【1】 経緯
びわ湖地域の中小企業は、これまでの長い期間、「大手企業からの指示通りの製品・部品を製作していれば良 い」というマネジメントが大勢であったが、21 世紀にはこれらのマネジメントスタイルから脱却し、独自の商品開発を 志して行わねば、地域の中小企業は生き残れないという問題意識を持っている。言い換えれば、経営者自ら市場 環境分析を行い事業戦略・技術戦略を策定し、21 世紀のヒット商品を生み出していく経営者・幹部を育成せねばな らないという課題が存在している。これらの課題解決支援のため、「びわ湖地域中小企業の活性化、第二創業に向 けて」を命題とした実践的な MOT プログラムの開発が不可欠と認識されてきている。 そこで、滋賀大学においても大学の社会貢献のひとつとして、産業共同研究センターが中心となって「イノベーシ ョンによる地域再生」を実現するため、びわ湖地域の中小企業経営者・幹部、経済団体、商工会議所、金融機関、 および行政機関(県、市町村)等の関係者を受講対象とする地域中小企業の活性化・第二創業のための MOT 人材 育成プログラムを開発し、びわ湖地域全域への啓蒙活動を行う計画を立案し、活動している。開発したプログラム の内容は、びわ湖地域産業を例に、中小企業支援のための各種機関がかかえる特有の問題に特化し、従来から の財務、会計を学ぶ MOT とは全く異なった地域中小企業向けのユニークなものである。 これまでも、滋賀大学産業共同研究センターはびわ湖地域の産業の経営者等に MOT プログラムの基礎を提供 してきたが、今年度はさらに一歩突っ込んで、びわ湖地域産業がかかえる具体的問題に焦点を当て、それらの問 題解決のための MOT 手法を構築するプログラムとして、「実践的 MOT 手法」、「びわ湖地域産業への手法を適用し たケーススタディ」とで構成した。これらを開発内容の二本柱としたびわ湖地域の企業に「新しい付加価値を創造す る実践的 MOT プログラム」である。 「実践的 MOT 手法」は、「ニーズ調査」、「コンセプトづくり」、「技術評価」、「技術開発」、「産学連携と新事業開発」、 「商品開発と知財戦略」等の手法についての議論である。「びわ湖地域産業への手法を適用したケーススタディ」で は、「ものづくり・健康・環境・農業等のケーススタディ」を中心とした。 MOT プログラムの開発体制は、湖北三大学 (滋賀大学、滋賀県立大学、長浜バイオ大学)を中心として、複数大学の MOT 専門家との連携・協力により、得意分 野(社会科学系、環境・工学系、バイオサイエンス系)の異なる専門家を有機的に組み合わせるとともに、民間から も多くの経験と深い専門性をもった企業等の技術経営経験者を融合したメンバー構成で開発を進めてきている。 「実践 MOT プログラム」による啓蒙活動は、①主としてびわ湖地域の中小企業の人材育成を目指し、MOT 基礎セ ミナーを開催 ②第二創業・新規開業・経営革新を目指す各企業に対するコンサルティング業務を行うことによる 「地域中小企業の新事業支援」の二点を中心に、びわ湖地域全域に展開していくことを目標に行っている。 本年度のプログラム内容は、セミナー教育やコンサルティング業務への展開により、地域産業の活性化・第二創 業を促し、地域における雇用機会と所得水準の向上に多大な貢献をもたらすことを目的として、平成 17 年度経済 産業省・技術経営プログラムに採択された内容を継続的に進化させているものである。【2】 平成 18 年度の「出前 MOT セミナー」活動
平成 18 年度は、主としてびわ湖地域の中小企業の「人の育成」を目ざすフェーズの発展系として、大学がびわ湖 地域に飛び出して、その地域の行政、商工会議所、経済団体、民間企業と一体となってセミナーを開催するという、 いわゆる「出前 MOT セミナー」を企画実行した。プログラム内容とそのアンケート結果を次に示す。 滋賀大学 産業共同研究センター 特任教授 文部科学省 産学官連携コーディネーター 宇佐美 照夫〈1〉 第 1 回出前 MOT セミナー(大津) 〈H18 年 9 月 21 日/コラボしが 21 中会議室〉 主催:(財)滋賀県産業支援プラザ (1) 基調講演「イノベーション時代の経営と MOT」 滋賀大学 成瀬学長 □ MOT の意味と意義 □ 日本企業競争力のウイークポイント □ MOT に関する人材育成の重要性 □ イノベーション時代と MOT □ 大学は MOT の教育拠点 (2) 「やさしい事業戦略」 滋賀大学 産業共同研究センター長 野本教授 □ 事業運営上の問題点 □ 機会分析 □ マーケティング戦略 □ マーケティング・ミックス □ マーケティング・リサーチ (3) 「やさしい技術戦略 —情報と経営戦略-」 滋賀大学 産業共同研究センター 宇佐美客員教授