炭酸塩として存在する物質中のCa,Sr
含有比に関する研究一第1報
船 元 重 春
A Study on the Ratio between Ca and Sr contained in Natural Substances--- - No.1
Shigeharu FuNAMOT O
(Lab. of Chemistry, Dept. of Education, Kagoshi汀a Univ. Japan)
Ⅰ 緒 1=1 15 CaやSrは、それぞれ炭酸塩・穆酸塩として定量されるが、両者の混合物から分離定量すること l は、それらが化学的に酷似し庖元素であるため、不正確であったり著るしい困難を伴ったりしてい る。従って、 Ca-Srを含有する物質中から両者の存在比を決定するためには、両者の分離が先行 しなければならない。さきに本田氏(1)は、イオン交換樹脂を用いてアルカリ土類金属を分離し、キ レート滴定によって定量に成功している。著者は、鹿児島県大島産のサンゴ中に含まれている Ca の定量を試みた際、焔色反応ゐなかで明らかなSrの存在を確認したので、両者の存在比を調査す ることとし、本田氏の方法に準じて若干の資料を得た。
Ⅲ 実験方法および実験結果
1.カラムの活性化 Dowex 50-X12 Na型市販のカチオン交換樹脂100-200メッシュのもの509を500^用ビーカ ーの中で十分水洗し、水屑が全く透明になったことを確認してから、図-1のようなカラムに水と ともに流しこみ、樹脂層の最上部にグラスウールを充填する。すなわちこの樹脂層に対して、順次 下記の溶液を1 ml/分で流出させ、最後にRNH4型に調整したOすなわち、 3N HCl lβを流出させる。 上 水 2QOォ* で洗う J 2N NaCl 500ォ4を流出させるo J炭酸塩として存在する物質中のCa,Sr含有比に関する研究 3N (NH4) 2SO4 1βを流出させる 上 水1βで洗う。 2. Ca*"1のイオン交換および溶離定量 市販の特級Ca(N08)2- 4H20 6.2320? を0.1NHClに溶かして1 βとしたものについ てpHIO (NH4C1-NH4OH) ,Mg置換法によ り0.01M EDTAで滴定し、 Ca2+に関して1.04 699Uの溶液を得た。このCa2+標準溶液 は、 0.01MEDTAの j.12ォ*に相当する。 Ca2+標準溶液20ォ*を、さきに調整したRNH4 型のイオン交換カラムに通じ、 RCaとしてイ オン交換後、 1.5N CHsCOONH4溶液で潜離 し、流出液を1CM毎に分画採取、 pHIO、 BT 指示薬2滴を加え.Mg置換法により0.01M E DTAで滴足して、標準溶液中のCa*+の理論量 と分画潜離液中のCa*+実測量の総計とを比較 した。すなわち RNH4 図-1 :イオン交換クロマトグラフ装置 ① Ca2十標準溶液2Qm」を通ずる。流出速度¥ni 分 ⑨ 分液ろうとに付着しているおそれのあるCa2+をもカラムに通ずるため、 0.1N HC120 HtCを流す。流出速度¥ nt/分 RCa-RH ③ 1.5N CH3COONH4溶液を分液ろうとから滴下し、流出液を1CMずっ分画採取、流出 速度¥ *l/分 Ca2+ ④ キレート滴定によって所要のEDTA量を決定する。 実測の一例を表-1および図-2に示す.
船 元 重 春 〔研究紀要第18巻〕 17
義-1; Ca"の溶離定量(その1)
N o. o f E lu te m lV ol. o f E lu tepH o f E D T A m lV o l. of N o . o f V o l. o f p H of V ol. o f E lu te E lu te E lu te m l E lu te E D T A m l 1 10 .0 5 .70 0 .00 ll 10 .0 7 .10 0 .00 2 10 .0 6 .10 0.00 12 10 .0 7.00 3.96 5 10 .0 5 .80 0 .00 15 10 .0 8 .95 14 .0 1 4 10 .0 5 .30 0.00 14 10 .0 6 .95 13.71 5 10 .0 6 .on 0 .00 15 10 .0 7 .00 9 .96 6 10 .0 7.on 0 .00 16 10 .0 6 .90 6 .ll 7 10 .0 7.00 0.00 17 10 .0 6 .85 2 .96 8 10 .0 7.00 n.nn 18 10 .0 6.90 1.31 9 10 .0 7.00 n.nn 19 10 .0 7.00 0 .00 10 10 .0 7.00 0 .00 20 10 .0 7 .no n .nn T o tal 100.0 - 0 .00 , T ota l 100 .0 ●- 52 .02図-2;Ca の溶離定量(その2)
w vxa珂 ELUTE ml18 炭酸塩として存在する物質中のCa, Sr含有比に関する研究 3. Sr2+のイオン交換および溶離定量 市販の特級Sr(NO3)2-4H20 7.5605タを0.1N HClに溶かして1 6としたものについて、Pか■10 (NH4CトNBUOH 、 Zn置換法により、 0.01M EDTAで滴定し、 Sr2^に関して2.3351ダ/Cの溶 液を得た。このSr2+標準溶液10ォtfは、 0.01M EDTAの2占,65*tに相当する。 Sr2+標準溶液2WをRNH4型のイオン交換カラムに通じ、 RSrとしてイオン交換後、 1.5N CHsCOONHL溶液を通じ、潜離液 毎にpHIQ、 BT指示薬2滴、 Zn置換法により0.01M EDTA で滴定した。潜離液が総計20Qm」に達してから、 2N CHsCOONm溶液に切り替え、以下同様にし てSr2+の定量に供した。すなわち、 RNEU J i ∼ ① Sr2+標準溶液20m綾通ずる.流出速度¥td/分 1 ④分液ろうとに付着しているおそれのあるSr2+をもカラムに通ずるため、0.1NHC120ォ/
i を流す。流出速度¥*t/分
RSr,RH ㊨ 1.5N CH3COONH4溶液を分液ろうとから滴下し、流出液を10^ずつ分画採取.流出 速度¥ ml/分 l ④ キレート滴定によって所要のEDTA量を決定する。 Ca2+ 実測の一例を表-2および図-5に示す。船 元 重 春 〔研究紀要第18巻〕 19
義-2 ;S㌔+の潜離定量(その1)
2N CH3COONH4 Soln. vol.of Eluteml鑑of teVol.of EDTAml SiSの45胡oo cmr^砧8」S3∞SMI ○nU2.b1n)00IChOCMnUnVnU 町乱iii 一 I I ァ s 瓜 M " f O h O W ) I O ^ " K ) ' * ! O K ) 一 I I 1 I e o o o ¢ o 7 7 7 7 7 7 7 r^ r^ r^ r^ r^ ア ooooooooooooo oooooooododooM 1111111Jr111111 i I No. of Elute c M K ) ^ t L 0 8 N O O ^ O v -C M K ) 叫 1⑦5N CH3COONH4 Soln. vo Elu呈.of emlpHo Elut喜vol.of EDTAml 70閃80LORCDCDCD CMCMCslaa弧sa盟ooo hohOhOS8 eォao◎○●◎●●55JO.凸.b∠U7′7777NNNNNNh.77 o ∩ U n u n u ハ U n U n ) n U n U n U n U n U n U n U n U n U n U n U n U n U O ● ● ● O o ¢ ○ ● o n u n U n U n 3 n U n U ∩ ) ∩ 3 O O n U 爪 U n U n U ( U n U n U n U n U n U イ 一 * - " S - T -' S - T - " S -c s j K ) ^ -L O d N C O C N 鰻 15 相 場 脂 帽 1 8 博 2図-3 ; Sr2+の溶離定量(その2)
t.5NCH3COONH4 -ト十2NCH3COONH4 丑Iute mg Elute M20 炭酸塩として存在する物質中のCa.Sr含有比に関する研究 4. Ca2+,Sr2Hのイオン交換分離および定量 Ca2+ぉよぴSr2+の標準溶液1CMずつを混合して、 RNH4型イオン交換カラムに通じ、はじめに 1.5N CH8COONH4溶液で、つぎに2N CHsCOONm 溶液で潜離した。その結果、 1.5N CH3COONH4溶液による潜離液90m6までにはCa2+もSr2+も検出されず、 1.5N CH3COONH4溶 液による溶離液%m」--2QQmeのものについて所要のEDTA量は26.44a となり、理論値との差は +0.32^で誤差率は+1.2%となった. 2N CH3COONH4溶液による潜離液120ォ射こついての所要EDTA量は26.57 mlで理論値との 差は、 -0.08mC、誤差率-0.3^ であった。 5.サンゴからCa2+, Sr2+の分離定量 (1) 試 料 の 調 製 サ ン ゴ ① 風乾したものをアルミナ製乳鉢で細枠し、 1.00000を直示天ぴんで精粋するO ⑧ 300^用ビ-カーに移し、 2N HNOs 2CWを加える。 ㊥ 反応がおさまったら、砂皿上で加熱し、おだやかに蒸発乾固する。このとき、若干の 黄色に着色した部分が見られるので、 Cone. HNO3 2 を加えて再び加熱乾固する. この操作を5回繰返すと乾固物は其白くなる。 ④ 冷後、 2N HNOs lOォ4を加えて乾固物をとかす。 ⑤ 1分間煮沸し、水10ォ/で希釈する。 ④ 定量用滅紙で滅過し、 0.1N HNO3 2D*tで容器をゆすぎ出し,さらに櫨紙上の僅か の沈殿を 0.1N HNO3 20ォ/で洗う。 ① 櫨液と洗液とを合わせ、水で希釈して正確に250ォ4とする。 J 試 料溶垂 (2) 試料溶液の 分析 試料溶液2Wを、実験4の方法でイオン交換後潜離し、 Ca:2+については1.5N CHsCOONH4 による潜離部分の9CM-200^を、 Sr.2+については引きつづき2N CH3COONH4による潜離部分 の0-120サ柁定量に供したo何れも潜離液10ォ4ずつを分画採取し、 HIO、 BT指示薬2滴、 Ca2+ はMg置換法で、 Sr2+はZn置換法を用い、 EDTAによるキレート滴定からCa2+, Sr2+の量を決定 した。結果の数例を表-4に示す.
船 元 重 春 表-4;サンゴ中の2+ Ca,Sr2+の定量 〔研究紀要第18巻〕 21 Montipora Sp. コモンサンゴ Acropora Sp. ミドリイシ Fungia Sp. クサビライシ Pavona Sp. シコロサンゴ Focillopora Sp. ハナヤサイサンゴ 0. 3680 0.3515 0.3677 0. 3552 0. 3535 0.9189 0.8778 0.9182 0.8870 0.031 0.013 0. 063 0. 044 0.013 918/5 877日 917/6 886/4 882日 B王 考 察 1. Ca2+のイオン交換および溶離定量において使用したCa2+の標準溶液は、 EDTAに換算す れば52.24*/である.示した実例では、 EDTAの総計が52.02ォ/となっており、理論値に対して -0.22"^、誤差率-0.42%である.これらの数値は5回の実験で殆んど一致しており、潜離液の分画 採取や滴定の誤差などを考慮に入れると、満足すべき結果であるということができる。 また、図-2で分るように、かなり能率のよい潜離がなされており、このことは本田氏の実験結果 と酷似している。 2. Sr2H のイオン交換および溶離定量において使用した の標準溶液は、 EDTAに換算して 55.30*七日こ相当する。示した例ではEDTAの総計が53.65ォ*で、理論値に対して+ 0.35^誤差率 ▲■ +0.65%となる.これらの数値も5回の実験の繰返しで殆んど満足すべき一致を見た。図-5で知 られるとおり、その潜離はCa2+の場合程能率的ではない。
3. Ca2+, Sr*+の混合液からCa2+とSr2十とが分離できる可能性については、 Ca2十および Sr2 のイオン交換による実験結果がそのまま通用されるはずであるが、実測の結果も全く予想どおりで あった。
4. Ca2+, Sr2+および両者の混合物をイオン交換カラムに通ずると、流出液のpHは7に近い 微酸性を示すが、イオン交換層にCH3COONH4溶液を通ずると、潜離液のpHが大きく酸性に動
きCa2十 Sr2+が潜離するまでにH十が流出しつくされること(2)は、 E.R. Tompkins等の指摘す
るとおり、
22 とと一致している。 炭酸塩として存在する物質中のCa, Sr含有比に関する研究 5.サンゴ中のCa2+, Sr?"の定量で流出液の各分画は、 Ca'N03)2とSr(NOs) 2との混合物の 場合と酷似し、実験的には著るしい誤差はないものと考えられるが、含有される Sr叫の量が僅少 で意外であった Ca2十の含有量は、サンゴの種類によって大きな差異は認められないが、 Sr2十の 含有量にはかなりの差異があるように思われる。しかし、 Sr2十は微量であるため、実験の現段階 からは明確な判断を下すことに困難を感ずる。 また、この実験中Ca2十の潜離部に該当しない1.5N CH3COONH4溶液の9Qm」以内の部分に、明 らかなアルカリ土類金属と思われる潜離が見られたが、恐らくMg2 と考えられる。しかし、 Mg2 であるとしても、これが海水成分の吸着から来たものか、サンゴの体成分中に起因したものか明ら かではない。 Ⅳ 摘 要 サンゴの主成分はCaCOsであるといわれているが、これを硝酸に溶かして得た溶液の焔色反応 からは、明らかなSr?Hの存在を認めることができる。本報では、イオン交換樹脂を用いてCa: 2+と Sr2とが分離可能であることを追試し、それに基づいて得たサンゴ中のCa;2+、Sr2ト含有比の数 例を提出することとした。 1.Ca(N08)2-4H20から得たCa2+溶液をキレ-ト滴定によって1.04690/4のCa2標準 溶液とし、またSr(N03)2-4H20からは2.3351」/.」のSr,2+標準溶液を得た. 2.RNH4型の陽イオン交換樹脂Dowex50-XI2を充填したイオン交換クロマトグラフ装置 を準備し、Ca2+,Sr2+の標準溶液それぞれ2Qサttを別々にイオン交換したO 5.Ca2+交換層を1.5NCH3COONH4溶液で潜離し流出液を10ォ/ずつ分画採取して、Ca:2+の 潜離状況を調べると、はじめの流出液90ォ4中にはCa:2+がなく、90m銅,ら20CMまでの間に含まれ、 を越えるとCa;2+が検出されないことが分った.また、Sr,2+交換層については、 1.5NCH3COONH4溶液200*ほで潜離液中にSr,2+はないが、1.5NCHsCOONHd溶液中による 20CWまでの潜離後、2NCH8COONH4溶液に切り替えると12CWまでの潜離液中に全部のSr2 が含有される。 4.Ca2+およびSr,2+標準溶液10彬eずつを混合してイオン交換させたものを上記と同様、はじ め1.5NCH3COONH4溶液で、つぎに2NCH3COONH4溶液で分画的に潜離すると、溶離液中 のCa2+,Sr2+の量は実験誤差の範囲で満足すべき値を示した。 5.サンゴを硝酸に溶かして得た試料について、イオン交換および潜離定量法を適用して、それ
′ 4 8 船 元 重 春 〔研究紀要第18巻〕 25 らのCa2+, Sr2+含有量を測定した結果、当量比においてCa24 Sr2十は大体900/1ないし 150/1の大きな巾の中におさまることを知った。 本研究は、鹿児島大学教官研究援助会の援助費によって行われたものであり、またサンゴに関す る生物学的知見については、鹿児島大学理学部平田国雄教授の御指導に負うところが多かった。 併せて深甚な謝意を表する次第である。 参 考 文 献 1)本田雅健;分析化学 3 132 (1954)イオン交換樹脂によるアルカリ土類金属の分離rT==二二■
2) E.R. Tompkins et al ;J. Am. Chem. Soc-, 69 2769 (1947)
炭酸塩として存在する物質中のCa,Sr含有比に関する研究
SUMMARY
It is said that CaC03 is the main constituent of coral. The flame reaction of coral solution of nitric acid clearly shows the existence of Sr2+. This report is meant to present the ratio between Ca2+ and Sr2+ contained in coral.
1. The basic solution of Ca2+ was prepared at 1,0469^/^ through the chelate titra-tion and the basic solutitra-tion of Sr2+ was also prepared at 2.3351?/^.
2. 20ml of basic solutions of Ca2+ and Sr2+ were separately ion-exchanged through the column filled with Dowex-50-Xi2 of RNH4 type.
3. Ca2十in the exchanged layer was taken out periodically (10ml each time)by 1.5N
CH3COONH4 solution. No Ca2十was detected during* the first 9 elution processes,
but Ca2-*- was found between the loth and the 20th elution processes, and then it ceased to apper thereafter.
The total amount of Ca2+ detected through these processes was equal to that of Ca2+ contained in the basic solution within the experimental error.
The same treatment was applied to Sr2+ ; that is, 200ml of 1.5N CH3COONH4 solution underwent the same treatment as in the case of Ca2+ (in a series of 20 elution processes), but Sr2+ was not detected.
Subsequent to this, 2N CH3COONH4 was used. Here, Sr2+ was fonud from the
first elution process till it ceaseユto appear in the 12th. In this case, the total
amount of Sr?+ detected was equal to that of Sr2十contained in the basic solution
within the experimental error.
4. The mixture of Ca2+ and Sr21L basic solutions (10ml each) was ionexchanged, and a series of elution processes was applied to the exchanged layer. The amount of Ca2+ and Sr2+ was equal to that of Ca2+ and Sr2+ contained in the basic solution. 5. Coral solution of nitric acid was subjected to the same treatment as mentioned above in the preceding" paragraph. It was revealed that the ratio of Ca2+ to Sr2+ varies from approx. 900/1 to 150 /1, depending* on the kinds of cora,Is used.