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マウスの低線量事前照射による放射線抵抗性獲得の機構 ―放射線傷害からの回復の仕組み―

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Academic year: 2021

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(1)主要な研究成果. マウスの低線量事前照射による放射線抵抗性獲得の機構 ―放射線傷害からの回復の仕組み― 背 景 低線量放射線を事前に照射すると、高線量放射線に対して抵抗性を示す“放射線適応応答”という現象があ る。放射線適応応答のひとつに、高線量照射したマウスの生存率が低線量事前照射によって顕著に改善する効 果が知られている。しかしながら、そのように生存率が改善する仕組みは明らかにされていない。高線量照射 によるマウスの死因は、主に血液の供給が減少することにあり、生存率の改善は血液細胞の減少を抑制する効 果によってもたらされると考えられる。そのため、血液細胞数の変化に着目することで、放射線適応応答の仕 組みが明らかになれば、生物に対する放射線影響が単純な線量の蓄積だけでは決まらないことを示すことがで きる。. 目 的 放射線適応応答をもたらす条件として知られる 0.5Gy(低線量)の事前照射から 2 週間後に 6Gy(高線量) を照射したマウスの血液(末梢血)、および造血組織(骨髄)において、それぞれ赤血球数および細胞数の変 化を測定し、事前照射による血球数の回復効果を確認する。また、血球の増殖を担う増殖因子の種類を特定し、 それが引き起こすマウスの放射線適応応答のプロセスを明らかにする。. 主な成果 1.血液中の赤血球数の変化 マウスの血液に存在する赤血球の数を調べた結果、低線量事前照射したマウスでは、高線量照射後の減少 の程度が小さく、貧血による体全体への障害が小さいことがわかる(図 1)。 2.骨髄中の未熟な細胞数の変化 赤血球を作る骨髄の細胞数と成熟度を調べた結果、低線量の事前照射をしたマウスの骨髄では、赤血球に なる前の未熟な細胞の回復がより早く起こることを明らかにした。これは様々な血球に成熟する前の段階で 既に回復が起こっていることを示す(図 2)。 3.誘導される増殖因子の特定 血球の増殖をもたらす増殖因子を探索し、低線量の事前照射をしたマウスでは未熟な細胞の増殖をもたら す因子の一つである“顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF) ”が、より早く作られることを明らかにした(図 3)。 本研究によって、マウス個体の放射線適応応答では、低線量の事前照射によって未熟な血球の回復が早く起 こること、そして、その役割を担うのが G-CSF という増殖因子であることを初めて明らかにした。これによ り、個体の放射線適応応答が誘導される重要な機構として、事前の低線量放射線によって増殖因子が作られ、 その結果として血球増殖が早まるというプロセスを提案した。. 今後の展開 低線量事前照射することでなぜ G-CSF が作られやすくなるか、そのプロセスを明らかにし、低線量放射線 が生体に及ぼす影響の総合的な理解を目指す。 主担当者 関連報告書. 原子力技術研究所 放射線安全研究センター 主任研究員 大塚 健介 「造血動態を指標としたマウス個体の放射線適応応答の機構」電力中央研究所総合報告: L06(2009年 5 月). 80.

(2) 5.原子力発電/原子力技術. 図1 低線量事前照射したほうが高線量のみを照射するよりも赤血球への障害が少ない. 事前照射なし. y 事前照射あり ( g p). 未熟な細胞. 低線量照射で未熟な細胞 の増殖が早く起こる. c-kit. 5. Sca-1 図2 放射線適応応答では未熟な骨髄細胞が早く増殖する 適応応答を起こす条件で高線量照射後5日目における骨髄細胞中の未熟な細胞を評価した。図の縦軸・横軸は 未熟な細胞の表面に存在する2種類のタンパク質(c-kit, Sca-1)の蛍光強度を、図中のドットは個々の細胞を 意味し、図中の四角で囲んだ領域が未熟な細胞集団を意味する。. 低線量を事前照射すると 増殖因子が早く作られる 図3 骨髄細胞の増殖因子も早く作られる 横軸は高線量照射後の経過日数を、縦軸は増殖因子の 一つであるG-CSFの血中濃度を示す。■高線量のみ、 ■低線量+高線量. 高線量照射後の経過日数. 81.

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