主要な研究成果
背 景
近年、電力品質に敏感なハイテク需要機器の普及により、送電線への落雷を主因とする数十∼百数十ミリ秒
の瞬時的な電圧低下(瞬低)によるこれら需要家機器へ及ぼす影響が問題視されている。この瞬低問題への対
応としては、瞬低による電圧低下の状況を把握する、瞬低回避対策を講じる、の 2 つに大別できる。
このうち前者の有効手段として、送電線への雷事故確率に基づき系統各部の需要地点が受ける瞬低影響(電圧
低下の大きさや発生頻度分布)を計算する方法が考えられるが、現状では計算による推定精度が低く、また平
易に利用できる瞬低影響解析手法は開発されていない。
目 的
わが国で標準的な 2 回線送電ルートにおいて生じ得る全ての雷事故確率をパラメータとする高精度の瞬低影
響解析手法、および本手法に基づく解析計算プログラムを開発する。
主な成果
1.高精度の瞬低影響解析手法の開発
当所で既開発の解析手法* 1
を拡張して、各々の送電線への落雷事故による需要地点の瞬低を高精度かつ
高速に計算する手法を開発した。開発手法の主な特長は下記のとおり(図-1)。
(1)図-1右上に示す、2 回線送電ルートにおいて生じ得る全ての雷事故パターン計 12 タイプを計算可能と
した。
(2)事故対象地点として従来のノード端事故(送端や受端)のみではなく、送電ルート上の複数の事故地
点でも計算可能とし、計算結果の精度向上を図った。
(3)全ての送電線事故による着目需要地点dの多数の瞬低電圧を効率良く計算するために、各事故点と需
要地点dとの間の感度係数のみを用いて、計算精度を落とすことなく二桁程度高速に解を求める手法
を開発した。
2.瞬低影響解析プログラムの開発
上記手法に基づく解析プログラムを開発した。本プログラムの主な特長は下記のとおり(図-2)。
(1)容易にプログラムを利用できるよう、電力各社が保有している系統解析用入力データ(当所Y法
フォーマット)をそのままで計算できる構成とした。利用者は、追加的に送電線雷事故データを入力
するのみで計算可能。
(2)上述の高速解析機能により、わが国で実用されている最大規模の連系モデル系統に対しても迅速求解
が可能。
(3)利用者が着目する需要地点の瞬低影響を容易に分析・評価できるよう、対象期間における瞬低の累積
確率分布値を計算可能とした他、複数需要地の瞬低影響の相対比較に有用な瞬低影響度指標を考案し、
組み込んだ。
試算例を図-3 に示す。本図は、地震予知等で用いられているハザードマップを瞬低影響用途に適用した
もので、本計算結果を系統図上に色別描画することにより、地域ごとの瞬低影響の多少を視覚的に把握・
分析できる。
今後の展開
各電力会社系統での雷事故瞬低影響分布の分析計算に資する他、避雷器設置等の対策による瞬低影響軽減効
果の定量検討のための利用を図る。
主担当者 システム技術研究所 需要家システム領域 上席研究員 田中 和幸
関連報告書 「落雷による瞬低影響解析プログラムの開発」電力中央研究所報告: T03004(2003 年 10 月)
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落雷による瞬時電圧低下解析プログラムの開発
* 1 :電力中央研究所報告:「大規模電力系統の多点故障計算プログラムの開発」No.T92034(1993 年)
4.電力流通/流通コストの低減・信頼性確保
69
瞬低発生累積頻度図
電力系統
送端 受端
1LG 1
1LG 2
3LG 5
3LG 6
1LG
2LG
3LG
1LG
2LG
3LG
従来は“端点”
事故のみが対象
送電ルート上の事故
1LG 1
1LG 2
3LG 5
3LG 6
1LG 1
1LG 2
3LG 5
3LG 6
送電ルート上の事故
図-1 開発した瞬低影響解析手法の概要
瞬低影響解析プログラム
・対称座標法故障計算
・全ての2回線送電線故障
電力各社が保有する
既存系統解析データ
今回開発
雷事故率データ
図-2 開発した瞬低影響解析システムの構成
図-3 瞬低影響度指標分布(ハザードマップ)の試算例
指標(影響)大:赤 緑:指標(影響)小
電気学会East30
標準モデル系統
ワースト5と
ベスト5
瞬低影響度指標分布図
*
B
C
1LG1
:
1号線 2号線
* a
* b
* c
a
b
c
1LG2
: **
Bb
Cc
3LG2
: * a
* b
C *
* a
*
C
2LG1
:
* *
* b
* c
b
c C c C c
* a
B * *
* a
*
C *
*
*
*
* a
*
*
*
* c
**
**
Cc
**
**
**
Aa
Bb
Cc 2LG
3
:
2LG2
: 2LG4
:
3LG1
: 3LG3
: 3LG4
: 3LG5
: 3LG6
:
* :事故(地絡)相
《雷事故パターン》
瞬低影響度指標:
左下の面積が大きいほど
影響大と判断
2地点の計算結果を例示
発
生
頻
度
累
積
︵
回/
年
︶
受電点電圧低下率(%)
着目需要点dの
電圧低下 Vd?
各事故に対する多数
の Vdを一挙に求解