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「摂食・嚥下障害者に対する地域支援体制のあり方に関する調査研究」

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(1)摂食・嚥下障害患者に対する地域支援体制のあり方に関する調査研究 報告書 (2013年度前期). 申請者:菊谷 武(日本歯科大学 教授、口腔リハビリテーション多摩クリニック院長) 共同研究者:野村 幸史(医療法人財団慈生会 田村 文誉(日本歯科大学 教授) 提出年月日:2014年8月30日. 野村病院 理事長).

(2) 〈背景〉 過去 30 年以上,肺炎は日本人の死因の第 4 位であったが、H23年には肺炎は脳卒中を抜 き、第3位になった。それを示すように、地域医療を担う病院において入院患者の多くは 肺炎であり、肺炎に対する医療に奔走しているといえる。一方、患者は入院中に肺炎の治 癒をみても、口腔環境、摂食機能、低栄養といった、肺炎に対するリスクを抱えたまま、 退院に至っている場合が多く、そのため肺炎の再発によって、再び入院するケースが後を 絶たない。そこで、繰り返す肺炎の発症を未然に防ぐために、肺炎を発症し入院した患者 の肺炎リスクを医学的に評価し、入院中から在宅療養にかけての一貫した支援が必要であ ると考える。また、食べることは、誰もが望む楽しみであるものの、摂食嚥下機能の低下 した者にとっては誤嚥や窒息といった生命の危機をはらむ事象も発症する可能性がある。 よって、本人や家族はもとより医師、歯科医師、訪問看護師、歯科衛生士、言語聴覚士な どの医療系職種、介護支援専門員や介護士などの介護系職種と、それぞれの職種が所属す る医療機関、歯科医療機関、訪問看護ステーション、介護支援事業所、地域包括支援セン ターなど多くの医療・介護・福祉の事業所が共通目標を持ち、安全かつ楽しい食事が達成 できるように支援する必要が生じる。在宅という環境下においては、これらの連携が困難 な場合も多く、質の高い支援に結びつかない場合も多く経験する。そのため在宅における 摂食支援におけるモデルの構築が求められている。 〈目的〉 本事業では、入院中から退院後を視野に入れた摂食支援の取り組みと、退院時カンファレ ンスを介した、在宅医療との連携体制を構築し、口腔サポートを中心とした介護の重症化 予防、生活の質の向上、地域における人材育成、さらには、医療費の削減の地域モデルを 提案した。また、在宅における摂食支援のモデルを構築し、中核的役割を果たす摂食支援 診療所のあり方、さらに、診療所内に設置する口腔サポートステーションの地域における コーディネートのあり方について検討した。.

(3) 〈計画・方法〉 本事業における地域連携ステーション、人的資源を供給するコアとして、日本歯科大学口 腔リハビリテーション多摩クリニック内に口腔サポートステーションを設置し、地域医療 機関への介入や退院時カンファレンスへの参画、摂食支援、栄養支援のプラン作成、連携 他医療機関との調整を通して、地域における医療・介護・福祉機関と有機的な連携体制を 築くため、地域医療機関にモデル介入を行った。さらに、地域で摂食支援を行う人材育成、 地域連携を目的に口腔サポートステーション主催の研修会及びカンファレンスを開催した。 ①口腔サポートステーションの設置 ・歯科衛生士、言語聴覚士、管理栄養士の非常勤雇用し、地域における摂食支援のコーデ ィネートを行った。 ②入院患者に対する検証 ・地域機関病院における入院患者の摂食嚥下機能、栄養状態を把握する。それにより、肺 炎入院患者の摂食支援ニーズを検討した。 ③退院時カンファレンスの参画の意義の検討 ・退院時カンファレンスに摂食支援を目的に参画した。退院時カンファレンスには口腔サ ポートステーションの歯科衛生士が参画した。入院中から摂食嚥下機能のチェックを適宜、 歯科医師が行い、 在宅における支援の必要性について、カンファレンスにおいて検討した。 ④地域での摂食支援プランの作成、実施 ・口腔サポートステーションにおいて摂食支援プログラムを作成し実施した。 ・口腔ケアプラン、栄養支援プログラムは、管理栄養士が立案し実施した。 ⑤研修会・カンファレンスの開催 ・摂食嚥下に関する知識共有のための摂食嚥下研修会の開催(年 3 回、200 人参加規模) ・地域における事例検討を行うための摂食カンファレンスの開催(年 5 回開催、50 人参加) ・訪問栄養士育成のための訪問栄養研修会の開催(年 3 回開催、50 人参加、外部講師依頼) ⑥地域連携情報共有ツールの開発 ・携帯端末を使った地域連携情報共有ツールの開発.

(4) 〈報告〉 ①口腔サポートステーションの設置 日本歯科大学口腔リハビリテーション多摩クリニックに在籍する歯科衛生士、言語聴覚 士、管理栄養士で構成される口腔サポートステーションを設置した。さらに歯科衛生士1 名、言語聴覚士2名の新規雇用を行った。 口腔サポートステーション主催の研修会、カンファレンスを開催し、地域における摂食 支援の充実を図るためのコーディネートを行った。 (⑤参照) -口腔ケアプランを作成した事例- 訪問看護師より、訪問看護ステーションを利用中である在宅療養患者の口腔の問題につ いて相談を受け、口腔サポートステーションに属する歯科衛生士が訪問看護師と共に患者 を訪問し、口腔ケアプランの作成を行った。 症例1; 75 歳女性。基礎疾患は、レビー小体認知症、骨粗鬆症。既往歴に肺炎繰り返しているが、 今年はないとのことであった。身体の拘縮強く、ADL は全介助、認知機能は比較的保たれ ているようだが、表出困難であり、覚醒状態は刺激すれば覚醒できる程度であった。嚥下 状態は唾液誤嚥があり、栄養摂取状態は胃瘻であった。口腔内の状況は、上下 27 本残存 歯があり、口腔衛生状態不良、重度の口腔乾燥、開口困難さがみられた。訪問看護師から は、訪問時に口腔ケアの必要性を感じつつ、看護業務の傍ら、開口困難さもあることから 適切な口腔ケアを行えず、口腔の問題を感じていたとのことであった。また、キーパーソ ンである夫が高齢なため、現行の介護負担を考慮すると新たな手技の口腔ケアは混乱と介 護負担の増長に繋がるため、検討が必要との話がきけた。日常の口腔ケアは、介護者であ る夫が 1 日 3 回、適宜、行っている。口腔ケア方法は、独自の方法を展開しているが、適 切であり、夫の口腔ケアであれば、開口を促せるとのこと。口腔の問題としては、口腔乾 燥の重度さがあり、保湿ケアを頻回に行うことと、口腔ケア前に口腔マッサージをし、開 口を促すことを説明した。 症例2; 76 歳女性。基礎疾患は、認知症、腰痛症、高血圧、高脂血症。既往歴に、逆流性食道炎、 慢性胃炎、変形性膝関節症。ADL は寝たきり度 A2、軽度認知症Ⅲb、である。肺炎や低 栄養のリスクはなく、栄養摂取状況は、経口で普通食を食べていた。訪問看護師からは、 二人とも義歯のようだが、口腔管理がなされていない様子で、妻に関しては、義歯を外し たことがなく、上下無歯顎で下顎の義歯が気付いたら紛失していたとのことであった。口 腔問題としては、咬合不全、口腔衛生不良があり、慢性胃炎もあることから、まずは咀嚼 できる環境を整えるため、義歯の新製をすすめ、口腔衛生の改善から義歯の清掃方法の指 導を行った。キーパーソンである夫は軽度認知症、アルコール依存症があり、金銭管理が.

(5) 難しく、経済的にも困窮さがあるとのことであった。歯科に対してもこだわりが強く、以 前通院していた新宿の歯科医院に行きたいが距離的な問題で行けないとのことであった。 今後は、近隣の通院での歯科受診を検討することで終了した。 症例3; 患者は、79 歳女性。基礎疾患は、骨髄異形成症候群(以下、MDS)、慢性心不全、陳旧 生肺結核である。既往歴に、心筋症、肺機能低下、MDS 疑いで K 病院へ緊急搬送された。 2014 年より週 1 回のペースで輸血フォローを通院で受けていた。酸素導入 1.5L を行い、 日常生活を過ごしていた。同年、8 月、通院先の歯科医院で歯間ブラシの口腔清掃指導を 受けた際に、出血がみられ、なかなか止まらず、横になると息苦しさを感じ、頻脈になり、 救急搬送された。この経験から、歯ブラシを使用した口腔清掃に恐怖心を覚え、以来、ス ポンジブラシで日常の口腔清掃をおこなっていた。主訴は、①歯がしみるところがある② 頬の内側を時々咬む③義歯着脱時の疼痛④清掃不良さであった。 口腔の問題は、衛生状態不良、齲蝕は歯頸部カリエスが数歯、歯間部のプラーク付着と 食物残渣、歯肉発赤がみられた。口腔乾燥や口臭はみられなかった。セルフケアは可能で、 義歯の着脱、含嗽は自身で可能であった。食事は、軟らかくした野菜中心の食生活を送っ ている。水分は、心負荷と浮腫の予防から 1 日1100ml の摂取に制限されていた。 主訴①については、しみる箇所に齲蝕はなく、冷水痛による知覚過敏の可能性があり、 知覚過敏対応の歯磨剤を使った対処療法で様子をみることにした。主訴②③の義歯につい ては、歯科医師の診断が必要なため、歯科的介入が必要であることを伝えた。 主訴④では、セルフケアでは限界があり、出血傾向のある患者での多職種による介入で のケアの質の統一は現時点では高リスクであること、齲蝕、歯周病の進行防止と口腔衛生 の改善から、歯科による定期的な専門的口腔ケアの介入が望ましいと考えた。 口腔ケアの短期目標に「出血させない口腔清掃の確立」とし、長期目標に「口腔衛生状 態の改善」とした。 口腔清掃指導では、通常の歯ブラシをワンタフト様に即席で作製し、毛先を歯肉に当て ないよう鏡を見ながら、歯ブラシを歯面に当てて、ローリング法で行うよう指導した。ま た、歯ブラシを使用する日は、輸血を行った次の日に行うようにし、輸血予定日前日や起 床後の含嗽時に出血がみられた日は歯ブラシを使用しないことを注意事項として挙げた。 今後は、歯科介入を行うこととなったが、MDS で輸血フォローもあることから、侵襲 性の高い出血を伴う積極的な歯科治療は困難であると考えられた。口腔清掃時の出血に対 する対応を検討し、リスク管理を行った上で、歯科衛生士による専門的口腔ケアの介入を 予定した。.

(6) 口腔内所見: MT 7 7 Amf. MT 6 6 Amf. C 5 5 FMC. 上下 P.D 使用中. In 4 4 C. C 3 3 C. HR 2 2 /. MT 1 1 C. MT 1 1 MT. CR 2 2 MT. / 3 3 CR. C 4 4 FMC. FMC 5 5 MT. MT 6 6 MT. MT 7 7 MT.

(7) ②入院患者に対する検証 東京都にある某病院の急性期病棟、回復期病棟、緩和病棟に入院した患者の内、本事業 の主旨に同意が得られた者を対象とし、口腔内状況および摂食嚥下機能について評価を行 った。集計期間は 2013 年 8 月から 2014 年4月までとした。評価の結果、歯科治療の必 要性が考えられた場合は治療介入を行った。また、摂食嚥下機能評価の必要性が認められ る患者に対しては、病院内の医師、言語聴覚士、看護師などと協働して評価を行い、摂食 嚥下機能障害を認めた場合は摂食支援プログラムを作成の上、多職種による栄養支援を行 った。さらに退院後の治療および支援の継続に向け、退院時カンファレンスにおいて、歯 科治療や摂食嚥下機能評価に基づく栄養支援プログラムの内容をまとめた継続歯科治療依 頼状を提供し、地域医療機関への治療継続依頼や自院での追跡を行った。 なお、医療情報の集積には携帯端末を使った地域連携情報共有ツール(⑥参照)を開発 し、これを用いた。 〈結果および考察〉 対象者は 252 名(男性 101 名、女性 151 名、平均年齢 81.0±10.3 歳)であった。病棟別 の対象者の割合は緩和病棟16%、急性期病棟45%、回復期病棟39%であった。口腔 清掃状態は、回復期病棟は口腔ケアが自立している者の割合が高く、口腔清掃状態が比較 的良好な者が多かった。一般病棟では口腔ケアが全介助の者がもっとも多くみられたが、 口腔清掃状態が不良な者の割合が他病棟と比べて高く、看護の現場において、口腔ケア介 入の必要性に対する認識や技術の不足が考えられた。病棟別の治療内容としては、緩和病 棟では治療は少なく、専門的口腔ケアを行ったケースが多くみられた。急性期病棟では専 門的口腔ケアが最も多い結果であったが、抜歯などの緊急性を要する処置が多くみられた。 回復期病棟では、義歯の新製やう蝕処置を行ったケースもみられた。病棟によって治療内 容に異なる傾向がみられたが、全身状態や入院期間を考慮して治療介入を行った結果であ ると考えられた。緩和病棟の入院患者や重度の摂食嚥下障害患者などの自院で口腔管理・ 栄養支援の継続を行ったケースは 10 件であった。地域歯科医療機関に依頼したケースは 43 件あったが、実際に地域医療機関にて口腔管理・栄養支援の継続がなされたケースは 8 件であった。中でも回復期病棟の入院患者は治療継続がなされた割合が高く、全身状態が 比較的良いことが影響していると考えられた。 ③退院時カンファレンスの参画の意義の検討 退院時カンファレンスの際に、歯科治療や摂食嚥下機能評価に基づく栄養支援プログラ ムの内容をまとめた継続歯科治療依頼状を作成し、情報提供を行った。可能な場合は口腔 サポートステーションの歯科衛生士が出席するよう努めたが、他の業務との兼ね合いで開 催のタイミングに合わず、出席できたケースはわずかであった。②の報告の通り、入院中 から歯科治療および栄養支援を行い、退院後も継続がなされたケースは、自院と他院を合.

(8) わせて 18 件(内、在宅は 15 件)にとどまった。入院患者が退院後にシームレスな治療継続 を受けられることは喫緊の課題であり、他院での継続をする際の治療継続の依頼方法につ いて検討する必要性が考えられた。 ④地域での摂食支援プランの作成、実施 -栄養支援プログラムを作成した事例- 症例1; 患者は71歳男性である。2013年9月に脳梗塞発症し緊急入院。その後、嚥下障害 により栄養摂取が困難となり、同年12月に胃瘻造設目的で今回介入を行った病院に転院 となった。本人は口から食べたいとの希望があり、2014年1月に病院内の言語聴覚士 からの依頼で嚥下機能精査を行い介入開始となった。その際の評価結果としては、全身状 態が著しく不良であり、経口摂取は困難であると診断した。入院中には言語聴覚士の間接 訓練を行い、経口摂取はなされなかった。 全身状態の回復に伴い同年 3 月に在宅に退院となった。退院時カンファレンスでは、本 人や家族の経口摂取への思いは強く、再度、摂食嚥下機能評価および栄養支援を在宅で継 続することになった。 嚥下内視鏡検査の結果、咽頭内は唾液の貯留が多く、唾液を自分で飲むことが困難なほ ど嚥下機能が低下していたが、左下仰臥位頸部右側回旋の姿勢代償を行えば少量のゼリー の摂取は可能であり、 直接訓練の開始が可能であると判断した。検査には介護支援専門員、 訪問看護師が立ち会い、協働して栄養支援プログラムの作成を行った。 栄養支援プログラムの内容は、お楽しみのための経口摂取が行える様にすること、摂取 可能な食品のバリエーションを徐々に増やしていくこと、誤嚥性肺炎の予防をすることを 目標に設定した。目標達成に向けた計画として、週1回、内視鏡下にて安全性に配慮しな がら少量のゼリーを摂取する直接訓練を行うこと、 間接訓練としてシャキア訓練を行う (1 日3回)ことを提案した。 直接訓練開始から1カ月後には、ゼリーの摂取が安定して可能になり、嚥下内視鏡を併 用せず、訪問看護師が立ち会いの際も直接訓練を開始した。また、水分にとろみを付与し たものも摂取が可能になり、経口摂取する食品のバリエーションを増やすことが可能にな った。 さらに、直接訓練開始から3カ月後の嚥下内視鏡検査の結果では、咽頭内の唾液量の著 明な減少を認め、妻の見守り下で、ゼリーやペーストの摂取を毎日行うことが可能になっ た。 歯科医師、歯科衛生士、介護支援専門員、訪問看護師が協働して、積極的に介入し栄養 支援を行ったことにより、摂食嚥下機能の改善に繋がったと考えられた。.

(9) -診療風景- 患者 y. 妻. 介護支援専門員. 歯科医師. 訪問看護師.

(10) 症例2; 患者は62歳女性である。1979年に肢体型筋ジストロフィーと診断され疾患が徐々 に進行していたとのことであった。2000年頃にはほぼ全介助の状態となり、同年2月 に肺炎発症し、急性循環不全で心肺停止となったが、蘇生され、以後夜間のみ呼吸管理が 開始、在宅療養となっていた。2011年3月に右尾状核~被殻の脳梗塞で病院に入院加 療となり、経口摂取困難の為、気管切開及び経鼻胃管による栄養管理となり、在宅療養を 行っていた。 2013年7月に、本人の口から何か食べたいとの強い希望があり、介入を開始するこ とになった。介入開始時には訪問主治医、看護師同席で摂食嚥下機能評価を行った。嚥下 内視鏡検査では、安静時より咽頭内の唾液貯留が顕著であり、咽頭収縮力も極めて弱く己 唾液の処理も困難であり、経口摂取は困難であると診断した。また、全身状態や口腔運動 機能は良好であるが、気管内吸引を行っていること、口腔内清掃状態の不良も認められ、 誤嚥性肺炎のリスクが高い状態であった。 しかし、本人や夫の経口摂取希望は強く、本人の機能に合わせた安全な栄養支援プログ ラムの作成を行うこととなった。栄養支援プログラムの作成には、摂食嚥下機能評価に同 席した訪問主治医と協働し全身的なリスクを考慮した。 栄養支援プログラムの内容は、楽しみのための味覚刺激を行うこと、誤嚥性肺炎の予防 をすることを目標に設定した。目標達成に向け、口腔内清掃状況の改善を行い、味覚刺激 時の誤嚥量を最小限に抑える方法を遵守することを提案した。味覚刺激時には誤嚥量を最 小限に抑える為に、味覚刺激により流出した唾液は吸引することとした。在宅主治医から も、気管内カフ圧の調整の提案があり、夫が姿勢調整と共に、看護師指導の下でカフ圧の 調整を行うこととなった。また、介入開始時には、複数のヘルパーによる口腔ケア介入が 行われていたため、口腔ケア手技の統一、それぞれの疑問点解決を図れるよう、ケア方法 や疑問点の記入欄を記載した口腔ケア連携手帳を作成した。歯科衛生士による口腔ケア時 にはヘルパー、夫も同席し、手技の統一を図った。介入直後より、口腔ケア連携手帳には ヘルパー、家族による記載があり、日常の疑問点の早期解決を行うことが可能であった。 介入後1年経過したが、本人や夫の満足度は高く、発熱など無く生活している。本症例 では、進行性の疾患を有し嚥下機能の改善を図ることは困難であるが、訪問主治医、看護 師、ヘルパー、歯科医師、歯科衛生士、家族との連携によりQOLの向上に繋がったと考 えられる。.

(11) 〈摂食嚥下機能評価の様子〉 歯科医師. 夫. 患者. 歯科衛生士. 訪問主治医. 〈口腔ケア方法の指導〉 夫 患者. 歯科衛生士. 〈口腔ケア連携手帳〉.

(12) 症例3; ―摂食支援プログラムを多職種で作成し、介入した事例― 71歳女性。2000年1月に頸椎椎間板ヘルニア手術時に椎骨動脈裂断にて小脳梗塞 による嚥下障害発症。同年4月嚥下障害による誤嚥性肺炎を発症し気管切開を施行し、現 在もピンホール大に気管切開孔は残存している。また小脳梗塞による四肢不全麻痺や全身 的な不随意運動が認められる。2009年に食事量低下、体重減少のために誤嚥性肺炎を 繰り返したため胃瘻増設を行った。 現在は在宅療養中であるが在宅主治医からは経口禁の指示が出ているものの、ジュース などの水分を楽しみ程度経口している。 嚥下内視鏡検査、嚥下造影の結果、口腔内の食物を咽頭へ移送させる際に全身的に不随 意運動が発現してしまい、食塊を口腔内で潰すことができずに丸飲みをしてしまう様な所 見であった。また嚥下を行う際には喉頭が開大してしまう所見も認められた。これらの問 題点への対応として、訪問歯科医師、訪問歯科衛生士、訪問看護師、ケアマネージャーと 協働して嚥下機能の維持、向上のための摂食支援プログラムの作成を行った。 摂食支援プログラムは、楽しみのための嚥下の安全性を維持すること、また口腔器官の 巧緻性の維持向上を目標として、息こらえ嚥下を1日に5回行うこと、さらに無意味音節 の連鎖を1日に2回行うこととした。上記内容は訪問歯科衛生士と訪問看護師の訪問時に 行い、1カ月に1回を目安として訪問にて定期的に評価を行うこととした。 摂食支援プログラムを開始して間もなくは息こらえ嚥下を行うことそのものが困難であ ったが2カ月程度経過すると息こらえ嚥下を習得し唾液を嚥下できる様になった。現在も 毎日トロミを摂取しており、摂取時には少量の誤嚥を来たすため気管切開部より誤嚥物の 噴出が少量認められるものの、介入後カ月18カ月した現在も発熱や肺炎の発症を認める ことは無く生活している。 月に1回の嚥下機能評価の際には患者に関連する各職種とともに嚥下機能の評価結果を 共有することで、患者にとって無理のない目標設定をし、嚥下リハビリの方法の統一化を 行うことが可能になっている。 本症例は重篤な嚥下障害を有しており、著しい嚥下機能の向上を目指すことは非常に困 難であるが、歯科医師、歯科衛生士、訪問看護師、ケアマネージャー、家族と共同して介 入を行うことによって、頻発していた誤嚥性肺炎を発症することなく楽しみのための経口 を維持することが可能になっている。.

(13) <サービス担当者会議の様子> 訪問看護師. 歯科衛生士. ケアマネージャー. 夫. 歯科医師. 患者 症例4; 患者は66歳男性、2013年夏に多系統萎縮症と診断された。同年秋頃より食事時の むせが目立つようになり、 近隣の病院耳鼻咽喉科を受診した。 嚥下機能検査を行った結果、 誤嚥リスクが高く、栄養状態も不良であり胃瘻造設の提案をされたが、家族は胃瘻造設を 拒否し、その後在宅療養を続けていた。2014年春頃より食事時のむせや摂取量がさら に減ってきていることをケアマネージャーに相談し、当クリニックの口腔サポートステー ションに依頼があった。 嚥下内視鏡検査、嚥下造影検査による嚥下機能評価を行った結果、明らかな誤嚥は認め られなかったものの誤嚥および窒息のリスクが高い状態であった。咀嚼の動きは認められ ず、送り込みに時間がかかり口腔期の障害が著明に認められた。食事は家族と同じものを 摂取していたが、本人の嚥下機能と食形態には明らかな乖離が認められた。家族および家 族に関わる各職種に、嚥下機能評価の結果の説明と在宅療養を続けていくにあたり摂食支 援プログラムの作成を行った。検査にはケアマネージャー、訪問歯科衛生士、訪問歯科医 師(患者の居住地域で訪問診療を行っている開業医)が立ち会った。 摂食支援プログラムの内容としては、口腔期障害および誤嚥リスクが非常に高いことか ら姿勢を30度リクライニング位とし、食形態をペースト状とすることを提案した。また、 必要摂取カロリーの計算を行い、不足分は栄養補助剤を処方してもらうよう主治医に依頼 した。これらのプログラムを各職種で共有した。 在宅への訪問では、食事時の姿勢や水分のトロミの程度について家族に指示を行い、実 際に食事をしている様子を観察し、評価を行った。患者はデイサービスをほぼ毎日利用し ており、 ケアマネージャーを通じてデイサービスでの食事についても指示を出した。また、.

(14) 管理栄養士が同行し、主治医に栄養補助剤の量を調整してもらうよう適宜依頼をした。口 腔ケアについても訪問歯科衛生士とケアプランを作成し、家族とも共有した。 誤嚥や窒息のリスクに十分配慮し、効率よく栄養摂取出来るよう医師、歯科医師、歯科 衛生士、管理栄養士、ケアマネージャーが共同して摂食支援を行った症例であると考えら れた。 〈外来での摂食機能評価の様子〉. 患者. 訪問歯科医師(地域の開業医) ケアマネージャー. 患者の家族. 〈在宅での摂食機能評価の様子〉. 患者の家族. 歯科医師.

(15) 症例 5; 患者は89歳女性、2003年にアルツハイマー型認知症と診断された。特別養護老人 ホームに入所していたが、発症から11年の経過で主治医からは終末期のステージとの見 解であった。日常生活の自立度としてはほぼ寝たきりの状態であり、食事、排泄、着替え などすべて介助を要し、また発語は認められず患者本人との意思疎通は不可能であった。 食事に関しては口腔内に食物があっても顎や舌の動きが認められず、口腔内に貯留してし まうためほとんど摂取できていない状況で、体重も減少を続けていた。家族(長女)が患者 を自宅で看取りたいという希望があり、施設を退所し在宅療養へと切り替えることとした。 この段階で当クリニックの口腔ケアサポートステーションにケアマネージャーを通じて摂 食支援の要請があった。 在宅への訪問で摂食嚥下機能評価を行った結果、咽頭内の唾液貯留や唾液誤嚥は認め られず、嚥下機能の低下は認められたものの食形態や食事姿勢を調整することにより安全 に経口摂取が行えると判断した。検査の場には家族(長女)、ケアマネージャー、訪問看護 師、歯科医師、歯科衛生士が立ち会った。 患者の全身状態や在宅での環境に配慮し、家族に無理のない摂食支援プログラムの立案 を行った。プログラムの内容は安全に食事を行うことを目標とし、食事介助、口腔ケア、 栄養管理について提案した。具体的には、食事姿勢をベッド上45度とし栄養補助剤を主 たる栄養源とすること、本人の覚醒状態が良好なときに食事摂取させること、誤嚥性肺炎 の予防のため残存歯だけでなく粘膜や舌のケアも行うことを指示し、各職種間で情報共有 した。 在宅への訪問を開始してから 2 か月が経過したが、体重減少はやや認められるものの 食事摂取量は安定しており、また口腔内に食べ物が貯留することは見られなくなった。食 事における家族の悩みは解消されつつある。 看取りも視野にいれた在宅での療養において、多職種連携を行っていくうえで口腔ケ アサポートステーションの果たす役割の重要性を示した症例であったと考えられた。.

(16) 〈摂食嚥下機能評価の様子〉 ケアマネージャー. 歯科衛生士. 家族(長女). 患者. 訪問看護師. ⑤研修会・カンファレンスの開催 1)在宅歯科医療推進のための研修会 5 回 2)摂食支援のための研修会“臨床カンファレンス” 3)管理栄養士向けセミナー 5)いろうレストラン 1 回 ※別途資料参照. 3回. “食べるを支える研修会” 8 回. 4)多職種向け研修会 “食の元気塾 ”4 回. 歯科医師.

(17) ⑥地域連携情報共有ツールの開発 携帯端末を使った地域連携情報共有ツールの開発を行い、入院患者の医療情報の集積お よび退院時カンファレンスに提供する資料の作成を行った。(②、③参照) 〈携帯端末による地域連携情報共有ツール〉 入力用 PC. タッチペンを使用して患者情報 を入力可能. 入力用 PC. 入力された情報は、ポータブルプリンターを使 用して、その場で印刷可能 患者や病院内の関係職種への情報提供が迅速 に可能である。. ポータブルプリンター.

(18) -実際の入力画面-.

(19)

(20) 〈感想〉 今回の検討では、入院患者の摂食嚥下機能障害や口腔環境の実態を把握し、特に在宅で 療養している患者の、入院中から退院後のシームレスな支援を行うためのシステム構築や 摂食支援のモデル構築を目的として介入調査を行ったが、多職種と協働して支援方法を検 討し、取り組んでいくことにより、介護の重症化予防や、生活の質の向上、ひいては医療 費の削減に繋がる可能性が改めて認識された。また、この取り組みを通じて、多職種との コミュニケーションを密にとっていくことは、互いの職務に対する理解を深めることに繋 がり、患者にとって必要かつより有効な支援方法を構築することを可能にするだけでなく、 地域における医療や介護の連携を強化する一助にもなることが認識された。しかしながら、 実際はこのような関わり方ができたケースは多くはなく、家族が遠方に住んでおり協力が 得られにくい場合や、独居、老老介護状態など現代の介護に関する問題点として挙げられ るような状況におかれている場合や、患者の全身状態が著しく不良な場合などでは、地域 との連携が繋がりにくくなっていることも感じられた。これらの課題を解決していくため には、社会全体の理解や協力を得られるように問題提起することが必要であり、同時に、 在宅医療を支える地域の関連職種との連携ももっと強化していかなければならないと感じ られた。今回、口腔サポートステーションを設置して、歯科の観点から患者を支える地域 連携のあり方について提言することができたと考えるが、今後も地道にこの取り組みを継 続して、在宅における摂食支援のモデル構築に向けて活動していかなければならないと感 じた。. 本事業は、公益財団法人 在宅医療助成 勇美記念財団の助成によった.

(21)

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