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過去への宝探し

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Academic year: 2021

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過去への宝探し

新入生の皆さん、入学おめでとうございます。 私もこの春から当史料館の館長を務めることになりました筒井です。どうぞよろしくお願いします。新 入生の皆さんは、大学生となってとにかく最新の学問知識や技術に触れ、それを身につけることに期 待と希望を抱かれていることと思います。 そんな時に歴史を学んだり過去を振り返ったりすることにどんな意義があるのだろうと、思っておられ る方も多いかもしれません。でもちょっと、立ち止まって考えて下さい。 先日文化庁長官で心理学者の河合隼雄さんが、新聞紙上で、現在のあまりにも便利になりすぎた家 電製品のことに触れ、そのなかで失われてしまう大事なものがあることに警鐘を鳴らしておられました。 例えば、電気炊飯器一つとっても、今ではボタン一つ押せば様々な炊き加減や味加減まで調整でき、 失敗せずにおいしいご飯が作れるまでに進化を遂げています。かつておいしいご飯を炊くには、米の 保存の仕方から竈の管理、水加減ととぎ方、火加減の調整方法などを熟知していなければなりません でしたし、なにより大切な家族においしく健康的な食事を提供したいという心を持っていなければなりま せんでした。しかし、過剰なまでの機械化によって、便利さと引き換えに、母から娘へと代々伝えられて きた手の熟練や自然を熟知し統御する能力、そして何よりも相手への細やかな思いやりの心が失われ てしまうことに、河合さんは危惧の念を抱かれたのでした。 この話には、歴史の進歩というものの本質が良く表されていると思います。歴史は単に直線的に進歩 するのではなく、いわば何かを失いながら進歩発展してくるとでもいえるでしょう。そう考えると過去は、 現在に至る未熟で劣った一段階にあるとのみ捉えるのではなく、質的側面では独自の文化領域を持ち、 現在が失った多様な価値や技能や知恵を秘めた魅力ある別世界であると捉えることもできるでしょう。 当史料館では、そうした魅惑的な過去の世界を伝えるために近江商人や村落社会を始めとする膨大 な史資料を保管整理し、展示解説する活動を行っています。この春も「描かれた琉球と蝦夷地―琉球 貿易図屏風と古地図から―」展を開催します。是非当史料館へ過去への宝探しをしにいらして下さい。 (史料館長 筒井 正夫)

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