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全文

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No.273 5

2000

本誌は複十字シールの益金で作られています。財団法人結核予防会発行

□今月のテーマ

老人施設における結核集団感染対策

最近の事例から見た課題

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総裁秋篠宮妃殿下

ご動静

第51回結核予防全国大会より と き 平成12年3月22日、23日 ところ 宇都宮グランドホテル、栃木県総合文化センター おことばを述べられる 秩父宮妃記念結核予防事業功労賞受賞者の青柳昭雄 氏に表彰状を授与 歓迎レセプションにて第2分科会関係者と なごやかにご歓談 妃殿下は22日の第2分科会にご臨席され、歓迎レセプションでは分科会演者 や秩父宮妃記念結核予防功労賞受賞者の方々と、なごやかにご歓談されました。 翌日の式典では結核予防会の責務に対する決意のおことばを述べられ、また、 秩父宮妃記念結核予防功労賞受賞者に表彰状を授与されました。 結核予防会総裁おことば 平成十二年三月二十三日 本日、第五十一回結核予防全国大会が栃木県宇都宮市 において開催され、全国からお集まりの皆さまにお会い できましたことを大変うれしく思います。 世界保健機関は 、 一九九三年 に ﹁ 結核の非常事態宣 言﹂を発表して、結核による健康被害が世界各地で拡大 していることを指摘いたしました。そして三月二十四日 を﹁世界結核デー﹂と定め、この地球上から結核を撲滅 するため、世界的規模での予防対策を推進するよう呼び かけております。このような状況から、世界の結核対策 に関する国際協力をはじめ、私たちが成すべき事柄は多 く、その責務はますます重要なものとなって参ります。 国内においても、集団感染や院内感染事例の増加、既 感染者の高齢化に伴う再燃事例の増加、地域における罹 患率の違い、新たな多剤耐性結核の問題など、多くの課 題が出てきております。そのような中で昨年七月には、 厚生省より﹁核核緊急事態宣言﹂が出され、本会をはじ めとする、関係諸団体が協力しあい、それぞれ従来以上 に結核予防のために努力するよう要請がありました。今 後も、皆さまとともに結核の現状を充分に認識し、結核 に対する正しい知識の普及啓発をはじめ、より一層の結 核対策推進を図るようにして参りたいと思います。 また、本日の大会で、結核予防のためにそれぞれの分 野で多大の功績をあげられ、第三回秩父宮妃記念結核予 防功労賞の表彰を受けられる皆さまには、そのご尽力に 心から感謝いたしますとともに、今後とも活躍されるこ とを願っております。 終わりに、大会に参加されました皆さまには、大会で の成果をそれぞれの地域の活動に十分に生かされ、併せ て﹁結核のない健康で明るい社会づくり﹂に努められま すことを期待し、私の挨拶とさせていただきます。

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D O U B L E‐ B A R R E D C R O S S

複 十 字

Message

の度、結核予防会会長に推挙されましたことを誠に光 栄に存ずると共に、その責任の重さに身の引き締まる 思いでおります。 学生時代から東大セツルメント運動を通して結核に強い関 心を抱き、インターンを終了するとすぐに結核予防会結核研 究所に入ったので、今日まで実におよそ 50年間、結核一筋に 歩んできたことになります。初め十数年は結核病理学の研究、 次いで臨床的な研究に入り、次第に疫学的な研究に移って今 日に至りました。考えてみれば、結核あるいは肺癌など、呼 吸器疾患の研究に明け暮れてきた 50年ということになります。 私が研究を始めた頃に比べれば、わが国の結核の状況は見 違えるほど良くなりました。しかし、最近の結核疫学像は大 きく変貌し、結核減少の著しい鈍化、大都市あるいは若者の 結核の増加、患者の偏在化の進行、散発する集団感染や院内 感染など、新しく難しい問題が山積しております。また、眼 を世界に転ずれば、結核問題はますます重大で、わが国への 期待、要望は大きくなる一方です。このような状況にもかか わらず、対応に当たる方々の関心は以前に比べるとはるかに 低くなっていることを認めざるを得ません。 この重大な時期に、結核予防会が本来の使命をより立派に 果たしていくことは困難なことですが、総 裁秋篠宮妃殿下の下、本・支部の職員が力 を合わせ、国、都道府県、結核予防婦人会 など関係各団体のご協力を得ながら、結核 予防会本来の事業を一層推進していくと共 に、本会の将来の発展に向けて全力を尽く したいと考えております。 ■ メッセージ 会長就任のご挨拶 青木 正和 ⋮1 ■ 今月のテーマ 老人施設における結核集団感染対策 最近の事例から見た課題 阿彦 忠之 ⋮2 ■ 緊急事態 看護職員の結核の発病や健康管理・ 施設内における結核対策調査結果 福留はるみ ⋮5 ■ レポート 第5回国際結核セミナー 小林 典子 ⋮9 ■ 第 51回結核予防全国大会・報告 大会を顧みて 大島 庄平 ⋮ 10 第1分科会レポート 高橋 浩一 ⋮ 12 第2分科会レポート 菅山 省吾 ⋮ 13 支部長会議報告 14 決議・宣言 15 ■結核予防会に 50年間勤めて 島尾 忠男 ⋮ 16 ■ 特対事業︵秋田︶ 減らそう結核5ヵ年大作戦 小林 保子 ⋮ 18 ■ DOTS 大都会の縮図新宿 ︱ 結核患者の減少を 目 指して 沼田久美子 ⋮ 22 横浜市で2月からDOTS開始 朝倉きみ子 ⋮ 23 ■ ストップTB アムステルダム結核閣僚会議 葛西 健 ⋮ 24 第1回WHO西太平洋地域結核制圧技術諮問会議 須知 雅史 ⋮ 25 ■ レポート 世界結核デー記念講演会 サンフランシスコ市の結核対策 松木 一雅 ⋮ 26 ■ ずいひつ 第 60回総会を迎える保生会 藤井 七郎 ⋮ 27 ■ インターナショナル・トピックス ソロモン諸島国で結核移動セミナー開催 山田 紀男 ⋮ 28 ■渋谷診療所今村名誉所長が医療功労賞受賞 28 ■第7回外国人結核問題に関するワークショップ 石川 典子 ⋮ 29 ▽本部関連行事・マスコミ資料 23 ▽北から南から各地のたより 30 ▽予防会だより 30 ︹表紙写真︺ ﹁新緑の剣山﹂遠藤益宗 ︵高知県支部 岳人︶ あふれるばかりの陽光のもと、静かに輝きはじめる 山々︱。まばゆいばかりの新緑の山には、やさしさと 力強さがみなぎり、山を見守ってきた五葉松の大樹の 白骨に語りかけたくなる。 ︹カット︺佐藤 奈津江

CONTENTS

会長就任のご挨拶

青木正和・

あおきまさかず

結核予防会会長

№ 273 5/2000

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;;;; ;;; ;;;;;; ;; ;; 10 8 6 4 2 0 患者/件 0 10 20 30 40 感染者(予防内服)/件 人 人 病院・施設 (43件) 事 業 所 (52件) 学 校 関 係 (54件) そ の 他 (11件)

老人施設における

結核集団感染対策

最近の事例から見た課題

山形県村山保健所長

阿彦忠之

結核再興の象徴

1998 年夏、老人ホームと刑務所におけ る結核集団感染のニュースが相次いで報道さ れた。わが国の結核罹患率が戦後初めて上昇 に 転 じ た年でもあり 、 ﹁ 結核再興 ﹂ を象徴す る事件であった。 94年以降に厚生省へ報告された集団感染事 例を発生場所別にみると、件数が最も多いの は学校関係であるが、集団感染 1 件当たりの 患者数︵発病者数︶は幸いにして少ない。学 校関係では、初発患者以外に発病者がなく感 染者︵予防内服の対象︶だけという事例も多 い。これに対して、病院・施設︵老人ホーム や刑務所を含む︶では、集団感染の件数が増 加しているだけでなく 、 患者数の 多さが際 立っている。 1 件当たりの患者数は平均 8 人 にのぼる ︵ 図 ︶ 。 最 近 の病院 ・ 施設には 、 結 核の診断が大幅に遅れてしまう環境、感染が 拡大しやすい環境、あるいは感染者が発病し やすい諸条件が潜在していると言わざるをえ ない。そこで昨年 10月、厚生省の積極的結核 疫学調査緊急研究班︵主任研究者︱森亨︶を 中心に﹁結核院内︵施設内︶感染予防の手引 き﹂が作成され、これを参考に病院では結核 に関する職員研修や感染予防策を講ずるとこ ろが増えてきた。しかし、老人施設では介護 保険の準備で大忙しであり、結核に関する具 体的な対策はこれからという所が多い。そこ で本稿では、老人施設における結核集団感染 対策の課題と解決策について、最近の事例を 紹介しながら考察する。

老人施設では﹁協力病院﹂の

役割が大きい

94年から 95年にかけて、X県の老人ホーム で結核集団感染が発生した。その概要は次の

結核集団感染1件当たりの患者・感染者数(発生場所別)

(注) 1994年以降に厚生省へ報告された160件(1999年11月現在)について集計。学校関係には、幼稚 園、学習塾、専門学校等を含む。

今月のテーマ

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とおりである。ただし、本事例については、 関連学会誌等での公表資料がないので、 98年 7 月及び 8 月当時の新聞記事を参考にした。 ︿事 例1﹀ 発端患者は 、 特別養護老人 ホ ー ムの入所者 ︵ 80歳 代、女 性︶ 。 93年頃から咳 などの症状があり、施設の協力病院であるA 病院にかかっていた。 94年 12月から翌年 1 月 まで﹁肺炎﹂としてA病院に入院。入院中に 一 般 細 菌やメチシリン耐性黄色ブドウ球菌 ︵MRSA︶の検査は行われていたが、結核 菌の検査は一度も実施されていなかった。退 院後は施設で療養していたが、症状が次第に 悪化。 95年 4 月になって別の病院で受診し、 肺結核症︵喀痰塗抹陽性︶と診断された。 同施設の入所者、職員及び患者家族などを 対象に、保健所が定期外検診を実施した結果、 新たに結核患者 26人が発見された。その大部 分は入所者で 、 結核以外に様々な 合併症が あったことも影響して、死亡者が初発患者を 含めて 14人に上った。 この事例では、老人ホームの協力病院の関 わり方と診断の遅れが大きな問題とされた。 A病院は当時、診療報酬不正請求で保険医療 機関の取り消し処分が決定し、院内は混乱を 極めていた。病院が施設に協力できる診療環 境でなかったという意味で、特殊な事例かも しれない。しかしながら、筆者が山形県の特 別養護老人ホームと老人保健施設のサービス 評価事業で施設の実地調査に関わった経験で は、結核に対しては協力病院の姿勢も忌避的 なところが多い 。 老人施設入所前 の結核の チェック︵結核の侵入を水際で防ぐ対策︶に は熱心だが、入所後の結核発病を想定した対 策は非常に手薄である。 本年 4 月から介護保険制度が始まり、施設 入所が措置制から自由契約制に変わったため、 施設サービスの質の評価と情報公開が求めら れている。質的評価の尺度については各方面 で検討されているが、感染症予防対策も重要 な 尺 度 の 一 つ で あ る 。 入 所 時 の 感 染 症 の チェックはもちろん大切であるが、入所中に 高齢者が結核やインフルエンザなどの感染症 にかかった場合でも、これを早期に診断し適 切に対応してくれる老人ホームは、質の高い 施設として利用者から選ばれるであろう。老 人施設が協力病院と契約するにあたっては、 結核などの感染症の診療機能についても考慮 すべき時代が来たのである。

定期検診は重要、でも過信は禁物!

施設入所者の結核を早期発見する方策とし て 、 ﹁ 定 期 検 診 ﹂ の重要性が強調されている 。 しかし、年 1 回の検診が施設における結核集 団感染の防止に本当に有効なのかどうか。有 効だとすれば、どのような検診方法︵胸部X 線検査、喀痰検査など︶が最も効果的で効率 的なのか。集団感染を予防するための他の方 策と比較しても、優先度の高い方法なのかど うか。これらを検証するための研究は、まだ 十分に行われていない。 ところで、結核定期検診による患者発見率 は、極めて低くなっている。厚生省の 97年度 地域保健事業報告によれば、市町村長が行う 住民検診︵ 19歳以上︶からの結核患者発見率 は受診者 1 万人当たり 1 ・ 5 人で、 10年前の ちょうど半分に低下している。事業所検診で は︵ 60歳以上の受診者が少ないので︶発見率 がさらに低く、受診者 1 万人当たり 0 ・ 7 人 に過ぎない。老人施設の入所者は、年齢的に 結核罹患率が高い集団なので、住民検診より も発見効率は良いと思われる。しかし、年 1 回の検診が他の方策に比べて﹁集団感染﹂の 防止に効果的かどうかは疑問である。肺結核 には﹁急速進展例﹂がかなり存在することが わかっており、 1 年ごとの検診ですべての患 者を早期に発見するのは理論的にみて不可能 だからである。 行政の援助による検診が施設側に安心感を 与えてしまい、各施設の主体的な予防対策の 動機づけを妨げることも考えられる。現時点 では定期検診の効果を過信せず 、 別の方法 ︵有症時の喀痰検査の徹底など︶も提案しな

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がら、保健所は各施設が主体的に取り組める ような、効果的な集団感染防止策を指導すべ きである。

結核菌検査をもっと重視しよう!

わが国では結核の診断方法として、伝統的 に胸部X線検査が重視されてきた。しかし、 結核の有病率の低下に伴い、X線検査で結核 を疑われても、それが本当に結核である割合、 すなわち﹁陽性的中度﹂は必然的に低下して いる。これに関連して、筆者が山形県で実施 した調査の結果を以下に紹介する。 調査対象は、山形県の 94年の肺結核新登録 患者 289 人全員。登録から 1 年後、調査票 を各対象者の主治医あてに送付し、登録時の 診断を再評価してもらう方法で調査した。結 果は、初回治療者の約 2 割、再治療例の 6 割 が他疾患等︵活動性肺結核とは言えない︶と 評 価 さ れ た 。 ﹁ 他疾患等 ﹂ と評価された者の 内訳は、新登録時も不活動性だったと考えら れる者が 4 分の 1 、非結核性抗酸菌陽性例が 4 分の 1 、悪性腫瘍が 10%、肺炎・塵肺その 他が 4 分の 1 という結果だった。特に再治療 例では、X線検査所見が優先され、結核菌検 査が軽視されている実態をよく反映した結果 であった。 老人施設では、胸部X線写真に古い硬化巣 などを認める入所者が多く、 1 枚の写真だけ で肺結核の診断をした場合の診断精度は、か なり低くなると推定される。過去のX線写真 との比較読影ができれば、診断精度の向上が 期待できるので、入所時や定期検診のX線写 真の保管が 望まれる 。 それと共に 、 結核は ﹁慢性の肺病﹂ではなく﹁感染症﹂なので、 肺結核の正確な診断及び感染性の有無の評価 には、喀痰検査︵結核菌検査︶が必須である。 保健所は老人施設や協力病院に対して結核菌 検査の重要性をもっと強調し、X線偏重では なく結核菌検査をバランスよく組み合わせた 診断方法が地域に定着するように、研修や広 報を充実すべきである。 ここで参考として、老人施設における結核 菌検査重視の対応事例を紹介する。 ︿事 例2﹀ Y 県の特別養護老人ホー ム で 98 年 7 月の 1 カ月間に、連続して 5 人の結核患 者︵ 表を参照 ︶の届け出があった。患者 5 人 の特徴と施設の療養環境の特徴を列記すると、 次のとおりであった。 1 他の施設に比べて要介護度の高い入所者 が多かった。 2 同室の 3 人 ︵ 患者A、D、E︶ は、寝たきり状態で経管栄養だった。 3 5人 とも体重減少が顕著だった︵ 4 人は 20%以上 の減 少 ︶ 。 4 喀痰検査が徹底された ︵ たとえ ば患者Eは、 7 月 21日の塗抹検査は陰性だっ たが、 7 月 27日から 3 日連続検痰を実施しG 2 号︶ 。 塗抹陽性例の同時多発ということで、保健 所では集団感染を疑い、すぐに対策委員会を 設置して定期外検診などを実施した。その結 果、入所者の中から菌陽性例がさらに 1 人発 見されたが、同定検査の結果、非結核性抗酸 菌と判明した。その後の調査で、届け出例 5 人のうち 2 人︵D、E︶の菌も、非結核性抗 酸菌と判明し た 。 残 る 3 人の菌は結核菌で あったが、菌株のRFLP分析ではそれぞれ 別パターンであった。つまり本例は、特定の 患者を感染源とした結核の集団感染事件では なく、偶然の同時多発事例と判明した。 我々の保健所でも、管内の精神病院や施設 に対して咳が続く入所者等への 3 日連続検痰 を 勧 め るようになってから 、 ﹁ 塗抹は 3 回と も陰性だったが、培養でコロニーが少数検出 された。どうしたらよいか﹂という相談を受 けることが多くなった。このような培養陽性 例の約半数は、この事例と同様に﹁非結核性 抗酸菌﹂であった。有症時の喀痰検査を徹底 すると、結核菌以外の陽性例でも施設側をハ ラハラさせてしまう面はあるが、結核の診断 の遅れを防止する効果が大きいことを実感し ている。 また、この事例では、施設職員が入所者の 健康状態を的確に把握し記録していたことが、

今月のテーマ

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喀痰検査の指示につながったといってよい。 特に、大幅な体重減少は、患者に共通する症 状として注目された。老人施設では咳などの 症状だけでなく、体温、体重、食欲などの健 康状態の変化に注目するという当たり前の対 応が実は忘れられやすいので、施設職員への 啓発が必要であろう。 以上のほか、老人施設では寝たきり者の痰 の吸引処置がしばしばあるので、移動式の吸 引器やネブライザーなどの医療機器の使用方 法にも留意すべきである。吸引器のカテーテ ルをその場で完全に消毒することは困難なの で、入所者ごとに交換すること。これも当た り前の対応であるが、現場での再徹底を求め てほしい点である。 なお、本報の一部は、平成 12年 2 月に東京 で開催された第 5 回国際結核セミナー︵結核 研究所主催、関連記事 16頁︶において発表し た。

はじめに

本会では 、 平 成 9 年 よ り 、 特 別 委 員 会 の ﹁感染症問題対策検討委員会﹂において感染 症対策について検討してきた。特に結核対策 については、リーフレット﹁結核への注意﹂ を作成し、同時に本会 のホームページ ︵ h ttp //:www.nurse.or.jp ︶ にも掲載し 、 看 護 職 員 に向けて結核への注意を喚起してきた。 平成 11年 7 月、厚生省から﹁結核緊急事態

老人ホームにおける塗抹陽性患者の同時多発事例

(1998年7月に届け出のあった5人の概要) A(80代、女):7/03届け出 6月初旬より咳。S病院、気管支洗浄液で塗抹(+) B(90代、女):7/15届け出 5月下旬より微熱、咳。T診療所→S病院、喀痰塗抹G3号 C(70代、男):7/23届け出 4月中旬より発熱、咳。T診療所→S病院、喀痰塗抹G2号 D(70代、女):7/23届け出 4月下旬より発熱、咳、痰。T診療所、喀痰塗抹G2号 E(80代、女):7/30届け出 7月初旬より発熱、喘鳴、咳。T診療所、喀痰塗抹G2号

看護職員の結核の発病や健康管理・

施設内における結核対策調査結果

日本看護協会専門職業務部専門職業務課

福留はるみ

※(文献)小林美香、他:施設における結核集団感染―特別養護老人ホームの場合(同時多発事例から)、 保健婦の結核展望、№73、p.15∼19、1999.

緊急事態

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宣言﹂が発せられた状況を鑑み、本会の会員 の所属するすべての病院及び老健施設・特別 養護老人ホーム︵以下、老人施設︶の会員を 対象に、施設内における健康管理・結核対策 及び看護職員の結核発病に関する実態調査を 行った。 本稿では、平成 12年 1 月 13日に本会プレス 懇談会で発表した、実態調査結果の速報を報 告する。

調査目的

病院及び施設における結核感染予防対策の 実状を知り、併せてそれらの施設における職 員の結核への注意を喚起し、結核対策の知識 を普及することを目的とする。

調査対象・方法

本会会員のいる病院 6310 施設、老人保 健施設及び特別養護老人ホーム 843 施設の 看護部長、婦長、看護職で最も職位の高い者 へ調査票を郵送。

調査実施期間

平成 11年 9 月 27日∼ 11月 12日

回収数

調査票の回収数、回収率は下の表のとおり であった。

主な結果

︻結核患者の発生状況︼ 病院の 47・ 5 %、施設の 11・ 4 %に、過去 1 年間に結核と診断された利用者及び結核以 外で受診した患者がいることが分かった。結 核患者のうち結核患者収容施設に移送できな かった数は 1 病院につき 2 ・ 2 人で、その理 由 として ︵表2︶ 、 結核の治療より原疾患の 治療を優先させた 45・ 8 %、重症で結核病院 から断られた 11・ 6 %であり、計 57・ 4 %が 患者の病状により移送できていない。これら の患者が入院している病室の構造は︵複数回 答 ︶ 、 排気が独立 している病室 24・ 8 %、空 気圧が陰圧という施設 12・ 8 %であり、結核 患者の入院する病室として適切な構造をとっ ているところは少なかった。

表1

調査票回収数

回 収 率 53.7% 60.2% 54.4% 回 収 数 3,389 507 3,896 配 布 数 6,310 843 7,153 対 象 病 院 老 人 保 健 施 設 特別養護老人ホーム 合 計

表2

結核患者を結核患者収容施設に移送で

きなかった理由(病院)

9.2 11.6 45.8 3.2 18.5 33.3 回答数は249 複数回答、% 結核の専門病院や結核病床に空床がなかったため 当該患者が合併症等のため重症であり、結核の専門病院 に収容を断られたから 当該患者が合併症等のため重症であり、結核の治療より も原疾患の治療を優先するため 自分の施設に結核病床またはそれに準じる設備があった から 自分の施設に結核病床またはそれに準じる設備はない が、結核を治療することは可能だから その他

緊急事態

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︻看護職員の結核発生状況︼ 看護職員の結核発生状況は、本会会員のい る病院の 7 ・ 3 %︵ 248 施設︶で、過去 1 年間に看護職員が結核を発病している。また、 看護職員の発病があった病院の種類は結核専 門病院・療養所が最も高く、次に地域支援病 院、高度専門・特定機能病院であり、比較的 重症の患者が多く入院する病院での発病率が 高く、感染の機会が多いためだと考えられる。 母数の多い一般病院では、 161 施設で看護 職員が結核を発病している。いずれの病院に おいても、看護職員の感染の可能性があり、 その予防対策を充実しておくことが重要であ る。 ︻職員の健康管理︼ ︵表3︶ 病院の雇用時健康診断実施率は 98・ 6 %だ が、ツベルクリン反応実施率は 60・ 9 %にと どまった。また、新入職員にツベルクリン反 応を実施している病院のうち、二段階試験を 実施しているところは 22・ 3 %に過ぎない。 また、職員が健診を受けなかった場合個別に 受診し、受診証明を提出するといった対応を 義務づけているところは病院 45・ 7 %に対し、 特養・老健では 56・ 0 %と後者の方が多い。 ︻院内結核感染対策︼ ︵表4、 5︶ 結核感染防止マニュ アルの活用を ﹁ 既 に 行っている﹂のは、病院 48・ 3 %、老人施設 31・ 4 % 。 ﹁ 検 討 中 ﹂ が 病 院 37・ 2 %、老 人 施設 33・ 9 %で、マニュアルを作成し活用し ている施設は半数以下だった。N︱ 95マスク の使用を ﹁既に行っている﹂ のは病院 10・ 8 %、 老人施設 4 ・ 5 %に過ぎなかった。 ︻感染管理看護婦︼ 感染管理看護婦を設置している病院は 28・ 1 %、老人施設は 26・ 4 %であり、いずれも 兼任が 80%以上を占める︵病院 89・ 9 %、老 人施設 81・ 3 % ︶ 。 感染管理看護婦の教 育 背 景は、日本看護協会﹁感染管理﹂研修修了者 が病院 18・ 8 %、老人施設 11・ 9 %、自施設 の感染管理などの研修終了者が病院 22・ 4 %、 老人施設 33・ 1 %であり、感染管理看護婦の 教育背景は多様である。

表3

職員の健康管理

ツ反検査実施率 老人施設 27.1 27.3 4.3 病院の回答数は3,389、老人施設の回答数は57 (%、単純平均) 病 院 60.9 39.0 12.7 ツ反検査問診実施率 老人施設 34.4 28.6 4.3 病 院 66.9 38.6 11.3 胸部直接撮影受診率 老人施設 94.5 99.0 23.7 病 院 98.9 96.7 14.7 受 診 率 老人施設 95.4 99.5 24.2 病 院 98.6 97.7 14.6 雇 用 時 の 健 康 診 断 定 期 健 康 診 断 配置換 え 時 の 健 康 診 断

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おわりに

今回の実態調査では、各施設により結核対 策の取り組みに差があり、看護職員がかなり の割合で結核を発病している実態が明らかに なった。各施設に応じた適切な結核対策が求 められるが、感染管理は病院や施設等におけ るすべての部門の一人一人が継続して、安全 に業務を遂行できるようなシステムを構築す る必要がある。 また、施設内で感染管理を専門的に行うス ペシャリストの育成が望まれる。日本看護協 会では、 2000 年 4 月より、感染管理の領 域において卓越した実践能力を持つ、感染管 理認定看護師の教育を開始する。他職種と連 携しながら、感染管理の質の向上を目指し、 ケアの質の向上に寄与するなど、今後の活躍 が期待される。

表4

病院内の院内結核感染対策

無回答不明 3.0 9.9 21.0 23.0 19.7 24.0 16.9 21.5 26.4 25.3 回答数は3,389 (%) 検討していない 1.5 9.2 39.3 28.4 29.2 43.6 12.7 28.4 44.9 39.3 検 討 中 4.4 32.7 21.0 22.4 22.6 21.7 13.9 12.3 9.4 11.2 既に行っている 91.1 48.3 18.7 26.3 病院内で結核患者が発生した時の感染対策 28.5 10.8 56.6 37.8 19.3 24.3 病院内の感染対策 院内感染防止対策委員会の設置 結核感染防止対策マニュアルの設置 外来でのトリアージュ診療 本会の結核リーフレットの活用 N―95マスクの使用 マスクのフィットテストの施行 結核患者に接触した者への定期外検診 保健所と協力し接触者検診対象・方法の検討 保健婦の初回面接 保健所と退院後の管理検診方法の検討 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10

表5

老人施設内の施設内結核感染対策

無回答不明 13.6 16.2 29.4 28.4 39.1 40.0 37.3 37.1 41.0 40.0 回答数は507 (%) 検討していない 16.8 18.5 34.9 34.1 37.5 42.2 17.9 23.7 33.9 31.6 検 討 中 23.7 33.9 15.8 25.6 18.9 16.0 21.5 19.7 16.2 17.2 既に行っている 46.0 31.4 19.9 11.8 老人施設の利用者で結核患者が発生した時の感染対策 4.5 1.8 23.3 19.5 8.9 11.2 老人施設内の感染対策 院内感染防止対策委員会の設置 結核感染防止対策マニュアルの設置 入所時のトリアージュ診療 本会の結核リーフレットの活用 N―95マスクの使用 マスクのフィットテストの施行 結核患者に接触した者への定期外検診 保健所と協力し接触者検診対象・方法の検討 保健婦の初回面接 保健所と退院後の管理検診方法の検討 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10

緊急事態

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レポート

2 月 8 日、 5 回目を迎えた﹁国 際結核セミナー﹂が東京都池袋の ホテルメトロポリタンで開催され た。今年度はテーマを﹁施設内集 団感染予防対策の基礎と実際﹂と して、ハイリスク集団である高齢 者や身体弱者を有する老人施設・ 精神病院に焦点が当てられた。県 市を通してそれぞれの施設への周 知 を お 願 い し た 結 果 、 全 国 か ら 500 人の参加を得ることができ た。 午前中は、結核の基礎に関する 講演が行われた。 1 題目は結核予 防会青木正和副会長︵現会長︶に よる ﹁ 結核の感染と 発 病 ﹂ 、 2 題 目 は結核研究所森亨所長による ﹁ツベルクリン反応検査の基礎﹂ であった。昨年 7 月緊急事態宣言 が発表された後、関係者からの質 問や疑問が急増したが、それらの 多くは感染と発病の混同によるも のやツ反検査結果の解釈に関する ものだったことを考えると、タイ ムリーな講演内容だった。フロア からも具体的な対応に関する質問 が寄せられた。 午後は、それぞれの立場から施 設内感染防止対策の実際について 聞くことができた。日本精神病院 協会の片山義郎先生からは、精神 病院在院患者の 65歳以上の患者比 率は年々増加し平成 10年は 31%に 達したこと、それに伴い精神病院 において結核に罹患する危険性は 極めて高い現状にあることが報告 された。また、緊急事態宣言に基 づいて協会が作成した﹁院内結核 感染防止対策ガイドライン 99﹂の 紹介と共に、以下の要望事項が提 示された。 1 結核対策特別促進事 業の一環としての結核検診、 2 結 核専門医の所在の明示及び周知、 3 60歳以上在院患者の胸部X線検 査の健保適用、 4 精神保健指定医 を有する結核専門病院の確保。そ の後、渋谷区保健所の前田秀雄先 生から、精神病院入院中に発病し た事例を通して、右記ガイドライ ンの解説及び運用が示された。 老人施設における結核予防対策 の実状について、全国老人福祉施 設協議会丹下芳典先生の報告の後、 山形県村山保健所阿彦忠之先生は、 病院・施設での集団感染事例を紹 介された。集団感染 1 件当たりの 発 病 者 数 は 平 均 8 人 に の ぼ り 、 ﹁件数﹂ に対して ﹁患者 ︵ 発病者︶ ﹂ が際立って多いこと、その最大の 要因は発端患者の診断の遅れにあ ることが指摘された。ほかに寝た きり者の吸引処置等の取り扱い、 定期検診の有効性の検討等今後の 課題が示された。 沖縄県立中部病院の遠藤和郎内 科医長からは、 1 早期発見 2 適切 な隔離 3 確実な治療 4 職員の健康 管理を基本においた当病院におけ る結核院内感染対策の実際につい て紹介があった。臨床医による抗 酸菌染色が結核患者の早期発見に 有効であるとの報告は、大変興味 深かった。自施設の発生状況を的 確に把握し、原因を追及し、具体 的な対策を立てるための重要な基 礎情報の供給源となるサーベイラ ンスシステムを臨床現場で構築し ていく必要性が提案された。 東京都南多摩保健所保健サービ ス課稲垣智一課長は、昨年 10月に 公表された﹁結核院内︵施設内︶ 感染予防の手引き﹂の具体的な活 用方法について、事例を通しなが ら解説を行った。 講演の後、結核研究所石川信克 副所長の司会でフロアを交えた討 論が行われた。現場から具体的な 質問が出され、大変熱心な討議が 展開した。最後に、結核予防会会 長︵現顧問︶島尾忠男先生の﹁ま とめ﹂で第 5 回セミナーは閉会と なった。全国から 500 人が集い、 結核対策への思いで一つになった 1 日が終了した。

第5回国際結核セミナー

―施設内集団感染予防対策の基礎と実際―

2月8日/ホテルメトロポリタン(東京都) 結核研究所対策支援部保健看護学科長

小林典子

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平成 12年 3 月 22・ 23日の 2 日間、全国各地 から延べ約 3 千人のご出席をいただき、宇都 宮市で第 51回結核予防全国大会が開催されま した。 この全国大会は、昨年厚生省から出された ﹁結核緊急事態宣言﹂を受けての大会であり、 非常に重要な意義を持つものと認識しており ま し た 。 さ ら に 、 新 世紀を目前とした西暦 2000 年という節目の年を迎えての大会で もあり、ことさら意義の深いものでありまし た。 結核予防会総裁の秋篠宮妃殿下には、大会 ご臨席のみならず、栃木県の健康づくりの拠 点として平成 9 年 4 月にオープンした﹁とち ぎ健康の森﹂や、次代を担う子供たちが科学 する心を養う場である﹁栃木県子ども総合科 学館﹂をご視察いただきました。新時代へ向 かって創造する栃木県の一端をご覧いただけ たのではないかと存じます。 大会 1 日目の午前中は宇都宮グランドホテ ルにおいて、結核予防会全国支部長会議と全 国結核予防婦人団体連絡協議会総会が開催さ れました。 全国支部長会議では、 ﹁結核緊急事態宣言﹂ への対応及び昨年の同会議で議決された﹁ 21 世紀の結核予防会構想﹂のその後の進展など について討議しました。最初に、結核研究所 森所長から﹁結核緊急事態宣言以降の結核対 策﹂と題した現状説明があり、緊急事態宣言 以降も依然集団感染が増加しつつあること、 高齢者や社会的弱者、リスク集団への対応強 化が必要であることが指摘され、さらに、結 核医療体制の確保やネットワーク化の必要性、 保健所機能の強化や新しい結核予防法のあり 方について言及がありました。続いて﹁緊急 事態宣言﹂への対応状況として、大阪府支部、 千葉県支部、福岡県支部、岡山県支部、鳥取 県支部などから活動状況の報告があり、活発 な議論が交わされました。次に、結核予防会 の佐藤事業部長から﹁ 21世紀の結核予防会構 想﹂の報告として、読影医師研修会や保健事 業運営協議会の開催、健康日本 21計画準備委 員会の設置が報告され、協業化・情報処理委 員会については京都府支部の相津常務理事か ら報告がありました。さらに、岡山県支部守 谷先生が肺がん検診を取り巻く状況について 説明され、肺がん検診の有効性については自 信を持って、今後とも積極的に事業を展開し ていくべきであると結ばれました。 午後からは、結核対策を推進する立場の関 係者による第 1 分科会が宇都宮グランドホテ ルで開催される一方 、 栃木県総合 文化セン ターでは婦人会など多くの一般参加者による 第 2 分科会が開催されました。 第 1 分科会は 、 ﹁ 21世紀に向けての結 核 対 策﹂をテーマとして、座長に結核研究所石川 副所長、助言者に結核予防会青木副会長と厚 生省保健医療局結核感染症課中谷課長、そし て 5 人の演者によるシンポジウムが行われま した 。 ﹁ 結核の地域格差と今後の課題 ﹂ 、 ﹁ 結 核診療の立場から﹂ 、 ﹁ 保健所の役割﹂ 、 ﹁ 接触 者検診をいかに強化するか﹂ 、 ﹁ 結核予防会支 部の役割﹂等について、現場の事例を基にし ながら熱心に討論されました。 第 2 分科会のテーマは﹁結核緊急事態宣言 を考える﹂で、座長は栃木県揚松保健医療監

結核予防全国大会を顧みて

第51回

結核予防会栃木県支部副理事長

大島庄平

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が務めました 。 ま ず 、 結 核研究所森所長の ﹁再興感染症 よみがえる結核﹂と題した講 演があり 、 続いて婦人会の方々に よる演劇 ﹁ 2100 年健康ユートピア︱結核の過去、 現在 、 そして未来 ︱ ﹂ があり ま し た 。 演 劇 は、結核の歴史と現在置かれている状況、そ して明るい未来への期待が時代背景とともに 分かりやすく描かれており、熱演に会場は大 いに盛り上がりました。総裁秋篠宮妃殿下に は、約 1 時間のご臨席をいただき、大変熱心 にご覧になるお姿には感激いたしました。ご 臨席は今後の活動の励みとなるものであり、 関係者一同心より感謝申し上げます。 大会 2 日目は栃木県総合文化センターにて 大会式典を行いました。初めに、大会運営委 員長である渡辺栃木県知事から﹁結核の再興 によるさまざまな緊急的課題が山積するなか、 結核緊急事態宣言後初めての全国大会であり、 西暦 2000 年という節目の年に第 51回目の 大会として結核対策の新たな半世紀がスター トするなど、色々な意味で意義の深い大会で あります。このような大会を開催できること は光栄に感じる一方、責任の重さを痛感して おり、本大会をより意義の深いものとして更 なる結核対策を推進して行きたい﹂とご挨拶 申し上げました。さらに結核予防会総裁秋篠 宮妃殿下から、世界的結核対策の必要性と各 功 労 者 へ の ね ぎ らいのお言葉に続き 、 ﹁ 大会 の成果をそれぞれの地域の活動に十分生かさ れ、併せて結核のない明るく健康的な社会づ くりに努められることを期待します﹂とのお 言葉を賜りました。引き続き秩父宮妃記念結 核予防功労賞の第 3 回表彰では、結核予防国 際協力功労賞 1 名、結核予防保健看護功労賞 3 名、結核予防事業功労賞 8 名、計 12名に総 裁から表彰状が贈られました︵なお、結核予 防世界賞受賞者は、 8 月 30日∼ 9 月 3 日にイ タリアで開催されるIUATLD世界会議の 席上で表彰されます︶ 。 式典に続いての議事では、全国支部長会議 報告、第 1 ・第 2 分科会報告の後、結核が再 興感染症として増加を続けるか否かの分岐点 に立っていると の認識の下に 、 ﹁ 新たな課題 を考慮に入れた総合的な結核対策の樹立、ハ イリスク・多剤耐性患者などへの的確な措置、 結核研究の推進、医療関係者への啓発、地域 結核対策及び国際協力の強化﹂の 6 項目を盛 り込んだ大会決議・宣言が満場一致で採択さ れました。また第 52回大会は、 3 月 24日世界 結核デーの前後に徳島県で開催されることに なりました。 特別講演では、慶應義塾大学医学部助教授 の向井萬起男先生から﹁ 2000 年宇宙の時 代、新世紀の医学︱女房が宇宙を飛んだ︱﹂ と題し、病理学者として医療現場における結 核院内感染の実態や、奥様である女性宇宙飛 行士向井千秋さんとのエピソードの中で、日 本とアメリカの常識や文化の違いなどをユー モアたっぷりにお話しくださいました。向井 先生への大きな拍手、そして和やかな雰囲気 の中、全日程を滞りなく終了できました。 この意義の深い大会が盛会裡に終了するこ とができましたことは、多くの関係団体や関 係者のご支援ご協力の賜物であり、深く感謝 申し上げます。なお、この全国大会が起爆剤 となり、本県そして全国の皆さま方がさらに 結核対策の推進に貢献されることを期待して おります。 特別講演演者の向井助教授。ユーモアあふれる話しぶり に、会場は爆笑の渦に包まれた。

第51回結核予防全国大会・報告

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大会第 1 日目 の 第 1 分 科 会 は 、 ﹁ 21世 紀 に向けての新しい結核対策を探る﹂をテーマ に、約 400 人の参加者を集めて行 わ れ た 。 シンポジウムは、結核研究所の石川信克副 所長を座長として 5 名の演者の発表と、厚生 省保健医療局結核感染症課中谷比呂樹課長及 び結核予防会青木正和副会長の助言により進 められた。 1 ﹁ 結核の地域格差と今後の課題﹂ 栃木県安足健康福祉センター小林雅與所長 は、結核の地域格差の存在が推測されたこと を報告し、結核対策を効果的に行うためには、 保健所管轄区域ごとの結核対策が必要であり、 地域医師会医師への情報提供及び一層の協力 体制を作ること等が大切であると指摘された。 2 ﹁ 結核診療の立場から﹂ 国立国際医療センター呼吸器科豊田恵美子 医長は、DOTを院外で実施することについ て、地理的問題に対しては地域保健所との連 携を要し、患者の仕事等による時間的な問題 は産業医や健康管理担当者との連携、最終的 にはアウトリーチワーカーによるアプローチ が必要となるが、当面は診療所ベース、保健 所ベースのシステム確立が必要であると発表 された。 3 ﹁ 保健所の役割﹂ 東京都八王子保健所保健サービス課保健指 導担当係峰村純子係長は、結核対策における 保健所の役割として、情報の集積・分析と提 供、初回面接と接触者検診の重要性と強化及 び届け出の徹底と知識の普及啓発活動の重要 性を指摘された。 4 ﹁ 接触者検診をいかに強化するか﹂ 茨城県古河保健所健康増進課木野内利之係 長は、保健所業務として接触者検診の重要性 を述べ、検診計画の問題、関係機関との調整 ・提携及び定期外検診の精度向上など、保健 所の役割が今後一層求められる時代になって いることを指摘された。 5 ﹁ 結核予防会支部の役割﹂ 結核予防会千葉県支部鈴木公典医監は、千 葉 県 支 部 が 実 施 し て い る ﹁ 結 核 ダ イ ヤ ル 110 番﹂を例に挙げ、結核予防会支部の存 在意義を示すには啓発・普及活動が重要で、 外部に提供する結核の情報内容や提供手段を 工夫する必要があると発表された。 以上、昨年 7 月の﹁緊急事態宣言﹂後初め ての全国大会とあって、結核対策や医療の第 一線で活躍されている方々の課題・取り組み について発表していただいたことは、とても 有意義であったし、今後の新しい時代の対策 への展望が開かれたことと確信します。 会場風景

レポート

1世紀への結核対策

結核予防会栃木県支部 総務部部長代理兼総務課長

第1分科会

高橋浩一

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3 月 22日、第 2 分科会当日は、少々風が強 く肌寒かったものの晴天に恵まれ、県内外か ら約 900 名の方々に ご参加をいただきま した。秋篠宮妃殿下におかれましても、約 40 分間ご臨席を賜り、演劇などをご覧いただき ました。 はじめに 、 結核研究所長 の森亨先生から ﹁再興感染症 よみがえる結核﹂と題し、わ が国の結核を取り巻く現状と諸問題について 分かりやすく解説をいただきました。 次に、栃木県地域婦人連絡協議会今市市連 合婦人会の 皆 様 に よ り 、 ﹁ 2100 年健康 ユートピア︱結核の過去、現在、そして未来 ︱﹂と題する演劇が、栃木県警察音楽隊の演 奏の下演じられました。この演劇は、ほとん ど の 病気が克服された 2100 年の世界か ら、 1950 年 と 2000 年 と に タ イムスリップし、そ れぞれの時代の結核 の状況を振り返ると いう設定でした。脚 本、小道具、衣装な どほとんどが出演者 の手作りで、何カ月 も前から準備が進め られ、これに音楽や 照明を合わせること により、素晴らしい 作品に仕上がりまし た。ラストシーンでは、約 40人の出演者全員 が来場者に手を振って応えていましたが、そ の表情には充実感あふれるものがありました。 続いて、 ﹁ 結核模擬裁判∼結核菌を裁く﹂ と題し、集団感染を起こした結核菌を被告と した裁判形式のトークショーが演じられまし た。結核研究所の森所長や山下部長をはじめ、 全国各地で結核行政の第一線で活躍されてい る先生方にご出演いただき、軽妙なやりとり のうちに進行しました。 さらに、座長あいさつの後、栃木県警察音 楽隊によるアトラクションをお楽しみいただ き、盛大な拍手をもって分科会の幕を下ろす ことができました。 この分科会は﹁結核緊急事態宣言﹂の後初 めての大会でもあり、 ﹁ 宣言﹂の中で、国民 一人一人が結核の問題を再認識し、わが国が 一丸となって結核対策に取り組んでいくこと が求められていることから、 ﹁ 結核緊急事態 宣言を考える﹂というテーマで企画したもの です。 結核を取り巻く環境がますます厳しくなり、 かつ問題が多様化する中で、この分科会が参 加者の皆様にとって、それぞれの地域での結 核予防活動を推進する上での一助となればと 考えております。 最後に、この分科会の開催に当たり、お忙 しい中ご協力をいただきました出演者の皆様、 参加者の皆様及び関係各位に対し厚くお礼を 申し上げまして、第 2 分科会の報告とさせて いただきます。 病気が克服された2100年の結婚式 「結核模擬裁判∼結核菌を裁く」

第51回結核予防全国大会・報告

結核緊急事態宣言を

考える

栃木県保健福祉部 健康増進課長

第2分科会

菅山省吾

レポート

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支部長会議

報告

結核予防会全国支部長会議は、大 会 1 日目の 3 月 22日、宇都宮グラン ドホテルにて行われた。結核予防会 大池理事長、栃木県支部笹川支部長、 厚生省保健医療局結核感染症課中谷 課 長の挨拶に次いで 、 ﹁ 結核緊急事 態宣言﹂ 、 ﹁ 21世紀の結核予防会構想 のその後の進展状況について﹂ 、 ﹁ 肺 がん検診を取り巻く状況﹂の 3 議題 について、討議が進められた。 まず 、 ﹁ 結核緊急事態宣言以 後 の 結核対策のあり方﹂と題し、結核研 究所森所長の講演があった。森所長 の論旨を要約する。 世界的な結核対策の動きとしては、 ストップTBイニシアティブという WHOのみならず世界中の団体を糾 合した組織が生まれ、WHOの西太 平洋地域でも、今後 10年でこの地域 の結核を半減するという目標を設け、 準備を始めている。 一方日本の結核はアメリカに約 40 年遅れており、塗抹陽性肺結核の罹 患率は 1980 年からじわじわと増 え続けている。原因は主に 60歳以上 の減少速度の鈍さにあると考えられ るが、同時に若い年齢層の減少鈍化 や、重症患者の増加にも目を向けな ければならない。また、罹患率が最 も高い大阪市は最も低い長野県の 6 倍というような地域格差も問題であ る。 具体的な対策としては、高齢者に 対する化学予防、臨床の場で結核に きちんと対応できるようにするため に、卒前・卒後の医学教育が大切で ある。 また、大都市特定地域の社会経済 的弱者へは、DOTの施行が何カ所 かで始められているが、健診を受診 する機会の少ない小規模事業所を対 象とした定期健診が重要である。 さらに、抗結核薬の確保、入院治 療体制の整備、公費負担に適用され る医療の再検討、多剤耐性患者を治 療するための医療施設や国療のネッ トワーク化などを積極的に進めてい くべきである。 地域で医療を指導する立場の保健 所については、再編成が進む中で、 厚生省から出す予定である﹁保健所 における結核対策強化の手引き﹂を 活用し、定期外健診をきちんと行う ことがますます重要になってきてい る。 続 い て 、 ﹁ 結 核 緊急事態宣言 ﹂ を 受けて新たに実施した活動について、 各支部より報告があった。大阪府支 部では、普及啓発活動を強化し、大 阪府の依頼を受けて 20人未満の小規 模事業所への結核検 診実態調査を 行っている。千葉県支部は 3 年前か ら行っている﹁結核ダイアル 110 番﹂への相談件数が緊急事態宣言前 後から急激に増え、これまでの相談 例をまとめて小冊子にするように進 めており、千葉市の日雇い労働者に 対してCT検診・痰の検査を行って いるとのことであった。そのほか福 岡県支部、岡山県支部、鳥取県支部 などから意見があり、活発な議論が 交わされた。 次に 、 ﹁ 21世紀の結核予 防会構想 のその後の進展状況について﹂本部 佐藤事業部長から、胸部X線写真読 影医師研修会、保健事業運営協議会 の新規開催、健康日本 21計画準備委 員会、協業化・情報処理委員会の二 つの委員会の設置、本部内に﹁経営 情報企画室﹂を新たに設けたことに ついて報告があった。協業化・情報 処理委員会については、京都府支部 の相津常務理事より、ワーキンググ ループを組織して 2 年間を目途に検 討するという追加説明があった。 最後に 、 ﹁ 肺がん検診を取り 巻 く 状況﹂について岡山県支部の守谷保 健部長が報告した。肺がん検診の有 効性に関する藤村班の研究から肺が ん検診が﹁有効﹂との結果が出たこ とや、岡山県支部で行った精度管理 の研究結果を紹介し、がんの中で肺 がん死亡が 1 位であるといったわが 国の状況の中で、結核検診と合わせ て肺がん検診を有効な精度で行う必 要があると結んだ。 文責 編集部

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第五十一回結核予防全国大会決議

平成十一年七月二十六日、厚生大臣は﹁結核緊急事態宣言﹂を 発した。 わが国の結核まん延状況は、塗抹陽性患者の罹患率でみる限り、 この二十年間ほとんど改善をみていない。しかもこの間、一般国 民のみならず医療関係者の間にも、結核に対する関心の低下は進 んでいる。 そればかりか、近年は、高齢者や社会的・経済的・肉体的弱者 といったハイリスクグループへの患者の偏在化が目立ち、大都市 では極端に罹患率の高い地域が存在するほか若者の罹患の増加も 見られる。一方、院内感染や集団感染事例があとを絶たず、多剤 耐性結核という新たな問題も生じている。そして、平成九年には 全国の罹患率が四十三年ぶりに増加し、翌十年にも引き続き増加 している。 わが国の結核まん延状況は、まさに、再興感染症として増加を 続けるか否かの分岐点に立っていると言えよう。 目を世界に転ずると発展途上国においては、結核対策はDOT S︵ドッツ︶の普及、進展により著しく活性化しているが、人材、 技術、資材が不足し、わが国などの協力を強く要請している。 我々は、国内外において結核問題が再興しつつあるという現実 を重大に受け止め、今大会の各種会議で考察、検討した結果、結 核緊急事態を打開するため次のことを決議する。 一、新たな課題を考慮に入れた、総合的な結核対策を樹立する こと 一、結核発病のハイリスクグループや多剤耐性患者など、対応 の困難な患者への的確な措置を講ずること 一、結核研究をより一層推進し、新しい技術・方策を開発する とともに、結核対策の人材育成を図ること 一、医療関係者の結核問題への認識を高めるため、必要な措置 を講ずること 一、結核予防の普及啓発を強化するため、全国の結核予防会及 び結核予防婦人会の活動を支援し、地域での結核対策を強 化すること 一、世界の結核対策推進のため、国際協力を強化すること 以上六項目の実現を期し、国及び関係当局に、財政措置をはじ め必要な措置を講ずるよう要請する。 右決議する。 平成十二年三月二十三日 第五十一回結核予防全国大会

第五十一回結核予防全国大会宣言

平成十一年七月二十六日、厚生大臣は結核緊急事態宣言を発し た。 わが国の結核まん延状況は、再興感染症として増加を続けるか 否かの分岐点に立っている。 このような事態を打破するため、我々はさまざまな予防活動を 強化し、国民の結核への認識を高めるよう、普及啓発活動を積極 的に行う。また、一層深刻さを増している世界の結核対策を支援 するため、国際協力活動を推進する。 右宣言する 平成十二年三月二十三日 第五十一回結核予防全国大会



第51回結核予防全国大会・報告



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結核予防会に

年間勤めて

結核予防会顧問

島尾忠男

平成 12年3月 28日付で、本会の 島尾忠男氏が会長を辞任し、顧問 に就任することとなった。島尾顧 問に、本会に入ってから 50年間の 思い出を振り返っていただいた。 戦時体制で旧制高校が半年短縮 され、私は昭和 19年 10月に医学部 に入学した。卒業は昭和 23年 9 月、 1 年のインターンを終えて結核予 防会に就職したのは昭和 24年 11月 で、医師国家試験は終わっていた が、医師免許証は交付される前の ことであった。勤務場所は第一健 康 相 談 所 ︵ 一 健 ︶ 、 結 核 研 究 所 ︵ 結 研 ︶ 、 本部と変わっ た が 、 平 成 12年 3 月 28日で会長職を退任す るまで、 50年と 4 カ月予防会に勤 めさせていただいたことになる。 50年勤続とは当初は予 想 も し な かったことであり、しかもそのほ とんどを結核を相手とする仕事で 過 ごすことができたのは多くの 方々のおかげであるが、今、改め てその背景について考えてみた。

結核予防会が結核中心の

活動を継続

まず第一は、結核予防会が存続 し、しかも結核を中心とする業務 の内容が変わらなかったからであ る。就職したのは、予防会が創立 後 10年を経過し、敗戦による基金 の喪失や戦災の痛手から立ち直り、 従来の官主導の体制から民間団体 に切り替わって、活躍を始めたこ ろであった。一健の前には受診者 が列を作り、結研附属療養所︵現 在の複十字病院︶に入所するため には半年の待機を必要とした。 その後国を挙げて結核対策を推 進した結果、結核は急速に減少し、 昭和 40年代に入ると、結核問題は 学問的には解決済みというような ムードが強くなってきた。現に、 結核が日本より一足先に減少した 欧米諸国では、結核予防会が結核 肺疾患協会などと名称を変更し、 業務内容も多角化しているが、つ いには十分な活動資金が得られず、 休眠状態に陥っている団体さえも 見られる。日本では結核の蔓延状 況に欧米諸国と 20∼ 30年の開きが あったので、結核の減少や患者の 高齢化に対応するため、日常の診 療や検診活動では業務の枠を広げ、 また結核対策での国際協力を強化 する動きは必要であったが、結核 に関する業務を事業の中心とする ことは変える必要が生じないうち に、罹患率の減少が鈍化し、増加 に転じ、結核緊急事態宣言が発せ られる状況となった。このような 客観的情勢のおかげで、予防会で、 結核中心の業務を 50年間行うこと ができた。

2度の大病を克服

第二の問題は健康である。優れ た資質を持ちながら、病のため中 途で挫折した者も少なくない。健 康という点では、筆者も 2 度危機 に直面した。最初は、一健に勤め て 1 年 2 カ月後の結核発病で、 3 回の手術を含む 3 年近い療養生活 の後でやっと社会復帰することが できた。 2 回目は理事長に就任す る半年前、平成 2 年 6 月の心筋梗 塞である。WHOの執行理事とし て、かなりの無理を押しての日々 が続いた 3 年の任期を終え、国際 結核肺疾患予防連合のボストンで の会議に出席して帰国後 1 カ月の 出来事であった。幸いに保存療法 だけで 4 カ月後には復職すること ができた。 2 度の大病を経験しな がら勤続できたのは、 1 度目は結 研附属療養所の塩沢正俊医師、 2

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度目は東京女子医大病院の細田瑳 一教授を中心とする医療スタッフ のおかげであるが、結核や心筋梗 塞などの大病を患うと、回復後は 活性を失う人が多い中で、発病前 と変わらず仕事に取り組めたのは、 生来の負けず嫌いの性格と、旧制 高校柔道部での鍛錬の賜であろう。

時の流れと命運

第 三 は時運である。予防会の定 年は 60歳である。筆者はかねがね、 トップの責任は後継者を育て、引 き継ぐことと考えていたので、結 核研究所長は 60歳の定年に達した 時に引退した。たまたま予防会本 部には結核の専門の医師がおらず、 常勤の常任理事として残ることを 要請されたので、予防会勤務が続 いた。平成 2 年に、予防会は昭和 21年以来会長を務められた島津忠 承会長が亡くなり、山口正義理事 長は大腿骨頸部骨折で入院中とい う非常事態となった。山口理事長 が会長になられ、空席の理事長に 適任者がないというわけで筆者が お受けすることとなった。山口会 長はご高齢で体調の回復も十分で なく、会長を補佐するために平成 5 年には副会長に就任したが、山 口会長は平成 6 年 3 月末に退任さ れた。当時ご高齢のため総裁辞退 の御意向を漏らされていた秩父宮 妃殿下を名誉総裁に、新たに秋篠 宮妃殿下を総裁に推挙する手続き を進めるには、会長不在では困る と説得され、平成 6 年 4 月に会長 を拝命した。会長、理事長には定 年がないため、 50年という歳月を 予防会で過ごさせていただくこと になった次第である。

思い出の多い研究生活

一健と結研時代は、疫学の研究 を中心に、集団検診や外来診療を 行いながら過ごした楽しい日々で あった。この間、国は全面改定し た結核予防法の施行、健康診断の 全国民への拡大、患者管理体制の 整備、命令入所の枠の拡大、BC G接種法の皮内から経皮への切り 替え、旧ツベルクリンのPPDへ の 切り替えなどの施策を次々に 行ったが、結核研究所でこれらの 施策の基礎となる研究に従事し、 それが実施に移されるのを身近に 見守ることができた。 昭和 30年 4 月から 31年 6 月まで スウェーデンに留学し、北欧諸国 からIUATの本部、WHOの本 部などを訪れ、初めて国際社会を 肌に感じた。昭和 35年には 3 カ月 間アラブ連合︵現在のエジプトと シリア︶に結核専門家として派遣 され、それからは国際協力の仕事 が加わった。昭和 38年から始まっ た結研国際研修、東京で行われた 昭和 41年の第 5 回IUAT東部地 域会議は、予防会が国際的な風雨 に曝された初めての機会であり、 昭和 48年、再び東京で開催された 第 22回IUAT世界会議を事務局 長として取り仕切ったことは、忘 れられない思い出となっている。

経営の健全化を目標に

昭和 59年に本部に移ってからは、 経営の健全化が大きな課題となっ た。当時毎年数億の赤字が出てお り、土地の売却で凌いでいたが、 売れる土地も残り少なくなった状 況で、 40億円を基本財産に移し、 背水の陣で経営の再建に臨んだ。 幸いに理事者側に人を得、職員の 協力もあって医業経営が軌道に乗 り、赤字経営から脱却できて嬉し く思っている。

終わりに

50年を越える予防会とのご縁の 中で、忘れることができないのは、 総裁秩父宮妃殿下の予防会に賜っ た温かい思し召しである。総裁の 晩年に総裁に感謝する集いを催し、 ご葬儀に際しては司祭長としてご 奉仕することができ、また偲ぶ会 も本会主導で行うことができ、ご 恩の万分の一にも報いることがで きたのではないかと考えている。 50年間無事に勤めることができ たのは、多くの良き先輩、同僚、 支えてくれる方々に恵まれたから であり、改めて厚く感謝する次第 である。顧問の委嘱を受けたこと は誠に光栄であり、今後は一結核 医として、外来診療、研修活動な どのお手伝いをしながら、後継者 の養成と結核についての正しい知 識の普及のお手伝いをして参りた いと考えている。

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特対

事業

秋田

減らそう結核

5ヵ

年大作戦

秋田県能代山本健康福祉センター

企画・高齢者班主査

小林保子

はじめに

秋 田 県 能代保健所では 、 ﹁ 減らそう結核 5 カ年大作戦﹂と名付けた結核対策を、平成 7 年度から実施しています。 この事業に取り組む直前の、平成 6 年にお ける結核の状況を 表1 に示します。当時秋田 県内には八つの保健所がありましたが、能代 保健所は罹患率・登録率が県内で最も高く、 有病率も本荘保健所に次いで 2 番目に高いと いう状況でした。 能代保健所はどうしてこんなに高いのだろ うと、素朴な疑問を持つと同時に、せめて全 国あるいは県平均並に、これら結核に関する 指標値を下げたいというのが、今回の﹁大作 戦﹂を立案した当時の担当者の思いだったそ うです。

主な事業の概要

これまで 5 年間の主な取り組みを 表2 にま とめてみました。 平成7年度 は、結核の実態調査と結核ハン ドブックの作成に取り組みました。昭和 54年 から平成 6 年までに管内で新しく登録された 肺結核患者 1052 名の記録などを分析し、 ﹁管内の結核患者の状況について﹂としてま とめました。その状況を踏まえ、関係機関、 特に医療機関に結核の実情と対策の実際につ いて知っていただきたいと考えたのが、結核 ハンドブックの作成、配布となったわけです。 このハンドブックには、結核の届け出などの 各種様式を添付したほか、結核の医療や対策 の一覧を掲載しました。また、結核研究所の 青木所長︵当時︶をお招きし、医療関係者を 対象に研修会を開催しました。

表1.保健所別罹患率、有病率、登録率(平成6年)

全 国 44,590 35.7 70,781 56.6 181,470 145.1 率はすべて人口10万対 秋田県 433 35.6 844 69.5 1,801 148.2 湯 沢 50 58.5 50 58.5 116 135.7 横 手 50 44.0 66 58.0 162 142.4 大 曲 45 27.8 119 73.5 290 179.2 本 荘 36 28.6 164 130.5 297 236.3 秋 田 108 24.8 162 37.2 368 84.5 能 代 66 61.8 135 126.5 285 267.0 鷹 巣 21 43.2 35 72.1 86 177.1 大 館 57 41.5 113 82.2 197 143.3 新患者数 罹 患 率 有病者数 有 病 率 登録者数 登 録 率

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平成8年度 は、前年度の実態調査から保健 婦の保健指導に統一性を欠く面が見られたた め﹁保健指導マニュアル﹂を作成し、このマ ニュアルを使用することによって一貫した保 健指導を行えるようにしました。さらに実態 調査から症例を選び、所内で予防可能例の検 討会を行い、予防対策についても検討を加え ま し た 。 ﹁ 予 防可能例 ﹂ を定義した山形保健 所阿彦所長︵当時︶のご指導をいただくため の先進地視察も行っております。この年に地 元医師会が﹁学校結核 検診委員会﹂を設置し たことから、この委員 会と共同で小中学校に おける結核検診の検討、 特にツベルクリン反応 とBCG接種の評価を 開始しました。この年 の春に行われた学校結 核検診の後で、多くの マル初の届け出があっ たことから、学校結核 検診でのツベルクリン 反応強陽性の解釈につ いて、委員会として一 定の見解を示していた だきました。また一般 住民向けに啓発普及用 のリーフレットを作成 し、この年から 2 カ年 の計画で全戸配布を行 いました。 平 成9年 度 は 、 ﹁ 保健指導マ ニュアル ﹂ を 活用し、患者・家族指導と管理を徹底しまし た。患者届け出から 2 週間以内にできるだけ 患者本人に面接することを目標に、独自に作 成したリーフレットを利用しながら患者ある いは家族への保健指導を行いました。その結 果、治療脱落の防止、治療完了率の向上、家 族検診の受診率の向上などの成果を得ること ができました。また、定期的な管理検診を勧 奨することにより、病状不明者を少なくし登 録期間を短縮することができました。この年 は結核研究所の石川副所長に結核予防婦人会 と一般住民向けの研修会の講師をお願いし、 また山形保健所阿彦所長︵当時︶には、管内 の小中学校の養護教諭を対象にした研修会の 講師をお願いしました。 平成 10年度 は、地域住民への啓発普及と検 診の長期未受診者への働きかけを行いました。 市町村と連携し、保健所で作成した﹁結核パ ネル﹂を活用しながら、保健婦が地区ごとに 行われる集会に出向いて結核教育を行いまし た。秋には複十字病院の伊藤先生を講師に迎 え、一般住民を対象に、改めて結核の基礎知 識から対策についてまで講演していただきま した。長期未受診者対策としては、老人クラ ブ連合会の協力により受診希望者を募り、検 診車をきめ細かく移動させながら検診を行い ました。検診受診時にアンケート調査を行い、

表2.

「減らそう結核5カ年大作戦」の主な事業内容

1)結核の実態調査 2)「結核ハンドブック」の作成 3)研修会の開催 講師:結核研究所 青木所長(当時) 4)結核検討委員会の開催 5)健康教育用の「結核パネル」の作成 1)保健婦用の「保健指導マニュアル」の作成 2)予防可能例検討会 3)先進地視察:山形保健所(当時) 4)結核検討委員会の開催(学校結核検診委員会と合同) 以後毎年開催 5)一般住民向けリーフレットの作成と全戸配布 平成8∼9年度 1)患者・家族指導と管理の徹底 2)研修会の開催 講師:結核研究所 石川副所長 山形保健所(当時)阿彦所長 1)結核予防教育の実施 2)研修会の開催 講師:複十字病院 伊藤医師 3)長期未受診者への働きかけ(検診車の巡回) 1)結核フォーラムの開催 講師:結核研究所 山下研修部長 2)報告書の作成 平成7年度 現状の分析と「結核ハ ンドブック」の作成 平成8年度 保健指導内容の統一と 学校結核検診の検討 平成9年度 患者管理の徹底と家族 指導の充実 平成10年度 地域住民への啓発と長 期未受診者対策 平成11年度 結核予防対策から地域 の健康づくりへ

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参照

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