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いのちと暮らしに寄り添うやさしいまちづくり 地域に残る昔懐かしい味をテーマとしたグループ聞き書き法を用いての検証

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Academic year: 2021

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(1)公益財団法人 在宅医療助成 勇美記念財団 2017 年度(前期)一般公募「在宅医療研究への助成」報告書. いのちと暮らしに寄り添うやさしいまちづくり 地域に残る昔懐かしい味をテーマとした グループ聞き書きの法を用いての検証. 研究代表者:八塚 美樹 所属機関:富山大学大学院医学薬学研究部(医学) 所在地:〒930-0194 富山市杉谷 2630 提出日:平成 30 年 9 月 7 日.

(2) 目次 Ⅰ.背景・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 Ⅱ.目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2 Ⅲ.事業の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・. 2. Ⅳ.方法 1.養成講座. ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4. 上市聞き書き実践講座・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4 富山大学大学院がん看護学講座富む別セミナー聞き書き講座・・・・・・・・ 4 富山市まちなか聞き書きサロン・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5 Ⅴ.結果と考察 1.上市聞き書き実践講座・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6 2.富山大学大学院がん看護学講座特別セミナー聞き書き講座・・・・・・・・・・ 6 3.富山市まちなか聞き書きサロン・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7 Ⅵ.結論・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8 Ⅶ.謝辞・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8.

(3) Ⅰ.背景 厚生労働省は,地域包括ケアを持続可能にするための構成要素を「自助」「互助」「共 助」「公助」と位置づけ, 「中長期的には,自助や互助として家族や地域による支援と地域 包括ケアシステムとの調和のとれた新たな関係」を検討していくことの必要性を指摘して いる。特に「本人・家族の選択と心構え」について,支援・サービスを提供するだけでな く,自らが自らの生活を支え,自ら力でする「自助」,住民相互の力に頼る「互助」,言い 換えれば地域のセルフケア機能が発揮される「まちづくり」が強く求めている。 2010 年、私たちは高齢者の話を聞き、その人の話し言葉で書いて、一冊の本にして差し 上げる「聞き書き」活動を開始し、 「富山聞き書きボランティアクラブ」を設立、その人ら しい暮らしと生きがいを支えるまちづくりへの可能性を考え始めた。 私たちは、保健医療福祉教育職を対象とした聞き書き実践家を育成するための聞き書き セミナー(2012 年、2014 年、2015 年)を開催し、70 歳代の男性の民生委員児童委員,地 域で暮らす 80 代男性がん患者の「聞き書き」活動は、地域包括ケアにおける自助・互助機 能を活性化させる有用なまちづくりの一助になることを報告してきた。 これらの実績を踏まえて、2016 年度「富山健康まちづくり推進モデル事業(2013 年施行)」 による健康まちづくりマイスター育成カリキュラムで輩出されたマイスターの協力を得て, 「認知症になっても暮らしと生きがいを育むまちづくり. 聞き書きのすすめ」事業による. 聞き書きボランティア養成に取り組んだ。結果、52 人の聞き書きボランティアが養成され、 23 編の聞き書き作品を語り手に差し上げることができた。作品の 3 分の2は、家族や親族 の聞き書きであり、認知症を患う親の話を残しておきたい、語ることで元気になってほし い、ゆっくり話を聞いたことがない、多くを語らない祖父母の話を聞きたいなどの動機か ら行われ、結果、家族も知らない話が聞けた、親子関係のもつれの解消、家族への尊敬と 愛情を感じ、これからの生き方を考えるきっかけとなったなどが認められ、 「聞き書き」は 個人家族のセルフケア機能を強化すると考察し、醸成された「自助」や「互助」によって、 新しい機能するまちづくりの構想が示唆された。しかし一方で、 「聞き書き」は身近な人を 誘って簡単に行うことができる活動としては、書いて残すというハードルの高い部分があ るという課題も明らかになった。 そこで、私たちは聞き書きをより身近に体験できるよう、また認知症発症の抑制効果が あると言われている「食(料理)」をテーマとし、複数人で聞く聞き書きを試みることとし た。 食をテーマにした聞き書きは、その刺激として、食感、味、香りなどの感覚刺激の要素 を含み、その頃の生活や情景、家族や友人など、人との関わりも通して懐かしい情緒を引 き出してくれる可能性が大きく、記憶をよび起こしやすく、比較的誰でも語りが可能で、 他者も参加しやすい暮らしのテーマであり、その地域特有の伝統的な食文化があり、聞き 書きという形で残すことは、地域の食文化の伝承にも貢献する可能性も大きい。. 1.

(4) Ⅱ.目的 身近な人や高齢者の食をテーマとした複数人の聞き手による聞き書きを実践することで, 住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けるための「自助」 「互助」に価値 をおいた「まちづくり」に寄与できる聞き書きの可能性を検討する。 Ⅲ.事業の概要 1 事業名;いのちと暮らしに寄り添うやさしいまちづくり 地域に残る昔懐かしい食をテーマとしたグループ聞き書き法を用いての検証 2 講座名; 聞き書き実践講座 1)上市養成講座(3 回シリーズ) 場所 かみいち総合病院 講堂 講師 金沢大学名誉教授 日本聞き書き学校 講師. 天野良平 先生. 日時 平成 29 年 6 月 24 日(土)13:30~15:30 内容. 聞き書きのすすめ. 家族づくりに地域づくりに. 講義とワーク. 平成 29 年 7 月 22 日(土)13:30~15:30 聞く技術 書く技術. 講義とワーク. 平成 29 年 8 月 26 日(土) 13:30~15:30 書く技術、作品作りを楽しむ. 作品披露と講評. 2)富山大学養成講座(3 回シリーズ) 場所 富山大学看護学科 5 階 成人看護学研究室 講師 金沢大学名誉教授 日本聞き書き学校 講師. 天野良平 先生. 日時 平成 30 年 5 月 11 日(金)18:05~19:35 内容. 聞き書きケアのすすめ(1)聞いて書いて残すこと、その魅力 講義とワーク 平成 30 年 5 月 19 日(土)13:00~15:00 聞き書きケアのすすめ(2)バタフライ効果と多様性 講義とワーク 平成 30 年 7 月 21 日(土)14:00~18:00 看護と聞き書き. 成果報告会. 3)富山市まちなか聞き書きサロン(毎月第 2 土曜日の午後開催) 場所 富山市まちなか総合ケアセンター 主催 富山聞き書きボランティアクラブ 安念 恵子 日時 平成 29 年 11 月 10 日(土)13:30~15:00 聞き書きってなあに 内容 平成 29 年 12 月 8 日 (土)13:30~15:00 聞き書きってなあに 平成 30 年 2 月 10 日 (土)13:30~15:00 聞き書きってなあに 2.

(5) 平成 30 年 3 月 10 日 (土)13:30~15:00 聞き書き本を味わってみよう 平成 30 年 4 月 14 日 (土)13:30~15:00 聞き書き本を味わってみよう 平成 30 年 5 月 12 日 (土)13:30~15:00 昔懐かしい味を聞いてみよう 平成 30 年 6 月 9 日 (土)13:30~15:00 昔懐かしい味を聞いてみよう 平成 30 年 7 月 14 日 (土)13:30~15:00 昔懐かしい味を聞いてみよう 4 成果報告会(別紙参照) テーマ:あいだをみつめて 場 所:富山市大山研修センター 日 時:平成 30 年 7 月 21 日(土)14:00~18:30 内 容 第1部:看護と聞き書き 聞き書きの体験 富山大学大学院医学薬学教育部(がん看護学専攻) 高岡市民病院. 豊本 香里. 皆なに伝えたい、聞き書きから教えてもらっていること 富山県市立砺波総合病院 看護師 安東則子 聞き書きで変わる私たちの看護 ことばの薬箱を携えて 岩手県一関市国民健康保険藤沢病院 病棟看護師長 畠山 貴江 第 2 部:聞き書きをうけて 聞き書きをうけて 富山県中新川郡上市町. 西田美術館. 顧問. 山口 松蔵. 第 3 部:地域で聞き書き 地域での広がりを期待して 富山市南保健福祉センター 所長. 安念 恵子. 聞く力 聞き書きで変わる医療 岩手県一関市国民健康保険藤沢病院 院長 佐藤 元美 聞き書きの風がふいている 金沢大学名誉教授. 3. 天野 良平.

(6) 5 成果発表 第 5 回聞き書き学校 in 一関 「聞き書きの不思議な力」 主催:岩手県一関市国民健康保険藤沢病院 病院管理者/院長 佐藤元美 先生 日程:平成 30 年 8 月 31 日―9 月 2 日 Ⅳ.方法 1.養成講座 富山県内の保健医療福祉教育など人に関わる専門職や学生、一般から募集をした。 聞き書きの聞き方、書き方などワークを行うため、募集人数は 20 名程度とした。 講座スケジュール 回. 日. 講習会の内容(講師:敬称略) 司会:山崎列子. 6 月 24 日. 1. (土). 場所 かみいち. オリエンテーション:講座のすすめ方(八塚美樹) 総合病院 講堂 講義とワーク:聞き書きのすすめ 家族づくりに地域づくりに(天野良平) 司会:八塚美樹. 7 月 22 日 2. (土). 講義:聞く技術、書く技術(天野良平). かみいち 総合病院 講堂. ワーク:聞き書きの実際 語り手:吉友かく子 聞き手:山崎列子 司会:山崎列子. 8 月 26 日. 3. 講義:書く技術(天野良平). かみいち 総合病院 講堂. (土) 富山大学大学院がん看護学講座特別セミナー聞き書き講座スケジュール 回. 日. 講習会の内容(講師:敬称略) 司会:八塚美樹. 1. 5 月 11 日 (金). 講義とワーク:聞き書きケアのすすめ(1) 聞いて書いて残すことの意義 (天野良平) 司会:八塚美樹. 5 月 19 日 2. (土). 講義とワーク:聞き書きケアのすすめ(2) バタフライ効果と多様性. 場所 富山大学 看護学科 5 階 成人看護学研究 室 富山大学 看護学科 5 階 成人看護学研究. (天野良平) 室 司会:八塚美樹 3. 7 月 21 日. 成果報告会:看護と聞き書き. (土) 4. 富山市大山 研修センター.

(7) 富山市まちなか聞き書きサロンスケジュール 回. 日. 講習会の内容(講師:敬称略) 進行:安念恵子. 1. 聞き書きってなんだろう①. 総合ケアセンタ. 12 月 8 日. 聞き書きってなんだろう②. ー. 2 月 10 日. 聞き書きってなんだろう③ 富山市まちなか. 3 月 10 日. 聞き書き本を味わってみよう①. 総合ケアセンタ. 4 月 14 日. 聞き書き本を味わってみよう②. ー 進行:安念恵子. 3. 富山市まちなか. 11 月 10 日. 進行:安念恵子 2. 場所. 富山市まちなか. 5 月 12 日. 昔懐かしい味をテーマにした聞き書きの. 総合ケアセンタ. 6月9日. 実際をおこなってみよう. ー. 7 月 14 日 事業に入る前の打ち合わせ会 平成 29 年 9 月 16 日(土)11:00-12:30 参加者:八塚美樹 山崎列子 安念恵子 日本聞き書き学校. 講師 天野良平先生. 複数人の聞き手で行う聞き書きの方法について、打ち合わせをおこなった。 複数人の聞き手による聞き手の人数は、2 名、3 名、4 名までが適当で、5 名以上は語り 手に心理的負担がかかるため不適当であろうということになった。 複数人の聞き手による聞き書きの聞き手は、聞き書き経験者で構成し、聞き書きの初学 者は含めないこととした。また、聞き書きの実際の見学も受け付けないこととした。 また、複数人の聞き手の中で、主の聞き手を決めて聞き書きをおこなうことにした。そ の際に、他の聞き手は、語り手と主の聞き手の対話を傾聴し、聞き手の質問の主旨に沿っ た質問をおこなうことにした。最後に、主の聞き手が、他の聞き手に質問はないかを聞く こととした。 聞き書きは、語り手の話したい話を受容共感的に聞くことが主目的であり、テーマ性 (食:懐かしい味)のある内容をどのように聞いていくのかについては、種々意見が交わ された。 聞き書きの特徴である、人生を振り返り、暮らしのなかでその人が楽しかったこと、頑張 ってきたことなどその人が話したいことを話してもらうことを大切に聞きながら、目的的 聞き取りにならないよう留意し、 「テーマ性」に関する質問を会話のなかに織り交ぜて聞く ことにした。また、事前に、聞き書きの趣旨について了解を得るとともに、 「テーマ」につ いても語り手に了解を得ることにした。複数の聞き手による聞き書きは金沢大学名誉教授 5.

(8) 日本聞き書き学校の講師天野良平先生に主の聞き手を依頼し、聞き書きの経験のある 3 名 を含め 4 名で聞き書きを行うこととした。 「食」に関する聞き書きの語り手を募集した 富山市健康まちづくりマイスター連絡会(9 月 22 日)で、健康まちづくりマイスター 96 名に研究の主旨・方法について、説明会を開催し、 「食」に関する聞き書きの語り手を 募集した。 Ⅴ.結果と考察 1. 上市聞き書き実践講座 受講は、16 名であった。聞き書きのすすめ--家族づくりに地域づくりにー、聞く技術、 書く技術について、講義と演習を行ったのちに、3 名の聞き書きをおこなった。1名は語り 手 1 名聞き手 1 名である。残り 2 名は、語り手 1 名、聞き手 4 名でおこなった。 複数人の聞き手による聞き書きについてであるが、複数人の聞き手のうちの一人が、事 前に聞き書きとは何か、今回のテーマ(食:昔懐かしい味)について説明し、最も語りや すい場所を聞き書きの場所にした。 聞き書きを始めるにあたって、主の聞き手から、自己紹介、聞き書きについての説明が された。語り手の話したいこと(とっておきの話)を、主の聞き手が中心となり聞き書 きがすすめられた。他の 3 名の聞き手は、主の聞き手と語り手との関係性に配慮をしな がら、主の聞き手の質問に呼応するように進めていった。話がひと段落したところで、 主の聞き手から、他に質問はないかという問いかけがされ、他の 3 名は、語り手と主の 聞き手の話しに沿った質問をした。 「食」についての語りは、事前に依頼されていたこと もあり、語り手は準備をしていた。その内容は各国の食糧事情や、職業との関係からの 食に関するアイディアの語りであった。聞き手と関係性のある語り手の選択、事前にお こなう聞き書きについての説明、主の聞き手を置くこと、聞き手同士の関係性のよさが あったことで、「食」というテーマ性を織り交ぜながら、聞き書きの主眼である人生の物 語を聞くことができた。表題、小見出しなどそれぞれ違う個性的な聞き書き本が完成し た。 2.富山大学大学院がん看護学講座特別セミナー聞き書き講座 受講は、大学院生 5 名、社会人 1 名であった。聞き書きケアのすすめー聞いて書いて残 すことの意義―、聞き書きケアのすすめーバタフライ効果と多様性―について、講義と演 習をおこなった。 講義の演習で「思い出の母の味」をテーマにした、聞き書きワークがおこなわれた。こ のワークは、以下のようにおこなわれた。 ・2人ペアになり、聞き手と語り手を決め、聞き手が最初に口火をきり、語り手はテ ーマについて話したいことを話す。 6.

(9) ・聞き手は、語り手が話しやすいように話を盛り上げる。また聞き手は、語り手の ことを想い、想像力を高めて聞く。話す時間は7分間。 ・聞き手と語り手が交代して、同様に7分間話す。 ・ICレコーダーに録音した音声を聞き、丁寧に語り手が話したように文字にする。 このときは、横書きに起こすことが多いようだと言われている。 ・縦書きにし、聞き書き原稿をつくる。語り手の話された言葉やその情景を想い浮 かべて、その人らしさを表現していく。語り手は、実際には言葉にしてはいない けれど、きっとこんなふうに表現されたいのかなとか、こんな情景が広がってい たのかなと語り手と聞き手のあいだをみつめて、深めていく。 ・原稿は、語り手に読んでもらい、さらに語り手の方らしさを求めて仕上げていく。 ・その作品について丁寧な添削・講評をうけ、作品を披露し、さらに追加修正をし その人らしさを目指して作りあげた。 「思い出の母の味」をテーマにした聞き書きは、誰もが話すことができるという点 では易しい、しかし語り手になりきって書くという点では深く考えさせるワークで あった。そこには、語る、聞く、書く、読むの物語を大切にする看護をおこなうた めに、必要な能力が含まれていた。語り手になりきって語り手が話したように書く とき、あいだをみつめて深めていく。録音した肉声を文字に変換し、縦書きにして、 喋り言葉にしてその人らしさを表現していくことで、深くその人との一体感を感得 することができた。今回の「思い出の母の味」課題は、特に専門的な用語を必要と せず自分の方言、自分らしい言葉を使い、口調、話のテンポ、身振り手振りを交え て語られるスタイルであった。相手を理解したいというところから出発し、好奇心 をもって語りを聞くということが体験できた。それは、自分はその人との関係性は あるが、想い出のははの味ということについては何も知らないということに気づか せてくれる、聞き書きに必要とされる積極的傾聴や無知の姿勢についてもおのずと 理解できる課題であった。 3.富山市まちなか聞き書きサロン 平成 29 年 11 月から毎月第二土曜日13時30分から15時まで開催し、毎回 6 人 から 10 人が集まった。保健師であり、富山市マイスターの資格を有する安念恵子さん が進行した。毎回、季節の果物や土地のお菓子を持ち寄り、話が弾みやすいような環 境に配慮し、おこなった。聞き書きについて初心者の参加があったので、初回から 3 回は「聞き書きってなんだろう」をテーマに聞き書き体験を話し、その効用や学びに ついて共有した。聞き書きとはどういうものかをおぼろげながら理解されたところで、 「聞き書き本を味わってみよう」をテーマに実際に差し上げた聞き書き本を音読し、 聞き書き本の情景を想像したり、語り手の心情に寄り添った。また、まえがき、あと がきを音読し、聞き手の聞き書きをおこなったきっかけや聞き書きを終えての学びに ついて、活発に対話した。その後、 「昔懐かしい味」をテーマにした、聞き書き半年後、 聞き書きについての理解が得られた頃、サロンに集まったひとに語り手になってもら い、 「思い出の味」について語ってもらった。主の聞き手は、富山聞き書きボランティ アクラブの安念恵子さんとなり、複数人で聞き書きをおこなった。語りの時間は 20 分 7.

(10) 程度であった。「思い出の食べ物」「福光の夕焼け」の2冊の作品ができた。聞き書き とは何か、聞き書きの進め方、聞き書き本の朗読会など、サロン参加者のニーズにあ わせて、言葉と対話を大切にした運営をしたので、サロン参加者同士の関係性がより 親密化し、複数人でおこなった、身近なテーマである「食」を中心とした聞き書きは、 語り手と聞き手の関係性をさらに親密にすることがわかった。サロンでワークとして おこなう聞き書きとして、「食」はよいテーマであった。主となる聞き手が聞き書きの ベテランであれば、他の聞き手が初心者であっても、成り立つ手テーマであることも わかった。 Ⅵ.結論 「聞き書き」は身近な人を誘って簡単に行うことができる活動としては、書いて残す というハードルの高い部分があるという課題をうけて、私たちは聞き書きをより身近に体 験できるよう、また認知症発症の抑制効果があると言われている「食(料理)」をテーマと し、複数人で聞く聞き書きを試みた。 「食」をテーマとした聞き書きは、誰でもが語ることができる身近な内容であった。そ の頃の暮らしや情景、家族や友人など、人との関わりも通して懐かしい情緒を引き出し、 記憶をよび起こしやすく、比較的誰でも語りが可能であった。講座やサロンなどで聞き書 きについての理解を深める際に、 「食」をテーマとしたワークは、聞き書きに必要とされる 共感受容的態度、積極的傾聴、無知の姿勢などについて学ぶには、適切で有用であった。 しかし、 「食」をテーマにした聞き書きは、多様性に富み、当初予定していた栄養学的側面 や土地の伝統的料理などの聞き書きは課題として残った。 複数人で聞く聞き書きは、最大聞き手4人が適切な人数であり、聞き書きの聞く技術に ついてよく感得し、語り手と主となる聞き手とが繰り広げる聞き書きを、他の聞き手が熟 知して実践することで可能であると考えられた。 北陸地方に暮らす高齢者とその家族を語り手とした、昔懐かしい味にまつわる物語をグ ループ聞き書き法を用いて実践することで、「自助」「互助」機能を促進するまちづくり構 想の可能性は大きいと示唆された。 Ⅶ.謝辞 本研究は、公益財団法人. 在宅医療助成 勇美記念財団の助成をうけ実施されました。. 深く感謝申し上げます。 本研究にご協力くださった富山市健康まちづくりマイスターの皆様、富山聞き書きボラ ンティアクラブの皆様に深く御礼申し上げます。 最後になりましたが、この紙面を借りて、ご指導ご助言いただきました金沢大学名誉教 授、聞き書き学校の講師、天野良平先生に深謝いたします。. 8.

(11) 公益財団法人在宅医療助成. 勇美記念財団. 2017 年度(前期)一般公募「在宅医療研究への助成」報告書 いのちと暮らしに寄り添うやさしいまちづくり 平成 30 年 8 月発行 代表研究者 富山大学大学院医学薬学研究部看護学 教授 八塚 美樹 共同研究者 富山大学大学院医学薬学研究部看護学 助教 北谷 幸寛 前かみいち総合病院. 副院長看護部担当. 富山市南保健福祉センター. 9. 所長. 山崎 列子 安念. 恵子.

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参照

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