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護衛艦における
COGLAG 推進プラントの搭載技術の確立
三菱重工業株式会社 黒田 真三郎 株式会社IHI 宮地 圭 株式会社日立製作所 伊藤 悠 川崎重工業株式会社 小濱 博之 寺崎電気産業株式会社 辻 孝行 1.はじめに 近年の護衛艦の推進プラントは4台のガスタービン主機を組み合わせて推進する COGAG (COmbined Gas turbine And Gas turbine)方式を採用している。本方式は小型高出力、加減速の容易さ、高静粛性などの利点を有することから、図1に 示すとおり多くの護衛艦で採用されてきた。
一方、護衛艦「あさひ」の推進プラントは、従来の COGAG 方式に替え、2台のガスター ビン主機と2台の推進電動機とを組み合せた COGLAG(COmbined Gas turbine eLectric And Gas
turbine)方式を護衛艦で初めて採用したものであり、従来の COGAG 方式から以下の改善を実 現したものである。 ・低速運航時/滞洋時のガスタービン主機運用と比較して燃料費の抑制及び滞洋性の向上 ・常時ガスタービン主機運用と比較して整備頻度及び維持整備費の抑制 この COGLAG 推進プラントの採用に際しては、平成 23~24 年度に制御要領、搭載要領等 の実艦への搭載技術に関して各社共同で事前検討を行い、搭載技術を確立した。その後、 防衛省技術研究本部殿の技術支援役務を経て、平成 25 年 9 月に三菱重工業にて受注した平 成 25 年度護衛艦(護衛艦「あさひ」)にその成果を適用し、平成 30 年 3 月に引き渡したも のである。
推
進
プ
ラ
ン
ト
年代2010年代
COGAG 「いずも」型 「あさひ」型2000年代
1990年代
1980年代
「はたかぜ」型 「はつゆき」型 COGLAG 「あさぎり」型 「こんごう」型 「むらさめ」型 「たかなみ」型 「あたご」型 「あきづき」型 「ひゅうが」型(*1)
COGOG(*2) *1) 汎用護衛艦(DD)、ミサイル護衛艦(DDG)、ヘリコプター搭載護衛艦(DDH)での推進プラント 変遷を示す。*2) COGOG(COmbined Gas turbine Or Gas turbine)
2 2.護衛艦「あさひ」COGLAG 推進プラントの概要 護衛艦「あさひ」のCOGLAG推進プラントの構成は図2に示すとおりであり、以下の特徴 を有する。 (1) 1軸に対してガスタービン主機及び推進電動機が各1台装備されており、いずれか一 方又は同時に運転することで推進力を得る。 (2) 速力に応じて推進電動機、ガスタービン主機を使い分けることで燃料消費量を抑制す ることができる。 (3) 低速時には推進電動機のみを運転することで、ガスタービン主機の運転時間を削減し、 整備頻度を抑制することができる。 図2 護衛艦「あさひ」COGLAG推進プラントの構成 減速装置 (回転速度変換器) 機関制御監視記録装置 (COGLAG推進プラントの監視・制御) 電源監視制御装置 (電源プラントの監視・制御) ディーゼル主発電機 S12U-MPTK ガスタービン主発電機 IM400 COGLAG推進プラント 電源プラント 電源系統 ガスタービン主機 LM2500IEC 推進電動機 可変ピッチプロペラ (推進用プロペラ) 可変ピッチプロペラ (推進用プロペラ) 減速装置 (回転速度変換器) 推進電動機 ガスタービン主発電機 IM400 ガスタービン主機 LM2500IEC 配電盤 配電盤 艦内装置 艦内装置 寺崎電気産業 寺崎電気産業 三菱重工業 (原動機) 三菱重工業 (取り纏め) 川崎重工業 IHI (原動機) 川崎重工業 川崎重工業 IHI 日立製作所
3 3.COGLAG推進プラントの搭載技術の確立 COGLAG推進プラントの搭載技術の確立には、以下(1)及び(2)を含む課題が数多く存在し たため、3.1項以降に示す検討を実施し搭載技術を確立した。 (1) 推進電動機と艦内装置へ同一発電機から給電するための電力マネージメント (2) 出力及び応答性能が大きく異なるガスタービン主機と推進電動機を組合わせるため の負荷分担制御 3.1項に技術検討の全体概要、3.2項に(1)の技術を確立するための電力マネージメント技 術の概要及び3.3項に(2)の技術を確立するための負荷分担制御技術の概要を示す。 3.1 技術検討の全体概要 技術検討の全体概要を図3に示す。 (1) 機関制御監視記録装置による制御 (2) 機関制御監視記録装置による監視 (3) 各装置のインターフェース (4) 各装置のパラメータ 川崎重工業 (機関制御監視記録装置、 減速装置、可変ピッチプロペラ) (1) ガスタービン主機及び主発電機の制御 (2) ガスタービン主機及び主発電機の監視 (3) ガスタービン主機と推進電動機の負荷分担 (4) ガスタービン主機及び主発電機のインターフェース (5) ガスタービン主機及び主発電機のパラメータ (1) 推進電動機の制御 (2) 推進電動機の応答速度 (3) 電源プラントの電力マネージメント (4) 推進電動機のインターフェース (5) 推進電動機のパラメータ (6) 推進電動機の搭載 (1) 電源監視制御装置による制御 (2) 電源監視制御装置による監視 (3) 電力マネージメントのための新規センサの開発 (4) 各装置のインターフェース (5) 各装置のパラメータ (1) 推進プラントの要目 (2) 推進プラントの制御 (3) 推進プラントの全体成立性 (4) 電源プラントの要目 (5) 電源プラントの制御 (6) 電源プラントの全体成立性 日立製作所 (推進電動機) ※1 ① 各社と協業し 推進・電源プラント の 要 目 及 び 制 御 要領の検討 ② 各社と協業し プラント全体成立の た め の 技 術 課 題 の抽出及び検討 ※2 ③ 各社と協業し 推進・電源プラント の 要 目 及 び 制 御 要領の決定 ④ 各社と協業し プラント全体成立の た め の 技 術 課 題 を解決 寺崎電気産業 (電源監視制御装置、配電盤) IHI (ガスタービン主機、 ガスタービン主発電機) 三菱重工業 (取り纏め、ディーゼル主発電機) 図3 技術検討の全体概要 ※1、※2 ※1、※2 ※1、※2 ※1、※2
4 3.2 電力マネージメント技術の確立 艦の要求速力に応じて推進電動機の出力を設定すると、艦内装置と推進電動機の電力 を共用している場合、発電機過負荷状態となり艦内ブラックアウトに至る可能性があっ た。 そこで、常に発電機電力と艦内装置電力の関係より導かれる発揮可能出力に応じて、 推進電動機の出力を制限する電力マネージメント技術を確立することでこの技術課題を 解決した。 具体的には、機関制御監視記録装置及び推進電動機により、配電盤から得られる発電機 電力、艦内装置電力、電源プラントの運転形態に対し制御パターンを最適化することで、 推進電動機の出力を制限する要領とした。(図4参照) 以上により、いかなる運用においても、主発電機が定格出力を超えることはなく、安 定して艦内装置用の電力を確保できる電力マネージメント技術を確立した。 図4 電力マネージメント技術の概要 推進電動機 出力制限あり 推進電動機 出力制限なし 艦内 装置 電力 艦内 装置 電力 トリップ 発電機 電力 定格 発電機 電力 定格 電動機 出力 出力制限開始 出力制限 電動機 出力 艦内装置電力突変 艦内装置電力突変 発電機が過負荷 にならないよう 推進電動機の 出力を制限する 過負荷により発電機 トリップが発生
5 3.3 ガスタービン主機と推進電動機の負荷分担制御技術の確立 COGLAG 推進プラントにおいて、推進モードは「電気推進」、「機械推進」、「COGLAG」 の3種類あり、それぞれの推進モードの特徴は以下のとおりである。 ・「電気推進」 :推進電動機により推進力を得る方式 ・「機械推進」 :ガスタービン主機により推進力を得る方式 ・「COGLAG」 :推進電動機及びガスタービン主機を併用して推進力を得る方式 護衛艦「あさひ」の場合、推進電動機の定格出力に対しガスタービン主機の定格出力が 約8倍と大きく異なる。推進電動機とガスタービン主機の負荷を出力比で分担した場合、 推進モード「COGLAG」の最大速力付近では、波浪等の影響による軸出力の微少な変動 によって、推進電動機の出力が大きく変動することになり、これに応じて主発電機の出力 も大きく変動する。 このことは、電源プラントの電源品質に影響を及ぼす原因となる。 そこで、推進モード「COGLAG」において軸出力上、推進電動機及びガスタービン主 機の併用が必要な場合は、電源プラントに対する影響を極力抑えるため、推進電動機の出 力を発揮可能な最大出力に固定する負荷分担方式とした。 具体的には、推進モード「COGLAG」においてガスタービン主機単独で要求された速 力に追従できる場合、すなわちガスタービン主機の出力が100%未満の場合は、推進電動 機の出力はゼロとし、ガスタービン主機のみで推進力を得ることとした。一方、ガスター ビン主機のみで要求された速力に追従できない場合、すなわちガスタービン主機出力が 100%以上の場合は、推進電動機の出力を発揮可能な最大出力に固定し、ガスタービン主 機の出力調整のみで要求された速力を発揮する方式とした。(図5参照) 以上のとおり、いかなる運用においても、電源プラントへの影響を極力抑えたガスター ビン主機と推進電動機の負荷分担制御技術を確立した。 図5 ガスタービン主機と推進電動機の負荷分担制御技術の概要 最大速力 推進電動機を最大出力で固定 軸出力の変動は G T主機の出力を調整
6 4.おわりに 今回搭載技術を確立した COGLAG 推進プラントを搭載した護衛艦「あさひ」は、平成 29 年度か ら海上自衛隊殿にて実運用に供されている。今回培った制御技術や検討プロセスは、将来護衛艦 建造における新規の推進プラントや電源プラント搭載時の技術検討において大きく寄与するも のと考える。 5.謝辞 この度、防衛基盤整備協会賞受賞という評価をいただき大変光栄に思っております。今回の受 賞を励みとし、今後も官側ご要望にお応えする護衛艦装備品の開発及び製造に尽力して参る所存 です。 最後に、本件に関してご指導いただきました関係者の皆様に対し、深く感謝いたしますと共に、 今後も一層のご指導、ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。 以上