論点整理表(案) 13 労使協議制 論点番号 13(1) いわゆる労使協議制について、公務の分野においてどのように考 えるか。 ①その性格、目的、協議対象、職員団体の関与のあり方などにつ いて、どのように考えるか。 ②団体交渉との関係を、どのように考えるか。 担当委員 島田委員 論 点 参考資料名 頁 1 考察に当たって ○ 憲法第 28 条との関係における労使協議制 ・ これら(注:労使協議制と苦情処理手続)は、団体交渉を補完する労使間の 自主的手続であって、憲法 28 条はこれらの手続をも含めた意味で「労使自治」 の発展に必要な基本的ルールを設定している。比喩的にいえば憲法 28 条は、 労使自治という建築物の土台(基礎)を設定した規定であり、この土台の上に どのような建築物を建てるかは、労使の創意工夫に委ねている。「労使自治」 の内容については、労使に多様な可能性が残されているのである。 ○ 労働法制における労使協議制の特徴 ・ 労使協議制とは広範な意味を有するが、ここでは、当該団体的労使関係にお いて団体交渉とは別個のものとして設けられている協議の手続と解しておく。 (中略)労使協議制は、企業別労使間の情報共有・意思疎通・合意形成の手段 であり、産業、企業、事業所、職場などのレベルにおける公式・非公式の多様 な協議手続から成っている。 企業・事業所レベルでの代表的な労使協議制としては、①団体交渉の開始に ・労働法[第8版](菅野和夫)P.523 ・労働法[第8版](菅野和夫)P.523~524 1213 1213 資料3 1
先立って情報開示・意向打診などを行うための、団交前段的労使協議制、②団 交事項を労使協議によって解決するための、団交代替的労使協議制、③団交事 項とは区別された経営生産事項を協議するための、経営参加的労使協議制、④ 協約上の人事協議条項に基づき行われる人事の事前協議制、などがある。これ らに共通の特色は、労使間の合意(協定、覚書、了解など)に基づいて設置さ れる手続であり、したがって協議の対象事項や手続はこの合意に従うこと、争 議行為を予定しないこと、協議の対象事項は団交事項か否かに拘泥しないこ と、などである。また、協議の程度(態様)については、「説明・報告」、「意 見聴取」、「協議」、「同意」などの区別がなされており、対象事項の性質によっ て使い分けられている 11)。実際には、企業別組合の締結している労働協約の 多くが労使協議を前段的手続とした団体交渉によって(62%の協約)、または 労使協議手続のみによって(22%の協約)締結されており(団体交渉手続のみ によって締結された協約は9%のみ。労働省・平成3年労働協約等実態調査)、 労使協議制は企業別労使関係の運営において中心的な手続となっている。 * 未組織企業における労使協議 労働組合が存在しない企業においても、経営者と労働者間に労使協議の機関 ないし手続が設置されている場合がある(中略)。その典型は、企業ないし事業 所の従業員の親睦・共済団体である従業員会が給与・一時金などの労働条件に ついて話合いを行ったり、経営・生産事項について会社の説明を受けたりする 場合である(略)。 11) 経営の方針・計画などに関する事項は「説明報告」が多く、配転・出向・解 雇などの人事や労働条件に関する事項は協議事項が多い。労働組合の「同意」 を要するとされる事項は、人員整理・定年制などの雇用に関する事項や、労働 時間や退職金の制度などが多い。 2
・ 使用者および労働者の相互に関係ある事項で、団体交渉制度の範囲内にない もの、または雇用条件の決定に関する他の制度によっては、通常扱われないも のについての協議・協力機関であり、それは企業におけるすべての関係者の間 に真に平等な討議によって、相互理解を深め、また生産および労働者の愉楽と 福祉に関する問題について、助言、情報交換および示唆を与えることにより、 経営者を援助するという不可欠の機能をもつものである。 ・ 労使協議制は、通常団体交渉の範囲内にない経営上、生産上の問題について の経営者と労働者との組織的な話し合いの手段であり、それはまた、労働者の 経営参加の一形態でもある。労使関係、すなわち使用者と労働者との組織的な 関係を規律するための基本的制度は団体交渉であり、労使協議制は団体交渉が 有効に機能することを前提として、これを補足する役割を果たすべきものであ る。 ※ 労使協議制の効果等 ・ 平成 16 年労使コミュニケーション調査結果の概要(厚生労働省) ア 過去 1 年間における労使協議機関について、成果があったかどうかをみる と、「成果があった」とする事業所割合が 61.3%、「成果がなかった」3.3%、 「どちらともいえない」35.4%となっている。 労働組合の有無別では、労働組合「あり」の事業所では「成果があった」 が 63.9%となっており、労働組合「なし」の事業所の 54.1%に比べ高くな っている。 イ 「成果があった」とする事業所について、成果の内容別にみると「労働組 合との意思の疎通が良くなった」が 53.2%、「労働環境の整備に役立った」 48.9%となっている。 ・新労働法講座第3巻 団体交渉(三藤正) P.296 ・調査研究資料第 31 号 公共企業体におけ る労使協議制と経営参加(公共企業体等 労働問題研究センター編(三藤正 協力)) P.67 ・平成 16 年労使コミュニケーション調査結 果の概要(厚生労働省)(抜粋) 1216 1217 1218 3
・ 労使コミュニケーションに関するアンケート集計結果(2005 年 5 月)(日本 経団連) 労使協議について、成果ありとする回答は、「労使間の情報共有化」につ いて 95.8%、「労使間の意思疎通の円滑化」について 94.9%、「安定した労 使関係の構築」について 93.2%などとなっている。 ※ 行政改革推進本部専門調査会報告(平成19年10月19日)(抄) 民間では、①団交前段的労使協議制、②団交代替的労使協議制、③経営参加 的労使協議制、④人事の事前協議制などが、代表的な労使協議制として設けら れている。 公務部門における労使協議制については、「効率的・効果的な事務事業の遂 行、国民・住民に対する良質な公共サービスの提供を促進するため、労使間の 意思疎通を図るツールとして労使協議制度を整備すべき」との考えがある。 労使協議制は、団体交渉を補完するというその性質上、基本権の付与拡大の あり方が具体的に定まらないと、その必要性及び内容について、定めることは 困難である。よって、まず、基本権付与拡大のあり方を具体的に定めた上で、 検討することが必要である。 ※ なお、職場全体の利害を反映し易いと考えられる「従業員代表制」に関する議 論があることにも留意する必要。 ・ ヨーロッパのいくつかの国では、職業別ないし産業別の団体交渉とは別個に、 企業ないし事業所において経営・労働関係上の労働者の利益代表機関を法によ って制度化することが行われた。ドイツの事業所委員会(略)、フランスの企 業委員会(略)などがその代表である。このような従業員代表機関は、一定規 模以上の企業において設置が半ば強制され、企業・事業所における団体交渉事 ・新たな時代の企業内コミュニケーション の構築に向けて(2006 年 5 月)(資料1: 労使コミュニケーションに関するアンケ ート集計結果)(日本経団連)(抜粋) ・労働法[第8版](菅野和夫)P.471 1226 1215 4
項以外の従業員の利益に関わる事項について、企業の決定に意思表明、協議、 共同決定などの手続で関与する権利を与えられる。かかる従業員代表制度は、 企業における労使の共同の利益を労働者の参加によって推進しようとする制 度であり、労使の対決を予定した団体交渉とは異なり、労使の協力・協調を基 本理念とする。したがって、従業員代表機関は、労働組合とは異なり、従業員 全員が当然参加し、協議のための代表者を法定の手続で選出し、使用者から活 動の種々の面で便宜供与を受ける。 2 公務分野における労使協議制の性格、目的、協議対象、職員団体の関与のあり方 などについて、どのように考えるか。 団体交渉との関係を、どのように考えるか。 ※ ここで検討する労使協議制については、協約締結(同意)を目的とする団体 交渉とは異なり、説明、意見聴取、意見交換を行うことを目的とするものを 前提として検討を行う。 A案 民間と同様、労使自治の原則に基づき労使間の合意により設ける自主的手続 として、労使協議を認める。(法令により労使協議を禁止しない。) 協議事項、手続等(協議の当事者や態様、設置段階等)については、労使間 で決定する。 (メリット) ・ 自律的労使関係を構築するという趣旨に沿うものである。 ・ 団体交渉のみでなく多様な方法により労使間の情報共有・意思疎通が行 われることにより、労使関係の安定が図られる。また、公務を取り巻く 環境や課題に対する認識を共有することにより、効率的・効果的な事務 事業の遂行、良質な公共サービスの提供に資する可能性がある。 5
・ 労使協議における対象事項は労使間の合意により決定され、必ずしも団 体交渉事項の範囲に限定されないため、団体交渉事項にはなりにくい管 理運営事項を含め多様な内容について労使間の情報共有・意思疎通を図 ることができる。 ・ 団体交渉事項の前段的手続として労使協議を行うことにより、団体交 渉・協約締結を円滑に行うことが出来る。 (デメリット・留意事項) ・ 交渉とは別に、労使協議に係るコストが発生する。 ・ 労使協議の目的や協議事項、手続等を明確にしないと、それらをめぐる 混乱を生じるおそれがある。 ・ 労使協議制の実施や協議事項、手続等について、府省ごとに差が生ずる 可能性がある。 ・ 交渉対象事項とならないあらゆる事項が協議等の対象となり得ることか ら、コストがかかるおそれがある。 ・ 管理運営事項を労使協議の対象とする場合、団体交渉と明確に区分をし ないと、管理運営事項が事実上交渉事項になるおそれがある。 ・ 国の事務の管理、運営(管理運営事項)の権限と責任は、国民の使用者 たる国会が法律等により行政執行の主体である行政機関に付与したも のであり、それを交渉対象事項とすることは行政主体がその権限と責任 を職員団体と分かち合うことになり適当ではないことから交渉対象事 項とされていないことにかんがみると、管理運営事項を職員団体との労 使協議の対象とすることは、国会や国民の理解を得られないおそれがあ る。 ・ 労使関係の透明性向上の観点から、労使交渉に関しては議論しており、 労使協議に関しても透明性に留意する必要がある。 ・ 勤務時間中に行うことを可能とする場合には、職務専念義務との関係で 6
整備が必要。 ・ 労使協議の設置単位について、民間では労使交渉が行われる単位と同様 の場合が多いと考えられるが、公務ではどのような単位とするか検討す る必要がある。 B案 労使協議の求めがあった際には、相手方は合理的理由がない限り、恣意的に その求めを拒否することのないよう努めるものとして、労使協議を行うこと を法令上努力義務とする。 協議事項、手続等(協議の当事者や態様、設置段階等)については、労使間 で決定する。 (理由) ・ 労使関係の安定、団体交渉・協約締結の円滑化といったことは、公務に おいては民間以上に求められることから、労使協議を行うことを努力義 務とする。 (メリット) A案のメリットと同様。 (何らかの方法で労使協議が行われる可能性が高くなることにより、A案 におけるメリットが実現されやすくなる。) (デメリット・留意事項) A案のデメリットのほか、 ・ 民間では法制度上規定されていない労使協議について、公務においては 特に労使間の情報共有・意思疎通を図ること及び団体交渉・協約締結を 円滑に行うことが求められることに鑑み、民間と異なる制度とする合理 性があるか検討が必要。 ・現業国家公務員において、労使協議制と同様に 本来は労使間の自主的決定によるものである苦 情処理共同調整会議の設置が義務付けられてい る趣旨は以下のとおり。 苦情処理機関を設けるか否かは、本来、労使 間の自主的決定によるべきであるが、公共企 業体等においては、企業の社会的機能にみら れる特殊性、すなわち公益性、社会性および 独占性などから、職員の苦情を迅速かつ平和 的に解決して職場を明朗にし、かつできるだ け労使間の紛争の発生を防止するため、苦情 処理機関として苦情処理共同調整会議の設置 を公共企業体等と組合とに義務づけた。 7
※ 団体交渉事項を労使協議の対象とする場合、団体交渉・労使協議のそれ ぞれの役割を明確にする必要がある。なお、労使協議自体の公開、協議 の概要録の公表等、団体交渉と同じ取扱いとするか検討が必要。 C案 労使協議の求めがあった際には、労使協議を行うことを法令上努力義務と し、協議事項、手続等(協議の当事者や態様、設置段階等)についても、あ らかじめ法令で規定する(制限を設ける)。 C-1案 公務を取り巻く厳しい環境、行政ニーズ、日々の業務運営について、 効率的で質の高い行政サービスの実現という理念を労使で共有す るため、職員、職員の代表又は職員団体に対する説明・意見交換と して、労使協議を認める。 C-2案 交渉対象事項とならない人事制度について、職員の理解を得るた め、中央レベルでの職員団体に対する説明・意見交換として、労使 協議を認める。 C-3案 管理運営事項を含め、交渉対象事項とならない事項について、団体 交渉を補完するため、職員団体に対する説明・意見交換として、労 使協議を認める。 C-4案 管理運営事項について、労使協議の対象としない(管理運営事項以 外の事項について、職員団体に対する説明・意見交換として、労使 協議を認める)。 8
(メリット) ・ 公務の効率化等について、労使が協働して取り組みやすくなる。また、 労使でコミュニケーションを図っていくことで職場の活力や職員の士 気が高まる。(C-1案) ・ 職員の関心の高い人事制度について、その理解を得る機会を確保し得る。 (C-2案) ・ 意見交換によって、交渉対象事項とならない事項の適切・円滑な処理に 役立つ可能性がある。(C-3案) ・ 管理運営事項を労使協議の対象とする場合のデメリット(下記)を回避 できる。(C-4案) (デメリット・留意事項) ・ 交渉とは別に、労使協議に係るコストが発生する。(共通) ・ 交渉対象事項とならないあらゆる事項が協議等の対象となり、コストが かかるおそれがある。(C-1案~C-3案) ・ 管理運営事項を労使協議の対象とする場合、団体交渉と明確に区分をし ないと、管理運営事項が事実上交渉事項になるおそれがある。(C-1 案~C-3案) ・ 国の事務の管理、運営(管理運営事項)の権限と責任は、国民の使用者 たる国会が法律等により行政執行の主体である行政機関に付与したも のであり、それを交渉対象事項とすることは行政主体がその権限と責任 を職員団体と分かち合うことになり適当ではないことから交渉対象事 項とされていないことにかんがみると、管理運営事項を職員団体との労 使協議の対象とすることは、国会や国民の理解を得られないおそれがあ る。(C-1案~C-3案) ・ 管理運営事項を労使協議の対象から除外することにより、労使間の情報 共有・意思疎通による労使関係の安定化、効率的・効果的な事業の遂行、 9
10 良質な公共サービスの提供といった効果が得られないおそれがある。 (C-4案) ・ 労使交渉に関しては、労使交渉の透明性向上の観点から議論しており、 労使協議に関しても透明性に留意する必要がある。(共通) ・ 勤務時間中に行うことを可能とする場合には、職務専念義務との関係で 整備が必要。(共通) D案 いわゆる法定の職員代表制を導入する。 (メリット) ・ 多様な職員の利害・関心に応じた課題を採り上げることが可能となり、 職員個々人の勤務意欲の向上が期待できる。 ・ 各事業所単位において業務をともにする職員の発言ルートが確保される ことにより、当該事業所における業務運営の円滑化が期待できる。 (デメリット・留意事項) ・ 日本にはなじみのない制度であり、公務員だけに導入することについて 国民・住民の理解が得にくい。 ・ 職員団体が果たす役割と職員代表制が果たす役割について整理が必要。 従業員代表制は産業別組合が主流となっているヨーロッパで発展した 制度であり、企業別組合が中心の我が国においては企業別組合との整理 が難しい。 【整理】 上記のとおり