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動物集魚 による生命科学研究の動向
倉
林
譲
岡山実験動物研究会 長
あ い さ つ
本 年 の第50回 日本実験 動物学会 (於大 宮)は 「実
験 動物 科 学技 術週 間 "2003"」と銘 うって行 わ れ
たが 、演 題 か ら見 た実験動 物 によ る生命 科学研 究
内容 か ら見 る と、一般演題 が159題 エ ン LIJ- さ
れ た 。 そ の 中 で トピ ックス性 に優 れ た演 題 を 10
セ ッシ ョンの集 団 に集 め 「フィール ド トピックス」
と して 纏 めた ことは、生命 科 学研 究 の動 向 を知 る
ため に非 常 に有意 義で あ った。例 え ば、遺 伝子 改
変 マ ウ ス の性 状 」、「ES細 胞 の樹 立 と利 用 」, 「ス
ナ ネズ ミ ・マ ス トミス ・ウサ ギ にお け る生殖細 胞
の凍結 保 存 」、 「実験動 物 を用 いたス トレス研究 」、
「サ ル類 のヘ ルペ ス ウイ ル ス感 染 」、 「実験動 物 と
して の ミニ ブ タ の有用 性 」、 「実 験 動 物 と麻 酔 」、
「体 系 的遺 伝解析 用 に開発 され た
S
M
‡
A-
R
l系 の基
盤 整備 とそ の応用 」、 「サ ル類 の繁殖 と発 生工学 」、
「生命 科 学支 援 セ ンター の現状」等 の
10
セ ッシ
ョンで あ った。 これ らか ら見 れ ば学会 にエ ン トリ
ー され た 一般演 題 か らそ の概 要 を知 る ことがで き
る。 この フィール ドトピ ックスか ら見 て も分 か る
よ うに例 年 これ らのよ うな幾 つか の研 究 グル ー プ
に分 類 で き る。 また、特別 講演 と して 「ヒ ト血 液
凝 固 Ⅳ 因子 ミニ遺 伝子 を導 入 した十数 の トランス
ジ ェニ ックマ ウス の系統 を駆使 して 、加齢 に伴 う
第 Ⅳ 因子 遺 伝子 の発現 」 を調 節す る遺 伝子 を複 数
同定 して お り、モ ディ フ ァイ ア- の生理 的意義 を
具体 的 な デー タで理解 す る ことが期 待 で きるO教
育講演 で は 「学 問 の動脈」と越 して実 験 動物 学 の
目指 す 方 向性 につ いて講演 が あった。また 、「再 生
医療 ・細 胞 治療技 術 の開発 と実験動 物 」を取 り上 げ
て お り、 ポス トゲ ノム プ ロジェク トに代表 され る
新 しい医 療技 術 の開発 にお いて は、従 来 型 の開発
研 究 が要 求 され る。優 れ た治療戦 略 が生 まれ た背
景 と治 療 プ ロ トコル を臨床応用す るた め の実験 系
の開発 に焦点 を当てて 、新 しい治 療戦 略 を臨床応
用 す る過 程 を最 先端 で活躍 され て いる若 手臨床 医
の報 告 が あった。また、 「毒 性試 験 にお けるモデ ル
動物 と して の タ ロ- ズ ドコ ロニー」につ いて も話
題 にな っ た。 また 、ゲ ノム情 報 を背景 と した新 し
い感 染症 研究 に視 点 を当て た 「病 原微 生物 のボス
トゲ ノム研 究 :感染症 モデ ル の新展 開」 という話
題 もあ り
、2
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世紀 に期 待 され て いる動 物 実験 で は
技術 分業 が ます ます重 要 にな って くる。次 世代 の
研究 支援 の在 り方 につ いて 、 日本 実験 動 物技術 者
協 会 との合 同企画 「医学 生命 科 学研究 を支 える実
験動物科 学一 研究支援 の立 場 か ら-」 と題 した シ
ンポ ジウムが あった。 また 、新企画 と して若手研
究者 によ る 自由セ ミナ ー には 、次 世代 の実験動 物
学会 を支 え る若手研究 者 か ら 「21世 紀 のバ イオ リ
サ ーチ と実験動物」と題 して 討論 され た。また、医
学関係 の学会 ではかな りの頻 度 で行 わ れ て いる こ
とで あ るが 、昼時間 を利 用 した ラ ンチ ョンセ ミナ
ーが多 く組 み込 まれ て いた こ とは時 間 の有効利用
がで きて便利 であ った。 実 験 動物 関係 機 器展示 も
盛況 で あ った と同時 に、 ワー ク シ ョプ と して4グ
ルー プに ま とめ 「遺伝 子 マ ッ ピング」「凍 結保存」
「微 生物 学 的モニ タ リング」筆者 が担 当の 「麻酔」
等 のテー マが行 わ れ た。 いず れ に して も実験動物
学会 の演 題 は多岐 にわ た って お り、依 然 と してゲ
ノム研 究 が盛 ん に行 わ れ て お り、 ポス トゲ ノム時
代 は未 だ遠 い状況 で あ る。
実験動 物界 の最近 の状況 につ いて述 べ てみ よ う。
動 物福祉 の点 につ いて は、 国 立大学 にお いては動
物実験 反対 運動家 か ら動 物 実 験計画書 等 の各種 資
料請求 が 出てお り、情 報 開示 につ いて少 しずつ行
われ て い るのが現 状 で あ ります。 岡山大 学 にお い
て も動 物 実験 計 画書 の公 開 が 請求 され て お り、2
回資料請 求 が あ りま した。 幾 つか の質 問が あ りま
したが 、そ の 中で重要 な こ とは、 自治体 か ら払 い
下 げ られ た動物 を実験 に使 用 す る ことはや めて は
しい と い う運 動 家 の 要 望 か ら、 岡 山県 か らの イ
ヌ ・ネ コ等 の払 い下 げ は 中止 され ま したO また、
わ が 国 に お け る動 物 愛 護 に 関 す る重 要 な 法 律 に
「実 験 動 物 の飼 養 及 び 保 管 に関す る基 準」 (昭和
55年総 理 府 告示第6号 )が あ るが、20余年 が経過
して い るので この法律 の改正 の動 き もあ る。 これ
は この法 律 が作 られ た のが 古 過 ぎる とい う点 で あ
る と思 わ れ ますが、 よ り新 しい視点 で 改正す る必
要性 が あ る と思 われ ます 。