Title
鶏卵アレルギーの関与するアトピー性皮膚炎の病態に関す
る研究 1. Proliferative responses of CD4^+ T-cell population to
ovalbumin in patients with atopic dermatitis who are sensitive to
hen eggs 2. Suppressive effects of elimination diets on T cell
responses to ovalbumin in hen's egg-sensitive atopic dermatitis
patients( 内容の要旨(Summary) )
Author(s)
篠田, 紳司
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(医学)乙 第886号
Issue Date
1993-12-15
Type
博士論文
Version
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/15386
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氏名(本籍) 学位の種類 学位授与番号 学位授与日付 学位授与の要件 学位論文題目 IJ t∃1 一 Jトト 七日 皇爪T 篠 田
紳
司(岐阜県)博
士(医学)
乙第 886 号 平成 5 年12 月15 日学位規則第4条第2項該当
鶏卵アレルギーの関与するアトピー性皮膚炎の病態に関する研究
1.Prolifer8tive response$Of CD4+T-Ce"population to ov81buminin p8tients With8tOPic derm8titjs who8re$enSitive to hen eggs
2.Suppressive effects of eIimination diets on T ceH response$tO OValbumin in hen's egg-SenSitive atopic derm8titis patients
審 査 委 員 (主査)教授
折
居 忠 夫 (副査)教授 森俊
二 教授 安 田 圭 吾 論 文 内 容 の 要 旨 アトピー性皮膚炎の病態の全体像は未だ明らかではないが,特に小児のアトピー性皮膚炎においては,食物ア レルギーがその病態に深く関与する症例が少なくない。食物摂取後速やかに症状が出現するIgE-mediatedのア レルギー反応のみからアトピー性皮膚炎の病態を分析することは困難であり,病理組織から見てもアトピー性皮 膚炎におけるIgE-mediated以外のアレルギー反応を検討することが重要と考えられる。 申請者らは.代表的な食物アレルギーである鶏卵アレルギーが関与するアトピー性皮膚炎患児においては,患 児の末梢血単核球(PBMC)が,鶏卵の抗原であるオブアルブミン(OA)に対し幼若化反応を起こすことに 基ずいて,アトビ,性皮膚炎の病態の分析を行った。すなわち,PBMCのどのpopulation,Subpopulation, SubsetがOAに対して反応しているのかを検討し,さらに,患児に対して鶏卵除去療法を行うことにより,それ らの反応がどの程度変動するかを検討した。あわせて,OAに反応する細胞の表面マーカーも検討した。 研究方法 問診および鶏卵除去試験,負荷試験により鶏卵アレルギーの関与するアトピー性皮膚炎と診断した48例を対象 に,卵白特異IgE抗体,およびOAに対するPBMCの抗原特異的幼若化反応を検査した。このうち15例におい てPBMCを,接着法,Eロゼット温 negativeselection法で各種の細胞群に分離し,それら単独あるいはそ れらを組み合わせた細胞が,OAに対し抗原特異的幼若化反応を示すか否かを検討した。さらに,同様の基準で 鶏卵アレルギーの関与するアトピー性皮膚炎と診断した16例を対象に,鶏卵除去療法を3か月以上行い,除去前 後において抗原特異的リンパ球幼若化反応の程度を検討した。このうち10例においてT細胞の幼若化反応の程度 を,2例においてT細胞subsetの幼若化反応の程度を検討した。また4例において,OAを添加して培養した 場合のリンパ球表面マーカーについて検討した。 研究結果 1)鶏卵アレルギーの関与するアトピー性皮膚炎患児において,OAに対するPBMCの抗原特異的幼若化反応 (stimulationindex)と卵白特異IgE抗体(RASTscore)との間には相関関係を認めなかった(r=-0.12)。 2)鶏卵アレルギーの関与するアトピー性皮膚炎患児のPBMC,T細胞+10%単球は,OAに対し幼若化反応 を示したが,B細胞+10%単球は幼若化反応を示さなかった。非アトピー健康児においては,どの細胞もOAに 対し幼若化反応を示さなかった。 3)T細胞をさらに分析すると,CD4⊥T細胞+10%単球がOAによく反応しており,CD8-T細胞+10%単 球のOAに対する反応との比を取ったCD4◆Tcell/CD8+Tcellratioは,非アトピー健康児に比べ,鶏卵 アレルギーの関与するアトピー性皮膚炎患児において有意に(p<0.01)高かった。 1074)鶏卵アレルギーの関与するアトピー性皮膚炎患児を対象に鶏卵除去療法を3か月以上行い,PBMCとT細 胞+10%単球のOAに対する幼若化反応をそれぞれ除去前後で比較すると,除去前に比べ,除去後は有意に(p <0.01)低値を示した。しかし,鶏卵除去療法前後でT細胞+10%単球のCandida albicansおよびPhytohemag-glutinin(PHA)に対する幼若化反応をそれぞれ除去前後で比較すると,前後での有意差は見られなかった。 5)鶏卵除去療法を3か月以上行なうと,CD4+T細胞+10%単球のOAに対する幼君化反応は,除去前に比 べ明らかに低値を示した。一方,CD8+T細胞+10%単球のOAに対する幼若化反応は,除去前後で有意差を 認めなかった。 6)鶏卵除去療法後,T細胞+10%単球のOAに対する幼若化反応が低下したすべての症例で,アトピー性皮膚 炎の症状の軽減が認められた。 7)鶏卵アレルギーの関与するアトピー性皮膚炎患児のPBMCをOA添加にて培養すると,CD4+CD45RA+T細胞 の増加を伴ってCD4+T細胞の比率が上昇した。 以上により,鶏卵アレルギーの関与するアトピー性皮膚炎患児のPBMCがOAに対して示す幼若化反応は, T細胞の反応であり,その中でも特にCD4+T細胞が強く反応していることが明かとなった。そしてOAに反 応するこのCD4+T細胞の大部分は,IgE産生のためのhelperT細胞ではないことが示唆された。さらに鶏卵除 去療法は,非特異的にこのCD4+T細胞の反応を減弱させるのではなく,OAに対する特異的な反応を減弱さ せることが明かとなったが,これがOAに反応するT細胞の数の減少によるのか,あるいは機能的な反応性の抑 制によるのかについては,さらに検討が必要となる。
論文辛査の結果の要旨
申請者篠田紳司は,鶏卵アレルギーの関与するアトピー性皮膚炎の病態について検討し,患児の末梢血単核球 がオブアルブミンに対して示す幼君化反応は,T細胞の反応であり,その中でも特にCD4+ T細胞が強く反応 していることを明らかにした。さらに鶏卵除去療法は,非特異的にこのCD4+T細胞の反応を減弱させるので はなく,オブアルブミンに対する特異的な反応を減弱させることを示した。 これらの成果は小児科学ならびに臨床アレルギー学の研究の進歩,発展に少なからず寄与するところが大きい ものと認める。 [主論文公表誌] 鶏卵アレルギーの関与するアトピー性皮膚炎の病態に関する研究l.Proliferative responses of CD4`T-Cellpopulation to ovalbuminin patients with atopic dermatitis who are sensitive to hen eggs
平成4年11月発行 Acta Paediatr8l:896∼901,1992
2.Suppressive effects of elimination diets on T cellresponses to ovalbuminin hen's egg-SenSitive
atopic dermatitis patients