慢性心不全患者における血漿インターロイキン-6濃
度測定の意義とその上昇を規定する因子についての
検討
その他の言語のタイ
トル
Plasma Interleukin-6 concentration in patients
with congestive heart failure
著者
久永 智子
雑誌名
滋賀医科大学雑誌
巻
13
ページ
17-28
発行年
1998-02
URL
http://hdl.handle.net/10422/88
滋賀医大誌13, 17-27, 1998
慢性心不全患者における血渠インターロイキンー6濃度
測定の意義とその上昇を規定する因子についての検討
久永智子1)
1 )滋賀医科大学内科学第-内科
Plasma Interleukin-6 concentration in Patients with Congestive Heart Failure
Tomoko Hisanagal'
First Department of Internal Medicine, Shiga University of Medical Science
Abstracts: Recent studies have indicated the potential role of the immune system in the patho-physiology and progression of congestive heart failure(CHF). Interleukin-6(IL6) level has been reported to be increased in patients with CHF. In this study, we evaluated whether IL-6 is produced in the peripheral circulation in patients with CHF, and determined the relationships between the plasma levels of IL6 and other neurohumoral factors.
A comparison was made of the plasma levels Iし6 between the femoral artery and the femoral vein in 13 normal subjects and in 80 patients with CHF. In these subjects, we also measured hemodynamic parameters as well as other neurohumoral factors such as norepinephrine,
epine-phrine. Plasma IL-6 levels were higher in patients with CHF than in normal subjects. Moreover, in both normal subjects and CHF patients, plasma levels of IL6 in the femoral vein(FV) were higher than those in the femoral artery(FA) (FA vs. FV in normal; 1.0 vs. 1.15, mild CHF; 2.48
vs. 2.9, severe CHF; 12.26 vs. U.lpg/ml). Plasmaル6 level was correlated with
norepine-phrine (r -0.838, p<0.0001) and epinenorepine-phrine (r -0.635, p<0.0001). There was a negative corre-lation between IL6 level and left ventricular ejection fraction (r --0.323, p<0.005). Moreover, arteriovenous IL-6 spillover in the leg increased with the severity of CHF(normal; 0.43, mild CHF; 0.92, severe CHF; 10.1 ng/min) and was also correlated with plasma catecholamines.
These results indicate that plasma IL-6 is produced in the peripheral vascular bed and increases with the seventy of CHF and that the increase of plasma IL-6 is mainly associated with the
activation of the sympathetic nervous system in patients with CHF, suggesting an important role of IL6 in the pathophysiolosy of CHF.
Key wo「as: Interleukin(IL)-6, Congestive heart failure(CHF), Peripheral circulation, 〟-blocker therapy, Norepinephrine
Received September 26, 1997: Accepted after revision October 15, 1997
Correspondence:滋賀医科大学内科学第-講座 久永 智子 〒520-2192 大津市瀬田日輪町
-17-は じめに 心不全では,心筋収縮力の低下と心拍出量の低下 にともない,その代償作用として,交感神経系をは じめとする様々な神経体液性因子の分泌が元進す る27・28-29).また,心不全患者は末期になると痩せて下 肢の筋肉が萎縮し,運動対応能が著しく低下する. このような状態を心臓カへキシアとよび,悪性腫癌 におけるカへキシアの病態と比較され類似点を指摘 されているが,悪性腫癌において増加するサイトカ インが重症心不全患者の血中でも増加していること が報告され6,15)心不全における病態の進行,外見的 な変化にサイトカインが一部,関与しているのでは ないかと考えられている22・32)サイトカインは,1965 午,笠倉10)とGordon8'によって同時に,ネイチャー 誌において, 『リンパ球の増殖を誘導する未知の非特 異的な液性因子』として明らかにされた.その後, 生体内で免疫・炎症・造血・増殖に関与し,感染や 腰痛に対する生体防御機構において重要な役割をも つことが知られたが,循環器疾患との関係について は,心臓粘液種においてインターロイキンー6 (以下 IL-6と略す)が上昇することや,急性心筋梗塞や不安 定狭心症でIL-6が上昇する3)ことがすでに明らかに されている. 心不全とサイトカインの関係については, 1990年, Levine ら15)が重症心不全患者における tumor ne-crosisfactorα (以下TNFαと略す)の上昇を報告 したのが最初である.その後, TNFαはNOを介し て心筋収縮力を低下させることが明らかになっ た11,12,17)以後, TNFα以外にIL-6も重症心不全患 者血中で増加していること25)や,インターロイキンー 2 receptorが拡張型心筋症患者の血中で虚血性心 疾患の患者より上昇16)していることが報告され,今 までの一般的な神経体液性因子の他に様々なサイト カインが心不全の病態の進行に関与している可能性 について最近,注目されてきている. サイトカインの中でも, IL6は炎症反応に強く関 与するものとして知られていた14)が,近年,ヒトの IL6とIL6 receptorのDNA配列が解明1,9,20)され, ヒトIL6とヒトIL6受容体を組み込んだtrans-gemc mouseを用いた研究の結果より,心臓に対す る影響が注目されてきている. IL-6は, 1986年B細胞刺激因子のDNA配列が3 つ同定されたうちのひとつとして認識された",184 個のアミノ酸からなり2個のN糖鎖と4個のシステ イン結合部位をもっている糖蛋白である.主な作用 としてはT細胞やマクロファージから分泌されてB 細胞を刺激することである.その後,肝細胞におけ る急性炎症蛋白の産生を促進させることや,急性心 筋梗塞の初期に著明に上昇することも明らかになっ てきている. 一方invivoでは,一般的にサイトカイン産生の 主な源となっていると考えられる白血球細胞の他に ち,培養平滑筋細胞や培養血管内皮細胞でIL-6の産 生が認められることが近年報告された33)さらに最 近IL6 ・ IL6 receptor transgenic mouseで心筋細 胞が肥大することが明らかになり9UL6の心筋細胞 への直接の影響についても示唆された.さらに, IL 6 receptor antibodyの投与にてIL-6・IL-6 rece-ptor tran9genie mouseの下肢の萎縮が抑制された との報告26)もあり,さきに述べた心臓カへキシアに おける下肢の萎縮にもIL6が関与している可能性 が考えられる. 現在,心不全患者で血襲IL-6濃度が上昇すること はすでに報告されている25,29,32)がその産生部位や上 昇する機序は不明である.そこで今回の研究におい ては, invitroの血管床に見られるように,循環系に おいて重要な役割を果たしていると考えられている 内皮細胞・血管平滑筋を含めた末棺血管床において, 実際に生体内でもIL6の産生が行われているか否 かを心不全重症度別に比較検討した.また, invitro ではいくつかのIL6分泌促進因子が証明されてい るものの,生体内ではなにが心不全患者の血襲IL6 濃度の上昇を規定しているのか, IL-6濃度の上昇の 病態生理学的意義は明らかになっていない.そのた め, IL6の分泌を促進する因子について,神経体液 性因子や血行動態指標など心不全状態で変化し, IL-6の産生を調節する可能性のあるparameterを同時 に測定し検討した.さらに,心不全治療に伴う血祭 IL-6値と神経体液性因子,心エコー図による駆出率 などの変化を調べ,治療による変化について検討し, IL-6が心不全患者で増加する意義について考察した.
表題・慢性心不全患者における血襲インターロイキン16濃度測定の意義とその上昇を規定する因子についての検討 (研究- 1) 目 的 IL6が心不全患者の血中で増加するか否か,末柑 血管床において産生されているか否かについて調べ m 対 象 腎不全,感染,悪性腫癌,勝原病を除く,診断・ 治療目的で心臓カテーテル検査を施行した80名の心 不全患者を対象とした.同時に,心臓カテーテル検 査を行ったが異常所見を認めなかった胸痛症候群患 者より,平均年齢を一致させた13名(男性10名,女 性3名)を正常者群とした.心不全患者のうち男性 は60名,女性は20名,年齢は27歳から79歳までで平 均年齢は59歳であった.心不全の原因疾患としては 拡張型心筋症32名,陳旧性心筋梗塞(発症3ヵ月を 過ぎたもの) 48名であった.このうち, NewYork Heart Association (NYHA)心機能分類II度の心 不全患者44名を軽症心不全群とし, NYHA I王I-IV 度の心不全患者36名を重症心不全群とした. 方 法 安静臥床時(主に心臓カテーテル検査施行時)ヘ パリン注入前に大腿動脈・大腿静脈より採血し, citrate もしくはEDTA人の冷中保存チューブに 血液を注入し, 30分以内に4-C, 3000回転で15分間 遠心分離し,得られた血祭を-20-C以下で保存した. 全例において神経体液性因子と血祭IL6濃度・血 祭TNFα濃度を,また,心臓カテーテル検査を施行 し得た症例に関しては各種血行動態指標も同時に測 定した.また,身長・体重よりるい疫の指標として Body Mass Index(BMI)を以下の式より求めた.
BMI (也/rrf)-体重(也)/ (身長(m)) 測定した動脈血中IL6濃度,静脈血中IL-6濃度, 動静脈間IL6 spilloverを正常群,軽症心不全群,重 症心不全群の3群間で比較した.比較における統計 方法としては,動静脈間でのIL6濃度についてStu-dent's t検定を用い,正常群,軽症心不全群,重症心 不全群の3群間での比較はANOVA解析をもちい ておこなった. IL6 spilloverは未棺循環でのIL6 の産生量の近似値として大腿動脈・大腿静脈での血 祭IL6濃度の差から以下の式にもとずいてもとめ た.
IL6 spillover (IL6 inFVIL6 inFA)× (1 -Ht/100) × CO(ng/mm;
Interleukin-6の測定はELISA法によりQuanti-kine HS IL6 assay Kit (R&D systems社製)を 用いて以下の手順で行った.まず,IL6抗体をコーテ ィングしたプレートの各ウェルに50pt&の緩衝液を 加え,さらにサンプルを200JJゼずつ加えた.このとき 同時に標準曲線用としてIOpg/mlから0.156pg/mlま でのリコンビナントIL6希釈液も測定に加えた.次 に,マイクロプレート振畳器を用いて充分振塗させ ながら,室温にて2時間反応させ,洗浄をおこなっ たのち,希釈液に溶解させた200</」のビオチン標識 抗IL6抗体を加え,再び室温にて2時間振畳し反応 させた.さらに洗浄ののち,希釈液に溶解させた200 FLゼの.)ン酸化NADPHを加え,室温にて60分振達 し反応させた.反応終了10分まえまでにリン酸発色 酵素にエタノールとINT-violetを含んだ緩衝液を 加え,発色液を調整し,さらに洗浄したのち,発色 液50ォfiを加えた.室温にて30分振畳し反応させた 後, 50βの反応停止液を加え,マイクロプレート吸 光度計にて490nmの吸光度を測定し,対照として 690nmの吸光度を測定し,標準曲線をもとに,測定 サンプル中のIL-6濃度を読みとった.
TNFαは同じくQuantikine HS TNF assay Kit (R&D System)を用い高感度ELISA法により行 sia
Atrial natriuretic peptide (以下ANPと略す) , Brain natriuretic peptide (以下BNPと略す), Endothlin-K以下ET-1と略す) , angiotensin IIは既 報のRIA法で, epinephrine, norepinephrineは HPLC法で測定した27,28-29)
(研究- 2)
目 的
心不全時に増加する血祭IL6分泌の刺激因子に
-19-ついて検討した.
対象および方法
対象は研究- 1とおなじ心不全患者でおこなった. 方法としては,静脈血中IL-6濃度とIL6 spillover にどの因子が最も強く関与している可能性があるか について以下の21項目について多変量解析を行い検 討した.解析方法は, stepwise multiple regression 法にておこなった.解析する21項目の内容は,神経 体液性因子として ANP, BNP, ET-1, norepine-phrine, epinenorepine-phrine, angiotensin II, TNFα,血 行動態指標として,平均血圧,心拍数,駆出率,右 房圧,平均肺動脈圧,肺動脈樫入圧,心拍出量,治 療薬として,利尿剤,ジギタリス製剤, β遮断薬, ACE阻害薬,血管拡張薬,その他として年齢, BMI,以上の項目を選んだ. (研究- 3) Er 的 交感神経刺激薬と遮断薬の投与で血祭IL-6はど う変化するかを調べた.対象および方法
交感神経遮断薬についての検討は表3に示すとお り, 9症例についておこなった.方法としては,心 不全の治療として効果があると認められているβ 遮断薬療法5,19)を受け6か月以上追跡し得た9症例 について,症状の変化に伴う血祭IL-6の増減と,そ の時の他の神経体液因子の変化について検討した. 投与前と投与後の比較はStudent's paired t検定に ておこなった.また,交感神経刺激薬投与について の検討では心不全増悪時,治療として交感神経作動 薬を投与した4症例(表2参照)について交感神経 作動薬の投与直前と投与開始約1日後で採血を行い, 交感神経刺激による生体内での血祭IL-6濃度の変 化について調べた. 結 果 以下, IL6濃度, TNFα濃度は平均±SEMにて表 した. (研究- 1) 1.血渠IL6濃度は大腿動脈血中でも大腿静脈血中 でも,重症心不全群で有意に上昇した.また,血祭 TNFα濃度も重症心不全群で有意に上昇した. (図 1) 2.大腿静脈血中IL-6濃度は大腿動脈血中IL-6濃度 より,正常者群・軽症・重症心不全患者群全ての群 において,有意に高値であった (正常群動脈vs.静脈;l.o±0.16 vs. 1.15± 0.17pg/ml, p<0.01,軽症心不全群動脈vs.静脈; 2.58±0.23 vs. 2.90±0.27pg/ml, p<0.01,重症心 不全群動脈vs.静脈; 12.26±2.7 vs. 14.12±4.53 pg/ml, p<0.01). しかし,血祭TNFα濃度は動静脈間での差を認 めなかった (正常群動脈vs.静脈;2.5i±0.16 vs. 2.4 ± 0.14pg/ml,軽症心不全群動脈vs.静脈; 2.48± 0.23 vs. 2.50±0.27pg/ml,重症心不全群動脈vs. 静脈;5.21±1.70 vs. 4.S ±1.71pg/ml). (図1) 3.動静脈間でのIL6 spilloverも重症心不全群で 有意に上昇した(正常群; 0.43±O.lng/mm,軽症心 不全群;0.92±0.45 ng/mm,重症心不全群; 10.1±4.3ng/min, p<0.01). (図2) (研究- 2) 1.同時に測定した神経体液因子のなかで,血祭 ANP濃度, BNP濃度, ET-1濃度, norepinephrine 濃度, epinephrine濃度, angiotensin II濃度と血祭 IL6濃度は単相関において正の相関を示した.血行 動態指標では心拍数,肺動脈樫入圧と弱い正の相関 を認め,駆出率とは負の相関を認めた.また, BMI とも粗な負の相関を認めた. (表1) (図3) (図4) 2.表4に示すとおり,IL6の分泌刺激因子となる可 能性があると考えられる21項目について多変量解析 をおこなった結果, norepinephrine濃度 epine-phrine濃度, β遮断薬の3因子が独立した規定因子 であった.表層・慢性心不全患者における血梁インターロイキン-6浪度測定の意義とその上昇を規定する因子についての検討
Normal mild CHF severe CHF
図1正常群(normal),軽症心不全群(mildCHF),重症心不全群 severeCHF),す べてにおいて大腿静脈血中(FV)のIL6濃度(異)は大腿動脈血中(FA)のIL-6浪度(白) より増加していた * ; p<O.oi vs大腿動脈血中IL-6濃度).動脈中,静脈中とも血襲 IL6濃度は重症心不全群において正常群・軽症群より有意に増加していた(#; p< 0.01).血襲TNFα濃度(白黒の斜線)も重症心不全群において正常群・軽症群より有意 に増加(#; p<O.od していたが,動静脈間での差は認められなかった. 15000 10㈱ -16-splllover pg/mln) 5【IOO O
Normal mild CHF severe CHF
図2 IL6の宋柑循環での産生畳(IL-6 spilレ
over-IL-6 concentlation (FV-FA) ×
( 1 -Ht/100) ×CO) (ng/mm,)は重症心不 全群において正常群・軽症群より有意に増加 していた *;p<0.05vs正常群, **;p<O.oi vs軽症群). IL-6 spillover については,同じく21項目による 多変皇解析の結果, norepinephrine, ANPが独立し た規定因子であった. (表1) (研究- 3) 心不全治療に交感神経作動薬を用いた4症例につ いては,交感神経作動薬としてドーパミンが平均 24± 3時間, 3.0±l.( /kg/minの濃度で静脈点滴 施行,全例,投与直前より投与後で血中IL6濃度が 38.6%-312%と増加していた(表2).又、 β遮断薬 を半年以上投与し経過を追えた9例に関しては, NYHAによる症状改善に伴い(2.i±0.2 vs. 2± 0.1, p<0.05), ANP, BNP, norepinephrineが有 意に減少し,心エコー図による左室駆出率は有意に 増加していた.このとき静脈血中IL-6濃度も有意に 減少していた. (表3) (図5) 21
-表1血祭IL-6とIL-6 spilloverに対する各種因子の単変量および多変量解析 In te r le u k irr b IL - 6 s p illo v e r 単 相 関 多 変 豆 解 析 単 相 関 多 変 量 解 析 C o r r e la -tio n P P C o r r e l a -tio n P P c o e f fi-c ie n t (r ) V a lu e V a lu e c o e ffi-c ien t ( r ) V a lu e V a lu e 年 齢 (y e a r ) 0 .1 8 4 n .s . n .s . 0 . 1 2 1 n .s . n .s . B o d y M a s s In d e x (k g / irf ) 【0 .2 2 7 < 0 .0 5 n .s . -0 .1 8 3 n .s . n .s . 治 療 薬 利 尿 剤 一0 .0 4 n .s . n .s . -0 .0 3 n .s . n .s. ジ ギ タ リ ス 製 剤 0 .1 4 n .s . n .s . 0 . n .s . n .s . A C E 阻 害 薬 - 0 .1 2 5 n .s . n .s . -0 .0 9 n .s . n .s . 血 管 拡 張 薬 - 0 .2 n .s . n .s . -0 . 1 6 3 n .s . n .s . β 遮 断 薬 一0 .0 8 n .s . < 0 .0 5 ー0 .0 6 n .s . n .s . 血 行 動 態 心 拍 数 (/ 分 ) 0 .3 4 3 < 0 .0 0 5 n .s . 0 .2 5 6 < 0 .0 5 n .s . 平 均 血 圧 (m m H e ) 】0 .0 9 n .s . n .s . 0 .1 4 n 一S . n .s . 右 房 圧 (m m H g ) 0 .3 2 5 n .s . n .s . 0 .2 6 1 n .s . n .s . 肺 動 脈 模 入 圧 (m m H g ) 0 、2 9 5 く 0 .0 0 0 1 n .s . 0 .2 6 2 < 0 .0 5 n .s . 平 均 肺 動 脈 圧 (m m H g ) 0 .2 3 1 n .s . n .s . 0 .2 5 2 n .s . n .s . 心 抽 出 量 ( 1 / 分 ) 0 .0 9 1 n .s . n .s . 0 .1 3 4 n .s . n .s . 駆 出 率 ( % ) ー0 .3 2 3 < 0 .0 0 5 n .s . -0 .2 4 2 < 0 .0 5 n .s . 神 経 体 液 性 因 子 A N P 0 .2 5 8 < 0 . 0 5 n .s . 0 .4 9 4 < 0 .0 0 0 1 < 0 .0 1 B N P 0 .3 < 0 . 0 1 n .s . 0 .3 9 9 < 0 .0 0 1 n .s . a n g io t e n sin I I 0 .3 7 5 < 0 .0 0 1 n .s . 0 .3 3 7 < 0 .0 0 5 n .s . E T -1 0 .5 3 6 < 0 .0 0 0 1 n .s . 0 .5 5 7 < 0 .0 0 0 1 n .s . T N F α 0 .3 8 6 < 0 .0 0 1 n .s . 0 .5 1 5 < 0 .0 0 0 1 n .s . e p in e p h r in e 0 、6 3 5 < 0 .0 0 0 1 < 0 .0 0 0 1 0 .3 4 6 < 0 .0 0 5 n .s . n o r e p in e p h n n e 0 、8 3 8 < 0 .0 0 0 1 < 0 .0 0 0 1 0 .8 7 5 < 0 .0 0 0 1 < 0 .0 0 0 1 表2 ドーパミン点滴による血費IL-6濃度の変化
患 者 性 別 疾 患 plasm a IL一6 (pg/ ml) plasm a IL-6 (pg/ m l) p la sm a IL 6 増 加 率 (% ) ドー パ ミ ン 点 滴 前 ドー パ ミ ン点 滴 後 K .T . 男 性 僧 帽 弁 閉 鎖 不 全 症 6 .09 9 .89 3 8 .6 K .S . 女 性 拡 張 型 心 筋 症 5 . 9 .4 1 65 .6 K .O . 男 性 拡 張 型 心 筋 症 4 .19 14 .66 2 49 .9 K .F . 男 性 拡 張 型 心 筋 症 4 .19 17 .2 8 3 12 .5 考 察 1990年Levineらが慢性心不全患者における TNFαの上昇を報告した'K TNFαは悪性疾患な どの末期においてカへキシアをおこす物質としてす でに知られているが,このレポートでは,慢性心不 全患者でも末期になるとTNFαが上昇しているた め,心臓カへキシア(るい癖や下肢の筋力低下など をきたすカへキシアに似た病態)の成り立ちにも TNFαが関与しているのではないかと報告してい た. また,もう一つ,TNFαとともにもっとも一般的 で古典的であり,多くの作用をもつサイトカインで あるIL6も,Tsutamotoらによればやはり心不全患 者において上昇し,心不全患者の予後の指標となる 可能性があるという30)近年, invitroでは, IL6の receptorを構成している蛋白の一つであるgp-130
表題・慢性心不全患者における血祭インターロイキン16濃度測定の意義とその上昇を規定する因子についての検討 125 100 Plasma lし6 75 (pg!ml) 50 25 0 300 250 Plasma 20-lL・6 (pg/ml) 蝣= 0.635, pく0.0001 0 500 1000 1500 2000 2500 100 200 300 400 500 Norepinephrine (pg/ml) Epinephrine (pg/ml) r= -0.323, pく0.005 0 1 0 20 30 40 1 0 20 30 40 50 60 70 PCWP (mmHg) Ejection Fraction (%) 図3 (左上) norepinephrineは血襲IL-6と強い正の相関を示した(r-0.838, P< 0.0001) (右上)epinephrineは血梁IL6と強い正の相関を示した. ( r -0.635, P <0.0001) (左下)肺動脈模入圧(PCWP)は血祭IL-6と正の相関を示した( r -0.295, P <0.0001) (右下) Ejection Fractionは血祭IL6と負の相関を示した. (r --0.323, P <0.005) ( 刷 i u / B h ) x a p u i s s e i N A p o a 図4 BodyMassIndex (BMI)は血祭IL 6濃度と粗な負の相関関係を認めた(r--0.227, P<0.05)
-23-β遮断薬 β遮断薬
投与前 投与後
図5 β遮断薬慢性投与による血祭IL-6濃 度の推移.表3 β遮断薬投与による血祭IL-6濃度の変化 治療 前 (n = 9 ) 治 療 後 ( n = 9 ) P V a lu e P la sm a IL 6 (p g / m l) 4 . 2 9 ± 0 .8 2 2 .1 5 ± 0 . 3 5 < 0 .0 5 N Y H A 2 .8 ± 0 .2 2 ± 0 . 1 < 0 .0 5 心 拍 数 (/ 分 ) 8 5 .8 ± 5 .1 8 0 .6 ± 5 .1 5 n .s . 平 均 血 圧 (m m H g ) 9 2 .2 ± 5 .1 . 1 ± 4 .6 < 0 .0 5 宜F ( % ) 3 4 .6 ± 3 .8 4 4 . 5 ± 3 .4 < 0 .0 5 A N P (p g / m l) 1 3 6 .1 ± 2 6 .6 7 7 .6 ± 1 8 .4 < 0 .0 5 B N P (p g / m l) 3 2 7 .4 ± 9 0 .8 2 2 3 . 3 ± 8 3 .8 < 0 .0 5 E p iri e p h r in e (p g / m l) 4 2 .0 ± 7 .8 2 8 . 6 ± 7 .1 n .s . N o r e p in e p h r in e (p g / m l) 6 3 7 .1 ± 1 2 9 3 9 4 .9 ± 5 4 .9 < 0 .0 5 が,心臓肥大促進物質やあるcardiotropin-1のrece-ptor構造と一部同じであると言う報告2,4,21,24)や,ヒ
トIL6 ・ IL6 receptor transgenic mouseでは心臓 カへキシアと渠似の下肢の筋肉萎縮を呈するが,そ の下肢の萎縮が抗ヒトIL6抗体投与により改善し たという報告26)などがあり, IL・6の心不全の病態と 病状,さらに進展への関与は様々な方面から強く示 唆されている29,32) 今回の研究において,正常者・心不全患者のどち らにおいても,血祭IL6濃度が大腿動脈に比べ大腿 静脈で増加していたことは, IL-6の分泌源が,一部末 梢血管床由来である可能性を示唆している.実験レ ベルではすでに培養大動脈内皮細胞においてIL6 の分泌が認められるとの報告33)があり,ヒトでも末 棺血管床において白血球ばかりでなく血管内皮細胞 からもIL-6が分泌されている可能性がある.また今 回, IL6と同時に測定した,単核球から産生される古 典的かつ一般的なサイトカインとして有名である TNFα15,17)では,動静脈間血祭での潰度差を認めな かった.これも,本研究における動静脈間での血費 IL-6濃度のstep upが単核球のみからの由来である と考えるより血管内皮を含めた宋棉血管床からの産 生であると考える根拠となった. つぎに,心不全の重症化にともない静脈血中IL-6 濃度が上昇するだけでなく下肢末梢血管床でのIL-6の産生量(IL6 spillover)も増加していた理由とし て,第一に,心不全では循環の悪化により血流が停 滞し未棺血管床では低酸素状態が続き,その低酸素 条件自体がIL-6の産生促進因子となることが考え られる.この根拠としては,培養内皮細胞を使った 実験においてIL6の分泌が低酸素刺激によって増 加することがすでに報告されている31)第二に,心不 全状態においては交感神経系が元進し,血管が緊張 して血管抵抗が増大するが,その代償作用として IL6が増えて血管拡張物質であるNOや平滑筋弛緩 におけるsecond messengerである細胞内cAMP を増やし,血管を拡張させ抵抗を下げていることな どが考えられる.すでにinvivoでは, IL6がiNOS を介してNOの産生を増加させること7,19)や,内膜 剥離した血管にIL6を添加すると血管平滑筋細胞 における細胞内cAMPが増加し血管が拡張するこ とが報告18)されており,生体内でもIL-6は同様に作 用している可能性が考えられる. 3つめに,血行動態指標と血襲IL6濃度の関係に ついてはどの指標も明らかな相関関係を認めないが, 神経体液因子との関係ではnorepinephrine・epine・ phrineなどの交感神経系の神経体液因子との間に 比較的強い正の相関関係を認めた.これは先ほど述 べたように, m vivoの血管平滑筋などでは細胞内 cAMPの増加がIL6の増加をきたすことが知られ ているように,生体内でもカテコールアミンによっ て細胞内cAMPが増加することとIL-6の増加との 間に強い関係があることを示唆しているものと考え られる.その他に単変量解析の結果によれば, Body MassIndex (BMI)を指標としたるい疫と血祭IL 6の濃度の関係については, BMIと動脈血中IL-6の 間には粗ではあるが相関関係を認めた.しかし, TNFαとBMIの間には明らかな相関関係を認めな かったことより,一般的に心臓カへキシアの原因物 質ではないかと考えられているTNFαより,IL6の ほうが強くカへキシアに関与している可能性がある と言える. 21因子による多変量解析においてカテコールアミ ンの刺激がIL-6を増やしている可能性が示唆され
表層・慢性心不全患者における血祭インターロイキンー6潰度測定の意義とその上昇を規定する因子についての検討 たため, 6か月以上β遮断薬療法を行い得た慢性心 不全患者9例における血祭IL-6濃度の検討をおこ なったが,心不全症状・心機能の改善に伴ってIL-6 濃度・動静脈間濃度差とも減少していた.このこと はIL-6が心不全の進展に一部関与していることを 示唆している.特に,心エコー法による心駆出率の 改善に伴い血祭lL6濃度が減少していることは,IL 6が心筋収縮力の低下に関与しているとも考えられ, 末棉血管床で産生されたIL6が異常高値となると, 心機能にも影響を及ぼすという可能性も考えられる. 心筋でのIL6 receptorの存在は証明されていない が,膜表面のIL6 receptorの一部が切れたsoluble IL6 receptorとIL6が結合し,心筋のcar-diotropin receptorに結合する可能性はあるため, 今後はsoluble IL-6 receptorに関しても検討する
ことが必要かと考えられる.また, IL6がNOを介 して,心筋収縮力を低下させるという報告7,12,23)はす でにあり,これもIL6の心筋への影響の一因である と考えられる. 交感神経刺激とIL6の産生について,心不全患者 へのドーパミン製剤を投与すると,投与前に比べて 持続投与をおこなった後に血祭IL-6濃度の上昇を 認めることは,交感神経系刺激は生体内でもIL6の 産生を増加させる因子となっていることが推察され た.また,先ほど述べたとおり,交感神経を抑制す る治療であるβ遮断薬療法によりIL6濃度が低下 していることも, cAMPを介する交感神経刺激によ り生体内でもIL6濃度が上昇していることを示唆 している. 最後に,心不全患者において今後IL-6を測定する ことの意義として,一つには血祭IL-6濃度が心不全 患者の予後の指標となる可能性があり,さらには心 機能改善の指標となるのではないかと予想されるこ とがあるIL-6 transgenic mouseに著明な心筋の 肥大をきたすことより, IL6が心筋のリモデリング にも関与している可能性が示唆された.これにより 血祭IL-6濃度の測定によって, 1)モデリングによる 心収縮力の低下による心不全の悪化をある程度予想 しうるのではないかと考えられる.実際,本研究に お0てもIL-6高値の患者では心駆出率が低下して おり血祭IL6濃度と駆出率の間には負の相関関係 を認めている.また,すでに血祭IL-6高値の患者群 は予後が悪いことが報告されている30)さらにβ遮 断薬治療などにより駆出率が改善した時期には血祭 IL6濃度も低下している.以上の結果から,慢性心不 全の病態生理にはサイトカインの一種であるIL-6 の関与が強く示唆され,従来の心不全指標に加えて 血奨IL- 6濃度測定は重要と考えられる. 総 括 心不全患者血祭中において血中IL-6は増加し,心 不全症状の改善に伴い減少するため,心不全治療の 効果の判定に有用である可能性がある. IL-6は未稗 血管床で一部分泌されており,それは交感神経刺激 により産生を促進されている可能性がある. 謝 辞 稿を終えるにあたり,御指導,御高覧いただきま した滋賀医科大学内科第-講座木之下正彦教授に心 より感謝の意を表します.また,本研究に御指導, 御助言いただきました第一内科蔦本尚慶学内講師な らびに前田圭子様,その他の皆様に謝意を表します. さらに本研究で検体処理に御手伝いいただいた坂口 依久子様にも心より感謝致します. 文 献
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