国際線航空会社の身体障害者補助犬への
対応状況
原著論文
倉澤 悠維、三浦 靖史
神戸大学大学院保健学研究科リハビリテーション科学領域
A survey on the handling of service dogs by international
airlines
Yui Kurasawa and Yasushi Miura
Department of Rehabilitation Science, Kobe University Graduate School of Health Sciences
抄 録 : 【目的】2020 年に東京オリンピック・パラリンピック競技大会が開催されるにあたり、身体障害者補 助犬(以下、補助犬)使用者を含む多くの障害者の来日が予想される。来日する補助犬使用者の多くは 国際線フライトを利用すると考えられるが、国際線航空会社の補助犬への対応の現状はあまり知られて いない。そこで航空会社の対応状況について調査し課題を検討した。 【方法】2015 年の 5-7 月に日本に国際線定期便を運航している航空会社を対象に補助犬への対応状況 について、各社のホームページ(以下、HP)に掲載された情報を参照し、HP で得られなかった項目に ついては電話による問い合わせを行った。 【結果】81 社のうち 76 社 (93.8%) から情報を収集できた。53 社 (69.7%) で HP に補助犬に関する情報 の掲載があったが、HP のみで調査した情報を全て参照できた会社は 8 社 (10.5%) であった。59 社 (77.6%) が補助犬を客室に同伴可能であり、同伴可能な補助犬の種類は、盲導犬が56 社 (73.7%)、聴導犬が 49 社(64.5%)、介助犬が 38 社 (50.0%) であった。また、補助犬の搭乗時に必要な物として口輪が同伴可能 な59 社のうち 15 社 (25.4%) であげられ、そのうちの 7 社は介助犬を客室に同伴可能と回答していた。 【考察】 約 4 分の 3 の航空会社で補助犬を客室に同伴可能であったが、盲導犬と比較して介助犬の同 伴可能な割合が低いことが明らかになった。また、補助犬に関する情報のHP からの収集は容易でない ことが明らかになった。 【結論】国際線航空会社における補助犬を同伴しての航空機利用に関するサービスが、情報提供を含 めて、より一層向上するように、航空会社に対して補助犬に関する啓発活動を実施する必要がある。 キーワード : 補助犬、身体障害者補助犬法、交通バリアフリー法 国際線航空会社の身体障害者補助犬への対応状況
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Abstract:
Objective: For the 2020 Tokyo Olympic and Paralympic Games, many physically-challenged people, including service dog users, will come to Japan. Most of them will take international flights for the visit; however, the handling of service dogs by international airlines is not well known. Therefore, the current circumstances of the handling were surveyed to reveal the possible issues.
Method: Information was gathered on the handling of service dogs by the international airlines operating regularly scheduled flights to Japan between May and July 2015 by referring to the websites of the airline companies. A telephone inquiry was also used when the investigated items were not available on the websites.
Results: The necessary information was able to be collected from 76 of the 81 international airlines (93.8%). Fifty-three airlines (69.7%) had the information of service dogs on the websites, however only eight airlines (10.5%) had all the investigated items on the websites. Fifty-nine airlines (77.6%) accommodated service dogs in the cabin. Among the three kinds of service dogs, guide dogs were accommodated by 56 airlines (73.7%), while hearing dogs were by 49 (64.5%) and mobility service dogs were by 38 (50.0%). Furthermore, 15 of the 59 airlines (25.4%) requested the muzzle on board and seven of the 15 accommodated the service dogs in the cabin.
Discussion: This study revealed that three-quarters of the international airlines accommodate service dogs in the cabin, and that mobility service dogs are significantly less accommodated than guide dogs. In addition, it was not easy to collect all the necessary information about service dogs in a short period of time, because of the diversities of websites.
Conclusion: The enlightenment activities about service dogs for airlines should be conducted to improve the service for the service dog users, including more accessible information.
Keywords: service dogs, law concerning assistance dogs for the disabled, barrier-free transportation law
国際線航空会社の身体障害者補助犬への対応状況
著者連絡先:三浦 靖史:神戸大学大学院保健学研究科 リハビリテーション科学領域
[ 〒 654-0142 神戸市須磨区友が丘 7-10-2] e-mail: [email protected]
Ⅰ.序論 2020 年の東京オリンピック・パラリンピック 競技大会(以下、東京オリンピック・パラリンピック) の開催に向けて、身体障害者の受け入れに関する ハード、ソフト両面での準備が進められている。 開催時には、身体障害者補助犬(以下、補助犬) 使用者を含む多くの障害者が航空機を利用して 来日することが予想される。一方で本邦での補助 犬の認知度はまだ低く、交通機関や公共施設に おける同伴拒否が問題となっている1)。これまでに、 一般市民2,3)、学生4,5)、医療機関6)、飲食店7)など を対象とした補助犬の認知度調査が実施されている が、航空会社を対象とした調査は実施されておら ず、航空会社の補助犬への対応状況は明らかでは ない。 そもそも、補助犬に関する制度は国により大き く異なっている8)。日本では身体障害者補助犬法が 整備され、盲導犬、介助犬、聴導犬の3 種類が 補助犬として法的に認定されている9)。一方、海 外では様々であり、アメリカの「障害をもつア メリカ人法」(Americans with Disability Act; ADA) では、盲導犬、介助犬、聴導犬に加えて、シグナ ル・ドッグ(症状発生予知犬)および障害を補う ためのあらゆる動物を「サービスアニマル」と 定義している8)。一方で、補助犬に関する定義が されていない国もある。イギリスでは補助犬に関 する成文法はなく、障害者差別禁止法(Disability
Discrimination ACT; DDA) でアクセス権が保障さ
れていると報告されている8)。このように世界で 共通した規定がない補助犬を同伴して国際線航 空機を利用する際、補助犬を同伴して搭乗できるか どうかは、補助犬使用者にとって切実な問題であ る。そこで、本研究では、補助犬使用者の円滑な 出 入 国 の 実 現 を 目 指 し て 、 国 際 線 航 空 会 社 の 補 助 犬 へ の 対 応 状 況 に つ い て 明 ら か に し、 改 善すべき課題を検討することとした。 Ⅱ.方法 2015 年 5 月 ~7 月に日本に国際線定期便を運航 している航空会社と、動物検疫所を対象に調査を 行った。 1. 航空会社 日本の国際空港の就航リストから国際線航空会社 のリストを作成した。各航空会社のホームページ (以下、HP)の、特別なサポートのページ(体が 不自由なお客様向けのページ)、ペット同伴の ページ、補助犬に関するページ、その他(よくある 質問のページ等)に掲載されている情報を日本語と 英語、また一部は中国語で参照した。HP で情報を 確認できなかった項目については、HP に掲載 されている問い合わせの電話番号に、電話での 問い合わせを日本語で行った。 調査項目は、補助犬搭乗の可否と、補助犬搭乗 手続き(必要書類等補助犬の確認方法、搭乗可能 国際線航空会社の身体障害者補助犬への対応状況 表1. 調査項目一覧
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な補助犬の種類、客室同伴の可否、補助犬の料金、 事前連絡の必要性及び時期)、HP 上の補助犬に 関する情報の掲載箇所、その他である(表1)。なお、 路線によって扱いが異なる航空会社については、 航空会社の本拠地と日本との間のフライトでの対 応について集計した。 群間での相違については、エクセルアドインソフト Statcel4(OMS 出版)を使用し、ピアソンのカイ 二乗独立性の検定を用いて統計学的に検討した。 2. 動物検疫所 動 物 検 疫 所 本 所 調 査 課に近 年の補 助犬の出 入国(輸出入)数について電話で問い合わせを行った。 Ⅲ. 結果 日本に国際線を就航している航空会社は92 社 あったが、そのうちチャーター便のみを運行し ている11 社と、HP がなかったり、電話での問い 国際線航空会社の身体障害者補助犬への対応状況 合わせ先も不明で調査できなかった5社を除いた 76 社の情報を参照した。81 社の国・地域別分布 状況は、アジア49 社、ヨーロッパ 15 社、北アメ リカ6 社、オセアニア 6 社、アフリカ 3 社、南ア メリカ2社の6大陸46か国(地域)であった(表2)。 69.7%(53 社)が補助犬に関する情報を HP に掲 載していた。英語と日本語の双方で表記があった HP は 56.6%(30 社)、英語はあるが日本語がなかっ たHP が 35.8%(19 社)、日本語のみが 1.9%(1 社) であった(表3)。ただし、HP のみですべての調 査項目を確認できたのは10.5%(8 社)であった。 HP 上で掲載されているページは、「補助犬につい て」のページが最も多く47.2%(25 社)を占め ていた。次に「ペット同伴について」のページが 32.1%(17 社 )、お手伝いが必要な人向けや障害者 向けのページなどの「特別なサポートのページ」 が22.6%(12 社 ) であった ( 表 3)。 情報を収集できた76 社の補助犬の同伴可否は、 客室同伴可能が77.6%(59 社 )、ペット同様に貨物 室預かりが7.9%(6 社 )、同伴不可が 9.2%(7 社 )、 不明が5.3%(4 社)であった ( 図 1)。L
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t']ÇׯbP U]RX È×ËÇׯ 表2. 国・地域別航空会社就航状況 (81 社 46 か国・地域) 表3. 航空会社ホームページにおける補助犬に関 する情報の状況(53 社 ) 図1. 補助犬同伴の可否(76 社)
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日本補助犬科学研究 Vol.10 No.1 客室に同伴可能な補助犬の種類として、盲導犬 と回答したのが73.7%(56 社 )、介助犬が 50.0%(38 社)、聴導犬が 64.5%(49 社 ) であった。補助犬 3 種類の間で、盲導犬は他の補助犬より搭乗できる 割合が有意に高く、介助犬は有意に低かった(図2)。 また、エモーショナル犬やアラート犬を可能とす る回答が25.0%(19 社 )、訓練された犬以外の動物 ( 猫や猿等 ) を同伴可能としている会社が 6.6% (5 社)、任務中の救助犬、訓練中の補助犬も可能とし ている会社が2.6%(2 社 ) あった ( 図 2)。 補助犬が客室内に搭乗できる会社のうち、補助 犬であることの確認方法については、訓練証明書 類を必要とする会社が45.8%(27 社)で最も多かっ た( 図 3)。次いで、ハーネスまたは胴着が 32.2% (19 社)、口輪 (muzzle) が必要あるいは持参を勧め ると回答した会社が25.4%(15 社)の順であった。 口輪が必要とした15 社のうちの 46.7%(7 社)が 口でくわえるなどの動作をする介助犬の客室同伴 を可能と回答していた。一方で、口輪なしで旅行 できることが条件と回答した会社が3.4%(2 社) あった。さらに、補助犬使用者の医師の診断書、 検疫証明書、混合ワクチンや狂犬病予防ワクチン の予防接種証明書、吸水マット、その他に、犬の 種類や年齢、体重がわかる証明書、犬の入国審査 を事前に受けた証明書が挙げられた。なお、証明 書の提示時期は、事前に航空会社本社へ提出、予 約時に提出、搭乗当日に空港で提示と様々であっ た。一方で、6.8%(4 社 ) では補助犬の客室同伴に 際して書類等は不要であった。 国際線航空会社の身体障害者補助犬への対応状況 補助犬を同伴しての搭乗に際して、HP に情報 がなく、電話でも回答が得られず不明であった10 社を除く同伴可能な49 社全てが事前の連絡を必 要としており、その理由として、補助犬同伴の許 可に関して事前に航空会社の判断が必要であるこ とや必要書類の提出があることが挙げられた。予 約方法については、電話のみでの受付になるとし た会社が1社あった。 航空会社への連絡時期に関して、16.9%(10 社 ) は 具 体 的 な 期 限 は な い が 早 め に と回 答 し、 期 限を設けている会 社 では、出 発の48 時間前が 23.7%(14 社 ) と最も多かった(表 4)。搭乗当日の 空港での集合時間が通常より数時間早くなるとの 回答が4 社あった。 補助犬の料金に関して、59 社中 57 社が不要と 回答した。補助犬使用者分の1 席分のスペースで 補助犬が座れない場合は2 席分を予約し 2 席分の x }}u|p }yu}p {vuvp |zu{p x{uvp |u|p xu|p v xv zv |v ~v wvv Ûvuv{ Ûvuv{ Ûvuv{ O; ØSÙ @!;;I!;àäÞáÝãæ; ßåÞâ; ; r<=Es ); TH; O; rqs ( ^F C Q v vuvq #Q 1g- wv w|uq 1g >~, | wvuxq >Ú_e z |u~q >}x/e z |u~q >z~/e wz xyu}q >xz/e w wu}q wv w|uq . wv w|uq Nz 図2. 客室に同伴可能な補助犬等の種類(76 社) z{u~p yxuxp x{uzpxxuvp xxuvp xvuyp xvuyp
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になった。先行研究2,4~7)における一般市民、学生 や医療従事者では、本邦における頭数が少ない順 に聴導犬、介助犬、盲導犬の順で認知度が低かっ たが、国際線航空会社においては、介助犬の認知 度が最も低かった。その理由として、本調査の対 象となった航空会社のうち、日本の企業は4 社 に限られていて他は外国籍の会社であり、実際、 エモーショナル犬やアラート犬の同伴を認めてい る会社があったように、国によって認められてい る補助犬の種類が異なることが、本調査における 介助犬の低い認知度に影響を与えた可能性が考え られた。しかし、本邦に入国して補助犬法により認 められて補助犬として活動できるのは、盲導犬、介 助犬、聴導犬に限られていることから、補助犬法 とその内容について航空会社に改めて啓発するこ とが急務であることが示された。とりわけ、補助犬 を同伴して客室に搭乗する際に口輪を必要とした 会社の約半数は、介助犬を客室に同伴可能と回答 していたが、介助犬は主に口で介助動作を行う ため、口輪をされてしまっては介助が行えない。 このことからも、介助犬に関する理解は著しく不 十分であり、介助犬に関して、特に啓発を行う 必要があると考えられた。 次に、約3 分の 2 の航空会社が補助犬に関する 情報をHP に掲載していたが、このうち日本語の 情報がない航空会社が約4 割を占めた。補助犬を 同伴して航空会社を利用するのは来日する外国人 だけではなく日本人が海外渡航する際も同様であ ることから、外国籍の会社であっても日本語での情 報提供を拡大することが必要であると考えられた。 また、HP に補助犬に関する情報が掲載されて いてもそれのみで必要な情報が確認できた会社 は1 割しかなかった。さらに、HP に補助犬に 関する情報記載があった航空会社のうち約半数 は、補助犬について独立したページが設置され ていたが、それ以外の航空会社では、補助犬に 関して記載されているページは様々であり情報 へのアクセスは容易ではなかった。このように掲 載箇所が統一されていないことが、補助犬に関 する情報収集を困難にしている要因となってい たことから、補助犬に関しては独立したページ に掲載することが望ましいと考えられた。その 上で、聴導犬利用者にとって電話で問い合わせを 行うことは容易ではないことから、必要と考えられ る情報全てをHP に挙げることが必要であると考え られた。他方、最も人数の多い盲導犬使用者にとっ 国際線航空会社の身体障害者補助犬への対応状況 料金が発生するとした会社が2社あり、そのうち 1社は、予約締切り時に空席があれば予備の席料 に関しては返金すると回答していた。また、1 便 あたりの補助犬の頭数に制限が10.2%(6 社)で 設けられていた。さらに、機内に車椅子を搭載し ていないとHP に記載していた会社が 1 社あった。 ところで、電話での問い合わせを行った57 社 への調査に際して、補助犬と言っても理解しても らえないことが多く、また、介助犬や聴導犬を知 らない会社もあり、盲導犬と言うと質問に入りや すい傾向があった。問い合わせに際して、過去に 補助犬同伴での利用があったと回答した会社が2 社あった一方で、HP では補助犬同伴可能と記載 されていても電話での問い合わせで「推奨しない」 と回答した会社が1 社あった。 動物検疫所への問い合わせに対して、動物検疫 時の申請書の用途別データに「補助犬」と記載さ れている数の概数のみしか回答が得られなかった が、2012-2014 年での輸出入実績は年間 20-30 件 程度であった。 Ⅳ. 考察 本調査は、国際線航空会社を対象とした補助犬 受け入れに関する本邦で初めての調査である。 まず、約4 分の 3 の航空会社が補助犬の客室内 への同伴を認めていたことは、文化も補助犬に関 する考え方も多様な6 大陸 46 ヵ国(地域)の航 空会社を対象とした調査であることを考慮とする と、多くの航空会社が補助犬を受け入れていると 考えられた。ただし、補助犬はペット同様に貨物 室に預かるという回答が1 割弱あったが、補助犬 によるサポートは補助犬使用者が必要な際にすぐ に受けられることが重要であることから、客室内 に補助犬が一緒に搭乗して利用者の傍らにいる環 境を整備する必要があると考えられた。 次 に、 国 際 線 フ ラ イト の 客 室 に 同 伴 可 能 な 補助犬の種類は、盲導犬が他の補助犬より有意に 高く、介助犬は有意に低いことが明らかになった。 補助犬に関してではなく、盲導犬に関しての情報 がHP に掲載されていたり、電話問い合わせの際 に、オペレーターが、盲導犬は知っていても補助 犬を知らなかったことがしばしばあったことから も、国際線航空会社に盲導犬はよく認知されてい る一方で、補助犬という総称や、介助犬や聴導犬 に関してはあまり認知されていないことが明らかては、今日HP 読み上げソフトウェア等がある とはいえ、HP から情報を得るのは容易ではない。 そのため、電話での情報提供もHP への情報掲載 と同様に重要であり、オペレーターが補助犬につ いて予め十分に理解して速やかで統一した対応が できるように、社内での啓発や対応マニュアルの 作成等を実施する必要があると考えられた。 ただし、今回、HP の掲載情報と電話問い合わ せでの回答内容に解離がある会社がみられたこと から、HP に掲載した情報が古いままとならないよ うにアップツーデートな情報更新が必要であると とともに、HP では受け入れると記載していても、 電話では奨めないとの建前と本音のような対応と ならないように、前述のような社内での対策を実 施すべきである。 次に、予約手続きの期限は様々であったが、補 助犬利用者の海外渡航に際しては、検疫手続きや 宿泊先の確保など他の課題もあること、また、一 般に直近になると航空券の価格が著しく上昇する ことから、突発的な事態でない限り余裕を持って 予約が行われると考えられるため、大きな支障 とはならないと考えられるが、期限がある場合に は、その旨をHP に明記しておくべきだと考えら れた。また、補助犬利用者の来日においては、狂 犬病の清浄国である本邦にとって動物検疫が欠か せないことから、航空会社は、動物検疫所と緊密 に連携して対応する必要がある。実際、2020 年 東京オリンピック招致委員会は、動物検疫所の協 力のもと、盲導犬や介助犬による介助を必要とす る選手およびオリンピック・パラリンピックファ ミリーに対し、円滑な検疫を実施すると述べてい る10)。また、補助犬の訓練の一環として機内で訓 練が行われたり、空港での補助犬用トイレの設置 等の取り組みがなされている11)。かつて、航空 機を利用することができても空港内で補助犬の 同伴を拒否されたといった事例が報告されてい るが12)、今回の調査結果からは、補助犬使用者が 本邦への出入国に当たって航空機を利用するに際 して、様々な課題が存在していることが明らか になった。さらに、海外の補助犬使用者が入国 して終わりということではなく、日本国内のさま ざまな場所へ移動し、仕事や観光を円滑に実施す るためには、社会全体での補助犬に対する理解 促進を図るとともに、日本の補助犬法について 海外に周知することが必要であり、厚生労働省 は、補助犬に関するリ ー フ レ ッ ト の 英 語 版 の 国際線航空会社の身体障害者補助犬への対応状況 作成や、海外からの補助犬使用者の円滑な受け 入れを検討するとしている13)。厚生労 働省を初 め、農林水産省、外務省、地方自治体などの行 政はもちろんのこと、航空会社、空港、その他交 通機関や、旅行関連などの企業、補助犬育成団 体や利用者団体、教育機関等が連携した、社会 全体への補助犬や障害者に関する啓発の取り組 みが、海外からの補助犬使用者の受け入れの基 盤整備として重要であり、2020 年東京オリンピッ ク・パラリンピックの開催を良いきっかけとして、 積 極 的 に 実 施 す べ き で あ る と 考 え ら れ る 。 Ⅴ. 結論 国際線航空会社の多くは補助犬を同伴しての利 用が可能であるが、様々な課題が存在する。各航 空会社の補助犬に関する情報へのアクセスが容易 でないことから、情報提供方法の改善を求めると ともに、介助犬や聴導犬への理解が不十分であっ たことから、航空会社に対して啓発を実施する必 要がある。そして、2020 年東京オリンピック・ パラリンピック開催をきっかけに、社会全体での、 補助犬ならびに障害者への理解促進を進めること が大切である。 Ⅵ. 謝辞 本調査にご協力頂きました関係者の皆様に心か ら感謝申し上げます。 Ⅶ.文献 1) 日本盲導犬協会 (2004) 2004 年身体障害者補助 犬法に関する意識調査結果 盲導犬ユーザー 対象 .『平成 16 年身体障害者補助犬法に関する 実態・意識調査結果』, 日本盲導犬協会 pp72-82 2) 日本盲導犬協会 (2004) 2004 年身体障害者補助 犬法に関する意識調査結果 一般市民の皆さん 対象 . 『平成 16 年身体障害者補助犬法に関る 実態・意識調査結果』, 日本盲導犬協会 pp83-91 3) 松中久美子 , 甲田菜穂子 (2008) 一般成人の 身体障害者補助犬法の周知と補助犬の受け入れ ―補助犬法改正後の共存意識について―. 社会 福祉学 ,49(3),53-59. 4) 三浦靖史 , 濱華央里 , 藤村将志・他 (2014) 医療