 炎 を誘 発 させ, 気 道 粘 膜 表 面 の 親 察 か ら有 効 打 方 向 の 不 規 則 性 を み だ して い る。 Fig. 7線 毛 の 有 効 打 方 向 は部 位 に よ り大 き く異 な っ て い る こ と を示 す。 有 効 打 の 方 向 は 録 画 の ス ロ ー モ ー シ ョ ン か らす ば や い動 き の 方 向 と し た。 不 明 な 場 合 は両 方 向 に 矢 印 を示 し た。 右 は この 部 分 の 録 画 静 止 像。 慢性気管支炎気道粘膜 ※ 矢 印 は Effective stroke の 方 向 を示 す 漁 無 線 毛 領 域 ● 動 きの な い 線 毛 領 域 (Original magnification x 250) Fig. 8新 生幼 若 線 毛 は小刻 み で協 調性 の 欠 いた 動 きを示 した。 (Original magnification x 250) 25-83

5. 家 兎 気 管 粘 膜 坊 養 に よ り出 現 す る幼 芳 線 毛 の 動 き 家 兎 気 管 粘 膜 を培 養 す る と母 組 織 周 囲 に連 続 し て monolayer と な り出 現 した 細 胞 の 中 に線 毛 細 胞 が 混 在 して い る。 この う ち ご く初 期 の発 生 段 階 と思 わ れ る丈 の極 端 に短 い線 毛(Fig. 8) を 観 察 す る と こ れ ら幼 若 線 毛 に も 周 波 数3∼4 Hz/秒 程 度 の 小 刻 み な 動 きが 認 め られ た0し か し個 々 の線 毛 の 運 動 は独 自 の動 きで あ り協 調 運 動 は認 め られ なか っ た。 ま た あ る程 度 の長 さ に 成 長 した線 毛 の領 域 で は個 々 の領 域 の線 毛 の 協 調 運 動 は認 め られ る もの の各 領 域 間 で は 関 連 の な い動 き を示 した。 一 方 シ ー ト状 に, あ る一 定 の 面 積 に密 に 出現 した 線 毛 領 域 で は培 地 中 の 粘 液 穎 粒 の 輸 送 が認 め られ て お り, 線 毛 の 発 生, 成 長 に と もな う運 動 様 式 の 変 化 が 明 らか とな っ た。 ま と め 1. 人 気 道 線 毛 運 動 の 側 面 像 を 透 過 光, 対 物 100X油 浸 レ ン ズ, 微 分 干 渉 装 置, ビ デ オ装 置 を 用 い 録 画 した。 さ ら に落射 光 使 用 で ヒ ト気 道 線 毛 運 動 を 表 面 よ り観 察 し録 画 す る方 法 を 開発 し た。 2. 非 気 管 支 疾 患 例 で は 有効 打 方 向 に対 し右 側 方 に 向 か う継 時 波 を認 め た。 そ の長 さ は細 胞 1個 ∼ 数 個 で 進 行 距 離 は細 胞1個 ほ どで あ っ た。 3. 慢 性 気 管 支 炎 の 無 線 毛 領 域 に介 在 す る丈 の 短 い 幼 若 線 毛 は, 各 線 毛 領 域 間 で 有 効 打 方 向 の不 規 則 性 を認 め た。

4. Dyskinetic ciliary syndrome 例 で は 線 毛 運 動 の 停 止, 異 常 運 動, 継 時 波 の 消 失 を認 め た が, imer dynein arm 欠 損 例 で は側 面 像 で 動 き の"ぎ こち な さ"を 示 した もの の表 面 像 で は 継 時 波 の 存 在 が み られ た。 5. 家 兎 気 管 上 皮 培 養 に よ り新 た に出 現 す る 線 毛 は その 発 生, 成 長 に 伴 な い運 動 様 式 に変 化 を示 した。 6. 気 道 線 毛 運 動 の検 索 に は継 時 波 や 有 効 打 の 方 向 に 関 す る情 報 が 必 要 で あ り, 従 来 行 な わ れ て きた側 面 像 の 観 察 の ほ か 表 面 像 の観 察, 録 画 が きわ め て 重 要 で あ る。 文 献 1) 内 田 豊: ゾ ウ リ ム シの 運 動 一 繊 毛 運 動 と そ の膜 電 気 現 象 に よ る制 御 に つ い て, 蛋 白 ・核 酸 ・酵 素, 28: 567, 1983.

2) Cheung, A. T. W., Jahn, T. L.: High speed cinemicrographic studies on rabbit tracheal (ciliated) epithelia: Determination of the beat pattern of tracheal cilia. Fediat. Res., 10: 14, 1976.

3) 川 田 博 ・他: ビ デ オ に よ る 気 道 線 毛 運 動 の 録 画 に つ い て, TherapeuticResearch, 1:619, 1984. 4) Stoner, G. D. et al.: Identification and culture of human bronchial epithelial cells in "Methods in cell biology". Eds Hams. C. C., Trump B. R., Stoner G. D., Academic Press, New York, pp. 15 -34, 1980.

5) Rossman, CM. et al.: The Dyskinetic cilia syndrome. Abnormal ciliary motility in associ-ation with abnormal ciliary ultrastructure. Chest, 80 (suppl.): 860, 1981.

6) Rossman, C. M. et al.: Nasal ciliary ultra-structure and function in patients with primary ciliary dyskinesia compared with that in nor-mal subjects and in subjects with various re-spiratory diseases. Am. Rev. Respir. Dis., 129:

161, 1984.

7) Sleigh, M. A.: The nature and action of respiratory tract cilia in "Respiratory defense mechanisms". Eds Brain, J. D., Proctor D. F., Reid, L. M., Marcel Dekker, New York, pp. 247

-288, 1977.

8) Sanderson, J. J. et al : Ciliary activity of cul-tured rabbit tracheal epithelium : Beat pattern

and metachrony. J. Cell Sci., 47: 331, 1981. 9) Marino, M. R. et al.: Cinemicrographic

analy-sis of beat dynamics of human respiratory cilia in "Mechanism and contral of ciliary movement". Eds Brokaw, CJ., Verdugo, P.,

Alan R Liss Inc., New York, pp. 35-39, 1982. 10) Iravani, J. et al.: Mucus transport in the

tracheobronchial tree of normal and bronchitic rats. J. Path., 106: 81, 1972.

11) Van As, A. et al.: The organization of ciliary activity and mucus transport in pulmonary airways. S. Afr. Med. J., 46: 347, 1972.

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東京 女子 医科大 学第 一 内科学教 室