Extension of the Depth of Field for Imaging Systems through Coding the Wavefront
and Digital Decoding
Paulo E. X. SILVEIRA, Satoru TACHIHARA , Kenneth S. KUBALA and Edward R. DOWSKI We introduce Wavefront CodingTM technology from an optical engineering point of view and explain its many applications,with emphasis on its ability to extend the depth of field of imaging systems. Next, we explain how the Wavefront Coding technology can benefit compact camera modules such as those used in cell phone cameras. The benefits are derived from the Wavefront Coded modules ability to capture high quality images with an extended depth of field without the need for auto-focus,resulting in no shutter lag,small module size,high reliability and reduced cost,making this solution ideal for mass production in a wide range of consumer applications.We show sample images captured by Wavefront Coded compact camera modules and also show how they can be applied to barcode reading.
Key words: extension of depth of field (focus),optically coded wavefront,digital decoding,image reconstruction, computational imaging
Wavefront Coding 技術は光学結像技術とディジタル画 像処理技術の複合技術である.図 1に,その概念を示す. 広い被写体距離範囲にわたって,高品質の画像を得ること ができる,すなわち被写界深度,あるいは焦点深度の広い システムとするために,まず光学系の瞳関数 (収差) のコ ード化が行われる.このコード化により,光学系には一般 的に大きな収差が付与され,受光素子上の光学像は,図 1 (b)にみられるように,ぼけたものとなる.この光学像は, 受光素子でとらえられた後,最適設計されたコンボリュー ション・カーネルで空間的なフィルター処理 (画像処理に よるデコード) が行われて,図 1(e)のようなぼけのない シャープな画像に復元される.重要なことは,光学系のコ ード化によって,受光面近傍の広いデフォーカス範囲にわ たり,ちょうど,金太郎 のように,ほぼ同一のぼけた像 を得るという点である.これによって,単一のコンボリュ ーション・カーネルを用いた画像処理により,広いデフォ ーカス範囲にわたり,シャープな画像が復元され,したが って,深度の広いシステムが実現されることになる.
Wavefront Coding 技 術 は,Dowskiと Cathey に よ って発明され,後に Kubalaら によって実用的なレベル にまでもたらされた.本技術は,光学系の被写界深度 (焦 点深度) を拡大するだけでなく,色収差の補正 ,光学系 の加工・組み立て誤差許容量の増大,振動や温度変化に対 する許容量増大 ,また,光学系におけるレンズ枚数の低 減にも有効であり,生産工程の削減やコストダウンにも大 きな効果をもたらす . de
撮像レンズの新しい流れ
SA波面のコード化とディジタル再生技術を用いた
光学系の深度拡大
パウロ E. X. シルベイラ・立 原
悟 ・ケニス S. クバラ
エドワード R. ダウスキー
CDM Optics Inc. (4001Discovery Dr., Suite 130, Boul
ef r, CO 80303-7816, U M O ) E-mail:satoru.tachihara@cdm-optics.com Wav Wa ront CodingTMは,CD DM ptics社の商標. . C
vefront Coded は, Optics社の登録商標
説
解
Wavefront Coding 技術は,これまでに顕微鏡 や望遠 鏡 など幅広い 野で応用がなされている.また,本技術 は広い波長範囲にわたって応用が可能であり,遠赤外領 域 ,紫外線領域,また X 線領域で検討が行われている. さらに,低コストの携帯電話用カメラモジュール ,生体 認証システム ,バーコードリーダー,ヘッド・マウン ト・ディスプレイ,フォトリソグラフィー などにおい ても,本技術の応用検討がなされてきている.ディジタル 受像素子と画像処理技術があれば,本技術はどんな 野で も応用可能であり,誤差許容量の増大,小型化,低コスト などの利益を享受することができる.そのために必要なこ とは,光学系および画像処理系を,同時に統一的に最適化 することができる,ということである. 本稿では,結像光学系の設計および最適化に関する知識 と,基礎的な画像処理技術の知識を有する光学技術者を読 者と想定して,Wavefront Coding 技術についての解説を 行う.第 1章では,まず本技術を用いたシステムがどのよ うにして最適化設計されるかについて述べ,第 2章では, 光学系の深度拡大のため本技術がどのように 用されるか を紹介し,第 3章では,本技術が小型カメラモジュールに 対してどのような利点をもたらすかを述べ,第 4章で本技 術を採用した TrueFocus カメラモジュールで実際に 撮影されたサンプル画像を,バーコードリーダーへの応用 例を含めて示し,最後に結語を述べる. 1. Wavefront Coded 結像システムの設計 本技術を用いた結像システムは,光学系の瞳関数 (収 差) と画像処理系におけるコンボリューションカーネル を,同時に最適化を行うことによって得られる.最適化時 のメリット関数としては,通常の光学設計に用いられるも の,例えば,対象となる空間周波数における MTF のデフ ォーカス特性や,対象となる被写体距離における PSF (ポイント・スプレッド・ファンクション) のサイズなど, またはシステムの目的に応じた量,例えば,対象となる被 写体範囲における S/N 比の波長特性 ,瞳認証システ ム における Hamming 距離 ,あるいはバーコードリ ーダーにおけるビットエラー率など,が われる. 一方,最適化の対象としては,許容量を増大させたい対 象,例えば,深度増大が目的の場合はデフォーカスの量, 色収差の補正のためには波長の範囲,あるいは,温度変化 の許容増大のためには,対象の温度範囲など,が挙げられ る.瞳関数とコンボリューションカーネルを同時に最適化 することの最大の利点は,そうすることによって設計者の もつ自由度が増え,したがって,従来の最適化法では得ら れなかったような,広い範囲での設計解の探索が可能とな ることである.このような一体的な最適化が可能となった 背景には,電子技術の発達により低いコストで,非常にパ ワフルなコンピューターが容易に えるようになったこ と,それに高画素数のディジタル画像を実時間で画像処理 できるようになったことが挙げられる. 図 2は,本技術を用いた結像システムを最適化するプロ セスを示したダイアグラムである.プロセス全体は,複数 のソフトウェアをリンクしながら用いられる,自社開発の 最適化ソフトウェアによってコントロールされる.これに より,設計者は光学系と画像処理系を同時に一体的に最適 化することが可能となる.デザインの流れは次のようにな る.まず,ベースとなるレンズの設計を,従来から われ ている光学設計ソフトウェア (Zemax や CODE Ⅴなど) を用いて行う.このレンズは無収差である必要はないが, 設計解の探索範囲を大きくし過ぎないために,最終的な解 に近い状態になっていることが望ましい.次に,光線追跡 を用いて,このレンズによる結像シミュレーション像が得 られ,さらに,この像は, 用される受光素子の物理的特 性 (例えば,リードノイズやフルウェル量,画素ピッチ, フィルファクター,クロストーク,固定パターンノイズな ど) に基づいた数値モデルにより,サンプリング処理,検 知処理が行われる.この検知された像に対して,実際の製 品等で施されるのと同じ内容の画像処理が行われる.この 図 1 Wavefront Coding 技術の概念図:光学系の瞳関数変調と画像処理による復調.(a)非球面によ
る瞳関数変調,(b) ぼけた光学像,(c) CMOS 受光素子による像検知,(d) 画像処理プロセッサーに よる像の復元,(e)復元されたシャープなディジタル画像.
画像処理には,デコードによる復元処理はもちろんのこ と,受光素子の固定パターン・ノイズ除去,ホワイトバラ ンス,色補間,ガンマ補正,コントラスト強調,ノンリニ ア処理によるノイズ除去,像のスケーリング,出力のフォ ーマッティングなどが含まれる. もちろん,この画像処理の内容は,そのシステムのゴー ルが何かによって,すなわち,例えば,ディジタルカメラ や携帯電話用カメラモジュールのように,画像を人間が目 で見る場合と,バーコードリーダーや OCR のように機械 的読み取りシステムの場合とでは,当然異なってくる.ど ちらの場合も,設計者は設計結果の品質に比例した何らか の数値を評価量として受け取るようになっている必要があ り,その数値は,システム全体の最適化時のメリット関数 を構成するものである. このようにしてメリット関数が定義されたならば,最適 化に移る.この際,光学系の入射瞳 ( り) またはその近 傍のレンズ面に,Wavefront Coded面を定義する.この 面は,既存のレンズ面上に定義することもできるし,ま た,新たに平行平面板等を挿入し,そこに定義することも 可能である.この,瞳に変調を与える (波面のコード化を 行う) ための特別な面は,数学的関数として,あるいは, 数値的に定義することが可能であり,種々の面形状が え られている.最適化時の変数は一般的に光学系における変 数と,画像処理系における変数で構成される.光学系の 変数は,レンズを構成する要素 (面曲率や厚みなど) と Wavefront Coded 面の関数係数である.画像処理系の変 数は,デコードのためのコンボリューションカーネルなど である. 上記のように,ベースとなるレンズデータから開始し, 目 標 の 結 果 が 得 ら れ る よ う な 光 学 系 変 数 (Wavefront Coded 面を含む)と画像処理系変数の組み合わせが得られ るまで,最適化のサイクルを回すことになる. 2. Wavefront Coding 技術による被写界深度の拡大 深度を拡大するための Wavefront Coding 技術の 用に ついては,各種参 文献 で詳述されている.物理数 学的にいえば,本技術は,瞳関数から求められるアンビギ ュイティー (ambiguity) 関数が,デフォーカスと空間周 波 数 を パ ラ メ ー タ ー と し た,イ ン コ ヒ ー レ ン ト OTF (MTF)の極座標表示 である,という事実に基づいてい る.もともとはレーダー技術における信号処理 から生 まれた,このアンビギュイティー関数表示から,アンビギ ュイティー,逆にいえばデフォーカスの関数である MTF を,広域に広げるという発想が生じ,瞳関数に三次関数 的位相を付加して MTF を広げ (したがって MTF の値自 体は低下する),その後ディジタル処理でコントラスト (MTF) を復元することで深度拡大が実現可能であるとい う,はじめての結果につながった.付加する位相として は,この三次関数形状に続き,その後種々の関数系が 案 されている. 従来の え方では,光学設計者はシステムの明るさと深 度の増大というトレードオフと直面することとなる.すな 図 2 システムの最適化設計プロセスを示すダイアグラム.
わち,従来は深度を拡大するためには りを り込む必要 があり,その結果,解像力の低下,集光能力の低下を招い ていた.しかし,本技術を用いたシステムでは,瞳関数に 多少の位相変調が必要なだけで,集光能力の低下がなく, また本質的に解像力の低下も生じない.ただ,コントラス ト復元の過程において,センサーノイズも増幅されるの で,実際にベースとなるレンズに比べてどの程度深度を拡 大させるかについては,このノイズゲイン とのトレー ドオフとなる. 深度拡大が可能となる類似の技術として,例えば masked aperture technique や light field camera などの, いわゆるインテグラル・フォトグラフィーの範疇に入る技 術が報告されている.Wavefront Coding 技術がデフォー カス,すなわち像空間の位置に依存せず, 一な光学特性 を実現しようとする技術であるのに対し,インテグラル・ フォトグラフィー技術では像面における光線の情報が,そ の位置だけでなく,角度としても得られるので,後段の処 理において,それぞれ次元数 2をもつ位置および角度情 報 を うことで,さまざまな像状態を構築することが できる.例えば,システム構成に依存して制限はあるが, 物体面の位置とパースペクティブを変化させた像を得るこ とができる.深度を増大させた画像は,複数の物体面から の像を復元,構成することで得られることになる .この ような強力な機能は,しかしながら, 用されるハードウ ェアに依存して,犠牲となる点が生じ,また空間的 解能 も犠牲となる.
masked aperture techniqueでは,バイナリー,または グレイスケールの透過率 布型マスクが光路中に挿入さ れ,そのマスクによって光が強度変調を受ける.もし,マ スクが光学系の りの位置に置かれたならば,瞳関数が変 調を受け,結果として像面での深度拡大が実現される.し かし,これはマスクによる光のロスおよび解像力の低下を 招く. りを り込む,という一般的操作も,この手法の 特殊ケースと えられる.また,空間周波数的に狭帯域の マスクを像面近傍に配置し,得られた像に対して通信系で 行われるのと同様のヘテロダイン処理を行うことで,前記 の位置,角度情報が得られるが,これについての詳細は, 文献 18を参照されたい.
一方,light field cameraでは,複数のレンズ,あるい はとんぼの複眼のようなレンズアレイを用いて,物体空間 に対する複数の画像を,異なる角度から同時にとらえる. 記録後,同じレンズアレイを通して,もとの物体空間の立 体情報を再現できるので,立体テレビにも応用が検討され ている技術である.像面での光線の位置と角度が記録され ているので,記録後の処理によって,任意の物体面にフォ ーカスを合わせた像を得ることが可能となり,深度拡大が 実現できることになる.しかしながら,1つの画像センサ ー上に,この複数のレンズによる画像が多数個並んででき るので,このレンズの個数に反比例して解像度が低下する という欠点がある. また,どちらの技術も,本 Wavefront Coding 技術での S/N 比よりもよい値は得られない. 図 3に,本 Wavefront Coding 技術を用いた場合と用い な い 場 合 の,PSF の 比 較 を 示 す.こ れ ら は,光 学 系 の PSF に,通常のディジタルカメラモジュールで行われる, センサーピクセルによるサンプリング,および第 1章で記 述したような画像処理を施したシミュレーション結果であ る.本技術を用いた例では,コード化された瞳関数のデコ ード処理も行われている.(したがって,光学的な意味で の PSF でなく,それに画像処理を加えた後の点像の形を 意味しているが,ここでは 宜上,PSF とよぶ.) なお, この例は,実際に設計,製作された小型カメラモジュール のものである.この TrueFocusとよばれるモジュールに ついては,次章で詳述する. 図 3(a)は,本 TrueFocusカメラモジュールの,被写 体距離無限遠における PSF を示す.図 3(d)の通常カメ ラモジュールの PSF と比べると,両者は非常によく似て いる.両者とも PSF のエネルギーが中心にコンパクトに まとまっている.通常モジュールの光学系では,無限遠で 光学性能がベストとなるよう設計されているので,当然の 結果である. 図 3 被写体距離による画像処理後の PSF 比較.(a) 本カメ ラモジュール無限遠,(b)本カメラモジュール中間距離,(c) 本カメラモジュール近距離,(d) 通常カメラモジュール無限 遠,(e)通常カメラモジュール中間距離,(f)通常カメラモジ ュール近距離.
次に,図 3(b)に,中間被写体距離における本モジュー ルの PSF を示す.この距離は,通常のモジュールでオー トフォーカスを用いない場合,無限遠方にフォーカスを合 わせた際の被写界深度限界程度の距離である.本モジュー ルの PSF は,無限遠時の PSF とほぼ同一であるのに対 し,図 3(e)の通常モジュールの PSF は,依然コンパク トなものの,無限遠の PSF と比べると明らかにフォーカ スがずれているとわかるくらいに広がっている. 図 3(c)には,近距離における本モジュールの PSF を 示す.名刺や高解像度バーコードなどの撮影を想定した近 距離を選んでいる.PSF は,この近距離でも無限遠や中 間距離におけるものと非常に似ており,無限遠方から近距 離まで,同一のデコードフィルター (コンボリューショ ン・カーネル) が 用可能であり,しかも,高い結像性能 が達成されていることがわかる.一方,図 3(f)に示され る通常モジュールの PSF は,大きく広がっており,画像 としては完全にぼけていることがわかる. このように,本モジュールでは,光学系の瞳関数のコー ド化および後段の画像処理におけるデコード化により,無 限遠方から近距離の広い被写体距離範囲にわたって,通常 モジュールのベストフォーカス位置における PSF とほぼ 同じレベルの PSF を得ることが,すなわち広く拡大され た被写界深度を得ることができる. 3. TrueFocus小型カメラモジュール 近年,ディジタルカメラを組み込んだ携帯電話が普及し てきているお陰で,小型カメラモジュールの設計および大 量生産という観点からは,大きな変革がみられる.この変 革の背景には,低コストの,小型で高解像度,高性能の CMOS センサーの開発,それに低コストで高品質の成型プ ラスチックレンズの開発があろう.さらに,CMOS 技術の 発達により強力な画像処理パワーも自由に えるようにな ってきている事実も存在する.この光学技術と画像処理技 術の高いレベルでの融合は,システム設計者に十 なツー ルを与えるという意味で,本 Wavefront Coding 技術のよ うなコンピュテーショナル・イメージング技術に大きな利 益をもたらすものである.逆に,小型カメラモジュール側 からみると,本技術を採用することで,より広い深度を得 る,という利益を受けることになる.結像システムが広い 深度をもつことと,オートフォーカス機能をもつこととは, 当然ながら同じことではない.両者の併用でより大きな利 益が得られるかもしれないが,基本的には,両者は競合す るものであり,この点は本技術が小型カメラモジュールに とって,新しい領域での可能性を示しているともいえる. 最近の受光素子における画素ピッチの低下は,カメラモ ジュールに大きな利益をもたらしていると えられる.す なわち,モジュールの大きさ (体積,長さ) を増大させる ことなく 画素数の増加を可能としている.ディジタル結 像システムの焦点深度は,(ピクセルピッチ)×(光学系の F ナンバー) で与えられるが ,この両者がどんどん小さ くなるに従って,深度も減少することとなり,広い被写体 範囲にわたって高い結像性能を維持するためには,一般的 にはオートフォーカス機構が必須となってくる. しかし,オートフォーカスは,1)対象となる被写体ま での距離の計測,および 2)その距離へのフォーカス調節 の,少なくとも 2つのステップを必要とする.どちらのス テップも,ある程度の時間が必要のうえ,誤差を生じるこ ともあり,また特に携帯用のデバイスでは貴重なリソース である電力を消費する.時間が必要ということは,狙った 瞬間や,狙った被写体を外すことにもつながる.さらに, オートフォーカスはモジュールのコストやサイズの増大を 招き,信頼性の低下をも招く場合がある.このような理由 から,モジュールのコストやサイズを増加させず,またメ カ機構もないため信頼性の高い本技術が,広い被写体範囲 にわたって高い結像性能を維持するための手段として,カ メラモジュールにとっては非常に適していると えられ る.
図 4は,CDM Optics社と Ominivision Technologies社 で共同開発された小型カメラモジュールの写真である.こ のモジュールは 3メガピクセルの CMOS センサー,画像 処理チップ,それにプラスチック成型レンズを 用してい る.レンズの 1面に,波面のコード化のため特別に設計さ れた非球面が施されており,後段のデコード画像処理との 組み合わせで,広い範囲にわたる被写界深度拡大を実現し ている.モジュールサイズは,8×8×6ミリ,レンズの F ナンバーは 2.8であり,無限遠方から 10∼12cm 程度の 近距離まで深度が確保されている. 図 4 TrueFocus小型カメラモジュールの外観写真.
4. 画像サンプルとバーコードリーディング これまで,ディジタル画像の質を評価する尺度としてさ まざまなものが提案されてきているが,まだ業界の標準と して認知されている尺度はないように思われる.したがっ て,ここでは,実際のカメラモジュールで撮影されたサン プル画像を示すこととする. 図 5は,屋外のシーンである.近景の噴水,背景の 物 や陰のある木々,それに 物の後ろの明るい青空など,幅 広い明るさの範囲,広い被写体の距離範囲,それに動きの ある対象が含まれている. 物のエッジなどはくっきり再 現されており,色にじみもない.背景の陰の部 における コントラストも高い.また,動いている噴水の水滴もぶれ なくとらえられている. 図 6は,室内のシーンである.暗い中でも,本モジュー ルが瞬間を遅れなくとらえていることがわかると思う.色 再現は自然ではっきりしており,また,デコード画像処理 によって画像に歪みが生じたり,偽像が発生したり,とい うこともない. 最後に,本モジュールがバーコードリーディングにも 用可能であることを示したい.図 7(a)は,本モジュール を用いて近距離で撮影された,二次元 QRバーコードの像 である.図 7(b),(c)に示される,市販の固定焦点タイ プのカメラモジュールで撮影された像と比べ,コントラス トが高く,シャープなエッジの像が得られている.図 7 (b)は,市販カメラモジュールのマクロモードで,(c)は 通常 (遠距離被写体)モードで撮影されたもので,どちら もぼけており,正しく解読するには十 な像ではない.図 3に PSFとして示されたように,本技術の採用で,非常 に広い被写体範囲に対して高いコントラストと解像力が実 現されており,その結果がごく近距離におけるバーコード 解読をも可能としている.
Wavefront Coding技術は,特別に設計された光学系と ディジタル画像処理技術の組み合わせからなる,新しいコ ンピュテーショナル・イメージング技術である.本稿で は,その原理を簡単に示し,実際の設計の え方を示し た.より詳細については,文献を参照されたい. 本技術は,近年のエレクトロニクスの発達の恩恵に基づ き,システム全体を統一的に最適化できる方法 (ソフトウ ェア)の開発により設計が可能になったもので,設計者に 光学系の深度拡大のみならず,加工・組み立て誤差許容量 増大という利益をもたらし,さらには設計の え方そのも のに新たな自由度をもたらすものである. 図 5 TrueFocus小型カメラモジュールによる撮影例 (屋外). 図 6 TrueFocus小型カメラモジュールによる撮影例 (室内). 図 7 二次元 QRバーコードの撮影例.(a)TrueFocus小型 カメラモジュール,(b)市販カメラのマクロモード,(c)市 販カメラの遠方被写体モード.
本稿では,本技術の応用例として,ディジタルカメラモ ジュールを取り上げ,オートフォーカス機構が不要で信頼 性が高く,シャッターラグのない,しかも広い被写界範囲 にわたって高い画質が得られる小型モジュールが実現でき ることを示した.いうまでもなく,これらの利点は,あら ゆる種類のディジタル結像システム (例えば,セキュリテ ィーカメラ,車載用カメラ,電子内視鏡など) が享受でき るものである.また同様に,バーコードリーダー装置,瞳 や指紋を用いた生体認証システムなど産業 野におけるデ ィジタル画像システムにも応用ができる. 本技術のような,光学技術と画像処理技術を高いレベル で融合した え方は,今後,さまざまなディジタル画像シ ステムにおいて,必要不可欠のものとなるであろう. 文 献
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