株式交換による合併の最適交換比率 : 2変量跳躍拡
散過程モデル (経営者教育研究グループ)
著者
董 晶輝
雑誌名
経営力創成研究
号
9
ページ
91-101
発行年
2013-03
URL
http://id.nii.ac.jp/1060/00007562/
Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja株式交換による合併の最適交換比率
-2
変量跳躍拡散過程モデ)Ir---Th
e Optimal Conversion Ratio on Stock-forStock Mergers: A2-Dimensional Jump-Di血lsionProcess Model東 洋 大 学 経 営 力 創 成 研 究 セ ン タ ー 研 究 員 董 品 輝 要旨 この論文では、株式交換による合併での最適交換比率に関するリアル・オプシ ョン・モデ、ルを提示する。合併当事者の株価の変動については2次元の跳躍拡散 過程を用いる。ここで、最適交換比率の明示的な解を導出する。さらに、最適交 換比率を実務で広く利用されている株価の平均値に基づいて算出する交換比率と 比較可能な形に変換した上で、両者を比較し、株価の平均値に基づく交換比率が 最適交換比率より低いことを示す。 キーワード (Keywords):株式交換による合併 (stock-for-stockmergers)、交 換 比 率 (conversion ratio)、 跳 躍 拡 散 過 程 (jump-diffusion process)、2変 量 指 数 分 布 (2-dimensionalexponentialdistribution)、リアル・ オプション・モデル (realoption model) Abstract In this paper, we propose a real option model for determining the optimal conversion ratio on stock-for-stock mergers. Using a 2-dimensional jump-diffusion processωmodel the dynamics of stock prices of the two firms concerned, we derive a closed form solution of the optimal conversion ratio. In addition, we transform the solution of the optimalconversionratio into an expression that is comparable to the conversion ratio, which is widely used in practice, estimated on the average stock prices. We find that the conversion ratio based on the average stock prices is lower than the optimal one. 『経営力富IJ成研究』第9号, 2013
はじめに
企業の合併は両当事企業の株主の富にかかわる重大な出来事である。特に、株 式交換による合併では、合併される側の株主にとっては、現在所有している株式 を放棄し、将来の親会社の株式を手に入れることになる。合併することに当たっ ては、両当事企業の経営陣が合意した交換比率に対し、合併される側の株主が意 思決定をしなければならない。本論文では、株主の富の最大化の視点から議論を 進めることにする(1)。一般に、規模の大きい企業が比較的規模の小さい企業を合 併のターゲ、ットにするが、ターゲット企業の株主は提示された交換比率を考慮し 株式交換に応じるかを選択することになる。現在、実務において、交換比率の推 計では直近の一定期間の平均株価、 1株当たり純資産、害IJ引キヤツ、ンュフロー法 など、またはこれらの方法を併用して行っている。これらの方法は価値の対等に 基づいた考えたであるため、手持ちの株式を売却し、別の株式を購入することと 変わらない。しかし、ターゲット企業の株主にとっては一つのリスク資産をもう 一つのリスク資産に交換することとなり、一旦決定すると、本来所有していた株 式は消滅し、もとに戻ることはできない。従って、ターゲット企業の株主は合併 によるプレミアムを要求するのが自然であろう。実際、 2012年 4月に公表され た食品流通業界の第2位のグノレーフo企業が株式交換によるあるローカル・スーパ ー・マーケットを完全子会社化の例では、直近の平均株価の比率が約0.22に対し、 交換比率が0.293 となっている。公表直後からターゲット企業の上場廃止までに、 両社の株価の比率が0.30から 0.29の範囲で推移した。この例での交換率は合理 的に決められたのかについては、ここでは議論しないが、平均株価に対しておお よそ30%のプレミアムが付いている。交換比率のプレミアムには多くの要素が考 えられるが、ここでは、一般投資家の立場から、株式の保有による収益とリスク の観点から株式交換のプレミアを考える。この考え方からすると、株式交換のプ レミアムは交換オプションの価値に類似するが、企業の合併が相対取り引きであ ることから、完全なへッジはできない。従って、株式交換のプレミアムをリスク 中立な確率測度のもとで評価することが現実的ではない。ここでは、実際の株価 の確率分布とそれに対応する割引率のもとで交換プレミアムの期待値を測ること にし(2)、リアルオプション・アプローチによる交換比率の推計の方法を提案する。 株価の変動について、最近では、単純な幾何ブラウン運動ではなく、レヴィ過 程によるモデリングすることが一般的になってきている。なかにも、幾何ブラウ ン運動に、ジャンプを加えた跳躍拡散過程が多く利用されるようになっているω
。 ここでは、幾何ブラウン運動に上下のジャンプを加えた跳躍拡散過程を使用する。 株式交換による完全子会社化のケースでは、両当事会社は同業者である場合が多 い。従って、両社の株価の変動が大きく相関する。 2個の確率変数がともに幾何 ブラウン運動のときの取扱についてはよく知られているが(4)、ジャンプが発生し たとき、 2個の確率変数のうち 1個だけが変化する場合は、従来の2変量幾何ブ ラウン運動モデルの拡張として比較的容易に解を求めることができる。ここでは、 突発的な事象が発生した場合、両社の株価が同時に大幅に変動することも考慮し、 『経営力車JI成研究』第9号, 2013ジャンプが発生したとき、 2個の確率変数が同時に変化する場合を考察する。す なわち、上下のジャンプはポアソン過程にしたがって発生するものとし、ジャン プの大きさは 2変量の対数指数分布であるとする。多変量指数分布についてはさ まざまな結合密度関数が考案されているが、ここでは、
M
a
r
s
h
a
l
a
n
d
O
l
k
i
n
型の ものを使用する。 論文の続きは以下のように構成される。 1節では、本論文で使用する株価変動 モデルについて説明し、その確率過程に関する基礎的な結果を示す。 2節では、 最適な交換比率を求める。3節では、平均株価に基づく交換比率との比較を考え、 両者の違いを示す。4節では、結論を述べる。付録では、数学的な部分を簡潔に まとめる。1
株価変動モデル 合併する側の企業と合併される側の企業の株価をそれぞれX1(t)とX2(t)で、表わ すこととし、それを2次元確率変数X(t)= {X1 (t), X2 (t)}で、表わす。株価の変動は 幾何ブラウン運動にジャンフ。が加わった確率過程に従うと仮定する。幾何ブラウ ン運動の部分を dXi
C
t) =μjXj(t)dt +σ九
(t)dWj(t) (i= ,21), dW1 (t)dW2 (t) = pdt で表わす。ジャンプは上方と下方の両方で発生するとし、上方と下方ジャンプは それぞ、れパラメータKとλのポアソン過程で発生する。ジャンフ。発生前のX(t)が X = {Xl,X2}の と き 、 ジ ャ ン プ 発 生 後 に はX(t+)= {x1 YV X2 Y2}、 あ る い は X(t+) = {XdZl' X2jZ2}になるとする。上方と下方ジャンプ、幾何ブラウン運動と 上下のジャンプは独立であるとし、パラメータは実際の確率分布を表わす。 X(t)は2次元のレヴィ過程であるから、その無限小生成作用素は LV(x) = j仇
2Vll(X)+ 2即 日 山+σ/X/V22(x)] + 1l1XIVl +μ2X2V2(X)+KE[V(XIYl' X2Y2) -V(x)] +λE[V(XljZV X2/Z2) -V(x)] (1) となる。ここで、 Vj(X) = aV(x)jaXj, Vij(x) =δ2V(x)jaXj aXjである。2次元の レヴィ過程について、 E[X1(τ)SX2(τ)tIX(O) = x] = XlsX2 texp (ψ(s, t)τ) が成立し、 X(t)のレヴィ幕指数ψ(s,t)は ψ(日)= 七 山 一 川 町
2st+ザ
t(t一
1)]+ 1l1S + 1l2t+ KE[Y1sy
/
-1] +λE[Zl-SZ2-t-1] (2) となる。また、 Xj(i=
,12,)の期待値の増加率を dE[Xj(t)] ffi;=一 一 一 一j
E
[
X
i
C
t)] dt 『経営力創成研究』第9号, 2013とすると、 E[Xj(τ)IXj(O) = xd = Xjemiτ であるから、 m1=ψ(,10) =μ1 + KE[Y1 -1] +λE[Z1 -1 -1], m2=ψ(0,1) =μ2 + KE[Y2 -1] +λE[Z2 -1 -1] となる。 (3)
。
=
(81) 82, 83)をパラメータとするMarshalland Olkin型 2変量指数分布 の結合確率密度関数は (81 (82 + 83) exp{ -81 x一(82+ 83)y}, X<
Y f(x, y; 8) = ~ 82 (81 + 83) exp{ -82y -(81 + 83)x}, Y<
x l83 exp{一(81+ 82 + 83)y}, x = Y ( x> 0, y > 0, e1 > 0, 82 > 0, 82 > 0 ) で、その平均と相関係数は E(X) = 1/(81 + 83), E(Y) = 1/(82 + 83),戸=Corr(X, Y) = 83/ (81 + 82 + 83) となる。したがって、パラメータは 1 ~ ~ 1 ~ ~ {E(X) + E(Y)}p 81=一一一-
E(X) 81-.>', 8?=一一一-
81, 81 = -L. E ( η δ . > E(X)E(Y)(1+め
となる。また、積率母関数は ψ(s, t)= E(e-SX一円。)
(81 + 83)(82 + 83) + st83/(81 + 82 + 83 + s + t) (4) (81 + 83 + s)(82 + 83 + t) となる(5)。したがって、 yj= logYjとZj= logZjの結合確率分布がc
= (C1' C2' C3)と η= (η1,112'η3)をパラメータとするMarshalland Olkin型2変量指数分布とする と、 X1(t),
X2(t)の期待値の増加率は、 C1+も>
1,む+も
>1とすると mj=μj + K/(む+も
-1)一λ/(11j+η3 + 1) (i= 1,2) (3') となる。2
.
最適交換比率 ターゲ、ット企業の 1株に対して合併後の親会社の株式 n株と交換することが 提案されたとする(6)。ターゲ、ット企業の株主の潜在的プレミアムは V(X(t)) = nX1 (t) -X2 (t) となる。現在、両社の株価がX(O)=
xで、あるとき、株主が交換プレミアムの期待 現在価値V(x)を最大になるように、交換合意のタイミングを決定するとする。害JI 率をr(r>
m1,mz)とし、交換合意時点をτとすると、 V(x) = E[e-nV(X(τ) )] となる。これから微分積分方程式 LV(x) = rV(x) (5) 『経営力創成研究』第9号, 2013が得られる。合併する企業が破産するような事態に至った場合
(
X
1(t)=0)
は合 併は不可能となるので、境界条件は V(O, X2)=
0 となる。この境界条件のもとで、 (5)式の解を求めることになるが、ここでは、 2 変量の微分積分方程式を1変量のものに変換した上で、解を求めることにする。 V(x)がxの1次同次関数であることから、 が成り立つ。 とすると、 (5)式は IX句 ¥ V(X)=
X2V (-土,1) ¥X2 / X咽u=-,土 W(u) = V(u, 1)
"'2
j
d
仰 い )+ (μ1 -~2)UW'ω-
(r -~2)Wω+ K{E 卜2WG~U)]
-Wω+
入ペ巾判(Eド例之
[
W(
2
制
uサ引)月l
一4州W阿
(
叫
=
0, (σ2_σ12-2pσ1σ2+σ22) となり、境界条件は W(O)=
0 となる。ぜを合併を合意するX1(t)/X2 (t)の最適水準とすると、 W(u) = nu -1 (u主 ザ ) (6) がもう一つの境界条件となる。合併の最適なタイミングを求めることはW(u)を最 大にする関値ザを求めると等しい。 (6)式の-f.l矧手を W(u)エ
=
Ajuα とすると、 (6)式が任意のuに対して成立するためには以下の3つの方程式を満足 しなければならなしゅ。 σ2αj(αj-
1
)
121+(μ1 -~2)α} 一 (r-~2) + K[ψ(-αj,Uj一1;~) -1] +λ[ψ(αj,l一αj;T])-1]。
=
(7)エ
Aludj nu' 1 一 一 一 I C1+も一
αj ~1 + ~3 -1 . ~1 +む (8)エ
Aju.al 一一一一一一ば+
1=
0 η2+η3+1-αiη2+η3 T]2 +η3+1 (9) (7)式のψ(a,b,c)関数は(4)式で定義されたものである。(7)式を未知数α]の方程式 『経営力書]1成研究』第9号, 2013σ2V(V -1) F(v)=一一言一一+(μ1-112)V一(r-112) + K[ψ(-V, V -1;~) -1] +λ[ψ(V, 1-V;T]) -1]
=
0 (7') とすると、正と負それぞれ3つの根を持つが、境界条件W(O)=
0を満たすのは3 つの正の根で、ある。このことから、 (8)式と(9)式の左辺の最初の合計をとる項の数 はそれぞれ3となる。j= 1,2,3とすると、 (8)式と(9)式は次のようになる。ふ
A;u'U """ 1¥; J nu' 1•
-ー----.
.
合 ~1 +も一αj い も -1 . ~l+
~3之
M n t 1 一一一一一一+ =0r
112 +η3 + 1一α1η2+η3η2+η3+ 1 ここで、 αjU
= 1,2,3)は(7)式の 3つの正の根である。 (8')式と (9')式にハイ・コンタクト条件 (highcontact condition)ェ
:1Ajudj-nr+1=。
ェ
;1αjAju'Uj-nu' = 0 を加えた連立方程式より、以下の明示的な解を得る。 A;u.Uj= 七 時 -
aj 112 +η3 + 1一α! _1_.n~ αk一 一 一
J ~ ~1 + ~3 112 + 113 + 1α!-11 1Eiαk一αj (8') (9') j=
1,2,3 C1+も -1 112 +η3 T寸3 α kI
I
一一一 (10) も+も η2+η3+ 11 1k=1αk-1 (10)式の右辺は現在の株価水準と交換比率とは無関係で決まる定数である。従 って、交換比率n
に応じて、闘値u
・
=
x
;
/
x
i
が決まり、 nとtの積が定数となる。 (10)の右辺を も+も-1 η2+η3 下寸3 αk •• ~1 十七 η2+η3 + 11 1k=1αk-1 で表わすことにし、現在の両社の株価がそれぞれXVX2のとき、すなわち、 u = XdX2のときに、直ちに、ターゲット企業の株主と合意できるようにするに は、げu=Mとなるように最適な交換比率げを設定すればよいことになる。従っ て、最適な交換比率は 金 X2‘ ' n=
一
-IVI X1 (11) となることを導出できる。X2/X1は合併する側企業の株価を 1 としたときのター ゲット企業の株価であるから、株式の価値で 1対 1の交換比率である。ゆえに、 ここ求めた最適な交換比率は株式価値対等の交換比率に乗数 M をかけたものと なっている。M > 1であるから、最適な交換比率は価値対等の交換比率よりも高 くなる。また、 M-1は交換比率で、測ったフ。レミアムである。 『経営力創成研究』第9号, 20133
.
平均株価に基づく交換比率との比較
実務では、平均株価を交換比率を算定する際の一つの根拠としている。平均株 価に基づく株式交換プレミアムの期待現在価値は eー
ペ
nE[X1(t)IX1(O)=
XI]-E[Xz(t)IXz(O)=
xz]}=
e-吋
nX1effi1t -xZe町 t] となるので、これを最大化するための必要条件は -r[nx1effilt-xZeffi2t] + nX1m1effilt -xzmzeffi2t= 0 となる。すなわち、 x1 (~_~_,
.
r -mz n-e'...l. ,L...J‘=
一
一
一
一
一
一
Xz r -m1 となることから、現在時点で、合意が成立する最適な交換率は ー* Xzrーロ12 n=
X1r -ml となることがわかる。 (7')式の正の解をαi(i=
,21,3)、負の解を戸i(i=
1,2,3)とすると Zilf=l(αj -v)(向
一
V) F(v)=
(も+も-v)(~z +もー1+ v)(η1+η3 + V)(112 +η3 + 1-v) と書ける。 これから F(O) r -m2 F(l) r-m1 (も+も -1)(む+も)(η1+113+1)(η2+ 113)円 3 (αi si ¥ (~1 + ~3)(~Z + ~3 -1)(η1 +113)(η2+η3 + 1) 1 li=l¥αi-1 si -1) となり、両辺について r-m2 ~z+ も -1 η1+η3 下寸3 si-1一 一
r -m1 ~2 +も η1+η3+ 1 1 1同 日
i C1 + ~3 -1 ηz+η3 1一寸3 αk 一 ー も+も ηz+η3+ 11 1k=1αk-1 とし、う関係式が成り立つ。従って、(10)式は 合 r -m2 ~2+ もー 1 η1+η3 下寸3 si-1 nu'=
ー
一
一
一
一
-
I I一
一
一
一
一
r -m1 ~z +も η1+η3+ 1 1 1i=1 si と変形することができる。上の表現に基づく(11)式は • Xz r -m2 ~z 十七一 1 η1+η3r
寸3 si-1 n匂=
一
ー
ー
一
一
一
一-
I I一
一
一
一
一
Xl r -m1 ~2 +も η1+η3+ 1 1 1i=1 si 表わすことができる。すなわち、最適な交換率は平均株価に基づく交換率に修正 項 0 = ~2+む-
1 111 +η3円
3si-1一
~2 + ~3 111 +一
113 + 1 1 1一 -
i=1 si が掛った形になっている。修正項の上限と下限は 97 『経営力創成研究』第9号,20131 1 1 - 7 > D > 1 - 7 > O ( O >仇 >
s
2
>恥) ド1 ド3 となることから、平均株価をもとに交換率を推計した場合、最適な交換比率より も低くなり、ターゲット企業の株主が不利な条件で株式交換による合併に応じる ことになる。4
.
結論
この論文では、株式交換による合併の最適交換比率をリアル・オプション・ア プローチで求めることを試みた ここでは、株価の変動にジャンプを取り入れ、 合併当事者の株価の変動が相関する場合を考え、 2次元の跳躍拡散過程を用いて 株価の変動をモデリングした。結果として、明示的な形で最適交換比率の解を導 出することができた。一見く負雑な表現の解であるが、現実に合わせっても解釈 できるもので、実務的にも理解しやすいと考えられる。株式交換による合併の多 くの実例では、ターゲ、ツト企業の株価に対して両者の対等的価値にある程度のプ レミアムを加えて、合併後の親会社の株式をターゲ、ット企業の株主に渡していた。 このプレミアムは合併をスムーズに実行させるための対価と解釈もできるが、株 価の変動性を考えると、合併のタイミングを選択することから得られるオプショ ン価値を実現するものであると考えるべきである。では、このプレミアムはいく らなら妥当であるのか。本論文での結果はこの問題に理論的な回答を与えるもの である。実務では、当事者の過去一定期間の株価の平均値に基づく交換比率を算 出する方法が広く利用されている。本論文では、さらに、株価の平均値に基づく 交換比率を理論的に導出し、最適交換比率をこれと比較可能な形にした上で、両 者を比較した。その結果、株価の平均値に基づく交換比率は最適交換比率よりも 低いことが明らかlこなった。 【注】 (1) 株式交換による合併の経済的効果についての実証研究は、例えば、 Ericksonand Wang (1999), Higgins (forthcoming)等があるが、著者の知る限りでは交換率の理論的研究はな し、。 (2) この考え方はリアルオフ。ション・アプローチによる企業の投資プロジェクトや研究開発 の評価で議論されている[Grasselli(2011), Alexander and Chen(2012))。(3) Mordecki (2004), Kou and Wang (2004)などを参照。
(4) 2変量の幾何ブラウン運動の場合については McDonaldand Siegel(1986), Dixit and Pindyck(1994)など参照。 (5) Marshall and Olkin型 2次元指数分布については Marshalland Olkin(1967)とKotz, Balakrishnan and Johnson (2000)を参照。 (6) 合併後の親会社の株価はシナジー効果などを考慮した評価値であるとする。親会社は比 較的に規模の大きいグループ企業である場合、合併合意後の株価は合併前とほとんど変 『経営力創成研究』第9号, 2013
わらないと考えることもできる。 (7) 導出は付録を参照。 【付録】 (6)式の中の期待値の部分について、
w
ω
=
(
5
1
u
α
U < U事 U~U牟 V J 4 1 α V J α T h α{ e 品 J 一 A ーす
-d r a E E E J、
a a --、
一 一 、E E ノ u v d v de
r目 、
w
v d o ﹂=
、 、 B E a , , , , 、 u ら 丸 一 V 児 、A / , ﹄ E、 、 、M
W
川 あ Y で eY1-Y2u<
U泳 eY1-Y2u ~ U* Z 4よ α + z t h-e
-j e J u 一 A h す ム 一 目 r ' E , , , ‘ , a a , 、 一 一 、, ノ E u z z ρ b r a t 、w
q ω OL 一 一、 、
a z z , ノ u 弓 4 -4 A マ L-7L 〆 ' E E E、 、 、 W 1一 五
e
Z2-Z1u
<
U事 eZ2-Z1u ~ Uホ となる。 Marshalland 0肱 血 型2変量指数分布では、L
OO 日 日∞00L
Yγ
γ
L
Y + 1γ
L
Y + 10g 什州内川+刊巾叫 10 同0暗glU 午ト吋吋吋旬町向f(((収x仰,y;8=仲昨日
:
o
guf
一4旬f(x,y;8)L
OO日
∞
1
L
:
:
l
0
暗g
uf
ベYf(x折 山。
2(81+
83) 1 (u*¥ー(91+93 +S) 81+
83+
S 81+
8ヲ+
8.,
+
s+
t¥u J となるので、上の式の右辺を gl(S, t: 8)と表すことにすると、E [Y2W(
ト
)
ト
ヱ
AjUαj[
ψ
(
ーαj,Uj一川)-
gl(-Uj,Uj一 川 + 時
1(-1
,0;~)
- gl (0, -1;~) (A1) となる。同様にして、。
1(82+
83) 1 (u*¥一(92+93+t) gz(s,t : 0 ) = 1 l。
2+
83+
t 81+
8ヲ
+
8.,
+
s+
t ¥ U J 、B, , , フ 白 川 V 仏 、 n U 4i f , ‘ 、 q L ub u+
、••••• J 1 E j n H Eα
4 iα
f E 1 内 4 0 白 、 、 , , J n -α 4i α 〆 s, 、 、 山 V r E E E ・t 、1 j l n . α U 1 hh
n
叫 〆 a t、 す ム & 一 一 一 、E E E ・ E ・ - E E ﹂ 、、 . , ・ 1 ' 〆 u q L -4 4 7b-7h 、 / ' ' ' E 、 、 、 ー に W 判H
﹂ 竹 2 、y ﹂ E U となる。 『経営力創成研究』第9号, 2013ハU (Al),(A2)を(6)式に代入し、 (6)式が任意のU について成立するためには σZαj(αj -1) 121+(μ1 -~2)α] 一 (r-~2) + K[ψ(一αj , Uj 一 1;~) -1] +入[ψ(αj,l-αj;
1
1
)
ー1]= 0 (A3) と 一エ》むA内]内ベ
h
何一寸叫α町]州α町]一川川)+珂岨似1(一1.附 一0-
g
ω
,一-1-1;ω;→ 一 エ 附gz以
的
2バ巾山
(い町α何i,lト一町m
η
か昭版則叫zメο
山(
川1,0T;]川)ト一寸叩g以
z2メ(刊O川 が成立することが必必、要になる。(A3),(A4),(A5)が本文の(7),(8),(9)式となっている。 (A3)の左辺をvの関数として、 F(v) =σ2V(V -1)/2 + (μ1一μz)v一(r-μ2) + K[ψ( -v, v -1;~) -1] +λψ[(v, 1-V;T])-1] とすると F(O) = mz -r, F(l) = ml -r となる。X1(t)とXz(t)の期待値の増加率mlとmzがともに割引率rより小であれば、 方程式F(v)=
0の解は正のものと負のものがそれぞれ3個となり、正の解はいず れも 1より大となる。境界条件W(O)= 0を満たす正の解をα1>uz,α3とすると、町
u)エ
=
;1Ajdl となる。 【参考文献】Alexander, C and Chen X. (2012), "A General Approach ωReal Option Valuation with Applications ωReal Estate Investments", a submitted paper to 16th annual international conference, real options group.
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受付日 2013年 1月17日 受理日 2013年 2月 4日