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Title
The expression of RANKL, OPG and TNF-α on cells
and/or tissues around alveolar bone during
early-stage rat tooth germ development
Author(s)
福原, 郁子
Journal
歯科学報, 111(5): 538-539
URL
http://hdl.handle.net/10130/2638
Right
論 文 内 容 の 要 旨 1.研 究 目 的
歯胚の成長期に,歯胚容積の増大と,その周囲歯槽骨の骨吸収によって歯胚が成長していくことは一般的に 知られている。この骨吸収の担い手となる破骨細胞の分化および活性化の調節には,receptor activator of NF-kappa B ligand(RANKL)−receptor activator of NF-kappa B(RANK)シグナルが関与している。しかし 近年,このシグナルとは別に,Osteoprotegerin(OPG)によって抑制されない前破骨細胞から破骨細胞への分 化機構として tumor necrosis factor-alpha(TNF-α)が関与していることが明らかとなった。本研究では歯胚形
成期における骨吸収に関与する RANKL,OPG,TNF-αの発現の検索を行い,そのメカニズムの解明を試み た。 2.研 究 方 法 材料:Sparague-Dawley 系雄性ラットの下顎第一臼歯歯胚を用いた。帽状期後期に相当する胎生20日齢, 鐘状期前期から後期に相当する生後1日,3日,5日齢,歯冠形成期の生後7日齢,根分岐部形成開始期の生 後9日齢の歯胚を用いた。
ラットから下顎第一臼歯歯胚を摘出し,total RNAを抽出後,リアルタイム PCR法にて RANKL,OPG,
TNF-αの m RNAの発現を検索し,その経時的変化を追った。 また,すべてのステージにおいて顎骨ごと摘出し,4%パラホルムアルデヒド溶液で固定,および10%ギ酸 にて脱灰後,パラフィン包埋し3μmごとに薄切し,RANKLおよび OPGの免疫化学染色を行った。 3.研究成績および結果 免疫化学染色は,胎生20日齢では RANKL 陽性細胞は,外エナメル上皮と歯小嚢だけでなく歯槽骨でも見 られた。OPG 陽性細胞は外エナメル上皮と歯小嚢で見られた。生後3日齢の歯胚では,RANKL ともに歯小 嚢に陽性細胞が見られた。生後5日齢では,ヘルトヴィッヒ上皮鞘に接する歯小嚢で RANKL 陽性細胞の強 い発現が見られ,OPG においては,歯槽骨に接する歯小嚢で OPG 陽性細胞が見られた。生後7日齢では,ヘ ルトヴィッヒ上皮鞘と,それに接する歯小嚢で RANKL 陽性細胞の強い発現が見られたが,OPG 陽性細胞 は,ほとんど見られなかった。 氏 名(本 籍) ふく はら ふみ こ
福
原
郁
子
(茨城県) 学 位 の 種 類 博 士(歯 学) 学 位 記 番 号 第 1844 号(甲第1115号) 学 位 授 与 の 日 付 平成21年3月31日 学 位 授 与 の 要 件 学位規則第4条第1項該当学 位 論 文 題 目 The expression of RANKL, OPG and TNF-α on cells and/or tissues around alveolar bone during early-stage rat tooth germ development
掲 載 雑 誌 名 Oral Medicine & Pathology 第15巻 39∼43頁 2010年
論 文 審 査 委 員 (主査) 新谷 誠康教授 (副査) 井上 孝教授 中川 寛一教授 下野 正基教授 栁澤 孝彰教授 歯科学報 Vol.111,No.5(2011) 538 ― 82 ―
RANKL mRNAの発現は,胎生20日齢から生 後3日 齢 で は 変 化 が な く,生 後5日 齢 か ら 増 加 傾 向 を 示 し,9日齢においては有意な差をもって大きく発現した。OPG mRNAの発現は胎生20日齢から生後3日齢ま で変化はなく,生後5日齢でわずかに増加がみられたものの,生後7日齢から有意な差をもって減少し,生後 9日齢の歯胚においては最小値を示した。TNF-α mRNAの発現は,胎生20日齢から生後5日齢まで変化はな く,生後7日齢以降で減少傾向を示し,生後9日齢で最小値を示した。 4.考 察 本実験の結果ではヘルトヴィッヒ上皮鞘が発現する生後7日齢から RANKL の発現が上昇し,OPG と TNF -α の発現は減少したことから,歯胚形成期における破骨細胞形成には,TNF-α は関与せず,RANKL-RANK シグナルが主流となって破骨細胞の分化および活性化と,骨吸収を担っていることが示唆された。 論 文 審 査 の 要 旨 歯胚の成長期に,歯胚容積の増大と,その周囲歯槽骨の骨吸収によって歯胚が成長していくことは一般的に 知られている。この骨吸収の担い手となる破骨細胞の分化および活性化の調節には,RANKL-RANK シグナ ルが関与している。しかし近年,このシグナルとは別に,OPG によって抑制されない前破骨細胞から破骨細 胞への分化機構として TNF-α が関与していることが明らかとなった。本研究では歯胚形成期における骨吸収 に関与する RANKL,OPG,TNF-α の発現の検索を行い,そのメカニズムの解明を試みた。 結果よりヘルトヴィッヒ上皮鞘が発現する生後7日齢から RANKL の発現が上昇し,OPG と TNF-α の発 現は減少したことから,歯胚形成期における破骨細胞形成には,TNF-α は関与せず,RANKL-RANK シグナ ルが主流となって破骨細胞の分化および活性化と,骨吸収を担っているということが示唆された。 本審査委員会では,1)実験に使用した歯牙の採取部位の妥当性,2)破骨細胞 TNF-α の関係性,3) RANKL とヘルトヴィッヒ上皮鞘との関係性についての討議ならびに質疑がなされ,概ね妥当な回答が得られ た。図表の必要性,論文の体裁など,改善の指摘があり修正がなされた。 本研究で得られた結果は,今後の歯学の進歩,発展に寄与するところ大であり,学位授与に値するものと判 定した。 歯科学報 Vol.111,No.5(2011) 539 ― 83 ―