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鹿児島県本土に定着した外来性オオズアリ属の2種

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Academic year: 2021

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鹿児島県本土に定着した外来性オオズアリ属の2種

著者

山根 正気, 原田 豊, 古川 博文

雑誌名

Nature of Kagoshima

46

ページ

239-241

発行年

2020-05-31

URL

http://hdl.handle.net/10232/00031427

(2)

RESEARCH ARTICLES Nature of Kagoshima Vol. 46

239  Abstract

Two tramp ant species in the genus Pheidole, i.e., P. magacephala and the P. parva-complex (new to main-land Japan), were found to be already established in mainland Kagoshima, South Japan. They inhabited ho-tel/residential areas of Ibusuki-shi, Satsuma Peninsula along the coast; P. megacephala nest entrances were seen on the ground surface. In the sites with P. mega-cephala other ant species were generally scarce, while the P. parva-complex was seemed to be more tolerant toward other species. Among the eight sites surveyed, these two species co-occurred in two sites but from different transects.

 はじめに

日本には 9 種のオオズアリ属のアリが生息す るが,そのうち 4 種は外来種とされている(寺山 ほか,2014).外来種とされる 4 種の中で,ミナ ミオオズアリ Pheidole fervens F. Smith, 1858 とイ ンドオオズアリ P. indica Mayr, 1878 の 2 種はいず れも南方系の種ではあるが,南西諸島から日本本 土にかけて分布し,鹿児島県本土でも普通に見ら れる(山根ほか,2010).一方,他の 2 種ツヤオ オズアリ P. megacephala (Fabricius, 1793) とナンヨ ウテンコクオオズアリP. parva Mayr, 1865-complex は渡瀬線を越えず,北限は奄美大島であった(山 根,2016).しかし,ツヤオオズアリはごく最近, 東京都で見つかり,すでに定着している可能性が ある(Sakamoto et al., 2016).ツヤオオズアリは アフリカ原産と考えられ世界中の熱帯・亜熱帯に 導入されている.ナンヨウテンコクオオズアリは 東南アジア原産の可能性が高いが,奄美・沖縄の 集団は人為導入と考えられている(Sarnat et al., 2015).後者はセイシェル,サウジアラビアなど からも外来種としての記録がある. ごく最近,ツヤオオズアリが鹿児島県指宿市 湯の浜の海岸沿いで発見され(久末,2019),ほ ぼ同時に宮崎県宮崎市内でも定着が確認された (岩﨑・山根,投稿中).その後の我々による調査 で,指宿ではツヤオオズアリがすでに定着してい ることが判明し,またナンヨウテンコクオオズア リ(日本本土初記録)がツヤオオズアリとほぼ同 所的に確認された.以下に,指宿市における両種 の生息状況を報告する.  経緯と方法 2019 年 10 月 1 日,九州大学大学院生物資源環 境科学府の久末遊氏から指宿市湯の浜でツヤオオ ズアリが採集されたというメールを受け取った. 同年 10 月 11 日,山根,古川および上釜典子氏(鹿 児島県自然保護課)の 3 名で,久末氏のメールに あった緯度経度情報をもとに探したところ本種の 生息(巣)が確認され,さらに別の場所ではナン ヨウテンコクオオズアリを確認した.同年 10 月 28 日,山根,原田,古川の 3 名が,調査地を広げ, チーズベートを使って両種の生息状況を調査し た.

鹿児島県本土に定着した外来性オオズアリ属の

2 種

山根正気

1

・原田 豊

2

・古川博文

3 1〒 899–2704 鹿児島市春山町 1054–1 2〒 890–0033 鹿児島市西別府町 1680 池田学園池田高等学校 3〒 890–8577 鹿児島市鴨池新町 10–1 鹿児島県環境林務部自然保護課    

Yamane, Sk., Y. Harada and H. Furukawa. 2019. Establish-ment of two tramp species of the ant genus Pheidole (Hymenoptera: Formicidae: Myrmicinae) in mainland Kagoshima, Japan. Nature of Kagoshima 46: 239–241. SKY: 1054–1 Haruyama, Kagoshima 899–2704, Japan (e-mail: [email protected]).

Published online: 6 December 2019

(3)

240

Nature of Kagoshima Vol. 46 RESEARCH ARTICLES

ベートによる生息調査は Fig. 1 に示す 8 サイト で行った.各サイトで 2 本のトランセクトにそれ ぞれ数メートルおきに 10 ベートを設置し(合計 20 ベート),設置後約 30 分くり返しベートを チェックし,誘引されたすべてのアリの種類を採 集した.採集された個体は乾燥標本・液浸標本と して当面山根コレクション(SKYC)および原田 コレクションに保管し,最終的にはしかるべき博 物館に収蔵の予定である.  結果と考察 2019.10.11 予備調査の結果 最初の発見地(湯の浜海岸に沿ったホテル街) (久末,2019 を参照)では,砂浜やホテル周辺で ツヤオオズアリの外役個体を多数確認するととも に,少なくとも 3 個の巣を確認した.さらにその 少し南側の草地(Fig. 1:A)ではチーズベートに 誘引されたナンヨウテンコクオオズアリを採集し た.さらに,指宿西公園(Fig. 1:B),太平次公園 (Fig. 1:C)の 2 ヶ所でチーズベートを使い誘引さ れるアリを調べたが,前者ではいずれの種も見つ からず,後者ではナンヨウテンコクオオズアリの みが採集された. 2019.10.29 調査の結果 Fig. 1 に示す 8 サイトのうち 6 サイトでツヤオ オズアリが,4 サイトでナンヨウテンコクオオズ アリが確認された(Table 1).このうち両種が同 時に見つかったのはサイト6と8のみであったが, いずれの場合も別々のトランセクトから得られ た.同じくオオズアリ属に属する外来種インドオ オズアリは 4 サイト(4, 5, 6, 8)で誘引され,そ のうち 2 サイト(6, 8)では他の 2 種も見つかった. 他の 2 サイトではツヤオオズアリは誘引されな かった.3 種すべてがサンプリングされたのはサ イト 6 と 8 であったが,3 種すべてが誘引された トランセクトはなかった.ツヤオオズアリ,ナン ヨウテンコクオオズアリ両者が見つかったほとん どのサイトで,小型働きアリ・大型働きアリ両方 が誘引され,またツヤオオズアリに関しては土の 表面等で巣口が確認された. 今回 8 サイトでサンプリングされたアリの種 は Tables 1, 2 に示す 6 属 8 種であったが,オオズ アリ属の種をのぞく下記の 5 種もすべて放浪種 ( あ る い は 外 来 種 ) で あ っ た: ク ロ ヒ メ ア リ Monomorium chinense Santschi, 1925,オオシワア リ Tetramorium bicarinatum (Nylander, 1846),トゲ ハ ダ カ ア リ Cardiocondyla itsukii Seifert, Okita et

Fig. 1. Map showing the eight survey sites in Yunohama, Ibusuki-shi, Kagoshima where powdered-cheese baiting was conducted. A–C indicate preliminary survey sites, among which the Pheidole parva-complex was found in A and C.(指宿市湯の 浜における調査地点.予備調査:サイト 1–3, A–C(本文 参照).チーズベイトを用いた本調査:サイト 1–8)

Site 1 Site 2 Site 3 Site 4 Site 5 Site 6 Site 7 Site 8

P. megacephala 16 12 15 0 0 5 16 9

P. parva-complex 0 0 0 4 2 2 0 4

P. indica 0 0 0 11 3 1 0 2

In each site 20 powdered-cheese baits were set up.

(4)

RESEARCH ARTICLES Nature of Kagoshima Vol. 46

241 Heinze, 2017, ア ワ テ コ ヌ カ ア リ Tapinoma

melanocephalum (Fabricius, 1793),ケブカアメイロ アリ Nylanderia amia (Forel, 1913).これらの種の いずれかがツヤオオズアリとともに採集されたの はサイト 1, 2, 6, 7 であり,サイト 2 で 2 種採集さ れた他は,すべて 1 種(クロヒメアリ)のみであっ た.サイト 2 でアワテコヌカアリとケブカアメイ ロアリが採集されたトランセクトは,ホテル前庭 の屋根のある部分で多数の植木があり薄暗い環境 であった.ツヤオオズアリを欠くサイト 5 ではオ オシワアリを除く最多の 4 種が採集された. 今回,指宿市の湯の浜一帯では直線距離にし て 383 m の範囲でツヤオオズアリが,同じく直線 距離で 1883 m にわたってナンヨウテンコクオオ ズアリの生息が確認された.生息域の広さや,ほ とんどのサイトで大型働きアリや巣が確認された ことから,人為導入後少なくとも数年は経過して いると推測された.生息環境はホテル街,住宅地, 公園等の撹乱地あるいは砂浜海岸であった.ツヤ オオズアリは南西諸島においても港湾,公園,住 宅地,砂浜海岸で優占する(下野・山根,2003; 山根ほか,2014).しかし,本種は森林に侵入す る例も知られており(Sarnat et al., 2015),沖縄島 の公園では樹上でも優占するケースが見つかった (原田ほか,2018).今回の結果ではツヤオオズア リが多い場所では他の 2 種のオオズアリやそれ以 外のアリは少ない傾向が見られた.一方で,ナン ヨウテンコクオオズアリとインドオオズアリはそ れらが見られた 4 つのサイトすべてで同所的で あった.これら 3 種の種間関係についての研究が 期待される.今回の調査地は海岸沿いにほぼ限定 されており,また海岸沿いで未調査の部分も多い. 今後,指宿市全域ならびにその周辺をさらに詳し く調べると同時に,樹木の多い公園,都市に隣接 する 2 次林などでの調査も実施する必要がある.  謝辞 貴重な情報を寄せられ,原稿に有益なコメン トをくださった久末 遊氏(九州大学),調査に 協力された上釜典子氏(鹿児島県自然保護課)に 感謝する.  引用文献 原田 豊・柿元絹生・佐々木那菜・東郷 凜.2018.公園 内に植栽されたカンヒザクラの樹上で活動するアリ. 日本生物地理学会会報,72: 18–24. 久末 遊.2019.九州本土から初めて確認されたツヤオオ ズアリ Pheidole megacephala.Pulex,(98): 印刷中 . Sakamoto, Y., Mori, H., Ohnishi, H., Kishimoto, T., Toda, M.,

Ki-shi, S. and Goka, K. 2016. Surveys of the ant faunas at ports of Tokyo Bay and the Ogasawara Islands. Applied Entomol-ogy and ZoolEntomol-ogy, 51: 661–667.

Sarnat, E. M., Fischer, G., Guénard, B. and Economo, E. P. 2015. Introduced Pheidole of the world: taxonomy, biology and distribution. ZooKeys, 543: 1–109. 寺山 守・久保田敏・江口克之.2014.日本産アリ類図鑑. 48 pls. + 278 pp.朝倉書店,東京. 下野綾子・山根正気.2003.沖永良部島におけるアリの多 様性.離島学の構築 , 3: 11–29. 山根正気.2016.奄美大島には何種のアリがいるか.鹿児 島大学生物多様性研究会(篇)奄美群島の生物多様性. Pp. 92–132.南方新社,鹿児島. 山根正気・原田 豊・江口克之.2010.アリの生態と分類 ― 南九州のアリの自然史 —.200 pp.南方新社,鹿児島. 山根正気・榮 和朗・藤本勝典.2014.奄美大島名瀬の撹 乱地のアリ相と活動レベルの季節変化.Nature of Ka-goshima, 40: 123–126.

Sites confirmed for each species

Monomorium chinense 1, 5, 6, 7

Cardiocondyla itsukii 4, 5

Tetramorium bicarinatum 8

Tapinoma melanocephalum 2, 5, 8

Nylanderia amia 2, 4, 5

Table 1. Frequency of occurrence of three Pheidole aliens at eight sites around Yunohama, Ibusuki-shi, Kagoshima.

参照

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