エネルギー・環境教育の現状と大学の役割

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(1)エ ネ ル ギ ー ・環 境 教 育 の現 状 と大 学 の役 割. エ ネ ル ギ ー ・環 境 教 育 の現 状 と大 学 の役 割. 伊. 藤. 哲. 夫*. は じめ に 先 進 国 の人 々(世 界 人 口 の約4分. の1)は. 、 多 くの化 石 エ ネル ギ ー を使 い、 そ して経 済 成 長. を成 し遂 げ、 豊 か な生 活 を送 って き た。 そ の結 果 、 地 球 規 模 で 明 らか に様 々 な危 機 が 忍 び寄 っ て き た。 そ の1つ が エ ネル ギ ー 。環 境 問 題 で あ る。 人 類 は、 長 き にわ た って 自然 の 大 きな 懐 の 中で 他 の 生 物 と共 存 共 栄 して きた(種 族 を 守 る た め の 生 存 競 争 は 当然 あ った)。 しか し、18世 紀 末 の産 業 革 命 以 来 、再 生 不 能 な 地 球 の エ ネル ギ ー 資 源 を 限 りな く使 い、 そ の 結 果 、 これ まで 化 石 燃 料 の 枯 渇 問 題 、 二 酸 化 炭 素 が 原 因 と され る温 暖 化 問 題 な どを 抱 え 、 そ して 今 地 球 は、 人 類 の 限 りな い欲 望 の た め 、 バ ラ ン スが 崩 れ 始 め 、 病 気 に な ろ う と して い る(た ぶ ん 、 地 球 は愚 か な 人 類 の 行 為 に対 し、 び く と も しな い と思 う が?)。 地 球 に住 む生 物 の健 全 な共 存 共 栄 を取 り戻 す た め、私 た ち は しっか りと現 実 を知 り、人 類 の 持 続 的 維 持 の た あ にエ ネ ル ギ ー 問 題 、 環境 問 題 、 人 口問 題 、 食 糧 問 題 な どの 解 決 に真 正 面 か ら取 り組 ん で い か な けれ ば な らな い。 未 来 を 担 う子 供 た ち一 人 ひ と りが 未 来 に結 び 付 く確 か な 知 力 と人 類愛 、 自然愛 を持 った現 代 人 に育 って も ら うた め には、 学校 教 育 を 中心 に家 庭 や地 域 な ど と連 携 を取 り、 世 界共 通 の課 題 で あ るエ ネ ル ギ ー ・環 境 問題 に関 す る教育 を推 進 して い か ね ば な らな い。 近 畿大 学 は、 これ ま で 積極 的 に エ ネ ル ギ ー 問題 に取 り組 み、 様 々な 活動 を 行 って き た。 この エ ネ ル ギ ー教 育 に 関 す る論 評 が教 育 関係 者 の お役 に立 て れ ば幸 い と思 う。. 1.変. 貌 す る地 球 環 境. 人 類 は、 哺乳 類 の ヒ ト科 に属 し、 約500万 年 前 に チ ンパ ンジ ー と分 岐 し、 猿 人 を 経 て 進 化 し、 約20万 年 前 に ア フ リカ で 現 代 型 ホ モ ・サ ピエ ン ス が誕 生 して世 界 に広 が り、 私 た ち の 祖 先 と な った。 この現 代 型 ホ モ ・サ ピエ ンス が さ らに進 化 し、 人 間 的 な知 的活 動 が始 ま った の は5万. *近 畿 大 学 原 子 力 研 究 所 所 長 ・教 授 近 畿 大 学 高 度 先 端 医 療 セ ンタ ー(PET診. 断 部 門)教 授 兼 務. 1.

(2) 近畿大学教育論叢. 第20巻 第1号(2008・9). 年 前 、 農 耕 文 明 が 始 ま った の は1万 年 前 で あ る。 そ して、 農 耕 が 始 ま る と定 住 生 活 へ と移 り、 共 同社 会 構造 が で き、5000年 前 に は メ ソポ タ ミア や エ ジプ トで 文 明 が 生 ま れ た。 生 物 の 中 で 唯 一 、 道 具 と火 を使 い、 ま た最 も優 れ た英 知 を 持 つ ヒ ト科 が 出現 し、 そ して 人 間 が地 球 の 中心 的 存 在 に な って い った。 人 間 が地 球 生 物 の覇 者 とな った とい え、16∼17世 紀 ま で の人 間 は、 地 球 の 大 き さ と資 源 の 余 裕 と豊 か な 自然 の 中 で他 の生 物 と共 存 しっ っ(生 存競 争 は あ った が)緩 や か に発 展 し、 そ して 世 界 の人 口 も少 しず つ増 え、 数 億 人 余 り とな った。 そ の後 、 蒸 気 機 関 の発 明 に端 を発 し、 多 くの エ ネ ル ギ ー を 消 費 す る産 業 革 命(18世. 紀)へ. と. 発 展 し、 人 間 は大 き な エ ネ ル ギ ー の力 を得 て豊 か な生 活 を獲 得 し、 大 き く発 展 した。 我 々 の 生 活 は、 そ の 様 式 や 取 り巻 く環 境 が 大 き く一 変 し、 世 界 人 口増 加 の テ ンポ が 速 ま り 1830年 に は約10億 人 だ っ た世 界 人 口が20世 紀 以 降 の農 業 技 術 の飛 躍 的進 歩 と農 薬 の発 明 に よ る 食 糧 の大 増 産 、 医 療 技 術 の進 歩 と普 及 に よ り世 界 人 口 が爆 発 的 に増 え、 さ らに工 業 の発 展 に伴 い人 々の 生 活 レベ ル が 大 き く向 上 し、 車 も急 増 した 。2008年4月 6,000万 人(米. 現 在 の 世 界 の 人 口 は、66億. 国 税 調 査 局 国連 統 計 か らの推 計)と 増 え 続 けて い る。. 21世 紀 を 迎 え た今 日、 エ ネル ギ ー の大 消 費 と世 界 人 口増 加 は、 地 域 的 環 境 汚 染 か ら地 球 規 模 の 環 境 問 題 、 化 石 燃 料 枯 渇 へ の不 安 、 食 糧 問 題 な ど多 くの問 題 を生 ん で しま っ た。 私 た ち は、1度 便 利 で 豊 か な 生 活 を経 験 す る と後 戻 りで き な い。 こ の ま ま の生 活 を送 って い る と大 変 な こ と にな るだ ろ う と心 の ど こか で 心 配 しなが らも、 まだ ず っ と先 の こ と だ ろ う と勝 手 に思 い、 便 利 で 豊 か な 生 活 を 求 め 続 け よ う と して い る。 少 な くて も、 今 日の 生 活 レベ ル を維 持 して い くた め に は、 経 済 活 動 の 原 動 力 で あ り、 国 民 生 活 や 経 済 活 動 の 基 盤 とな るエ ネル ギ ー を 確 保 し、 さ ら に地 球 環 境 の 保 全 や 直 面 して い る様 々な 危 機 を 解 決 して いか ね ばな らな い。 我 々は 、地 球 上 の 一 つ の 種 族 と して 豊 か で 平 和 な 生 活 を 維 持 し、 さ ら に子 孫 か ら借 りて い る 地 球 を 守 り、 これ か らの 人 類 の 繁 栄 を願 い 、 子 孫 へ とす ば ら しい地 球 を つ な いで いか な けれ ば な らな い。 これ か ら も人 類 が永 遠 に豊 か な生 活 を この地 球 で させ て い た だ くた あ には、 自然 と共 存 共 栄 して い く こ とが 第1で あ り、 そ の た め に は安 定 的 で環 境 に優 しい効 率 的 な エ ネ ル ギ ー源 を選 択 し、 安 定 した経 済 成 長 と地 球 環 境 保 全 を有 効 に進 め な け れ ば な らな い。 エ ネ ル ギ ー 問題 は、 環 境 問題 と裏 腹 な 関係 に あ り、 そ こに経 済 概 念 が は い る と さ らに理 想 の 解 決 策 は 困難 な もの とな る。 今 、 国 は、 新 エ ネ ル ギ ー の奨 励 や原 子 力 の利 用 な どの新 た な科 学. 2.

(3) エ ネ ル ギ ー ・環境 教育 の現 状 と大 学 の 役 割. 技 術 を取 り入 れ た エ ネ ル ギ ー 源 の 確 保 や 、 省 エ ネ ル ギ ー の 推 進 を 進 め て い る。 しか し、 新 エ ネ ル ギ ー は 、 エ ネ ル ギ ー 密 度 も小 さ く不 安 定 で あ るた あ 、 化 石 燃 料 の 代 替 エ ネ ル ギ ー源 に は な り得 な い こ とは 多 くの 人 が 認 め る と こ ろで あ るが 、 補 助 的 エ ネ ル ギ ー 源 と して や は り重 要 で あ り、 確 実 に推 進 す る こ とが必 要 で あ る。 今 、 我 々原 子 力 関係 者 は環 境 に優 し く、 安 全性 に 高 く、 効 率 的 で 経 済 的 な理 想 の エ ネ ル ギ ー 源 を人 類 が獲 得 す る ま で、 原 子力 エ ネ ル ギ ー を最 大 限 利 用 す るの が 現実 的 で あ り、 経 済 ・エ ネ ル ギ ー ・環 境 の トラ イ ア ング ル の 問題 解 決 に 有 効 で あ る と考 え て い る。 原 子 力 は、 い ろ い ろ 問 題 を抱 え て い る が、 決 して手 に 負 え な い物 で な く、 す で に 人 類 は す ば ら しい技 術 と コ ン ピ ュー タ の導 入 に よ り安 全 に取 り扱 う こ とが で き る とい う確 信 を持 て る よ うに な って き た。 しか し、 エ ネ ル ギ ー ・環 境 問 題 の 解 決 は、 単 に 原 子 力 の 採 用 だ けで 解 決 で き る 問 題 で な く、 広 く国民 に対 して の 幅広 い科 学 技 術 の ア プ ロー チ と政 治 、 経 済、 社 会、 倫 理 問題 を扱 う社 会 科 学 分 野 を含 む 多 角 的 な ア プ ロ ー チ が必 要 で あ る。 そ の た め に は、 学 校 教 育 や社 会 教 育 に お け る エ ネ ル ギ ー ・環 境 教 育 の充 実 が重 要 で あ る。 と りわ け次 世 代 層 の主 た る教 育 の場 で あ る学 校 教 育 の持 つ 役 割 は非 常 に大 き く、 学 校 を 中心 と した エ ネ ル ギ ー ・環 境 問題 を真 剣 に考 え る こ とが 不 可 欠 と な っ て き た。. 2.学. 校 教 育 で"エ. ネ ル ギ ー ・環 境 教 育"を. 近 年 、 世 界 は、 資 源 エ ネ ル ギ ー消 費 の急 激 な増 加(特 イ ン ド、 中国)に. にBricsと. よ る化 石 燃 料 の高 騰 、 資 源 の有 限性 に基 づ く枯 渇 問題 お よ び化 石 資 源 の利 用. に伴 う環 境 問 題 が 顕 在 化 して い る。 特 に、 わ が 国 は、1次 5%で. 言 わ れ る ブ ラ ジ ル、 ロ シア、. エ ネ ル ギ ー 資 源 の 自給 率 は わ ず か. あ り、 こ の重 要 資 源 の ほ とん ど を海 外 に依 存 して い る た め、 資 源 ナ シ ョナ リズ ム な ど海. 外 の情 勢 変 化 等 の影 響 を受 け やす く、 資 源 入 手 の不 安 定 性 が極 め て高 い国 で あ る。 こ れ ま で我 が 国 は、 安 定 したエ ネル ギ ー供 給 を受 け、 確 実 に経 済 成 長 を成 し遂 げ、 ま た環 境 対 策 や省 エ ネ 機 器 の 開 発 な ど に努 力 して き た た め、 今 住 み よ い恵 まれ た生 活 を送 っ て い る。 世 界 は、 急 速 に大 き く変 化 して お り、 こ の状 況 の 中、 日本 は これ まで と 同 じ感 覚 で生 活 して い る と、 あ る 日突 然 取 り返 しのつ か な い状 況 に陥 る こ とが 懸 念 され る。 今 後 も日本 が 持 続 可 能 な 社 会 を 形 成 ・維 持 して い くた め に は、 国 民 一 人 ひ と りのエ ネル ギ ー ・環 境 問 題 意 識 の大 変 革 が 急 が れ る と こ ろで あ る。 そ の 変 革 の た あ に は、 学 校 教 育 や 社 会 教 育 に お いて 、 これ まで の状 況 と基 礎 知 識 を 理 解 す る完 了 型 学 習 と急 激 な 変 化 に対 応 す る進 行 型 学 習 の2本 立 て 教 育 が 重 要. 3.

(4) 近 畿 大学 教 育 論 叢. 第20巻 第1号(2008・9). で あ り、 そ の 大 切 な 役 割 を 担 うの が 学校 教育 で は な い だ ろ うか。 今 、 子 供 た ち は どの 程度 エ ネ ル ギ ー ・環 境 問 題 に 関 して理 解 して い る か に つ い て 本 学理 工 学 部 学 生 を対 象 に 本 学理 工 学 部 渥 美寿 雄 教 授 らが実 施 した調 査 に よ る と、 学 生 の エ ネ ル ギ ー 問題 や環 境 問題 に 関 す る知 識 の希 薄 さを 強 く感 じる。 次 節 に そ の調 査 結 果 を紹 介 す る。 学 校 教 育 で の 資 源 ・エ ネ ル ギ ー 問 題 の取 り扱 い は、 学 習 指 導 要 領 に お い て 規 定 され て お り、 中等 教 育 や 高等 教 育 で社 会 科 、 理 科 な どの科 目を 中心 と して取 り上 げ る こ とが記 述 され て い る。 さ らに、 教 科 横 断 的 な課 題 を取 扱 う 「総 合 的 な学 習 の 時 間」 の導 入 に よ り教 科 問 に ま た が る エ ネ ル ギ ー 問題 の学 習 は取 り扱 い易 くな り、 エ ネ ル ギ ー教 育 を実 践 で き る環 境 は以 前 よ り整 備 さ れ た と言 え る。 しか し、 本 学 理 工 学 部 大 澤 孝 明教 授 らが実 施 した小 ・中 ・高 と学 校 教 員 の意 識 調 査 結 果 に よ る と、 エ ネ ル ギ ー教 育 は環 境 教 育 な どに比 べ あ ま りな さ れ て い な い現 状 が 明 らか に な った。 そ れ は、 教 員 の エ ネ ル ギ ー教 育 に対 す る専 門知 識 の不 足 や普 段 の忙 しさ、 故 に教 材 研 究 をす る時 間 的余 裕 の な い こ と な どが 大 き な理 由 と して挙 げ られ て い る。 ま た、 教 材 が無 味 乾 燥 で あ っ た り、 偏 っ た 内容 を与 え る資 料 が多 か った りと エ ネ ル ギ ー ・環 境 教 育 に相 応 しい 内 容 の 教 材 が 少 な い な ど の問 題 が あ る と報 告 して い る。 次 節 に そ の調 査 報 告 を紹 介 す る。 以 上2つ. の貴 重 な報 告 か ら、 これ まで の学 校 教 育 で は、 真 剣 にエ ネル ギ ー ・環 境 問 題 が 取 り. 上 げ られ て な く、 子 供 た ち は ほ とん ど今 置 か れ て い る世 界 ・日本 の現 状 を理 解 して い な い現 実 が 明 らか にな っ た。 日本 国 の 発 展 と持 続 的 国 家 を 構 築 す るた め に は、 生 涯 教 育 と して エ ネル ギ ー ・環 境 教 育 を行 う必 要 が あ り、 特 に学 校 教 育 にお いて 中 立 な 教 育 と子 供 た ちが 考 え そ して 自分 自身 の 答 え を 出 せ る教 育 を 早 急 に行 う必 要 が あ る と強 く感 じる。. 3.大. 学1年. 生 の エ ネ ル ギ ー 環 境 問 題 の 理 解 度 は?. 近 畿 大 学 理 工 学 部 渥 美 教 授 らは、 本 学 理 工 学 部1年 生 対 象 の 講 義 科 目 「資 源 とエ ネ ル ギ ー」 に お い て、エ ネ ル ギ ー と環 境 の理 解 度 を知 る た め、調 査 を 実 施 した結 果 が、「エ ネ ル ギ ー環 境 教 育 研 究」(VOL.1、NO.12007)に. 報 告 され て い る。. 渥 美 らは、 平 成17、18年 度 の2年 間 で大 学1年 生1,417名 に対 して 、講 義 科 目 「資源 とエ ネ ル ギ ー」 の前 後 に調 査 を実 施 した。 近 畿 大 学 理 工 学 部 は、 代 々木 ゼ ミナ ー ル に よ る合 格 者 平 均 標 準 偏 差 値 で、50∼54で あ り大 学 受 験 希 望 者 の全 国平 均 レベ ル に近 い。 この た あ、 平 均 的 な高 校 生 の知 識 レベ ル や志 向 を知 る貴 重 な情 報 と考 え る。. 4.

(5) エ ネ ル ギ ー ・環境 教 育 の 現状 と大 学 の 役 割. 設 問:「 エ ネ ル ギ ー 問題 」・「環 境 問 題 」 を 中 ・高 等 学 校 で 学 習 した か。 ま た そ の 知 って い る 実 例 を 述 べ よ う。 回 答:環 境 問 題 は 、 約70%の 約40%で. 学 生 が 中 学 ・高 校 で 学 習 して い るの に対 し、 エ ネ ル ギ ー 問 題 は、. あ った。 実 例 記述 で は、 エ ネ ル ギ ー 問 題 に関 して は石 油 お よび 資源 の枯 渇 を あ げた 学. 生 は34.8%で 、次 いで 石 油 や 資 源 の浪 費(6.1%)、 (4%)で. 代 替 エ ネ ル ギ ー の 開 発(5.4%)、. 原子力問題. あ り、 エ ネル ギ ー問 題 の認 知 度 が 低 い こ とが 分 か った。 しか も、 原 子 力 につ いて は、. 「原 発 は危 険 な 発 電 方 法 」 とか 「原 発 の 事 故=原 爆 」 とい った 事 項 を あ げ た 学 生 が お り、 そ の 注 釈 に 「社 会 科 で そ う習 った」 と記 載 され、 改 め て 正 しい エ ネ ル ギ ー教 育 の必 要性 が確 認 され た と述 べ て い る。 一 方 、 環 境 問題 で は、 二 酸 化 炭 素 削減 と答 え た 学生 が ほぼ全 員 に近 く、 地 球 温 暖化 を あ げ た 学 生 は61.1%で 、 そ の 他 オ ゾ ン層 破 壊 、 酸 性 雨 や 砂 漠 化 で あ り、 そ の 割 合 は と もに数 十%以 上 で あ った。 た だ そ の 内容 に つ い て は、 知 識 が 断 片 的 で誤 った理 解 を して い るケ ー ス が か な り見 られ た が、 エ ネ ル ギ ー 問題 の理 解 度 に比 べ、 環 境 問題 の理 解 度 は か な り高 い こ とが報 告 され て い る。 設 問:将 来 に必 要 な エ ネ ル ギ ー源 と して、 増 や す方 が よ い と思 う発 電 方 法 、 使 わ な い方 が よ い と思 う発 電 方 法 は何 だ と思 い ま す か。 回答:増. やす べ き発 電 方 法 と して多 い順 に、 太 陽光 発 電(約90%)、. 風 力 発 電(約75%)、. 熱 、 水 力 、 波 力 発 電 の順 で いず れ もほ ぼ50%前 後 、 燃 料 電 池(38%)、. 原 子 力 発 電(15%)で. 石 炭 、 石 油 火 力 は数%で (約80%)が. 地 、. あ った。 一 方 、 使 わ な い方 が よ い発 電 方 法 と して、 石 油 ・石 炭 火 力. トップ で 次 に原 子 力(約60%)、. 天 然 ガ ス(約45%)、. 新 エ ネ ル ギ ー に 関 して は数. %前 後 とな って い る。 この こ とか ら化 石 資 源 の枯 渇 や二 酸 化 炭 素 に よ る温 暖 化 問題 へ の配 慮 が あ る程 度 高 い知 識 と して持 って お り、 これ が判 断 基 準 とな った もの と考 え られ る。 設 問:20年. 後 太 陽 光 発 電 と風 力 発 電 で 日本 の電 力 は どの程 度 を賄 え るか 。. 回 答:10%∼20%と. 答 え た もの が60%以 上 で あ った。 これ は、 太 陽 光 発 電 と風 力 発 電 で我 々. の電 力 が ほ ぼ全 て賄 われ 、 エ ネル ギ ー問 題 が 解 決 で き る とい った安 易 な論 調 が 巷 間 に見 られ る 中、 学 生 の多 くは これ らに過 大 の期 待 を持 って お らず 、 現 実 的 に見 て い る こ とが 分 か った。 私 は安 心 した。 ちな み に原 子 力 発 電 につ いて 同様 な設 問 を行 った結 果 、10%∼30%と で あ り、 前 問 の使 わ な い方 が よ い発 電 方 法 と して 原 子 力 が 約60%だ. 5. 答 え た ものが70%以. 上. っ たの に対 して 、 以 外 と学.

(6) 近 畿大学教育論叢. 第20巻 第1号(2008・9). 生 は 現 実 的 に見 て い る と感 じた。 これ も少 し安 心 した 。 世 界 の エ ネ ル ギ ー 問 題 の 現 状 か ら して 、 避 けて 通 る こ とが で きな い の が 原 子 力 に 関 す るエ ネ ル ギ ー 教育 で あ る。1992年 に 日本 原 子 力 文 化 振 興 財 団 が 行 った 「日本 と ヨー ロ ッパ の 『エ ネ ル ギ ー と環境 』 に 関 す る生 徒 の意 識 調 査」 で も原 子 力 発 電 の 原 理 を 尋 ね た 問題 で、 調 査 国 中 で 日 本 が最 も低 い 正 解 率 で あ り、 知 識 の低 さ と科 学技 術 へ の 関心 の低 さが 指摘 され て い る。 この 調 査 で は、 原 子 力 発 電 の 原理 と して 「ウ ラ ン」 と 「核 分 裂 」 とい う2項 目を 選 ぶ設 問 を 用意 して お り、 日本 で は こ の正 答 率 が38.3%で 、 ス イ ス(89.8%)、 (85.8%)に. チ ェコ ス ロバ キ ア(88.8%)、. ドイ ツ. 比 べ て 格 段 に低 い こ とが 報 告 され て い る。. そ こで 本 学 学 生 に、 「『熱 エ ネル ギ ー』 に よ り、 『蒸 気 を 作 り、 ター ビ ンを 回 して 』 発 電 して い る。」 まで を 完 全 な 正 解 とす る4つ の 空 欄 を 設 けた 設 問 を 実 施 した 。 『原 子 力 発 電 は 、[互三≡]の[璽]に タ ー ビ ン を 回 し て1発. よ っ て 発 生 した1熱 エ ネ ル ギ ー1に よ り1蒸 気 を 作 り、. 電 し て い る 。』. 回答 結 果 は、 「ウ ラ ン」 の 「核 分 裂 」 ま で の正 解 者 は38.9%と14年. 前 の 日本 原 子 力 文 化 振 興 財. 団 に よ る高 校 生 の調 査 結 果 と同程 度 とな った。 さ らに 「熱 エ ネ ル ギ ー」、 「蒸 気 を作 り、 タ ー ビ ンを 回 して」 ま で の 完 全 な 正 解 者 は、 そ れ ぞ れ12.7%と な り、 極 め て 低 い こ とが 分 か った。 原 子 力 の教 育 に 関 して は、14年 前 と同 じで ほ とん ど学 校 教 育 で な さ れ て い な い こ とが示 唆 さ れ た。 理 科 系 進 学 者 で の正 解 率 が こ の程 度 で あ る こ とを考 え る と、 文 科 系 進 学 学 生 の正 解 率 は さ らに 低 い もの と予 想 さ れ る。 そ の他 の ア ンケ ー ト結 果 を見 て も、 エ ネ ル ギ ー ・環 境 関連 の語 句 は知 っ て い る が語 句 の意 味 につ いて は ま る っ き り的 はず れ の説 明 しか で き て い な い学 生 が多 く見 られ た。 たぶ ん 、 子 供 た ち の知 識 は、 学 校 教 育 か らで な くテ レ ビや 新 聞 、 雑 誌 と言 っ た マ ス コ ミ情 報 か ら得 られ た断 片 的 な もので あ る こ とが 推 測 され る。 しっか りと説 明 で き る知 識 は、 初 等 ・中等 学 校 教 育 で の き ち っ と した体 系 的 な学 習 経 験 が 必 要 で あ る こ と を物 語 っ て い る。 我 が 国 のエ ネル ギ ー ・環 境 教 育 の遅 れ を 痛 感 させ られ た。. 4.今. エ ネ ル ギ ー 教 育 の 現 場 は?"教. 員 の 声". エ ネ ル ギ ー ・環 境 問 題 は、 人 類 に と って 克 服 す べ き重 要 な 課 題 と して 、 現 在 、 学 校 教 育 の 中 で も取 り組 み が 進 め られ よ う と して い る。 エ ネ ル ギ ー ・環 境 に関 す る学 習 は、 社 会 、 経 済 、 資 源 、 科 学 技 術 、 生 活 様 式 な ど様 々な 観 点. 6.

(7) エ ネ ル ギ ー ・環 境 教 育 の 現 状 と大 学 の 役 割. が 複 雑 に絡 み 合 った 多 面 的 な 学 習 で あ り、 これ まで 理 科 を 中心 に社 会 科 、 公 民 科 、 地 理 歴 史 科 や 家 庭 科 な どで 扱 わ れ て きた が 、 昨 今 の エ ネ ル ギ ー ・環 境 問 題 の 多 面 的 波 及 に伴 い、 広 い視 野 に立 った 総 合 的 な 学 習 が 要 請 され て きた 。 具 体 的 に は、 環 境 負 荷 の 低 減 と と もに、 エ ネル ギ ー 資 源 の 安 定 確 保 、 経 済 成 長 の 維 持 、 新 た な エ ネ ル ギ ー 源 の確 保 、 エ ネ ル ギ ー ・シ ス テ ムの 在 り 方 な どの 課 題 を 含 み 込 ん だ 総 合 的 な 学 習 で あ る と され て い る。 エ ネ ル ギ ー 教 育 は、 法 制 化 と学 校 教 育 の 両 面 で エ ネル ギ ー 教 育 推 進 の た め の 整 備 が 進 あ られ て い る。 平 成14年 に は、 「エ ネ ル ギ ー 政 策 基 本 法 」 が 施 行 さ れ、 これ を 受 け て決 定 され た 「エ ネ ル ギ ー 基 本 計 画 」 で は学 校 で の エ ネ ル ギ ー 教 育 の 充 実 を 図 る こ とが 明 記 され て い る。 また 同 年 に施 行 され た 「環 境 保 全 ・環 境 教 育 推 進 法 」 で は国 ・県 な どが 学 校 教 育 にお け る環 境 教 育 の 充 実 と教 員 の 資 質 向 上 に必 要 な 措 置 を 講 ず る こ とが 規 定 され た 。 一 方 、 平 成14年 度 に全 面 実 施 され た 新 学 習 指 導 要 領 で は、 各 教 科 にお い て エ ネ ル ギ ー と環 境 の 問 題 を 総 合 的 に捉 え る視 点 や 内 容 が 拡 充 され 、 また 「総 合 的 な 学 習 の 時 間 」 も新 設 され 、 これ まで 以 上 に、 各 学 校 や 地 域 に お い て エ ネ ル ギ ー 教 育 に取 り組 む た め の 環 境 の 整 備 が 行 わ れ て きた 。 この よ う に、 エ ネ ル ギ ー 教 育 につ い て の枠 組 み は で き て き た が 、 この 枠 の 中 に 何 を 入 れ る か、 つ ま り、 授 業 の 進 あ方 、 課 題 等 に つ い て は 現 場 の 教 員 に一 任 され て い るの が 現 状 で あ り、 これ まで エ ネ ル ギ ー 教 育 を 受 け て こな か った 教 員 に と って は 大 きな 戸 惑 い とな った 。 現 在 、 教 育 現 場 で は 様 々な 試 み が 始 あ られ て い るが 、 エ ネ ル ギ ー 教 育 の 難 しさ、 ま た 教 科 横 断 的 総 合 学 習 を 実 施 す る上 で 解 決 しな け れ ば な らな い 課 題 が 多 く表 面 化 した。 そ こで、 エ ネ ル ギ ー 教育 の現 状 を 把 握 し、 そ の 問 題 点 を 集 約 して 、 そ の 解 決 の た め 大 学 と し て何 が で き る か を 模 索 す る 目的 で、平 成17年 に近 畿 大 学 理 工 学 部 大 澤 孝 明教 授 らは、「総 合 的 な 学 習 時 間」 を 担 当 して い る先 生 方 を 対 象 に 大 阪 府 、 和 歌 山 県 、 奈 良 県 の 小 ・中 ・高 等 学 校2,241 校(ア. ンケ ー ト回収 率 約20%)に. 調 査 を実 施 した の で 以 下 に 紹 介 す る。. 設 問:エ ネ ル ギ ー ・環 境 教 育 に 関心 が あ りま す か。 回答:「 非 常 に関 心 が あ る」 「関心 が あ る」 が小 ・中 ・高校 教 員 と もに8割 以 上 の結 果 が 得 ら れ、 「ま っ た く関心 が な い」 に至 って は ほ とん ど い な い と い う結 果 を 得 た。 この こ とか ら、 エ ネ ル ギ ー ・環 境 教 育 に対 す る教 員 の 関心 は 高 い と言 え る。 設 問:エ ネ ル ギ ー環 境 教 育 に 関 す る取 り組 み に つ い て お 答 え くだ さい。 回答:程 度 の差 こそ あ れ、 エ ネ ル ギ ー ・環 境 教 育 に取 り組 ん で い る とい う先 生 は、5割. 強で. あ った。 しか し、 前 間 で エ ネ ル ギ ー ・環 境 教 育 に対 す る 関心 の高 さ が 明 らか に な って い る に も. 7.

(8) 近 畿大学教育論叢. 第20巻 第1号(2008・9). か か わ らず 、4割. 強 が 「あ ま り取 り組 ん で いな い」 「ま った く取 り組 ん で いな い」 と答 え て い. る。 つ ま り、 エ ネ ル ギ ー ・環 境 教 育 に対 して 関 心 は あ る が、 実 行 に は移 せ て い な い、 ま た は、 移 せ な い何 らか の 障 害 が あ る と推 察 され る。 設 問:こ れ ま で の エ ネ ル ギ ー環 境 教育 に関 す る取 り組 み を お 答 え くだ さい。 回答:「 エ ネ ル ギ ー ・環 境 教 育 に関 す る特 別 な教 科 ・科 目を設 け て い る」 「総 合 的 な 学習 の 時 間 を利 用 して い る」 「関 連 す る教 科 ・科 目 の教 員 と連 携 して行 っ て い る」 「担 当 す る教 科 ・科 目 の 中 で個 人 的 に行 って い る」 「HRや. クラ ブ 活動 な どの特 別 活 動 で 行 って い る」 「特 に行 って い. な い」 の 中 か ら選 択 す る方 法 で調 査 した結 果 、 多 くが総 合 的 な学 習 の 時 間 や個 人 的 に行 って い る よ うで あ った。 エ ネ ル ギ ー ・環 境 教 育 は、 複 雑 な 多 面性 や教 科 横 断 的 な側 面 が強 く、 単 一 の 教 科 ・科 目で 取 り扱 う こ とが 難 しい に もか か わ らず 、 関 連 す る教 科 ・ 科 目の教 員 と連 携 して行 っ て い る方 は少 な い こ とが分 か った。 この原 因 に つ い て は、 各 教 師 の エ ネ ル ギ ー ・環 境 教 育 に対 す る関 心 の温 度 差 が あ げ られ、 連 携 が と りづ らい現 状 が推 測 され る。 ま た、 エ ネ ル ギ ー ・環 境 教 育 に関 す る特 別 な教 科 ・科 目を設 け て い る とい う学 校 は、 エ コ ・ス クー ル や エ ネ ル ギ ー教 育 実 践 校 に選 定 さ れ て い る学 校 で あ り、 そ うで な い学 校 が特 別 な教 科 ・科 目を設 け て い る とい う 回 答 は なか った。 設 問:エ. ネ ル ギ ー ・環 境 教 育 に関 す る授 業 を実 施 した際 、 扱 った主 な 内容 は何 です か?. 回 答:各 校 と も様 々 な 内容 を取 り扱 って エ ネ ル ギ ー ・環 境 教 育 を行 った よ うで あ る が、 傾 向 と して 新 エ ネ ル ギ ーや 環 境 問 題 に重 点 が 置 か れ て い る。 しか し、 エ ネル ギ ー とは何 な の か、 人 間 の 活 動 ・経 済 産 業 とエ ネル ギ ー ・環 境 と の関 連 性 な どの根 本 的 な 問題 に は触 れ られ て い な い よ うで あ り、 ま た教 科 書 に載 って い る程 度 で 、 踏 み込 ん だ授 業 は行 って い な い と い う回答 が ほ とん どで あ っ た。 しか し、 エ コ ・ス ク ール や エ ネル ギ ー教 育 実 践 校 に選 定 され て い る学 校 に は、 熱 心 な 教 員 が いて 、 特 別 な 予 算 が も らえ る た め、 施 設 の見 学 や 実 験 教 材 の購 入 等 も可 能 で あ り、 そ うで な い学 校 と比 べ 内 容 に大 きな 差 が あ る よ う だ。 設 問:エ ネ ル ギ ー ・環 境 教 育 に関 す る授 業 に用 いて い る主 な 教 材 や 資 料 は何 で す か 。 回 答:各 教 科 ・科 目の 教 科 書 と イ ン ター ネ ッ トや新 聞、TV、. 雑 誌 な どか ら作 成 した 資 料 が. ::多い 結 果 とな った 。 意 外 と多 くの 先 生 は、 マ ス メデ ィ アを 利 用 して 課 題 や 資 料 収 集 を 行 っ て い る よ うだ 。 この 理 由 と して は、 公 的 機 関 や 公 益 法 人 、 民 間 企 業 が 作 成 した 教 材 や 資 料 が 各 機 関 や 各 企 業 の 主 観 が 入 って い る場 合 が 多 い た め 、 授 業 で の 使 用 につ いて よ く吟 味 す る必 要 が あ る とい う意 見 が 寄 せ られ て い た 。 エ ネ ル ギ ー や 環 境 に関 す る客 観 的 で 、 中 立 な 最 新 の 情 報 を. 8.

(9) エ ネ ル ギ ー ・環 境 教 育 の現 状 と大 学 の役 割. ス ム ー ズ に提 供 す る こ とが で き る よ うに な れ ば、 エ ネ ル ギ ー ・環 境 教 育 に取 り組 む 教員 も増 え る の で は な い か と考 え る。 設 問:エ ネ ル ギ ー ・環 境 教 育 に 関す る授 業 を行 うた め の教 材 や 資料 は量 的 に充 実 して い る と 思 い ます か? 回答:「 不 足 して い る と思 う」 「非 常 に不 足 して い る と思 う」 が6割 以 上 を 占 め て い た。 前 間 と 同 様 に、 エ ネ ル ギ ー や環 境 に 関 す る様 々 な 情 報 は、 氾 濫 して い る が、 そ の 出 所 先 が 企 業 で あ っ た り、 諸 団体 で あ っ た りで 中立 性 に疑 問 が あ り、 安 心 して教 育 に用 い る こ との で き る もの は ま だ ま だ不 足 して い る よ うで あ る。 設 問:エ. ネ ル ギ ー ・環 境 教 育 の教 材 や資 料 は 内容 が適 切 だ と思 い ます か。. 回 答:「 生 徒 た ち の レベ ル に は難 しす ぎ る も のが 多 い」 が最 も多 くな って い る。 この こ と か ら、 エ ネル ギ ーや 環 境 に関 す る専 門 的 な情 報 は あ る もの の、 「教 え る」 とい う立 場 か ら作 られ 、 噛 み 砕 か れ た教 材 の少 な さが 推 察 で き る。 設 問:エ. ネル ギ ー ・環 境 教 育 に関 す る授 業 を行 う場 合 、 効 果 的 だ と思 われ る教 材 や資 料 は何. だ と思 い ます か 。 回 答:「 ビデ オ ・映画 」 「模 型 や 実 物 」 「実 験 用 の機 材」 「資 料(写 真 や 統 計 資 料 、 図 鑑 な ど)」 な どが 効 果 的 で あ る との 回 答 が 多 か っ た。 いず れ も視 覚 的 に訴 え る教 材 で あ るが 、 中 に は、 生 徒 た ちの 生 活 に関 連 付 けた 身 近 な 課 題 ・教 材 で 授 業 を展 開 で きれ ば と の回 答 もあ っ た。 設 問:2002年. 度 か ら設 立 され た 「総 合 的 な 学 習 の時 間 」 で 、 先 生 の学 校 で は ど の よ う な課 題. が取 り上 げ られ て い ます か 。 回 答:「 国 際理 解 」 「自然 環 境 」 「エ ネ ル ギ ー ・資 源 」 「福 祉 ・健 康 」 「情 報 の 利 用 」 「社 会 生 活」 「自 己表 現 」 「そ の 他」 の 中 か らの 複 数 回 答 の 結 果 、 「自然 環 境 」 は取 り上 げ られ て い た が、 「エ ネ ル ギ ー ・資 源」 につ いて は取 り上 げて い る学 校 は少 な い こ とが 分 か った。 「総 合 的 な 学 習 の 時 間」 で エ ネ ル ギ ー ・環 境 問題 を 実 施 して い る学 校 で 、 どの 程 度 の 時 間 が 割 り当 て られ て い るか と言 う設 問 に対 し、 ほ とん どの 学 校 が50%以. 下 で あ り、 時 数 の 少 な い総. 合 的 な学 習 の 時 間 で、 しか も実 施 して い る学 校 も少 な い中、 現 状 と して エ ネ ル ギ ー ・環 境 教 育 を受 け て い る子 供 た ちが い か に少 な い か推 測 で き る。 設 問:こ. れ ま で エ ネ ル ギ ー ・環 境 問 題 を 扱 っ た こ と の な い 学 校 の 先 生 で 、 今 後 、 エ ネ ル. ギ ー ・環 境 問題 を取 り上 げ る予定 は あ りま す か。 回 答:「 あ る」 と 「な い」 が ほぼ 同 じ く ら いで あ った。 そ して 「場 合 に よ って は考 え る」 が. 9.

(10) 近畿大学教育論叢. 第20巻 第1号(2008。9). 最 も多 い結 果 と な って い た。 設 問:エ ネ ル ギ ー ・環 境 教 育 を行 う上 で、 どの よ うな 問題 が あ る と思 わ れ ま す か。 回答:エ. ネ ル ギ ー ・環 境 教 育 を 行 う上 で 、 ど の よ うな 問 題 が あ る か につ い て は、 「教 師 の 時. 間 的 な 制 約 」 「教 材 の 不 足 」 「予 算 ・機 器 の不 足 」 「授 業 時 間(枠)の. 問 題 」 「専 門 知 識 の 不 足 」. 「関心 の 欠如 」 「教 師 ・協 力 者 の人 数 の不 足 」 「外 部 団 体 か らの 支 援 の 不 足 」 「クロ ス カ リキ ュラ ム教 育 の難 しさ」 「そ の他 」 の 中 か らの 複 数 回 答 の 結 果 、 「教 師 の 時 間 的 な制 約 」 「教 材 の 不 足 」 「授 業 時 間 の 問題 」 「専 門 知 識 の不 足 」 が そ れ ぞ れ高 か った。 こ の こ とか ら、 教 師 の 時 間 が不 足 して い るか ら、 専 門知 識 を学 ぶ こ と や十 分 な教 材 研 究 が で きず 、 な か な か エ ネ ル ギ ー ・環 境 教 育 を 積 極 的 にで き な い の で は な いか と の推 測 が で き る。 そ の他 に も、 ク ロ ス カ リキ ュ ラ ム の難 しさ、 教 師 ・協 力 者 の不 足 を問 題 と感 じて い る 回答 も多 くあ っ た。 設 問:エ. ネル ギ ー ・環 境 教 育 を実 施 す る上 で の課 題 を、 ど の よ う にす れ ば解 決 で き る と お考. え で す か 。 ま た、 大 学 ・産 業 界 な ど に要 望 され る こ と が あ ります か 。 回 答:教 員 の 数 を増 や し、 個 人 の 時 間 を 増 や す こ と で、 エ ネ ル ギ ー ・環 境 教 育 を行 うた め の 勉 強 や 、教材 研 究 の 時 間 を つ くる こ とが 出 来 る との 回 答 が 多 か った 。 また 、教 師 の エ ネ ル ギ ー ・ 環 境 問 題 に対 す る関 心 を 増 や す に は、 入 試 の 問 題 と して エ ネル ギ ー ・環 境 の問 題 を あつ か っ た 方 が よ い との 意 見 も あ った 。 また 、 要 望 につ いて は、 大 学 の 協 力 が 欲 しい、 出前 授 業(実 験)を 行 って 欲 しい、 的 確 な情 報 や、 授 業 の 実 践 例 な どの 入 手 を 容 易 に行 え る よ う に して 欲 しい な ど の要 望 が 多 か っ た。 エ ネ ル ギ ー や 環 境 に 関 す る情 報 は、 教 育 を行 う際 に は 常 に最 新 の もの が 必 要 で あ り、 ま た生 徒 に 「教 え る」と い う立 場 か らそ の 情 報 を 噛 み 砕 き、よ り生 徒 た ちが 理 解 しや す い よ うな 情 報 と教 材 の提 供 が ほ しい との 要 望 も多 か った 。 設 問:指 導 事 例 につ い て 教 え て くだ さい。 回 答:エ ネ ル ギ ー ・環 境 教 育 に関 す る事 例 は、 実 践 例 が少 な く、 ご く一般 的 な 事 例 が 多 く、 しか も環 境 とか 省 エ ネ ル ギ ー、 新 エ ネ ル ギ ー 関 係 の 事 例 が 多 か った。 エ ネ ル ギ ー と環 境 に関 す る教 育 は、 発 達 段 階 に即 して 系 統 的 に行 わ れ るべ きで あ るが 、 実 際 の教 育 現 場 で は、 各教 員 の エ ネ ル ギ ー ・環 境 教 育 に対 す る関心 の 温 度 差 な どか ら、 広 が りの あ る教 育 が実 施 され て い な い の が現 状 で あ る。 ま た、 エ ネ ル ギ ー ・環 境 問題 を取 り扱 って い な い 学校 も多 くあ るの で、 進 学 し、 そ こで エ ネ ル ギ ー ・環 境 問題 に 関 す る授 業 を展 開 しよ う と した場 合 、 生 徒 の 中 に エ ネ ル ギ ー と環 境 に対 す. 一10一.

(11) エ ネル ギ ー ・環 境 教 育 の現 状 と大 学 の役 割. る知 識 に差 が あ る た あ に、 基 礎 か ら教 え る こ と に な り、 いつ ま で経 って も基 礎 的 な教 育 か ら脱 す る こ とが で きず 、 ま た生 徒 に よ って は 同 じよ う な こ と を何 度 も聞 くと い う よ う な状 況 が あ る こ と も記 載 され て いた 。 例 外 的 に、 エ コ ・ス クー ル や エ ネ ル ギ ー 教 育 実 践 校 に選 定 され た 学 校 な どで は、 時 間 もあ る 程度 取 って お り、 また 学 校 生 活 を 通 して 段 階 的 に学 習 が で き る よ う にエ ネ ル ギ ー ・環 境 教 育 に 関 す る科 目を 設 けて い る と こ ろ もあ った。 ま た、 段 階 的 な エ ネ ル ギ ー ・環 境 教育 を 行 う に は、 あ る程 度 専 門 的 な 知 識 を 有 す る教 員 で な けれ ば、 踏 み込 ん だ授 業 が で きな い とい う こ と もエ ネ ル ギ ー ・環 境 教育 が 広 く学 校 教 育 場 で 取 り扱 う こ とが で き な い理 由 の一 つ で あ る こ とが推 察 で きた。 以 上 現 場 の先 生 方 の現 状 を調 査 した結 果、 我 々大 学 人 に期 待 され て い る点 が 多 々明 らか にな り、 現 場 の先 生 方 の現 状 か ら察 して大 学 と して しな けれ ば な らな い こ と も明 白 とな った。 小 ・ 中 ・高 等 学 校 の 先 生 方 の 多 くは、 エ ネ ル ギ ー ・環 境 教 育 は大 事 で あ る こ と は認 識 して い るが 、 「準 備 の 時 間 が な い」、「適 当 な教 科 書 や教 材 を購 入 す る 資金 が な い」、「知 識 不 足 で あ る」、「授 業 時 間 が な い」 な ど様 々 な理 由 で、 学 校 教 育 に お い て エ ネ ル ギ ー ・環 境 教 育 の活 性 化 が進 ん で い な い と言 った生 の声 を聞 くこ とが で き、 大 変 参 考 に な った。 我 々 は、 現 場 の先 生 方 が エ ネル ギ ー ・環 境 教 育 を総 合 的 学 習 の時 間 な どで 積 極 的 に取 り上 げ て い た だ け る よ う に お 手 伝 い を して い か ね ば な らな い と痛 感 した。 そ れ は、 例 え ば 「エ ネ ル ギ ー ・環 境 教 育 ネ ッ トワ ー クの 構 築 」、 「研 修 会 の 開 催 」 「出 前 授 業 」、 「教 材 の 開 発 」、 「解 説 書 の 作 成 」、 「ビデ オ 教 材 の 製 作 」 「イ ンタ ー ネ ッ トを用 い た情 報 公 開」 な どで は な い か と考 え る。. 5.近. 畿 大 学 の"エ. ネ ル ギ ー ・環 境 教 育 へ の 援 助". 近 畿 大 学 原 子 力 研 究 所 は 、1987年(昭 和62年)よ. り熱 出力1Wの. 極低出力近畿大原子炉を用. い て、 全 国 の 小 ・中 ・高 等 学 校 教 員 を 対 象 に 「原 子 炉 実 験 ・研 修 会 」 を 開 催 し、 現 在 も一 般 の 方 々 も含 め 幅広 く受 け入 れ て い る。 ま た、 様 々な イ ベ ン ト等 も開 催 し、 エ ネ ル ギ ー ・環 境 教 育 の一 助 とな って い る。 本 学 に お け る この よ うな 活動 は 、 エ ネ ル ギ ー ・環 境 教育 に お い て 避 け る こ との で き な くな った原 子 力 分 野 の理 解 活動 の一 環 と して始 め た もの で、 た ぶ ん、 この よ うな エ ネ ル ギ ー教 育 に お け る原 子 炉 や放 射 線 の本 格 的研 修 会 は、 我 が 国 で初 め て で あ ろ う。 本 学 が こ の よ うな研 修 会 等 を始 め た き っか け は、 昭和62年 に 中 ・高 等 学 校 の教 科 書 を執 筆 し て い る先 生 方 の集 い に本 研 究 所 の教 授 が講 演 さ れ、 そ の とき参 加 さ れ た先 生 方 が原 子 炉 を見 た. 一11一.

(12) 近 畿大 学教 育 論 叢. 第20巻 第1号(2008・9). こ と も触 った こ と もな い の に 原 子 力 の事 を 教 科 書 に 書 く自信 を 持 て な い の で 、1度. しっか り勉. 強 し、 学 校 教 育 や 教 科 書 に反 映 した い との 強 い 要 望 が あ り、 実 現 した も の で あ る。 当時 は 今 ほ ど、 エ ネ ル ギ ー ・環 境 教 育 が重 要 で あ る と の認 識 は強 くな か った が、 や は り経 済 ・エ ネ ル ギ ー ・環 境 の 持続 的 発 展 の た め に は 原 子 力 エ ネ ル ギ ー の 役 割 は 大 きい との認 識 は あ った 。 我 々 は、 これ を き っか け に、 原 子力 は 資 源 の 乏 しい 我 が 国 に と って 大 変 重 要 な エ ネ ル ギ ー 源 で あ り、 ま た放 射 線 は生 活 に密 着 した様 々 な産 業 や 医 療 の 分 野 で 利 用 され て お り、 豊 か な 国 づ くりを 目指 す た め に は 原子 炉 や放 射 線 を うま く活 用 して い くこ とが 賢 明 な 選 択 で あ る との 認識 か ら以 後 研 究 所 の 総意 と して理 解 活動 を や って き た。 現 在 我 が 国 の大 学原 子 炉 は、 京 都 大 学 、 東 京 大 学、 近 畿 大学 の3基 で あ り、 教 育 ・研 修 会 に 適 した本 学 原 子 炉 が これ ま で行 って き た エ ネ ル ギ ー ・環境 教 育 活動 に つ い て記 す。 5.1原. 子 力 研 究 所 の 設 立 と原 子 炉 の 導 入. 近 畿 大 学 初 代 総 長 世 耕 弘一 氏(当. 時経 済 企 画 庁 長 官)は 、 昭和34年5月. 、 東 京 晴海 で 開催 さ. れ た 国 際 見 本 市 の 米 国 館 に展 示 さ れ た教 育 ・研 究 用 原 子 炉UTR(UniversityTeachingand ResearchReactor)を. 視 察 し、 エ ネ ル ギ ー資 源 に 乏 しい 日本 は将 来 必 ず原 子 力 が重 要 な エ ネ ル. ギ ー源 に な る との考 え で、 原 子 炉 の購 入 を決 意 した。 この 時、 昭和 天 皇 ・皇 后 両 陛下 も御 高 覧 さ れ ま した(写 真1)。 このUTRは. 、 ア メ リカ が 自国 の 原 子 力 産 業 を全 世. 界 に宣 伝 す る使 命 を担 い、 東 京 の見 本 市 が終 わ り次 第 、 エ ジ プ トの カ イ ロ に デ モ ンス トレー シ ョ ン用 と して送. 灘 藷1懲蹴∴lll竃 写真1昭. 政 策 に関 わ る こ と、 しか もア メ リカ も関与 す る 問題 で あ り、 そ う 簡 単 に は い か な か っ た が 努 力 の 結 果 、 一 年. 後 、UTRの. 和34年5月 ・東 京国際見本市 に てUTR原 子 炉展示。 昭和 天皇 ・ 皇后両陛下、御高覧。. 製 造 メー カ ー と近 畿大 学 間 で売 買 契 約 が ま と ま り、早 々、総 長 は原 子 力 研 究 所 設 置. 準 備 委 員 会 を発 足(昭 和34年5月)し. 、 翌 昭 和35年4月. に研 究 所 を原 子 力 の研 究 ・教 育 を 目的. とす る全 学 共 同 利 用 施 設 と して 設 立 した。 ま た、 同 時 に 理 工 学 部 に原 子 炉工 学 科 を設 立 した。 近 畿 大 学 は、 昭 和35年8月. に国 か ら原 子 炉 の設 置 認 可 を受 け、 翌 年 昭 和36年11月11日. 学 原 子 炉 は、 日本 に お け る民 間及 び大 学 原 子 炉 第1号. 一12一. と して最 大 熱 出力0,1Wの. に近 畿 大. 臨 界 に到 達 し.

(13) エ ネ ル ギ ー ・環 境 教 育 の現 状 と大 学 の役 割. た。 そ の後 、 昭 和49年 に国 の 設 置 変 更 許 可 を 受 け、熱 出力1Wに. パ ワー ア ップ し現 在 に至 って. い る。 5.2近. 畿大学原子炉の特徴. 近 畿 大 学 原 子 炉 は、1950年 代 後 半 、 ア メ リカ ン ・ス タ ンダ ー ド社 に よ って 開発 さ れ た教 育 ・ 研 究 用 低 出力 原 子 炉 で、 軽 水 減 速 黒 鉛 反 射 非 均 質 型 熱 中性 子 炉 と 呼 ば れ て い る。 こ の タ イ プ の 原 子 炉 は、世 界 に い くつ か あ る が、最 大 熱 出力1Wの. 低 出力 で 運 転 して い るの は、本 学 だ け で. あ る。 こ の炉 の特 徴 は、 極 低 出力 炉 で あ る た め、 熱 の発 生 が な く、 ウ ラ ンの燃 焼 が微 量 で あ る た め放 射 能 の量 が 極 め て少 な く、 炉 心 へ の接 近 が容 易 で あ る。 しか も、 炉 心 構造 も極 め て わ か りや す く、 約20分 程 度 で フル パ ワ ー と な り、 学 生 な ど の教 育 ・訓 練 ・研 修 な ど に適 した原 子 炉 で あ る。 ま た、 炉 心 は2分 割 され て い る た め、 大 型 試 料 の照 射 も可 能 で あ り、 水 領 域 が 少 な い こ とか ら、 炉 物 理 実 験 、 生 物 実 験 や 放 射 線 計 測 器 の校 正 な ど に適 した研 究 炉 で も あ る(写 真2、 3)o. 呂¢麟 軸1劉 醜 撚 乳創 じ糟 髄=畷1 写 真2近. 5.3原. 、 こ、弱. 写 真3原. 畿大学原子炉. 響. 重ぎ赫 異 謬{輯. 子 炉"炉 心". 子 力 研 究 所 の活 動. 学 内 利 用 で は、 原 子 炉 工 学 、 原 子 力 安 全 学、 放 射 線 計 測 学 、 放 射 線 生 物 学 、 放 射 線 管 理 学 、 保 健 物 理 学 等 の分 野 の研 究 ・教 育 お よ び本 学 の学 生 実 験 実 習 を実 施 して い る。 学 外 利 用 ・活 動 で は、 全 国大 学 原 子 炉 共 同利 用 施 設 と して の研 究 分 野 を初 め、 他 大 学 学 部 学 生 の原 子 炉 実 習 、 小 ・中 ・高 等 学 校 の教 員 お よ び一 般 市 民 を対 象 と した原 子 炉 実 験 ・研 修 会 や 放 射 線 学 習 研 修 会 、 高 校 生 を対 象 と した原 子 炉 運 転 研 修 会 や見 学 会 な どを実 施 して い る。 ま た、 原 子 炉 利 用 以 外 の活 動 と して、 中学 生 を対 象 に した夏 休 み科 学 教 室 や放 射 線 教 室 の 開催 、 小 学 生 を対 象 に した夏 休 み 親 子 自然 教 室 の 開催 、 出前 授 業 等 の活 動 を長 年 実 施 して い る。 さ らに 、. 一13一.

(14) 近畿大学教育論叢. 第20巻 第1号(2008・9). エ ネル ギ ー教 育 教 材 開 発 や ビデオ 制 作 な ど も行 っ て い る。 研 究 所 は、 大 学 と して エ ネ ル ギ ー ・環 境 教 育 に直 接 携 わ る小 ・中 ・高 等 学 校 の先 生 方 を サ ポ ー トす る た め様 々 な試 み をす で に20年 前 よ り実 施 して お り、 それ な りの成 果 が あ っ た もの と 自負 して い る。 この よ う に私 ど も は、 研 究 ・教 育 、 研 修 会 、 施 設 管 理 維 持 を10名 の 教 員 、2名. の技. 術 員 と2名 の 事 務 職 員 で 運 営 して い る。 以 下 に活 動 内容 につ いて 少 し詳 細 に紹 介 す る。 5.4原. 子 力 人 材 育 成 と して の原 子 炉 利 用. 昭 和36年4月. に開 講 され た 本 学 理 工 学 部 原 子 炉 工 学 科 は、 理 工 学 部 改 組 に よ り平 成14年 に閉. 講 され る ま で の41年 間 、 原 子 力 技 術 者 の育 成 を 目指 して 原 子 炉 を活 用 した教 育 ・研 究 を行 い、 そ の 間 約2,800名 の卒 業 生 を 世 に送 った 。 理 工 学 部 改 組 後 は、 理 工 学 部 電 気 電 子 工 学 科 エ ネ ル ギ ー工 学 コー ス と して 原 子力 分 野 の 技 術者 の育 成 を 行 って い るが、 原 子 力専 門 科 目 は原 子 炉工 学 科 の 時 の約5分. の1程 度 で十 分 な原 子 力 技 術 者 育 成 まで には 至 って い な い。 現 在 、 原 子 炉及. び放 射 線 取 扱 施 設 等 を 活用 して学 部 学 生 実 習 を行 って い るの は、 理 工 学 部 の電 気 電 子工 学科 エ ネ ル ギ ー工 学 コー ス(後 期3コ 習(後 期3コ. マ)、 生 命 科 学 科(前 期3コ. マ)及. び薬 学 部 の 薬 品 放 射 化 学 実. マ)で あ る。. ま た、 他 大 学 に お け る原 子 力 関係 学 部 ・学 科 の学 部 学 生 で原 子 炉 を所 有 しな い大 阪大 学 、 名 古 屋 大 学 、 九 州 大 学 、 神 戸 大 学 、 徳 島大 学 の学 部 学 生(毎 年 約5∼60名)の. 原子炉運転実習 を. 30年 前 よ り実 施 して い る。 昨 年 、 原 子 力 人 材 育 成 プ ログ ラ ム(経 済 産 業 省 委 託 事 業:チ. ャ レ ン ジ原 子 力 体 感)に 応 募 し、. 「近 畿 大 学 炉 を 用 い た 体 験 ・実 践 型 の 実 習 教 育 」 が 採 択 され 、現 在 、 大 阪 大 学 を初 め9大 学 の 学 部 学 生(約200名)の 5.5小. 原 子 炉 運転 実 習 を 実施 して い る。. ・中 ・高 等 学 校 教 員 の 知 識 ・質 向 上 の た め の 原 子 炉 運 転 研 修 会. この 研 修 会 は、 日本 原 子 力 産 業 協 会 お よ び関 西 原 子 力 懇 談 会 の委 託 事 業 と して 、 昭 和62年 よ り毎 年 全 国 の 小 ・中 ・高 等 学 校 の 教 員 や 一 部 高 校 生 及. ・ .。. 一14一. 鞭.

(15) エ ネ ル ギ ー ・環 境 教育 の 現 状 と大 学 の 役 割. 実 験 、 さ らに放 射 線 の 測定 実 習 な どか ら構 成 され て お り、 で き るだ けわ か りや す く、 現 場 に役 立 つ講 義 実 習 を 心 が け、 参 加 す るメ ンバ ー や 研 修 日程 に よ って 内 容 は 異 な るが 、 以 下 の よ うな カ リキ ュラ ム で 実 施 して い る(写 真4)。 必 須 講 義:放 射 線 の基 礎 、 原 子 炉 の基 礎 物 理 、 近 畿 大 学 炉 の概 要 特 別 講義:放. 射 線 の健 康 影 響 、 放 射 線 の利 用 、 世 界 と 日本 の エ ネ ル ギ ー現 状 な ど. 実 習:1.原. 子 炉 運 転 実 習(専. 門課 程 で は、臨 界 近 接 実 習 、中性 子 利 用 実 験 、放 射線 の 計 測、. 表 面 汚 染 計 の取 扱 い と表 面 汚 染 密 度 の測 定、 放 射 化 実 習 な どを実 施) 2.放. 射線の基礎実験. 3.環. 境放射線の測定. 4.実. 践 教育 教 材 の 作 成 と実 習(霧 箱 の作 成 と α線 の 測定 、 エ ネ ル ギ ー の移 り変 わ り に 関す る実 践 教 育 、 様 々 な発 電 方 法 と模 型 を用 い た実 践 教 育 な ど実 施). 5.6小. ・中 学 生 を 対 象 に した エ ネ ル ギ ー 教 室. 我 々 の原 子 力 研 究 所 で は、 で き る だ け子 供 た ち に エ ネ ル ギ ー ・環 境 問題 を身 近 な もの と して 捉 え て も らう た め、 見 て 、 触 れ て 、 経 験 す る体 験 型 学 習 と して小 ・中 ・高 等 学 校 に 「出前 授 業 」 や 「夏 休 み 科 学 教 室 」、 「夏 休 み 親 子 自然 学 習 」 等 の イベ ン トの実 施 を行 って い る。 内容 は、 以 下 の 通 りで あ る(写 真5、6)。. 【小 学 生 対 象:「 大 学 附 属 農 場 に お け る親 子 自然 学 習 」1日 1.昆. 虫 ・植 物 採 集. 2.動. 物(牛. 3.エ. ネ ル ギ ー 学 習(エ. ・豚)の. コー ス】. 触 れ あ い体 験 ネ ル ギ ー 源 の 歴 史 に つ い て 学 ぶ 、 灯 りの 歴 史 に つ い て 学 ぶ 、 火 お こ. 一15一.

(16) 近 畿 大学 教育 論 叢. 第20巻 第1号(2008・9). し の 体 験 、 炭 の 製 作 と ロ ー ソ ク ・油 ・石 炭 ・石 油 の 燃 焼 体 験 、 風 力 ・太 陽 ・蒸 気 発 電 等 の 体 験 、 原 子 力 と 未 来 の エ ネ ル ギ ー に つ い て) 4.食. 事 は 薪 炊 き ご 飯 ・水 は 沢 水. 【中 学 生 対 象:「 夏 休 み 科 学 教 室 」2時 1.エ. ネ ル ギ ー と 灯 りの 歴 史. 2.様. 々 な 発 電 方 法 に つ い て 実 演(蒸. 5.7原. 間 コー ス 】. 〈舞 台 の 上 で 実 験 を 見 せ る> 気 か ら 原 子 力 発 電 ま で). 子力展の開催. 都市部の肝 力理解活動の環. として・平成1° 年凝. 象 照. 輪 議. 。 港. 薯垂. り毎 年 原 子 炉 を公 開 し、 関西 の原 子 力 関係 者 で組 織 し て い る 関西 原 子 力 情 報 ネ ッ トサ ー フ ィ ン(2大. 学5企. 業)の 協 力 を得 て、 原 子 力 展 を開 催(原 子 炉 運 転 見 学 含 む)し て い る。 毎 年2日. 間 で約2千 数 百 名 の見 学 者. が訪 れ る(写 真7)。 主 な展 示 内 容 は次 の通 りで あ る。 1.原. 子 炉 見 学 と原 子 炉 運 転 見 学. 2。 放 射 線 の利 用. 医療 利 用(診 断 と治 療). 3.地. 球 環 境 と原 子 力. 4.電. 磁 波 の実 験 、 原 子 炉 模 型 実 験. 5.自. 然放射線測定実験、放射線測定実習、霧箱製作. 6.発. 電 実 験(手. 7.温. 暖 化 の実 験. 回 し、 蒸 気 、 原 子 力 、 太 陽 、 風 力 な ど). 8.. エ ネル ギ ー体 験(釜 炊 き ご飯 の実 演 、 火 お こ し、 化 石 燃 料 の展 示). 9.. 医 療 コー ナー(遺 伝 カ ウ ンセ ラー の 役 割 、 骨 密 度 測 定 、 医 療 相 談). 5.8そ. の他 の 関連 活 動. 近 年 、 原 子 炉 の 見 学 が増 加 して お り、 特 に総 合 的 学 習 の 時 間 を 利 用 した 中 ・高 校生 の 見 学者 や諸 団体 の見 学 が増 え、 昨年 度 は約1,500名 の来 所 が あ った。 ま た 、 現 場 の 先 生 方 の教 材 支 援 と して、 放 射 線 の飛 跡 を見 る 「霧 箱 」 や 「CR-39樹. 脂板」. の講 習 とそ の配 布 活動 、 貸 し出 し用 の簡 易 放 射 線 測 定 器 の使 い方 講 習会 、 「放 射 線 の 基 礎 」(25 分)と. い う ビデ オ の製 作 と学 校 へ の配 布 活 動 、 小 ・中 ・高等 学 校 へ の 出前 授 業 や各 種 団体 へ の. 講 演 な どの活 動 を行 って い る。. 一16一.

(17) エ ネ ル ギ ー ・環 境 教 育 の 現 状 と大 学 の役 割. さ ら に研 究 所 内 に は、 近 所 の 子 供 た ちが 集 う こ とが で き る 「原 子 力 エ ネ ル ギ ー 学 習 室 」 を 設 置 して い る。. 6.国. の 存 亡 を か け て"エ. ネ ル ギ ー ・環 境 教 育 の 推 進 を". 世 界 は 、 エ ネ ル ギ ー 安 定 供 給 と温 暖 化 防 止 の 課 題 の 解 決 策 と して 原 子 力 を 選 択 し、 原 子 力 新 時 代 を 向 か え よ う と して い る。 ア メ リカ 、 フ ラ ン スの 新 しい 息 吹 、 そ して イ ン ド、 中 国 、 韓 国 に お け る経 済 発 展 に連 動 した 原 子 力 開 発 の 意 気 込 み か ら実 感 で き る。 エ ネ ル ギ ー 資 源 の 乏 しい 我 が 国 も同 様 で あ り、 これ か ら も国 策 と して 核燃 料 サ イ クル 路 線 を 前 提 と して の 原 子 力 を 推 進 して い くの が現 実 的 で あ り、 最 良 の 選 択 で あ る と考 え る。 原 子力 を我 が 国 の 基盤 エ ネ ル ギ ー源 と して継 続 維 持 す るた め に は、 広 く国民 の理 解 が必 要 で あ る。 そ れ は安 全 ・安 心 の持 続 的確 保 が最 優 先 で あ り、 さ らに基 盤 技 術 を身 に つ け た優 秀 な人 材 育 成 と技 術 継 承 が最 重 要 とな る。 しか し、 国民 の半 数 近 くは、 い ま だ温 度 差 は あ る が原 子 力 に不 安 を持 って い る の が現 状 で あ る。 な ぜ 今 原 子 力 な の か、 原 子 力 以 外 に は どの よ うな 策 が あ るの か 、 原 子 力 の何 が怖 い の か 、 世 界 や 日本 の エ ネ ル ギ ー確 保 や環 境 保 全 は どの よ うに した らよ い か等 々学 校 ・社 会 の現 場 で正 し く中立 の教 育 を行 って い く必 要 が あ る。 近 年 、 総 合 的 な学 習 時 聞 で エ ネ ル ギ ー ・環 境 教 育 が 行 わ れ て お り、 子 供 た ち は少 しず つ エ ネ ル ギ ー ・環 境 に 関す る学 習 を受 け られ る環 境 が整 備 さ れ つ つ あ る が、 ま だ十 分 な もの で な い事 をす で に報 告 した。 国 が策 定 した 原 子 力 長 期 計 画 に よ る と、 「国 民 が 原 子 力 に 関 す る国 の 政 策 や民 間 の 活 動 につ いて 理 解 を深 め る た め に は、 情 報 の提 供 や 教 育 の充 実 等 に よ り、 国 民 一一人 ひ と りが エ ネル ギ ー や 原 子 力 につ いて 考 え 、正 し く判 断 す る環 境 を 整 え る こ とが 重 要 で あ る。」と して い る。 我 々原 子 力 に携 わ る者 が 国 、 企 業 、 教 育 界 と協 力 して 、 エ ネル ギ ー ・環 境 教 育 ま た原 子 力 の 理 解 活 動 を 継 続 して 実 施 して い くこ とが 必 要 で あ る。. 7.お. わ りに. 世 界 共 通 の エ ネ ル ギ ー ・環 境 問 題 は、生 涯 にわ た って 子 供 だ けで な く大 人 も取 り組 む 課 題 で あ り、 典 型 的 な 生 涯 学 習 で あ る。 また 、 この 問 題 を 取 り巻 く環境 は、 日進 月歩 で 変 化 して お り、 これ まで の状 況 を しっか り把握 す る と と も に常 に変 化 して い る状 況 を 知識 だ けで な く、 様 々な 側 面 か ら も実 行 ・実 践 を伴 い つ つ 対応 して い くこ とが 極 め て必 要 で あ る。 未 来 に結 び 付 く確 か. 一17一.

(18) 近畿大学教育論叢. 第20巻 第1号(2008・9). な 知 力 と人 類 愛 、 自然 愛 を 持 った 現 代 人 を 育 成 す るた め、 学 校 教 育 を 中心 に家 庭 や 地 域 な ど の 社 会 教 育 と連 携 を 取 り、 推 進 して い くこ とが 望 まれ る。 子 供 達 が 将 来 安 心 して 生 活 で き る世 界 を 構 築 す るた め に は、 我 々が そ の 基 礎 を 築 き、 子 供 達 が し っか り と した 考 え が 持 て る教 育 を 贈 り物 しな けれ ばな らな い。 私 た ち は、 真 実 を 伝 え 、 世 界 を 冷 静 に見 つ め 、 我 を 捨 て 、 他 人 の 幸 せ を 願 う倫 理 感 を も った 人 を 育 て 、 子 供 達 自 ら聞 違 い の な い 最 良 の 選 択 が で き るよ う、 知 識 と経 験 を 提 供 す る こ とが 最 大 の 使 命 で あ る と考 え る。 近 畿 大 学 は 、 子 供 た ちや 現 場 の 先 生 方 の 声 を 尊 重 し、 これ か ら も体 験 実 践 型 の 原 子 炉 実 験 ・ 研 修 会 や 子 供 た ちを 対 象 と した エ ネ ル ギ ー ・環 境 教 室 の 開 催 、 ま た 学 校 や 社 会 の 現 場 にす ぐ役 立 つ エ ネ ル ギ ー ・環 境 教育 教 材 の 作 成 。提 供 や情 報 の 発 信 、 ま た 原 子 力 人 材 育 成 の た あ の 大 学 教 育 活動 を精 力 的 に進 め て い き た い と考 え て い る。. 参考文献 「エ ネ ル ギ ー 環 境 教 育 研 究 」(VOL.1、NO.12007) 「平 成17年 度 エ ネ ル ギ ー ・環 境 お よ び 原 子 力 教 育 の あ り方 検 討 」 委 員 会 報 告 書(委 哲 夫) エ ネ ル ギ ー レ ビ ュ ー(2007年5月. 号). IsotopeNews475(1993)27.. 一18一. 員長. 伊 藤.

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