新車販売ランキングからみる
社会とクルマの半世紀
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社会とクルマの半世紀
マーケティング・プランナー ㈱現代文化研究所 シニア・パートナー
齊藤 正伸
後編/1991∼2018年
自動車販売 ’19. 2 2 バブル景気に沸いた1987年から 91 年の半ばを経て、ユーザーのクルマ観や 志向には大きな変化が起こった。新車販 売ランキングにもその変化が如実に現れ ている。確かに以前にも、ユーザーの志 向の変化を象徴する新しいクルマが登場 してきてはいた。それでも販売の上位は、 3BOX、2BOXセダンを中心に置く 各 社 の ブ ラ ン ド が 占 め て い た。 し か し、 バブル崩壊以後は、その様相が大きく変 わり始める。1991~
97年
豊さの転換
クルマへの志向は「贅沢」から
「価値」へ
バ ブ ル 景 気 が 崩 壊 し た 1 9 9 1 年 は、 歴史的な出来事で幕を開ける。世界では 91年、ソビエト連邦が崩壊し第2次世界 大戦後の冷戦構造が終わりを告げ、中東 では湾岸危機が起こるなどの地政学的な 大変動が起こった。国内では、企業は資 産価格の下落などにより大きな負債を抱 え、経済成長は著しく鈍化、長い低成長 の時代に入る。実質GDP成長率(20 00年基準)は、 91年には前年の5・6 %から3・3%へ鈍化し、 92年は0・8 %、 93年は0・2%という低い伸びに留 まった。日本の1人当たり国民所得ラン クも低下していく。それでも景気は 93年 を底に緩やかに回復していったが、 97年 のアジア金融危機以降、再び低迷するこ ととなる。 こうした環境の下で人々の意識も大き く変容し、豊かさの基準は「贅沢」から 自身の生活やスタイルにとっての 「価値」 へと変わっていく。 「バリュー ・ フォー ・ マネー」が重要視され始めた時代である。 遡ってみれば 89年の物品税の廃止は、社 会が何を贅沢とするかを決める時代の終 わりを示唆する出来事だったと言うこと もできる。バブル期の喧騒を経て、時代 は1人ひとりが豊かさとは何かを求める 時代に向かっていく。 この時代の消費の質的な特徴の1つは 「 遠 心 力 消 費 」 と も 呼 べ る も の で、 生 活 や行動を外へ外へと広げてくれる商品が 消費者の志向を掴んでいる。一例として は、携帯電話が本格的に普及拡大し始め るのもこの頃であり、ビデオではハンデ ィ カ ム レ コ ー ダ ー が ヒ ッ ト し た。 ま た、 80年代後半から盛んになり始めたスキー新車販売ランキングからみる 社会とクルマの半世紀 やテニスなどのアウトドアスポーツ活動 は ピ ー ク を 迎 え る( 図 表 ① )。 家 族 や 友 人とのアウトドアレジャーも盛んとなり、 キャンプ用品が多いに売れた。クルマも こ う し た 消 費 行 動 の 例 外 で な く、 趣 味・ レジャー活動とクルマはますます接近し ていく。 * 自動車販売は景気の大幅な後退と、代 替の母体となる低年式、極低年式保有層 の や せ 細 り と い う バ ブ ル 期 の 後 遺 症 で、 低調に推移している。軽自動車を含む新 車販売台数は 91年から 93年まで3年連続 で前年割れ、 94年はほぼ横ばいで、回復 したのは 95年になってからである。 バ ブ ル 期 に 急 成 長 を 遂 げ た 輸 入 車 も、 さすがに 91、 92年は減少したが 93年から 再び成長軌道に乗る。円高が1つの追い 風となっていたが、車体の大きさや豪華 さとは異なった品質感が人気を博してい た。 91年頃からは、こうした欧州車を意 識して、国産車の中にもコンパクトで高 品位、パーソナル・テイストを備えたセ ダンが登場してはいた。 しかし、新車販売を下支えしたのはユ ーザーが求める新たな「価値」に応えた クルマ、レクリエーショナル・ヴィーク ル(RV系車)と呼ばれるキャブワゴン、 オフロード車、ステーションワゴンであ る(図表②) 。 それまでのキャブワゴンは、商用車の ボディをベースとしたワゴン化であった が、ワゴン専用ボディを持ったセミキャ ブワゴン(現在ではミニバンと呼ばれる ことが多いので、以降ミニバンと表記す る)が登場し、乗車人員や車内空間を重 視するユーザーを獲得、多目的な用途に 応える新しいファミリーカーとしての地 位を確立していく。オフロード車やステ ーションワゴンは積載性や走破性が高く、 アウトドアレジャーを楽しむユーザーに は最適であった。オフロードの走行性能、 セダンの快適性、ワゴンのユティリティ 性を兼ね備え、かつスタイリッシュなア ーバン4WD、今で言うSUVタイプ車 も販売された。 新車販売ランキングは様変わりし、ベ ストテンからは3BOXセダンを主力と するブランドが徐々に消えていく(図表 ③ )。 91年 に は 上 位 10ブ ラ ン ド の う ち 8 ブランドを占めていたが、 95年には5ブ 図表1 余暇活動の行動者率 (%) 年 テニス スキー スノーボード ゴルフ 1981 9.0 7.1 8.1 1986 11.8 9.9 11.9 1991 11.9 13.5 17.8 1996 8.7 13.1 14.4 2001 5.6 10.0 11.5 2006 5.0 6.8 9.2 出所)総務省「社会生活基本調査」 図表2 RV系車の販売台数 出所)自販連調べ 0 500 1,000 1,500 2,000 91 92 93 94 95 96 97 98 99 千台 オフロード ステーション ワゴン 1BOX キャブワゴン セミ キャブワゴン 図表① 余暇活動の行動者率 (%) 図表② RV系車の販売台数 出所)自販連統計
自動車販売 ’19. 2 4 ランドに減り、 97年には3ブランドとな る。その他の7ブランドはミニバンと実 用性の高いコンパクトカーだ。 販売ランキングのベストテンは、ミニ バンでは、 93年からエスティマ( 92年に 第 11位 )、 95年 か ら は、 や や 車 高 が 低 く その後のミニバンの1つのスタイルを作 ったオデッセイ、 97年にはステップワゴ ン( 96年に第 13位)とイプサム、タウン エースノア( 97年に第 15位)が登場する。 オフロード系車では、本格オフロード4 WD車のパジェロが 92~ 94年に第 14~ 16 位、ハイラックスワゴンが 92年と 96年に 第 19位、アーバン4WDタイプのRAV 4が 95年に第 15位、CR -Vが 96年に第 7 位 と な る。 ス テ ー シ ョ ン ワ ゴ ン で は、 ワゴンを含むレガシィが 93年に第 19位と 95~ 97年に第 10、 11位、ステーションワ ゴン専用ボディのカルディナワゴンが 94 ~ 96年に第 12~ 17位となる。また欧州車 を意識した新感覚セダンをコンセプトと したプリメーラが 91~ 93年、第 15、 16位 に登場している。 時代の変化と伴にユーザーのクルマ観 は大きく変わり、効用、機能、テイスト など、クルマに新たな価値を求める時代 の始まりであった。 1997年7月、タイの通貨危機を皮 切 り に ア ジ ア 各 国 の 通 貨 が 急 激 に 下 落、 東アジア・東南アジア各国の経済をはじ め、世界経済に大きな打撃を与えたアジ ア金融危機が勃発した。悪いことに日本 政府は、その直前の4月に消費税を3% から5%へと増税しており、しかも緊縮 財政をとっていたために景気が一気に悪 化して雇用環境と消費者心理は冷え込む。 この後の日本経済は、長きにわたってデ フレ、消費不況に苦しめられることにな る。消費者物価指数は(総合、2015 年基準)は 99年から 03年まで前年比がマ イナス、実質GDP成長率(2011年 基準)は、 98、 99年がマイナス成長、 00 年は2・8%増と持ち直したが、 01、 02 年は1%を下回る伸びに留まった(図表 ④) 。 世界経済では、自動車産業も含めて国 境を超えた業界再編が進み、金融危機を 何とか乗り切った新興国の中からは、次 第に国際競争力をつけて日本企業を脅か
1998~
02年
デフレ経済とグローバル化の足音
多様なスタイルと多様な選択
図表3 乗用車ブランド通称名別販売ランキング (1991~97年) 1991年 1992年 1993年 1994年 1995年 1996年 1997年 (平成3年) (平成4年) (平成5年) (平成6年) (平成7年) (平成8年) (平成9年) 1 カローラ カローラ カローラ カローラ カローラ カローラ カローラ 2 マークⅡ マークⅡ マークⅡ マークⅡ マーチ クラウン マーチ 3 シビック クラウン マーチ マーチ クラウン マーチ マークⅡ 4 クラウン シビック サニー シビック オデッセイ スターレット スターレット 5 カリーナ サニー クラウン クラウン マークⅡ マークⅡ ステップワゴン 6 サニー スターレット シビック サニー シビック オデッセイ クラウン 7 コロナ カリーナ スターレット エスティマ エスティマ CR-V イプサム 8 スターレット コロナ エスティマ スターレット サニー エスティマ エスティマ 9 スプリンター マーチ スプリンター カリーナ スターレット サニー デミオ 10 ブルーバード スプリンター カリーナ スプリンター スプリンター レガシィ オデッセイ 順位 図表③ 乗用車ブランド通称名別販売ランキング(1991 ~ 97年) 自販連調べ新車販売ランキングからみる 社会とクルマの半世紀 す存在となる国が現れる。 社会に目を転じると、IT革命が生活 や企業活動を世界規模で変え始め、 97年 12月には先進国の温室効果ガス排出削減 を定めた京都議定書(米国、カナダは離 脱)が採択された。経済、社会、生活の など様々な領域においてグローバル化の 足音が聞こえ始めた時代であった。 * こ の 時 代 に 世 界 の 自 動 車 メ ー カ ー は、 世界戦略車としてのエコカー開発を進め 始めており、日系メーカーも例外ではな かった。日系メーカーは、日本市場の閉 塞感が続く中で世界での生産拡大を目指 しており、欧州や北米でも販売する世界 生産規格のコンパクトカーを日本市場に も投入していく。そうしたクルマの先駆 が 99年発売のヴィッツ、 01年発売のフィ ットであり、コンパクトでありながら余 裕ある室内空間を有し、優れた安全性と 環境性能を備えていた。 02年には、 69年 以降、 32年の長きに渡って販売第1位に 君臨してきたカローラが、その座を一旦 フィットに譲った。 一方、ミニバンの人気は依然として続 い て お り、 既 存 の モ デ ル の 充 実 に 加 え、 3ナンバーサイズの高級ワゴン、小型の トールワゴンなどへとモデルの広がりを 見せる。乗用車のタイプは、セダン、2 BOX、ワゴン、オフロード系車などと いう従来のカテゴリーに収まりきれない 多様化を見せ、もはやモザイク化とも言 える状況となる。 02年の販売ランキング は象徴的であり、従来からの3BOXセ ダンを中心とするブランドは、上位 10車 のうちカローラのみとなった。 こうしたタイプの拡張は軽乗用車にも 及んだ。軽乗用車は 98年 10月に登録車と 同じ安全衝突基準を採用することとなり、 長さが3300㎜から3400㎜へ、幅 が1400㎜から1480㎜へと車体が 大型化された。これに伴い、高速道路に おける最高速度の毎時 80㎞制限が撤廃さ れ、小型車と同じく毎時100㎞となっ た。こうした動きを受け、軽乗用車市場 の中心は、2BOX型からトールタイプ のモノスペース型へと徐々に移行し、販 売は 99年から急伸する。新車販売に占め る軽乗用車の割合は、 98年の 23・1%か ら 99年には 29・8%へと急上昇、以降も 高い比率を保つようになる。この後、小 型コンパクトカーと軽乗用車は、ダウン サイジングをリードしていく存在となっ ていく。 この時期の新車販売上位ブランドは多 彩 だ( 図 表 ⑤ )。 コ ン パ ク ト カ ー で は、 世界戦略車の性格をもつヴィッツとフィ ット、コンパクトカーサイズでスペース 確保を最大限に追求したデミオとヴィッ ツをベースにSUV風の5ドアハッチバ ックボディをもつイスト(ともに自販連 の区分ではステーションワゴンに分類さ れる)が上位にある。高級志向のミニバ ンではエスティマとオデッセイに加えて 図表4 実質GDP成長率と消費者物価上昇率 消費者物価上昇率(2015年基準、総合)/総理府「消費者物価指数年報」 出所)実質GDP成長率(2011年基準)/内閣府「国民経済計算」 -3 -2 -1 0 1 2 3 4 5 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 消費者物価上昇率 実質GDP成長率 % (年) 図表④ 実質GDP成長率と消費者物価上昇率 出所)実質GDP成長率(2011年基準)/内閣府「国民経済計算」 消費者物価上昇率(2015年基準、総合)/内閣府「消費者物価指数年報」
自動車販売 ’19. 2 6 エルグランド( 98~ 02年に第 12~ 19位) 、 小型クラスのミニバンではステップワゴ ン、ノアとヴォクシー、グランディスが 上位にあり、ベストテン以下にセレナワ ゴン( 99~ 01年、第 13~ 19位)が顔を出 す。その他、3列シート・7人乗りのロ ールーフミニバンのストリームや、新感 覚のワゴンとして、日産とルノーが共同 開発したハイトールのボンネットタイプ のキューブ、5ドアで背の高いワゴンボ ディのファンカーゴ、小型サイズのトー ルワゴンのbBなどが登場する。さらに 世界的に需要が伸長していた高級SUV としてハリアー( 98年に第 19位)が市場 投入された。 この時代は厳しい経済環境の下で、ユ ーザーがそれぞれの生活水準や生活スタ イルにあったクルマを望み、多様な選択 をする時代にあったと言えるだろう。
2003~
08年
実感なき景気回復と
ダウンサイジング
2001年に誕生した小泉内閣による 規制緩和政策やその後の日銀の量的金融 緩和によって、日本経済は緩やかに回復 基調に乗った。 02年頃よりは輸出が好調 さを取り戻し、外資による活発な設備投 資もあって企業業績は好転する。景気循 環的には、 02年2月から 08年2月まで 73 か月の景気拡張が続いた 「いざなみ景気」 とされる。しかし、拡大と言ってもGD P成長率はほぼ2%以下と低く、期待さ れたトリクルダウン(経済成長の利益は 自動的に社会の隅々まで行き渡るという 理論)は起こらずに実質賃金が逆に低下 する「実感なき景気回復」であった(図 表 ⑥ )。 O E C D 加 盟 国 に お け る 1 人 当 たり国内総生産(購買力平価ベース)は 毎年その順位を下げ、 00年の第3位から 06年には第 18位までランクダウン、また、 産業構造や就業構造の変化で所得格差は 拡大していった。こうしたじりじりした 経済状況が続く中、 08年9月、 リーマン ・ ブラザーズ・ホールディングスが経営破 綻したことに端を発して、連鎖的に世界 規模の金融危機が発生、世界同時不況を 迎えることになる。 図表5 乗用車ブランド通称名別販売ランキング (1998~2002年) 1998年 1999年 2000年 2001年 2002年 (平成10年) (平成11年) (平成12年) (平成13年) (平成14年) 1 カローラ カローラ カローラ カローラ フィット 2 キューブ ヴィッツ ヴィッツ ヴィッツ カローラ 3 デミオ ステップワゴン エスティマ ストリーム マーチ 4 マーチ クラウン オデッセイ エスティマ イスト 5 スターレット デミオ ファンカーゴ ステップワゴン ヴィッツ 6 ステップワゴン キューブ クラウン フィット ノア 7 マークⅡ マークⅡ bB クラウン エスティマ 8 クラウン レガシィ キューブ キューブ ヴォクシー 9 グランディス マーチ ステップワゴン オデッセイ キューブ 10 サニー タウンエースノア デミオ ファンカーゴ モビリオ 順位 図表6 実質賃金の上昇率(決まって支給する給与) 出所)総務省「賃金構造基本統計調査」 0.5 0.6 1.1 -1.0 -0.2 -0.2 0.1 -0.1 -0.2 -0.7 -1.5 0.6 -2.0 -1.5 -1.0 -0.5 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 % (年) 図表⑤ 乗用車ブランド通称名別販売ランキング(1998 ~ 2002年) 図表⑥ 実質賃金の上昇率(決まって支給する給与) 自販連調べ新車販売ランキングからみる 社会とクルマの半世紀 * 輸出偏重の経済成長、伸びない所得と 格差の拡大、 65歳以上人口が 20%を超え た( 05年)超高齢化という社会環境の下 で、登録車の販売は苦戦を強いられ、 05 年からの5年間は前年比マイナスが続く。 市場は二極化傾向が顕著となり、一部の 普通乗用車や高級ミニバンが比較的堅調 に推移する一方で、コンパクトカーや軽 乗 用 車 へ の ダ ウ ン サ イ ジ ン グ が 進 ん だ。 もう1つ、人気のあるモデルとそうでな いモデルがはっきりするという二極化も 起こっている。 だが、ダウンサイジングとは言え単に 経済性のみが求められていた訳ではなく、 コンパクトカーはユーザーが求める高い 走行性能、 快適性 、 安全性を備えていた。 社会に地球環境に対する配慮の意識が広 まったことも関係しているだろう。一方 で普通乗用車では、世界生産規格に則っ たモデルが増え、走行安定性やデザイン 性を追求した結果として3ナンバーサイ ズとなったクルマも多い。 販売ランキングの上位には、進化した コンパクトカーと依然として根強い人気 のミニバンが並ぶ(図表⑦) 。 コンパクトカーでは、デザイン、品質、 衝突安全性能、環境性能の高さで従来の セダンの購入層をも惹きつけたフィット やヴィッツ、リッターカーのマーチ、ヴ ィッツをさらにダウンサイジングしたパ ッソ、その他にノートなどが上位に見え る。少し上のクラスでは、小型車サイズ ながら上級車に匹敵する質感を求めた5 ドアハッチバックのティーダがある。ミ ニバンでは高級化志向に応えたアルファ ードやエスティマ、スポーティな6・7 人乗りワゴンのウィッシュが上位にあり、 小型ミニバンではノア、ステップワゴン にセレナが加わる。また、久しぶりにク ラウンがベストテン入りした。 この時期の新車販売ランキングは、 02 年までの時期に比べて新規モデル、新感 覚のモデルが少ないように映る。それは、 国内の自動車市場が低調で、日系メーカ ーがワールドワイドの製品開発と生産拡 大により注力していたために、国内への 新規モデル投入がやや少なかったという 事情が影響しているかもしれない。 だが現在から振り返ると、その後の自 動車産業が迎える大変革への胎動の時期 とも捉えられるのではないだろうか。
2009~
18年
大
変
動
の
時
代
と
次
世
代
カ
ー
へ
の
歩
み
T型フォードの市販第1号車が記念す べきラインオフしたのが1908年の9 月、その誕生100年に当たる2008 年9月に皮肉にもリーマンショックが起 図表7 乗用車ブランド通称名別販売ランキング (2003~08年) 2003年 2004年 2005年 2006年 2007年 2008年 (平成15年) (平成16年) (平成17年) (平成18年) (平成19年) (平成20年) 1 カローラ カローラ カローラ カローラ カローラ フィット 2 フィット フィット ヴィッツ ヴィッツ ヴィッツ カローラ 3 ウィッシュ キューブ フィット フィット フィット ヴィッツ 4 キューブ ウィッシュ ティーダ エスティマ パッソ クラウン 5 マーチ クラウン ノート セレナ セレナ プリウス 6 イスト マーチ ウィッシュ ステップワゴン エスティマ セレナ 7 デミオ オデッセイ ステップワゴン ウィッシュ ヴォクシー パッソ 8 ノア イスト パッソ ラクティス デミオ ヴォクシー 9 アルファード アルファード アルファード パッソ ティーダ ティーダ 10 エスティマ ノア クラウン クラウン ノア デミオ 順位 図表⑦ 乗用車ブランド通称名別販売ランキング(2003 ~ 08年) 自販連調べ自動車販売 ’19. 2 8 こり、世界は100年に1度と言われる 同時不況に見舞われる。翌 09年からの日 本経済は円高ドル安・ユーロ安による苦 悩が続き、 10年には欧州ソブリン危機 (ギ リシャ危機)が追い打ちをかける。 11年 には東日本大震災が発生、政治的には 09 年に民主党政権が誕生、 12年には再び自 民党政権へと交代するなど、経済・社会 環境が目まぐるしく変わる時代であった。 政治・経済的には、安倍自民党政権に 戻った 12年までを1つの区切りとするの かもしれない。 13年からは、いわゆるア ベ ノ ミ ク ス で 経 済 政 策 が 大 き く 転 換 し、 完全にデフレ脱却とはいかないまでも経 済や雇用情勢は徐々に改善していく。 社会的には、今後の日本を長期的に大 きく左右する動向、少子高齢化がいよい よ人口減少社会という形で姿を現し始め る。 07年にマイナス2千人と僅かに減少 し始めた人口の自然増減は徐々に減少幅 を大きくし、 10年には約 11万人減、 15年 には約 28万人減となり、 17年には約 38万 人の減少に至る。高齢化と人口減少は特 に地方や一部の郊外圏への影響が大きく、 地方経済や社会基盤の疲弊が顕著となっ てきた。 また 15年には、COP 21において 20年 以降の地球温暖化対策を定めたパリ協定 ( 通 称 ) に 加 盟 国 が 合 意、 翌 16年 に は 中 国と米国が同時批准し( 17年6月に米国 は 離 脱 を 表 明 )、 地 球 温 暖 化 防 止 の 機 運 はさらに高まる。 * 97年に極めて先駆的な登場を遂げたプ リウスの開発では、次の時代のカローラ はどんな姿をしているのだろうかという 創造力が求められたという。クルマ社会 がT型フォードの誕生から100年とい う意味で次世紀を迎えた 09年、まさにそ の新しい時代が到来する。環境意識が高 まる中での地球に優しいクルマ、若者か ら高齢者に至るまで、様々な生活様式や 価値観をもつ全ての人にやさしいクルマ が求められる時代である。HV(ハイブ リッド) 、EV(電気自動車) 、PHV(プ ラ グ イ ン ハ イ ブ リ ッ ド )、 F C V( 燃 料 電池車)といった次世代パワートレイン の多様化、安全運転支援システムや様々 な運転補助機構、ITとの融合などの技 術進歩がそれを支え、販売面では環境対 応車の普及促進を意図したエコカーに対 する優遇税制が後押しした。 HV車は 97年のプリウス発売に始まり、 99年にインサイト、 01年にエスティマと クラウン、 03年にアルファードに搭載さ れたが、本格的に普及し始めたのは 09年 の3代目プリウスを契機とする。翌 10年 にはフィット、フーガにHVモデルが追 加され、 11年にはHV専用車アクアが発 売、カムリがHV専用車モデルとなるな ど、広いクラス・タイプにHVモデルが 展開される。 16年には量産型コンパクト カーとしては世界初となるシリーズ方式 HVを搭載したノートが発売、同タイプ の H V は 18年 に セ レ ナ に も 搭 載 さ れ る。 こうしてHV車の保有、販売は飛躍的に 伸長する(図表⑧) 。 EVでは 09年にi -MEV、 10年にリ ーフが発売、PHVでは 12年にプリウス PHVとアウトランダー、輸入車では 15 年にゴルフとBMW -X5、 16年にボル ボXC 90が発売される。FCVでは 14年 にMIRAI、 16年にクラリティが市販 化されている。 パワートレインの他にIT化、安全運 転支援システム、部分自動運転とされる パイロットシステムなどを含め、 モデル ・ ブランドは新技術と機能・機構のパッケ
新車販売ランキングからみる 社会とクルマの半世紀 ージという色彩を強めていく。 販売ランキングはまさに新しい時代を 予感させる。 09~ 17年の第1位はプリウ スとアクア、HVモデルとなったフィッ トとノートが上位にあり、 合わせてプロ ・ パイロット・システムやe -POWER 搭載モデルを含むノートは、 18年に日産 車としては初の第1位を獲得する(図表 ⑨) 。 上位ではミニバンも依然として健在で、 よ り コ ン パ ク ト な ミ ニ バ ン の フ リ ー ド、 シエンタ、ラクティスが上位に見え、 18 年にはe -POWER搭載モデルを含む セレナが第4位に上昇する。また、ミニ バンに比べてこれまでモデル投入が少な かったSUVモデルが各社から投入され、 ヴェゼル、C -HR、CX -5( 13年に 第 18位) 、フォレスター( 18年に第 19位) などが登場している。