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低線量放射線リスクの定量評価と放射線防護への反映

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Academic year: 2021

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(1)2 主要な研究成果 重点課題 - リスクの最適マネジメントの確立. 低線量放射線リスクの定量評価と放射線防護への反映 背景・目的. 主な成果. 原子力施設の作業員の被ばくや、原子力事 故等によって生じた放射性物質による環境汚. 防護基準の合理化につながる。また放射線リ スク評価の基盤となる線量評価の精度向上も. 染から受ける公衆の被ばくは、低線量率であ るものの長期間にわたる被ばくとなる。このよ うな被ばくは高線量率被ばくと異なり健康リ. 重要な課題となっている。 本課題では、低線量率での放射線影響の根 拠となる生物学的機構を実験的研究により解. スクが増大しないこと、すなわち線量率効果 があることが、高自然放射線地域での疫学調 査から示唆されており、その生物学的な機構 を示すことは、放射線に対する不安の軽減や. 明し、線量率効果を放射線防護体系に反映す ることを目指すとともに、放射線リスクの不確 実性低減に向けた線量評価手法を開発する。. 1. 線量率効果 の 解 明に向けた組織幹細胞 の 放射線影響評価手法 の 開発. がんは組織幹細胞*1 (以下、幹細胞) に障害 が蓄積することで生じる。通常、生体組織内に おいては、複数の幹細胞が集団を形成して機 能を維持していることが知られている。低線 量率放射線被ばくでは、放射線によって傷つ いた幹細胞と傷ついていない健常な幹細胞 が集団内に混在するような状況が生じる。こ のとき、傷ついた幹細胞と健常な幹細胞との 間で競合が起こり、傷ついた幹細胞が排除さ れれば、放射線による幹細胞の障害は集団全 体として蓄積しにくくなると考えられる。当所 は、これが線量率効果のメカニズムの一つで. 2. あると考えて、その検証に取り組んでいる。 この競合を詳細に解析するために、腸管幹 細胞のオルガノイド*2 培養技術(図1)を用い た実験系を開発し、0∼4 Gyの照射を受けた 幹細胞の生存率を明らかにした (図2左)。さら に、この実験系を応用して、2 Gy以上の高線 量照射後に生き残った幹細胞の組織を再生す る能力が高くなっていることを定量的に明らか にした(図2右)。このように、本実験系は放射 線照射後の幹細胞の挙動を試験管内で定量的 に解析可能で、幹細胞間の競合による線量率 効果の検証に適用できることを確認した[1]。. クリアランス検 認*3 における放 射 線 計 数 効 率 の 経 年 影 響 の 評 価. 原子力施設から搬出される廃棄物等のクリ アランス検認では、低い放射線量を正確に計 測する必要があることから、線量計測の精度 向上が課題となっている。精度の高い計測を 困難にしている要因の一つが、金属廃棄物に 発生するさびの影響である。さびによって放 射線が遮へいされる場合に、放射性物質によ る汚染を過小評価しないために、さびが放射. 試験片を用いて、さび発生試験を実施し、さび 量と放射線計数効率の低減度の関係を明らか にした (図3)。また、原子力関連施設倉庫内の 実環境におけるさびの発生状況を1年以上に わたって観測し (図4) 、実環境での金属廃棄物. 線計測に及ぼす影響を評価する必要がある。 本研究では、放射性同位元素(α核種として. の放射線計数効率の低下を推定することを可 能にした。さらに、放射線のエネルギーの違い を考慮することで、ウランで汚染した廃棄物に ついても、経年変化による不確実性の影響を 適切に評価したクリアランス検認を可能とす. 241 Am、 β核種として60Co) を付着させた金属. る評価方法を提示した[2,3]。. *1 組織を構成する細胞の源となる細胞。自己増殖する特徴から発がんの起源であるとされる。 *2 幹細胞から分化して生じた各種機能細胞が生体内組織と同様な細胞配置を示す立体的な組織構造体。 *3 放射性物質として取り扱う必要がないレベルの放射性物質濃度以下であることの確認。 [1]Yamauchi, M. et al., J Radiat Res, 55(2), 381-390, 2014 [2]伊知地・河村、Jpn. J. Health Phys., 48(4), 171-179, 2013 [3]伊知地・河村、Jpn. J. Health Phys., 48(4), 200-205, 2013 16. 研究年報_P06-P33-課題01.indd 16. 14/05/26 12:43.

(2) 培養日数 5. 7. 9. 12. 緑:幹細胞 赤:幹細胞からつくられた機能細胞. 図1 腸管幹細胞オルガノイド培養実験系 マウス小腸から分離した幹細胞を含む小腸組織細胞を 試 験 管 内で培 養して得られたオルガノイド。緑は幹 細 胞、赤は幹細胞が分裂してつくられた細胞。培養日数が 進むにつれて、金平糖状になり、小腸の絨毛の根元に存 在するクリプトに類 似した突 起 が 生じた。さらに、生 体 内における分布と同様に、その底部に緑色の幹細胞が 存在することが確認できた。. * *. 100 80 60 40 20 0 0. 7.25 29. 101 304 1000 2000 4000. 二次オルガノイド数. * 䛵⤣゛ᏕⓏ䛱᭯ណᕣ䛒䛈䜑䛙䛮䜘⾪䛟 * *. 12 10 8 6 4 2 0. 重点課題. オルガノイド数. * 120. 0. 7.25 29. 101 304 1000 2000 4000. 線量 (mGy). 線量 (mGy). 図2 オルガノイド実験系による放射線影響評価 放射線照射後に形成されたオルガノイドの数(左)。オルガノイドは幹細胞からできるため、オルガノイド形成効率は幹 細胞の放射線照射後の生存率を表す。非照射群と比べて1000 mGy以上で有意に減少することが分かった。 また、放射線照射後に傷ついた組織を修復するため、生き残った幹細胞は活発に組織再生すると考えられるが、これを 定量的に評価したデータはこれまでなかった。そこで、照射後に形成された一次オルガノイドを細胞に分解し、再度培養 して二次オルガノイドを形成させて、幹細胞の組織再生能を評価した(右)。1個の一次オルガノイドから形成された二 次オルガノイドの数を計測し、照射線量が大きいほど増加することを定量的に明らかにした。. 図3 さびによる放射線計数効率の低下(試験結果及 び理論値). 図4 原子力関連施設倉庫内の実環境におけるさび 発生試験結果. 炭素鋼にα核種である241Amを滴下した試験結果を、例と. 炭素鋼とステンレス鋼を原子力関連施設倉庫内の実環. して示す。試験結果はほぼ理論値と一致した。. 境に設置し、経年変化によるさびの発生量を観測した。. このことから、エネルギーの違いによる理論式の傾きの違. 図3の評価から、238 Uで汚染した炭素鋼では500日経. 238. いを考慮することで、さびによる. Uの放射線計数効率. 低減度を推定することが可能となる。. 過後には放射線計数効率が0.4∼0.5程度に低下する と推定できる。. 17. 研究年報_P06-P33-課題01.indd 17. 14/05/26 12:43.

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参照

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