鳴門教育大学学術研究コレクション

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日本と中国の図画工作科教育の比較

―民間アートスクールと義務教育課程の相互役割を視野にー

教科・領域教育専攻 芸術系コース(美術) TAN Weikang I .研究動機 近年、中国の経済の急速な発展とともに、 教育の問題が現れている。それに対して政 府主導の教育の改革がしだいに進展して きた。義務教育の改革の中で、一番注目さ れるのは「素質教育」だといわれている。 その後、中国教育部(日本の文科省と同 じ)が2010 年に発表した「国家中長期教 育改革と発展計画綱要」と上海市教育局 (日本の教育委員会と同じ)2010 年の「上 海市中長期教育改革と発展計画綱要」では 芸術教育について指摘している。「子ども たちの美の鑑賞、創造力、美しさを味わう 能力を高めるために、積極的に音楽や美術 に関する芸術教育を展開することは必要 である。」 と述べているロ r2018 年-2023 年の中国の子どもの芸 術学外学習産業の市場展望と投資戦略計 画分析」のデータによるとこの改革背景の 下で、子ども向けの国内美術教育機関の数 は、2010 年の2, 808 か所から2017 年には 6, 995 か所に増えている。 このことから保 護者たちは芸術に関わる科目に強い関心 をもっているとわかる。 理由としては次のようなものが考えら れる。一つ目は義務教育の学校美術の授業 は時間数の割合が低すぎて、子どもたちと 保護者の需要を応えられていないことで ある。 二つ目は筆者の小学校時代に学んだ美 術の授業内容と21 世紀の小学校の美術の 授業内容を比較した場合はあまり変わて いないことである。 そして、三つ目は子どもたちが義務教育 学校の中で行われる美術授業をあまりお もしくないを感じでいることである。 指導教員 山田 芳明 このように、現在中国の若い保護者たち は自分の子どもたちのためにもっといい 教育の資源を十分にほしいと望んでいる。 そこで本研究では先進国である日本の 美術教育の内容と比較し、義務教育学校と 民間アートスクールの連携を高めていく ために、どのような取り組みが求められて いるのか考えてみたいと考えた。 ~.研究目的 現在、中国の若い保護者たちは芸術に関 わる科目に強い関心をもっている。一方、 中国の義務教育の図画工作の授業内容は 絵画教育の内容以外は,依然として描く技 能を中心に据えるものである。その分野は, 画種は多く、系統性は強く、また技法は難 しく、授業内容はおもしろしくない。 そこで本研究では、先進国である日本の 美術教育の内容比較し、両国の小学校の図 画工作学習指導要領の共通点と相違点の 詳細を明らかにする。さらに、日本と比較 して、中国で不足している部分の解決方法 として民間アートスクールと義務教育相 互補完のあり方を考察する。 ~.研究方法 まず、日本と中国の小学校の新旧図画工 作学習指導要領の目標と内容を比較する。 そして、両国の小学校の新旧図画工作学習 指導要領の変遷や重視の内容を整理する。 日中両国の小学校の図画工作学習指導要 領の共通点と相違点を明らかにしていく。 次に、日本図画工作授業の特徴の研究に ついては日本でいろいろな研究会や子ど も向けの造形ワークショップを取材し、フ ィールドワークも参加し、それぞれの実際 一277 一

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の活動を考察する。中国の小学校の図画工 作授業については義務教育に関する資料、 調査データの他に小学校義務教育課程標 準や教科書からの分析を行う。 そして、これらを踏まえて中国において 義務教育の学校と民間アートスクールの 連携力の可能性について検討する。検討に あたっては、中国の子どもたち向けの図画 工作の活動や日本の色々な図画工作のイ ベントの取材による調査を行う。 その後、それらの考察に基づき、アート スクールでの実践に向けて日本の図画工 作の授業の演習を立てている。実践の検証 の結果をまとめる。 ~.章立て 研究背景 第1 章 日本と中国の図画工作科(美術科) の学習指導要領の比較 第1 節 日本と中国の義務教育小学 校の段階で図画工作(美術)の教科につい て 第2 節 日本と中国の小学校の図画 工作科の総目標と各学年目標について 第3 節 日本と中国の小学校の図画 工作科の内容について 第4 節 日本と中国の小学校図画工 作科指導要領の観点の共通点と相違点に ついて 第5 節 まとめ 第2 章 日本と中国の小学校美術授業の 内容の研究について 第1節 日本と中国の小学校の図画 工作科(美術科)教科書の基 本情報 日本と中国の小学校低学年 版の図画工作科の教科書の 比較 日本と中国の小学校中学年 版の図画工作科の教科書の 第2 節 第3 節 比較 第4 節 日本と中国の小学校高学年 版の図画工作科の教科書の 比較 第5 節 まとめ 第3 章 民間アートスクールと義務教育 の学校の相互役割について 第1節 日本の造形遊びと中国の美 術課程の補完の方法 第2 節 中国の学外教育の市場と民 間アートスクールの調査 第3 節 民間アートスクール勃興の 原因 第4 節 日本の図画工作の内容へ中 国の子どもに実験と考察に つし、て 第5 節 まとめ 終章 研究成果と今後の展望 第1節 研究成果 第2 節 今後の展望 V .今後の展開 今後は,中国における巨大な学外美術 教育の需求発展を期して、学校の義務教育 のみならず、 民間アートスクールにおけ る革新的な美術教育あるいは芸術教育の 新たなあり方を研究していきたい。 (参考・引用文献) 文部科学省『小学校学習指導要領解説 図画工作 編』平成29 年版 『新小学校学習指導要領改訂のポイント』 日本 標準 中華人民共和国教育部『義務教育美術課程標準』 2011 年版, 北京師範大学出版社 中華人民共和国教育部『義務教育美術課程標準 解説』2011 年版,北京師範大学出版社 尹少淳『大家談 美術の核心素養』2018 年,湖南 美術出版社 -278 一

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