家を建てるときの
道路に関する法律基礎知識
篠原徹旨
相談部 東京相談室
建築関係の法規制は非常に複雑です。敷地が適切な道路に接していない限り、適法な
建築はできないため、少なくとも道路と建築の関係についての基礎知識は備えておき
たいものです。
今回は、道路と建築の関係に焦点を当て、家を建てるときに覚えておきたい基本事項
を解説します。
1. 道路と建築
この土地には、どの程度の大きさの建物を建てられるのか――これは、土地の購入や活用を検討す
る際に最も重要な事項です。この点に大きく影響を与える要素として、「その土地はどのような道路に
面しているか」という、いわゆる「接道」の問題があります。以下では、道路に関する主な建築規制
を解説します。
[1]接道義務
都市計画区域、準都市計画区域では、原則として敷地が幅員4m以上の道路に2m以上接していな
いと、建築自体が認められません(法 43 条1項、下図)。いずれも緊急車両の通行や敷地への進入に
必要な最低限の幅と考えられます(なお、特定行政庁(注)の指定や許可、条例等による例外が多数あ
ります。具体的には各自治体の建築関係部署に確認することが必要です)。
注:特定行政庁とは、原則として①建築主事を置く市区町村の区域ではその市区町村の長 ②その他の区域は都道府県知事。
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[2]道路幅員による容積率制限(基準容積率)
敷地面積に対する建物の延べ床面積の割合を「容積率」といい、用途地域ごとに容積率の上限(指
定容積率)が定められています。しかし、前面道路の幅員が 12m未満の場合、道路幅員に応じて計算
される容積率(基準容積率)が指定容積率を下回るときは、基準容積率がその土地の容積率の上限と
なります(下記参照)。よって、敷地前面の道路が狭いと大きな建物は建ちません。
[3]特定道路による容積率の緩和
広い道路に面して大きな建物が建つのに、少し脇道に入ると唐突に建物の規模が小さくなるのは不
自然です。そこで、幅員 15m以上の道路(特定道路)から分岐した道路に接し、前面道路幅員が 6m
以上 12m未満、特定道路までの距離が 70m以内の場合に、特定道路までの距離に応じて容積率を加算
できます(下図)。
■前面道路の幅員が 12m未満の場合
原則として①を適用するが、①>②の場合は②を適用する。
①用途地域別の指定容積率
②基準容積率:道路幅員(m)×係数(原則として用途地域が住居系の場合 0.4、それ以外では 0.6)
【例】第1種住居地域、道路幅員8mの場合…… 8×0.4=3.2(=320%)
⇒ 指定容積率が 320%超でも 320%を適用
上層階が斜めに切り取られたような建物が並んでいる街並みがありますが、これは「斜線制
限」という建物の高さに関する建築規制の影響です。いくつか種類がありますが、道路の幅員
によっても建物の高さが制限され、容積率を有効に生かせないことがあります。
「道路斜線制限」とは
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2. 道路の類型
前ページまで道路に関する建築規制を説明してきましたが、「道路」として認められるためには、建
築基準法の細かな要件を満たす必要があります。「道路」だと思っていたら単なる「道」「通路」に過
ぎず、最悪の場合は建築ができないこともあり得ますから、事前に十分な確認が必要です。道路の類
型と確認方法を解説します。
[1]建築基準法上の「道路」
「道路」と認められるための要件は、建築基準法第 42 条で定められています。国道、県道、市町村
道など、路線認定を受けた道路法上の道路が代表的ですが、公道だからといって無条件に「道路」と
認められるものではなく、逆に私道であっても一定の要件を満たせば「道路」として認められます。
原則として幅員が4m以上必要ですが、例外もあるなど、規制が複雑でトラブルにもなりやすいため、
通常は現地調査や自治体の建築関係部署・道路管理部署への調査を通じ、入念な確認が行われます。
[2]道路の調べ方
厳密な調査を行う場合、まずは役所の管理する道路に関する図面を利用します。最近は自治体のホ
ームページでも道路台帳平面図や指定道路図といった道路
の情報が公開され、道路幅員や指定道路の種類の概要を確
認できることがありますが、資料の確認には専門知識を要
しますので、最終的には役所の担当者に直接確認するのが
確実でしょう。
位置指定道路などの具体的な指定内容は、指定時に作成
された資料を閲覧して確認します。資料の不足などで建築
基準法上の道路に該当するか明確にならない場合は、役所
に道路調査を依頼して判定を仰ぐことになります。また、
宅建業者を介して土地を購入する場合は、業者によく確認
してもらいましょう。
[3]特に注意が必要な道路の類型
(1) 2項道路
道路の幅員が4mに満たない場合の特例です。
建築基準法施行時(昭和 25 年 11 月 23 日)に、すでに建物が建ち並んでいた幅員4m未満の道は、
特定行政庁の指定を受けることにより、「道路」とみなされます。建物を建て替える場合には、道路中
心線から2m後退(セットバック)させた線を、道路と敷地との境界線としなければならず、沿道の
土地所有者が私道部分を負担し、将来的には幅員4mの道路が出来上がります。敷地ごとに道路との
境界線が凸凹している場合や、境界に後退杭が設置されている場合は2項道路の可能性がありますか
ら、役所で指定の有無と内容をよく確認する必要があります(次ページ図)。
■道路台帳平面図の例
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(2) 3項道路(水平距離指定道路)
2項道路の指定をしても、将来的に道路幅員を4m以上にできる見込みのない場合の特例です。
傾斜地や密集市街地など、土地の状況により道路の拡幅が困難な場合に、道路中心線からの後退距
離が2m未満(最小 1.35m)まで緩和されます。3項道路の指定には、建築審査会の同意が必要です。
(3) 位置指定道路
私人の作った道を、技術基準を満たすなど、一定の要件に適合する場合に「道路」として認めるも
ので、私有地の小規模開発の際によく作られます(下図)。
私道に面している敷地については、役所で位置指定に関する資料を確認し、現地で資料の内容と齟
齬がないかをさらに確認します。また、宅地の売買に際しては、位置指定道路部分の権利関係を忘れ
ずに確認し、売主から買主への権利の移転漏れがないよう留意します。
(4) 既存道路
建築基準法施行時(建築基準法施行時以降に都市計画区域に指定された場合は指定日時点)に、す
でに存在していた道は、幅員4m以上であれば「道路」と認められます。技術的な基準がないため、未
舗装や側溝のない道に面した建物などは、既存道路として接道義務を満たしている可能性があります。
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(5) 計画道路
都市計画道路ができる予定がある場合などに、道路の完成に先行して建築基準法上の「道路」とし
て認めるものです。
道路法や都市計画法などの法律に基づく新設または変更の事業計画のある道路で、2年以内にその
事業が執行される予定のものとして特定行政庁が指定したもののうち、幅員4m以上のものを指しま
す。道路に接していないのに建物が建っている地域がある場合は、計画道路である可能性があるため、
指定の有無や道路計画の内容をよく確認する必要があります。
本情報は、法律、会計、税務等の一般的な説明です。個別具体的な法律上、会計上、税務上等の判断や対策などについては専門家(弁
護士、公認会計士、税理士等)にご相談ください。また、本情報の全部または一部を無断で複写・複製(コピー)することは著作権法上で
の例外を除き、禁じられています。
内容は2014年9月19日時点の情報に基づいて作成されたものです。
公有地にも関わらず路線認定を受けた市町村道にはなっていないもので、その多くは細い生
活用道路です。一般に「里道(りどう)」や「赤道(あかみち)」などと呼ばれます。まれに幅
員4m以上のものもありますが、認定外道路に接していても、通常は接道義務を満たすことは
できません。また、売買予定の建物敷地に里道が含まれる例があり、この場合は行政から有償
で里道の払い下げを受けることを検討します。払い下げの手続きによって、取引の完了が数カ
月単位で遅延することもあり得ます。
「認定外道路」とは