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IRUCAA@TDC : 睡眠時無呼吸障害に取り組んだ23年間の耳鼻咽喉科診療

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Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College, Available from http://ir.tdc.ac.jp/

Title

睡眠時無呼吸障害に取り組んだ23年間の耳鼻咽喉科診療

Author(s)

中島, 庸也

Journal

歯科学報, 120(3): 304-313

URL

http://doi.org/10.15041/tdcgakuho.120.304

Right

Description

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はじめに

『1993年 ア メ リ カ 議 会 に 報 告 さ れ た レ ポ ー ト “Wake Up America : A National Sleep Alert”で は,アメリカ全土で成人の約1/3の4000万人に睡 眠障害を認め,米国睡眠障害調査研究委員会の推定 では1990年には159億ドルの損失が出ていると報告 がなされた。日本においても2003年2月に新幹線の 運転手居眠り事件以後,社会的にも関心が持たれ, 睡眠呼吸障害(SDB)による事件や事故の報告が なされている。SDB の一疾患である閉塞性睡眠時 無呼吸低呼吸症候群(OSA)の発症率は1∼2% といわれており,市川市45万人と近隣4市(松戸 市,船橋市,浦安市,鎌ヶ谷市) を加えれば,OSA 患者は16,000∼34,000人と推定され,今後これらの 地域の人口増加傾向を考えれば,さらに多くの潜在 患者が見込まれる。 我々は1998年頃より,当院で終夜睡眠ポリグラフ 検査(PSG)による OSA の診療に着手し,2001年 から本格的に診療体制の整備を開始した。2003年よ り専属の睡眠専門技師をスタッフに加え,終夜監視 下の PSG を2名の被験者に対し行えるようになっ た。2005年に各スタッフが日本睡眠学会認定医師と 認定技師の資格を取得し,さらに2008年には学会認 定機関の申請と2名の認定歯科医師の申請を行って いる状況です。これら申請が通れば千葉県の総合病 院で唯一の睡眠認定機関となり,しかも認定歯科医 師が常勤するとなれば,OSA に対し非常に高いレ ベルで診療を行える,日本でも有数の病院になると 思われる。 検 査 機 器 に 関 し て も,本 年 度 か ら PSG 機 器 の バージョンアップがなされ,成人の OSA ばかりで なく,いびき,小児の OSA,さらに閉塞性ではな い SDB であるナルコレプシーや特発性過眠症や身 体疾患が関与するレム睡眠行動障害,レストレス レッグ症候群,多系統萎縮症の診断にも威力を発揮 することが期待されている。』 今回,1998年よりスタートした睡眠時無呼吸障害 の取り組みから現在までの20年間を総括するにあた り,特に,ここ10年間の取り組みについて,以下の 3点に絞って報告する。 歯科との共同研究:歯科口腔外科による 顎顔面術前後の呼吸状態の変化の検討 当科での OSA の検査,診断,治療等の実臨床が 安定してきたころ,当院歯科口腔外科では咬合不全 に対する顎矯正術が急速に増加してきた時期と思わ れる。上下顎を前後に移動させることは,まさに気 道の変化が伴うことであり,そのことで当然,呼 吸・睡眠の変化が生じると予想される。顎矯正術前 後に終夜 PSG 検査を行い,呼吸・睡眠の変化を調 べる共同研究を開始した。実際には顎移動による気 道の変化は,術中に内視鏡でスケールのメモリを読 み取るというハイテク(high tech)ではなく,手 間のかかる“low tech”な方法(図1)での計測で あったが,再現性のあるデータが得られた。術前後 の PSG により得られた各パラメータとの解析で予 想を超える結果が得られ,この分野で非常にインパ クトを与える内容となり,論文引用されている。主

関連医学の進歩・現状

睡眠時無呼吸障害に取り組んだ23年間の耳鼻咽喉科診療

中島 庸也

東京歯科大学市川総合病院耳鼻咽喉科 キーワード:閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA),顎矯正 手術,顎移動による気道の変化,いびき,騒 音計 (2020年2月7日受付,2020年4月28日受理) http : //doi.org/10.15041/tdcgakuho.120.304 連絡先:〒272-8513 千葉県市川市菅野5−11−13 東京歯科大学市川総合病院耳鼻咽喉科 中島庸也

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な成果は以下の3編の論文である。 1.外木守男,有坂岳大,佐藤一道,他:顎矯正手 術前後における睡眠呼吸障害の変化に関する検討 −第1報 無呼吸低呼吸指数の変化について,日 顎変形誌,17⑴:9−15,2007.(東京歯科大学 市川総合病院倫理委員会 審査番号 74) 19例の顎顔面手術を行った症例を上顎と下顎の移 動方向でグループ分けを行い,その前後で PSG に より,AHI と筋の弛緩しやすい REM 期の AHI の 変化を検討(表1)したところ,下顎の移動方向に 関係なく,上顎を前方移動したグループ c と d(7 例)のみ術後 AHI,REM 期の AHI ともに有意差

表1 症例の年齢,性別,BMI と顎骨移動距離

BMI L-Mand L-Maxil case sex age pre post (mm) (mm) Group a 1 F 32 18.0 17.7 −4 − 2 F 29 20.9 21.1 −12 − 3 F 28 26.2 25.5 −10 − 4 F 35 24.2 23.9 −14 − Group b 5 F 35 19.5 19.2 +2 − 6 M 31 20.4 21.0 +7 − 7 M 27 30.5 29.8 +5 − 8 F 28 21.3 21.7 +5 − Group c 9 F 36 19.7 20.1 −9 +3 10 M 21 25.0 23.1 −4 +6 11 F 19 20.0 19.8 −8 +5 ※ 12 M 27 17.3 17.9 −4 +3 ※ Group d 13 F 40 21.9 21.6 +4 +3 14 M 26 28.7 27.3 +7 +3 ※ 15 F 21 20.8 22.3 +8 +3 ※ Group e 16 F 20 18.5 18.6 +8 −3 17 F 29 19.2 18.2 +4 −2 ※ 18 F 28 17.3 16.9 +6 −3 ※ 19 F 19 19.9 21.4 +5 −2 ※ average − − 27.95±6.95 21.54±3.71 21.43±3.39 19例はa∼eに分類 グループa:下顎骨の後方移動のみの4症例 グループb:下顎骨の前方移動のみの4症例 グループc:上顎骨の前方移動と下顎骨の後方移動の症例 グループd:上顎骨の前方移動と下顎骨の前方移動の症例 グループe:上顎骨の後方移動と下顎骨の前方移動の症例 ※:オトガイ形成術を併せて行った症例 4∼6mm の前方移動を行っている。 図1 内視鏡による術中の計測法

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をもって減少した(図2)。

2.Okushi T, Tonogi M, Arisaka T, et al. : Effect of maxillofacial surgery on the morphology of velopharyngeal space, Int J Oral Maxillofac Surg,69:877−884,2011.(東京歯科大学市川 総合病院倫理委員会 審査番号 74) LefortⅠ型骨切り術および SSRO(下顎枝矢状分 割術)の術中に上・下顎の骨片を牽引し軟口蓋部気 道の変化を検討した。その結果,上顎の前方牽引で は前後径が拡大し,下顎の前方牽引では左右径の拡 大が認められた(図3)。

3. Arisaka T, Ito C, Sato K, et al. : Examination of changes in the pharyngeal airway space under anterior traction of the mandible : Influence of detachment of the periosteum during orthog-nathic surgery, J Oral Maxillofac Surg Med Pa-thol,26:540−544,2014.(東 京 歯 科 大 学 市 川 総合病院倫理委員会 審査番号 74) 下顎に比較し,上顎の前方移動が呼吸状態をより 改善することを1.にて示したが,下顎の移動で何 故,気道の変化が少ないかが疑問に残った。そこで 下顎の SSRO 時の遠位骨片の骨膜剥離(図4)と 気道形態との関係を調べ,遠位骨片の骨膜剥離は下 顎骨の前方移動の可動域を増大すること,剥離前で は剥離後と比較し,下顎骨の少ない前方移動量で咽 頭気道が拡大する傾向にあった(表2)。つまり, 下顎を前方移動しても骨膜を剥離することで,気道 への影響は減少する傾向であることが判明した。逆 に下顎を後方へ移動する場合でも睡眠呼吸状態に与 える影響が低下する一つの要因と考えられた。 睡眠時無呼吸障害における 治療の効果判定としてのいびき音の測定 1.いびきとは いびきとは睡眠中の呼吸運動により,上気道で発 生する音である1) 。睡眠障害国際分類 ICSD-2版で はさらに「日中眠気,無呼吸や低呼吸を伴わず,睡 眠分断も認めない」と定義されている。原発性や単 純いびき症では無呼吸を伴わない上気道の振動の結 果であるが,上気道抵抗症候群や二次性いびき症で は,定義に適合しない無呼吸低呼吸である RERA (呼吸努力関連覚醒)を伴う。 2.いびきに対する各種検査法の目的 1)いびき音の大きさ:手術的治療の効果やそれ による機能的影響の検討 2)いびき発生部位の検討:いびきのスぺクトラ ム,基本周波数やフォルマントの解析により発 図2 グループ c と d のみ,術後 AHI,REM 期の AHI ともに有意差をもって 減少した

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生源の情報を得る 3)単純いびきと無呼吸に伴ういびきとの鑑別(い びきの音で無呼吸の有無を検索)などである。 3.騒音計を用いたいびきの評価とその臨床応用 これまでいびきに対して周波数解析による発生部 位の検討や,単純いびきと閉塞睡眠時無呼吸症候群 時(OSA)に合併しているいびきの区別,あるい はいびき音のみで OSA が鑑別できるかに焦点が向 いていたが,いびきのうるささ(大きさ)を音圧で 評価している報告は少なく,ベッドパートナーによ る主観的評価が主体であった。 臨床家としては OSA やいびき症に対する手術の効果判定,つまり“いび き音が本当に小さくなったか?”は非常に重要な問 題である。そこでいびきの評価およびいびきの治療 の効果につき騒音計を用いて検討してみた。 表2 骨膜剥離は下顎骨の前方移動の可動域を増大する 剥離前では剥離後と比較し,下顎骨の少ない前方移動量で咽頭気道が拡大 男性 女性 性別 5 16 平均年齢 25.9±6.9 剥離前 剥離後 P-value 下顎の最大前方移動距離(mm) 14.0±3.7 22.5±3.1 <0.0001 咽頭気道前後径 (mm) 牽引時最大の前後径(mm) 3.3±1.2 3.6±2.1 0.796 剥離前の最大牽引位置の前後径 (mm) 3.3±1.2 1.6±1.2 <0.0001 咽頭気道の拡大率 0.26±0.16 0.16±0.09 0.003 図3 MMA による気道拡大の解釈 LefortⅠ型骨切り術および SSRO を行う術中に上・下顎の骨片を牽引し軟口蓋部気道の変化を検討した。 結果は上顎の前方牽引では前後径が拡大し,下顎の前方牽引では左右径の拡大が認められた。 図4 SSRO 時の骨膜剥離部位

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1)計測方法 ⑴ 騒音計を患者頭部の上部約40 cm のところに 設置する(図5)。 騒音計はリオン社製 NL-31を使用。この機種は計 療法精密騒音計で機器の校正は不要である。しか し,検査室ごとに跳ね返り音などの違いを考慮する 必要があり,ホワイトノイズ(テレビの砂嵐音)を 一定の位置に置いて測定し,約2dB ほどの差はあ るものの大きな差は確認できなかった。 また,測定の特性を A 特性としている。これは 騒音レベルといい,感覚量に類似するためである。 さらに,騒音に係る環境基準の評価のため等価騒音 レベル(Leq)を用いて評価している。等価騒音レ ベルとは,ある時間内で変動する騒音レベルのエネ ルギーを同時間内の定常騒音のエネルギーに置き換 えることである。 ⑵ PSG は術前,術後で異なる機器を使用して い る。術 前 は Natsu 社 製 Embla を,術 後 は philips respironics 社製 Alice5である。 いずれも測定項目は脳波(F3-A2,F4-A1, C3-A2,C4-A1,O1-A2,O2-A1),EOG (LEOG-A2,REOG-A1),EMG,フ ロ ー セ ン サー(サーミスター,鼻圧センサー),いびきセン サー,胸腹壁センサー(RIP またはストレインゲー ジ),ECG,脚 EMG,体 位 セ ン サ ー,SpO2セ ン

サーである。 睡眠脳波判定,呼吸イベント判定は「AASM に よる睡眠および随伴イベントの判定マニュアル」 (2007)に準じて判定している。このうち低呼吸は 「AASM による睡眠および随伴イベントの判定マ ニュアル」の低呼吸ルール代替基準を採用してい る。 ⑶ 騒音計は,外部入力から PSG と同期させて おり,いびきの波形と比較が可能となっている ので特に最大値がいびきと一致していることを 確認でき,外部音との鑑別が可能である(図 6)。また,サンプリング周波数は100Hz に設 定している 2)騒音計を用いたイビキの評価 以下の2項目⑴,⑵について検討した。 ⑴ ベ ッ ド パ ー ト ナ ー の い び き の 主 観 的 評 価 (VAS スケール)と騒音計でのいびき音圧の 客観的な評価の整合性 対象:平成23年5∼7月に当院で PSG 検査を行 い,いびき評価のアンケートを回収できた28例(男 性:23名 年齢:54.1±10.9歳,女性:5名 年 齢:41.0±9.2歳)の検討 ①騒音計のデータと呼吸イベントの程度と相関性 について(図7) いびき最大値と AHI,いびき最大値と AI の間に は相関が認められた ②ベッドパートナーのいびきの評価と騒音計の データ,および PSG データの相関性について (図8)

AHI と VAS,いびき最大値と VAS の間には相 関が認められた。一方,以下の項目は相関を認めな かった

・AHI−睡眠平均 dB ・HI−睡眠最大 dB ・AI− 睡眠平均 dB

・HI−睡眠平均 dB ・AI−VAS ・HI−VAS ・最低 SpO2−VAS ・90%未満 SpO2の割合−VAS

・睡眠平均 dB−VAS この時点で,睡眠全体のいびき(dB)の平均値 と最大値の結果しか出せなかったが,いびきの程度 を騒音計を用いることで大きさを理解しやすくな り,いびきの主観的評価(VAS スケール)といび き音圧による客観的評価との整合性が認められ,騒 枕から約40c m 離れた位置に設置する。 騒音計の特性は A 特性に設定し,PSG のサンプリング 周 波 数 は100Hz と し た PSG は ナ ッ ツ 社 製 エ ン ブ ラ と フィリップスレスピロ二クス社製アリス5で記録。 図5 リ オ ン 社 製 騒 音 計(音 響 振 動 測 定 器:SOUND LEVEL METER NL-31)

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音計による評価は有効であることが判明した。 ⑵ 騒音計を用いたいびき測定によるいびき・睡 眠時無呼吸に対する手術効果の評価 対象:平成23年5月から25年9月までにいびき・ 睡眠時無呼吸に対して行われた鼻内手術(鼻中隔, 弯曲矯正術+下鼻甲介粘膜切除術)+UPPP を施行 し,術前,術後に終夜 PSG 検査を施行した10症例 である。性別男:女=7:3,年齢25∼54歳,BMI 18.85∼26.68である(表3,4) 術後の AHI では有意に低下(図9)し,いびき の最大値の変化は術後有意に低下(図10)したが, 最大値での検討では不変や悪化する症例が認められ 図6 気管音いびきセンサーから得られた波形と騒音計からの波形 図7 騒音計のデータと呼吸イベントの程度と相関性について いびき最大値と AHI,いびき最大値と AI の間には相関が認められた。

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た。そこで終夜のいびき全体の各音域の割合の変化 を調べてみると,全症例で高音域の割合が低下し, 低音域の割合が増加していることが判明した(表 4)。静かと考えられる50dB 以下とうるさいと考え られる50dB 以上に分けて,それぞれの割合を比べ ると有意に術後は50dB 以上の割合が低下してお り,例え最大値が悪化や不変であっても全体レベル はより静かになっていることが判明した(図11)。 いびきの評価に騒音計を用いることで,客観的な データが得られ,患者およびベッドパートナーへの 結果説明がより具体的で,明確に効果判定を示すこ とができた。 以上より騒音計によるいびき音圧の評価は非常に 有用であった。 新たなる OSAS への取り組み: 軟口蓋手術の導入 閉塞性無呼吸症候群(OSA),特に重症の場合は 持続陽圧呼吸療法(CPAP)が第一選択となる。 CPAP は効能に優れているが患者のコンプライア ンスはそれほど高くなく,長期使用も難しいとの報 告が多い。当科での2003∼2005年で重症 OSAS の 診断となり,CPAP が導入された患者を追跡調査2) してみると,その後の10年間の使用状況では40.2% が治療継続,42.4%が脱落していたことが判明し た。つまり,CPAP の長期使用はやはり限定的で あり,そのため代替治療が求められているのが現状 である。つまり OSA 患者において重症なら画一的 に CPAP 治療となるのではなく,各個人の病態に 合わせて個別化医療がさらに強く求められる状況と なっている。口腔内装置,行動療法(減量や体位変 換の指導など),睡眠外科,補助的治療(肥満手術 や薬剤など)が挙げられており,さらに2020年から 導入される可能性がある舌下神経刺激装置も新しい 治療法として期待されている。 OSA の病態については,最近 PSG のデータの解 析が進み,OSA の病態生理学的特徴を分類して各 表3 対象 症例 年齢 性別 手術 1 40 男 デビコンコ UPPP 2 32 女 デビコンコ UPPP 3 46 女 デビコンコ 4 25 男 デビコンコ UPPP 5 40 男 デビコンコ UPPP 6 40 女 デビコンコ UPPP 7 38 男 デビコンコ UPPP 8 54 男 デビコンコ UPPP 9 42 男 デビコンコ UPPP 10 46 男 デビコンコ 平成23年5月から25年9月までにいびき・OSAS にて手 術療法を希望し,手術前後に終夜 PSG を施行できた10症 例である。 性 別 男:女=7:3,年 齢25∼54歳,BMI18.85∼26.68 である。 図8 ベッドパートナーのいびきの評価と騒音計のデータ,および PSG データの相関性について

AHI と VAS,いびき最大値と VAS の間には相関が認めら れた。

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患者の個別化医療を探る試みがなされている。 Wellman3) による病態生理学的特徴として①上気 道解剖の異常,②咽頭開大筋の反応性低下,③呼吸 中枢の不安定性,④覚醒閾値低下の4つの因子に分 類しており,①は解剖学的因子であり,②∼④は非 解剖学的因子となる。Eckert4) は OSA 発症の各因 子の関与度合いは,上気道解剖の単独異常の関与は 30%で あ り,残 り70%は①お よ び②∼④が 絡 ん で OSA 発症となると述べている。実臨床としてはす べての因子がどの施設でもすぐに検討できる状況で はなく,今しばらく時間を要する。 耳鼻科医としては OSA を含め,睡眠関連呼吸障 害(sleep related breathing disouder : SRBD)に対

する外科的治療を睡眠外科治療(sleep surgery) として取り組んでいるが,CPAP に比べてエビデ ンスに乏しく有効な治療として活用されてない状況 である。sleep surgery の効果が期待できるのは純 粋な閉塞性呼吸イベントと考えられるので,PSG からのデータを Wellman 等による4因子の考え方 から解析すすめ,今後より正確な診断と手術適応を 確立する必要がある。 また,手術手技においては,これまでの UPPP ( uvulo-palato-pharyngo plasty) は①効果が不十分, ②侵襲が大きい,③術後瘢痕拘縮などの合併症など が問題とされている。この問題を解決する目的で最 近,井上,千葉ら5) により提唱された lateral uvulo-palato-pharyngo plasty:通称:QWICKs を当科で も検討していきたい(東京歯科大学市川総合病院倫 理委員会 審査番号 118−20)。 手技 両側の口蓋扁桃を摘出し,口蓋扁桃の下極付近は それぞれ前口蓋弓と後口蓋弓を縫合する。次に翼突 下顎ヒダの外側を切開し,さらに鈍的剥離を行い腱 組織を露出させる。これをアンカーとして,V ロッ クという返しのついた創傷閉鎖デバイス(糸)を固 定する。V ロックは多数のかえしにより一方向にし か進まず,かえしにより組織同士を均一の張力で保 持することにより,縫合せずに組織を牽引,閉鎖 (引き寄せ)させることが可能となる。 前口蓋弓の裏面に糸を通す。その後,後口蓋弓に 表4 結果 症例 AHI dB 最大値 音 圧 域(%) 30−40dB 40−50dB 50−60dB 60−70dB 70−80dB 前 後 前 後 前 後 前 後 前 後 前 後 前 後 1 55.0 20.2 70 62 82 89 12 8 5 3 1 0 0 0 2 51.4 6.9 73 43 47 97 30 3 18 0 5 0 0 0 3 6.0 2.6 58.6 55 59 82 24 16 17 2 0 0 0 0 4 57.8 3.8 67 61 45 95 35 4 18 1 2 0 0 0 5 41.4 46 74.2 73 6 0 44 75 36 13 15 8 0 4 6 15.4 2.7 56.2 59 67 73 26 21 7 5 0 0 0 0 7 8.6 1.6 75.9 44 75 95 17 4 7 1 1 0 0 0 8 12.9 3.2 66.8 47 73 94 18 6 8 0 1 0 0 0 9 63.7 16.6 65 52 68 79 19 17 11 2 2 1 0 0 10 36.7 27.4 53 66 60 78 24 14 16 6 0 2 0 0 (P<0.01) 図9 AHI

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表5 術後結果 年齢/性 BMI AHI 無呼吸 低呼吸 術前 術後 術前 術後 術前 術後 1)46/M 23.7 12.7 8.1 37 5 32 45 2)47/M 27.4 63.4 30.9 291 10 124 190 3)20/M 18.6 53.4 24.1 337 72 12 69 図11 50dB 以上のいびきの割合 図10 いびき最大値(dB) いびきの最大値の変化は有意に低下したが,不変や悪化症例が認められた。 図12 術後所見 咽頭腔の開大が見られる。

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糸をかけて粘膜を牽引し,もう一度創部へ糸を戻 す。この時に巻き込んだ粘膜を用いて後口蓋弓を前 上方に牽引する。先ほどの腱組織に再度糸をかけて ロックし,両側を同時に牽引し,咽頭腔の拡大を図 る。同様に2針,3針行い,最後に軟口蓋に向かっ て糸をかけ,左右方向へ牽引することで軟口蓋の剛 性が上昇する。 最後に左右の翼突下顎ヒダの外側切開部を縫合閉 鎖し,手術を終了する。 当院ではまだ経過が追え,解析できたのは3症例 のみでである(図12,表5)。AHI の改善率は47.4 %(図13)であったが,外科治療成績基準での有効 として50%Reduction&AHI<20で評 価 す る と3症 例とも不十分であった(表5)。 本術式は軟口蓋に直接切り込むこと無く,創傷閉 鎖デバイス(糸)を使って軟口蓋を牽引し,剛性を 上げる Suture suspension technique であるため, 侵襲が少なく,簡便であり,術後の痛みや出血・腫 脹を軽減することができ周術期の管理も容易であ り,有効な術式と思われる。今後,症例を増やし, 手術適応,軟口蓋や後口蓋弓の牽引の程度,さらに 長期効果を検討していきたい。 文 献 1)中島庸也,大川登史:【睡眠関連呼吸障害:イビキ を考える−ストップザイビキ−】イビキの評価と各 種治療法の検討 イビキを評価する 騒音計を用いた 評価とその臨床的意義,睡眠医療,8:333−339, 2014. 2)露無松里,中島庸也,千葉伸太郎,他:A 10-Year Term Adherence to Continuous Positive Airway Pressure Treatment in Patients with Obstructive Sleep Apnea, Sleep and Breathing(投稿中)

(東京歯科大学市川総合病院倫理委員会 審査番号 116−09)

3)Wellman A, Eckert DJ, Jordan AS, et al. : A method for measuring and modeling the physiological traits causing obstructive sleep apnea, J Appl Physiol, 110 ⑹:1627−1637,2011.

4)Eckert DJ : Phenotypic approaches to obstructive sleep apnoea-New pathways for targeted therapy, Sleep Med Rev, xxx:1−15,2016.

5)井上大介,千葉伸太郎,八木朝子,他:塞性睡眠時 無呼吸症に対する咽頭手術法(CWICKs)による治 療効果の検討(会議録),日本睡眠学会第44回定期学 術集会抄録集,221,2019.

23 years of otolaryngology practice in sleep apnea disorder

Tsuneya NAKAJIMA

Division of Otorhinolaryngology, Ichikawa General Hospital, Tokyo Dental College

Key words : obstructive sleep apnea syndrome(OSA), orthognatic surgery, pharyngeal air space, snore, noise meter

症例1: 12.7→8.1 症例2: 63.4→30.9 症例3: 53.4→24.1 改善率:47.4% 図13 AHI の改善率

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