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Current Status and Trends of the Methods for the Classification of Bifidobacteria Koichi WATANABE* *Department of Animal Science and Technology, Natio

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1.はじめに ヒトの腸内には 1000 種類以上,約 100 兆個の細菌が 複雑な生態系を形成し,生体内・生体外成分の代謝,ビ タミンの生産,免疫力の活性化,病原菌の腸管内での増 殖阻止など多くの重要な役割を担っている.とくにビ フィズス菌は腸内菌叢の主要構成菌群の一つであり,宿 主の健康維持に大きく関わっていることが明らかになっ ており,今日ではプロバイオティクスとして広く利用

ビフィズス菌の分類法の現状と動向

渡辺 幸一

* *国立台湾大学動物科学技術学部

Current Status and Trends of the Methods for the Classification of Bifidobacteria

Koichi WATANABE*

*Department of Animal Science and Technology, National Taiwan University

要 旨 ビフィズス菌は,主にヒトや動物の腸管から分離されるグラム陽性の多形性桿菌であり,系統分類学的には

Actinobacteria門の Bifidobacteriaceae 科に属する 6 属 58 菌種で構成される.なかでも Bifidobacterium 属は,50 菌種 10 亜種で構成され,その中心を占めている.微生物の分類体系は,菌種同定や分類法の技術の進歩と密接な関係にある. DNA-DNA 相同性試験(DDH)法は,1960 年代から用いられ,現在でも菌種を区別するための最も重要な基準である.一 方,16S rRNA 遺伝子配列データに基づく系統解析は,煩雑な操作と熟練を必要とする DDH に替わる菌種分類の標準法 として位置づけられている.しかしながら,16S rRNA 遺伝子単独では菌種の分類同定が不可能である菌種グループが数 多く存在する.近年,ハウスキーピング遺伝子の塩基配列に基づく多相解析法[Multilocus Sequence Analysis(MLSA) あるいは Typing(MLST)]および全ゲノム塩基配列の相同性(ANI)など,DDH 法を補完・代替する分類方法が開発さ れている.ここでは,ビフィズス菌の分類法の現状と動向について解説する.

Abstract “Bifidobacteria” are a group of Gram-positive polymorphic anaerobic bacteria that are commonly found in the gastrointestinal tracts of humans and animals. These bacteria comprise 58 species in 6 genera of the family

Bifidobacteriaceae within the phylum Actinobacteria. Among them, the genus Bifidobacterium, which consists of 50 species and 10 subspecies, is a predominant component of the bifidobacteria. Technical progress in the identifi-cation and classifiidentifi-cation of bacterial species is closely associated with developments in the approaches to bacterial taxonomy. DNA-DNA hybridization (DDH) values have been used since the 1960s to determine the relatedness between strains, and they are still the most important criterion for the delineation of bacterial species. Meanwhile, phylogenetic analysis based on 16S rRNA gene sequences has become a mainstream method in the classification and identification of bacteria, and it is now used as an alternative gold standard to DDH tests, which are time consuming and require expert skills. However, in many cases, members of a group of closely related species are impossible to distinguish on the basis of their 16S rRNA gene sequences alone, because the level of identity among the 16S rRNA gene sequences in these species is considerably higher than the recommended value for species dif-ferentiation. In recent years, a number of important methods have been developed as alternatives and complements to DDH, such as the multilocus sequence analysis or typing (MLSA or MLST) and the average nucleotide identity (ANI), which is a method based on the whole genome sequences. This paper briefly describes the current status and trends concerning the methods used for the classification of bifidobacteria.

Key words : Bifidobacterium;taxonomy;classification;phylogenetic analysis;DNA-DNA hybridization;16S rRNA gene;whole genome sequence

総  説 腸内細菌学雑誌 30 : 129-139,2016

2016 年 3 月 31 日受付 2016 年 4 月 23 日受理 * No. 50, Ln. 155, Sec. 3, Keelung Rd., Taipei 10673,

Taiwan R. O. C.

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されている.ビフィズス菌は,主にヒトや動物の腸管 から分離されるグラム陽性の多形性桿菌であり,系統 分 類 学 的 に は Actinobacteria 門 の Bifidobacteriaceae 科 に 属 す る 6 属 58 菌 種 で 構 成 さ れ る. な か で も Bifidobacterium属は,50 菌種 10 亜種で構成され,そ の中心を占めている. 微生物の分類体系は,菌種同定や分類法の技術の進歩 と密接な関係にある.1960 年代から 50 年近くも用いら れてきた DNA-DNA 相同性試験(DDH)法は,ゲノム レベルでの原核生物の菌種を相対的な数値化によって識 別可能とした唯一の方法であり,現在でも菌種を区別す るための最も重要な基準である. 一方,1990 年代以降,すべての原核生物に存在し, 解読が極めて容易な 16S rRNA 遺伝子の配列データが GenBank などの DNA データベースに豊富に蓄積する ようになり,かつ,この配列データが原核生物の菌種 同定に有用であることが確認されて以来,今日では 16S rRNA 遺伝子配列データに基づく系統解析は,煩雑な操 作と熟練を必要とする DDH に替わる菌種分類の標準法 として位置づけられている.しかしながら,16S rRNA 遺伝子配列単独では菌種の分類同定が不可能である菌種 グループが数多く存在するため,近年,ハウスキーピ ング遺伝子の塩基配列に基づく多相解析法[Multilocus Sequence Analysis(MLSA)あるいは Typing(MLST)] および全ゲノム塩基配列の相同性(Average Nucleotide Identity)など,時代遅れの感もある DDH 法を補完・ 代替する分類方法が開発されている. ここでは,ビフィズス菌の分類法の現状と動向につい て解説する. 2.ビフィズス菌の歴史 ビフィズス菌は,主にヒトや動物の腸管から分離され るグラム陽性で多形性の偏性嫌気性の無芽胞性桿菌で あり,1900 年フランス・パスツール研究所の Tissier に よって健康な母乳栄養児の糞便からはじめて分離され, その独特の形態から Bacillus bifidus communis と命名 された(1).その後,1924 年に Orla-Jensen はビフィズ ス菌を独立した Bifidobacterium 属として分類すること を提案したが一般には受け入れられなかった.1933∼34 年,Weiss と Rettger は母乳栄養児の糞便から分離した ビフィズス菌の生化学的性状から,Lactobacillus aci-dophilusの 1 変種として Lactobacillus 属に分類すべき であると結論した.これにより,Bergey’s Manual の第 5∼7 版においては,ビフィズス菌は Lactobacillus bifi-dusのように Lactobacillus 属の 1 菌種として分類され た.一方,1955 年に Hayward らにより,菌体の特徴的 な形態から Actinomycetales に属する Bifidobacterium 属が妥当であるとの指摘があった.さらに,乳酸の生 産量が 50%に満たず主要生産物が乳酸と酢酸であるこ となどから,1958 年以降,越智・光岡ら,Rogosa ら, Sharpe,Reuter,および Werner らによって,ビフィ ズス菌を Lactobacillus 属から除外し,Bifidobacterium 属 と す べ き こ と が 提 案 さ れ,1974 年 に 出 版 さ れ た Bergey’s Manual の第 8 版(2)では,ビフィズス菌は Lactobacillus属 か ら 独 立 し,Bifidobacterium 属 と し て Actinomycetaceae 科に分類された.これに先立ち Mitsuoka はヒトおよび動物から分離されたビフィズス菌 株を生化学的性状に基づいて分類同定することで,それ までの Reuter による分類体系を再構築した(3).その後, DNA-DNA 相同性が細菌の分類基準となり現在の分類体 系が出来上がった.現在では,Stakebrandt らが 1997 年 に提案した 16S rRNA 遺伝子の塩基配列に基づく階層 分類体系(4)に則り,Bifidobacterium 属(Genus)は,

Actinobacteria門(Phylum)内の Bifidobacteriaceae 科

(Family)に分類され,現在 50 菌種 10 亜種が承認され ている. 3.ビフィズス菌の定義 3.1. Family Bifidobacteriaceae の定義 Bifidobacteriaceaeは,グラム陽性の Bifidobacterium (50 菌種),Alloscardovia(3 菌種),Aeriscardovia(1 菌種),Parascardovia(1 菌種)および Scardovia(2 菌種)とグラム不定の Gardnerella(1 菌種)の計 6 属 58 菌種で構成される(5).解糖系で作用する Fructose-6-phosphate phosphoketolase(F6PPK: EC 4.1.2.22) は,本科に属する細菌の鍵酵素である.菌形態は多形 性で,短桿状,球状,湾曲状,分枝を伴う棍棒状やス パーテル型を呈する.ブドウ糖は主に 3:2 のモル比 で酢酸と乳酸とに変換される.少量のギ酸,エタノー ル,コハク酸を生成するが,酪酸およびプロピオン酸な どは生成しない.炭酸ガスは,グルコン酸の分解時を 除き産生しない.最適発育温度は 30∼42°C で,最適発 育 pH は 5.0∼8.0 である.DNA の塩基組成比(G+C 含 量)は 42∼67 mol%である.基準属(type genus)は

Bifidobacterium Orla-Jensen 1924(Approved Lists

1980)である. 3.2. Genus Bifidobacterium の定義 Bifidobacteriumは極めて多様な形態を示すグラム陽 性の多形性桿菌で,短桿状,球状,湾曲状,分枝を伴う 棍棒状やスパーテル型を呈する.この形態は培養条件に 影響され,初代分離時は分枝状を呈しても,継代培養

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すると桿状になる傾向がある.また,Bifidobacterium

minimum, Bifidobacterium psychraerophilum,

Bifidobacterium subtileなどの一部の菌種を除き,初 代分離時には偏性嫌気条件が必要である.コロニーの表 面は円滑で,凸円状に隆起し,周縁は円滑,血液を含 まない培地では乳白色∼白色を呈する.芽胞の形成お よび抗酸性はなく非運動性である.最適発育温度 37∼ 41°C,一般に最低発育温度は 25∼28°C,最高発育温度 は 43∼46°C である.最適発育 pH は 6.5∼7.0,pH 4.5∼ 5.0 あるいは 8.0∼8.5 では発育しない.硝酸塩を還元し ない.アンモニアは一般に窒素源として利用する.糖 質分解性であり,ブドウ糖は 3:2 のモル比で酢酸と 乳酸とに変換される.少量のギ酸,エタノール,コハ ク酸を生成するが,炭酸ガス,酪酸およびプロピオン 酸などは生成しない.F6PPK により,解糖系のなかで フルクトース-6-リン酸をアセチルリン酸とエリスロー ス -4-リン酸に開裂する.DNA の塩基組成比(G+C 含 量)は 50∼67 mol%である.基準種(type species)は

Bifidobacterium bifidum(Tisser)Orla-Jensen 1924

(Approved Lists 1980)である. 4.ビフィズス菌の分類体系の変遷 4.1. 種の分類基準 種(species)とは分類学上の最も基本的な単位であ り,DNA-DNA 相同性の値が約 70%以上を示す菌株の 集団という考え方が定着している(6, 7). ビフィズス菌を含む細菌の命名は,国際原核生物 命 名 規 約(International Code of Nomenclature of Prokaryotes; 旧国際細菌命名規約 International Code of Nomenclature of Bacteria) に 基 づ い て 行 わ れ, 1980 年に発行された“細菌学名承認リスト(Approved Lists of Bacterial Names; AL)”に収載された 2335 種 がすべての細菌の学名の出発点となった(8).すなわ ち,これ以前に発表された学名でもこのリストに収載 されなかった菌種名はすべて無効となった.この AL に収載されたビフィズス菌は,Bifidobacterium

ado-lescentis,Bifidobacterium bifidum,Bifidobacterium

infantis,Bifidobacterium longum な ど わ ず か 20 菌

種であった.それ以降に新しい学名に関する論文が国 際原核生物分類命名委員会(International Committee on Systematics of Prokaryotes: ICSP) の 公 式 学 術 雑 誌 で あ る International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology(IJSEM)に発表された時点 でその学名は有効となる.また,他誌に発表された学名 は,IJSEMの“Validation List”に掲載されることによっ て正式に承認されたものになる.この ICSP には現在 24 の小委員会があり,その一つの“ビフィズス菌・乳酸菌 および関連細菌の分類に関する小委員会(Subcommittee on the Taxonomy of Bifidobacterium, Lactobacillus and Related Organisms)”において,ビフィズス菌の 分類に関する問題が扱われている. 4.2. 分類法の変遷 微生物の分類は,分類同定の技術の進歩と密接な関係 にある.すなわち,菌形態や糖分解性状などの生物学 性状を中心とする表現型(phenotype)に基づく分類体 系は 20 世紀の初頭に確立した.その後,分類学が細胞 壁のペプチドグリカンや菌体脂質酸の組成等に基づく 化学分類,そして DNA-DNA 相同性に基づく遺伝子型 (genotype)による分類体系(9)へと進化してきた. 1990 年 に 入 り,Woese ら が 16S rRNA 遺 伝 子 の 塩基配列に基づいて生物全体を Archaea,Eucarya, Bacteriaの 3 つ の ド メ イ ン(domain) に 分 け よ う と 提案(10)して以来,16S rRNA 遺伝子を中心とした 豊 富 な デ ー タ が DDBJ(http://www.ddbj.nig.ac.jp), EMBL/EBI(http://www.ebi.ac.uk/)や GenBank/NCBI (http://www.ncbi.nlm.nih.gov/genbank)など国際核酸 塩基配列データベース(INSD)に蓄積されるようになっ た.いずれかのデータバンクで取得した登録データのア クセッション番号は,これら 3 つのデータバンクに共通 であり,データの公開後にはどのデータバンクからも検 索できるシステムとなっている.さらに,細菌の分類同 定の最大の判断基準である DNA-DNA 相同値(>70%) と 16S rRNA 遺伝子の配列の相同性(>97%)には相関 があるとされ(11),16S rRNA 遺伝子の塩基配列に基 づく系統解析は,煩雑で熟練を必要とする DNA-DNA 相同性試験による細菌の分類同定法を補完・代替する標 準法として位置づけられている(7, 11).その後のデー タベースに登録されている 22 の門に属する原核生物の ゲノムデータ 6787 の精査によりこの閾値は 98.65%に引 き上げられた(12). しかしながら,上記論文で示されているように,16S rRNA 遺伝子の塩基配列の相同性の閾値(97%)以上を 示す菌株間には DNA-DNA 相同値が 70%以下である場 合があるため,正確に分類同定を行うには既知の近縁 種との DNA-DNA 相同値を確認する必要がある.また, 糖発酵性状などの表現形質は,それ自体では現在の分類 体系に合致した判断基準とならないため軽視される傾向 にあるが,新菌種提案の論文を発表する際には,DNA の G+C 含量(mol%),近縁種との DNA-DNA 相同値 および 16S rRNA 遺伝子の塩基配列に基づく系統解析 などの遺伝子解析結果のみならず,菌形態,グラム染色

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性,芽胞の有無,運動性,糖発酵パターンなどの表現形 質,および細胞壁のペプチドグリカン組成や菌体の脂肪 酸組成などの成績(表 1)が必要となる(13). 4.3. ビフィズス菌の系統分類 系統分類とは生物を生物間の類縁関係に従って系統的 に分類する方法であり,細菌では INSD 等のデータベー スに豊富に蓄積され,かつ種レベルでの識別の指標とな ることが経験的に確認されてきた 16S rRNA 遺伝子の 塩基配列に基づく系統分類が一般的である. 16S rRNA 遺伝子の塩基配列に基づく階層分類体系 (4)によれば,ビフィズス菌は,Actinobacteria 門の Bifidobacteriales目,Bifidobacteriaceae 科に属する 6 属 58 菌種で構成される.なかでも 50 菌種,10 亜種で 構成される Bifidobacterium 属がその中心を占めてい る(5)(表 2). Bifidobacteriumの系統分類に関しては,16S rRNA 遺 伝 子(14, 15),16S‒23S Internal Transcribed Spacer region(ITS)(15) あ る い は Heat Shock Protein(HSP)60 遺伝子(16)あるいは複数のハウス キーピング遺伝子の塩基配列を指標としたもの(17) が報告されているが,これらは基本的にはほとんど差は 認められない. Bifidobacteriaceae科に属する全菌種について 16S rRNA 遺伝子の配列を元に近隣接合(neighbor-joining) 法にて系統樹を作成すると図 1 のようになる.すなわ ち,Bifidobacteriaceae 科に属する細菌は,16S rRNA 遺伝子配列が 90%以上の相同性を示す比較的均一な 菌種の集団であり,2 つのサブクラスターが内在する 一つのクラスターを形成する.サブクラスター1は, Bifidobacteriumのすべての菌種とグラム不定の桿菌で

DNA の G+C 含量が 42-44 mol%の Gardnerella

vagi-nalisで構成される.サブクラスター 2 は,ブタの盲腸 から分離された酸素耐性の Aeriscardovia aeriphila, ハムスターの歯垢から分離された Alloscardovia cri-ceti, ア カ ゲ ザ ル の 乳 か ら 分離 さ れ た Alloscardovia macacae,ヒトの尿や血液などの臨床サンプルから分離 された Alloscardovia omnicolens,ヒトの虫歯から分 離された Parascardovia denticolens および Scardovia

inopinata,およびヒト口腔や臨床材料から分離され た Scardovia wiggsiae など,4 属 7 菌種で構成される (表 3).病原微生物の危険度を示す分類法としてバイオ セイフティレベル(BSL)があり,Bifidobacteriaceae 表 1  Bifodobacteriaceae 科内の新種提案時に必要とされる性 状検査項目 表現型の解析 菌の形態および配列 コロニー性状 運動性 グラム染色性 芽胞の有無 糖発酵パターン グルコースからの最終代謝産物 フルクトース-6-リン酸 ホスホケトラーゼ活性の有無 カタラーゼ活性の有無 硝酸、亜硝酸の還元能の有無 インドールの産生の有無 化学分類学的解析 細胞壁ペプチドグリカンの組成 菌体脂肪酸組成 遺伝子型の解析 DNA の GC 含量 DNA-DNA 相同性試験 16S rRNA 遺伝子配列の相同性 補完的な系統分類指標による解析 表 2 16S rRNA 遺伝子の塩基配列に基づく Bifidobacterium 属の階層分類学的位置付け

Domain(ドメイン) Phylum (門) Class (綱) Order(目) Family (科) Genus (属) Species(種)の数*

Bacteria Actinobacteria Actinobacteria Bifidobacteriales Bifidobacteriaceae Allosardovia 3 Bifidobacterium 50(10**) Gardonerella 1 Metascardovia 1 Parascardovia 1 Scardovia 2 *2016 年 3 月末での登録数 **亜種の数

(5)

�1. 96 99 77 99 99 99 99 83 90 66 98 99 73 99 81 99 73 99 92 99 93 92 84 81 61 62 0.02 B.�pseudocatenulatum YIT 4072T(D86187)

B.�catenulatum YIT 4016T(AB437357)

B.�merycicum YIT 4095T(D86192)

B.�angulatum ATCC 27535T(D86182)

B.�callitrichos AFB22�5T(AB559503)

B.�adolescentis YIT 4011T(AB437354)

B.�ruminantium YIT 4105T(D86197) B.�dentium YIT 4017T(D86183) B.�kashiwanohense HM2�2T(AB425276) B.�moukalabense JCM�18751T(AB821293) B.�faecale CU3�7T(KF990498) B.�adolescentis�group B.�saguini AFB23�1(AB559504) B.�breve YIT 4014T(AB006658)

B.�longum subsp.�infantis YIT 4018T(D86184)

B.�longum subsp.�longum YIT 4021T(AB437359)

B.�longum subsp.�suis YIT 4082T(AB437360)

B.�scardovii YIT 11867T(AB437363)

B.�stellenboschense AFB23�3T(AB559505)

B.�longum subsp.�suillum Su�851T(AB924532)

B.�aesculapii MRM3�1T(KC807989)

B.�biavatii AFB23�4T(AB559506)

B.�bifidum YIT 4039T(AB437356)

B.�boum YIT 4091T(D86190)

B.�thermophilum ATCC 25525T(U10151)

B.�thermacidophilum subsp.�porcinum YIT 11865T(AB437361)

B.�thermacidophilum subsp.�thermacidophilum YIT 11849T(AB437362)

B.�reuteri AFB22�1T(AB613259)

Gardnerella vaginalis ATCC 14018T(M58744)

B.�saeculare YIT 4111T(D89328)

B.�gallinarum YIT 4094T(D86191)

B.�pullorum YIT 4104T(D86196)

B.�actinocoloniiforme LISLUCIII�P2T(FJ858731)

B.�asteroides YIT 11866T(AB437355)

B.�coryneforme YIT 4092T(AB437358)

B.�indicum YIT 4083T(D86188)

Alloscardovia criceti OMB105T(AB241105)

Alloscardovia omnicolens CCUG 31649T(AM414960)

Alloscardovia macacae M8T(JQ363617)

Aeriscardovia aeriphila T6T(AY174107)

Parascardovia denticolens DSM 10105T(D89331)

Scardovia inopinata YIT 4115T(D86332)

Scardovia wiggsiae C1A 55T(AY278626)

E.�coli ATCC�11775T(X80725)

B.�subtile YIT 4116T(D89279)

B.�bombi BlucI/TPT(EU127549)

B.�bohemicum JEMLUCVIII�4T(FJ858736)

B.�minimum YIT 4097T(AB437350)

B.�mongoliense YIT 10433T(AB433856)

B.�crudilactis FR62/b/3T(AY952449)

B.�psychraerophilum YIT 11814T(AB437351)

B.�tsurumiense OMB115T(AB241106)

B.�gallicum YIT 4085T(D86189)

B.�magnum YIT 4098T(D86193)

B.�cuniculi YIT 4093T(AB438223)

B.�pseudolongum subsp.�globosum JCM 5820T(D86194)

B.�pseudolongum subsp.�pseudolongum JCM 1205T(D86195)

B.�choerinum YIT 4067T(D86186)

B.�animalis subsp.�animalis JCM 1190T(D86185)

B.�animalis subsp.�lactis YIT 4121T(AB050136)

B.�tissieri MRM_5.18T(KP718951) B.�hapali MRM_8.14T(KP718961) B.�myosotis�MRM_5.9T(KP718941) B.�lemurum LCM�13T(KJ65828) B.�longum�group B.�pseudolongum group B.�asteroides group B.�boum group B.�pullorum group B.�commune�LMG�28292T(LK054489) Cluster�1 Cluster�2 45 43 59 52 41 47 20 36 35 12 13 8 33 17 39 42 15 25 6 30 34 28 27 6 54 51 B.�aquikefiri LMG 28769T(LN849254) 100 図 1 16S rRNA 遺伝子の塩基配列に基づく Bifidobacteriaceae 科に属する菌種の系統関係 系統樹は E. coli をアウトグループとして近隣結合法により作成した.数値は Bootstrap 値(%)を示した.バーは 2%の 塩基置換距離を表す.

(6)

表 3 Bifidobacteriaceae 科の各属における構成菌種の基準株と棲息場所 属 名 菌 種 基 準 株 16S rRNA 遺伝子配列 登録番号 G+C mol% 主な分離源

Bifidobacterium actinocoloniiforme LISLUCIII-P2 JCM 18048 FJ858731 52.7 マルハナバチの腸管

adolescentis E194a ATCC 15703 AP009256 58 成人の糞便,ウシのルーメン,下水 aesculapii MRM 3/1 JCM 18761 KC807989 64.7 コモンマーモセットの糞便 angulatum B677 ATCC 27535 D86182 59 成人の糞便,下水 animalis

subsp. animalis R101-8 ATCC 25527 D86185 61.3 ± 0.0 ラット,ニワトリ,ウサギ,仔ウシ,モルモットの糞便,下水 subsp. lactis UR1 DSM 10140 CP001606 61.0 ± 0.5 市販ヨーグルト

aquikefiri LMG 28769 CCUG 67145 LM849254 52.6 ウォーターケフィア asteroides C51 ATCC 25910 EF187235 59 ミツバチの腸管 biavatii AFB23-4 JCM 17296 AB559506 63.1 アカテタマリンの糞便

bifidum Ti ATCC 29521 U25952 58 成人,乳児,哺乳牛の糞便,膣

bochemicum JEMLUCVIII-4 JCM 1049 FJ858736 51.2 マルハナバチの腸管 bombi BluCI/TP DSM 19703 EU127549 47.3 マルハナバチの腸管

boum RU917 ATCC 27917 D86190 60 ウシのルーメン,仔ブタの糞便

breve S12 ATCC 15700 AB006658 58 乳児,哺乳牛の糞便,膣

callitrichos AFB22-5 JCM 17296 AB559503 64.3 コモンマーモセットの糞便 catenulatum B669 ATCC 27539 AF432082 55 成人,乳児の糞便,膣,下水 choerinum SU806 ATCC 27686 D86186 66 仔ブタの糞便,下水 commune LMG 28292 DSM 28792 LK054489 54.3 マルハナバチの腸管 coryneforme C215 ATCC 25911 M58733 55 ミツバチの腸管 crudilactis FR62/b/3 LMG 23609 AY952449 56.4 生乳チーズ cuniculi RA93 ATCC 27916 AB116298 64 ウサギの糞便

dentium B764 ATCC 27534 D86183 61 虫歯,口腔,成人の糞便,膣,膿瘍,虫垂炎 faecale CU3-7 JCM 19861 KF990498 58.6 乳児の糞便 gallicum P6 DSM 20093 D86189 61 成人の糞便 gallinarum Ch206-5 ATCC 33777 D86191 65.7 ± 1.5 ニワトリの盲腸 hapali MRM_8.14 DSM 100202 KP718961 56.1 コモンマーモセットの糞便 indicum C410 ATCC 25912 D86188 60 ミツバチの腸管 kashiwanohense HM2-2 JCM 15439 AB425276.2 56‒59 乳児の糞便 lemurum LMC 13 JCM 30168 KJ658281 57.2 ワオキツネザルの糞便 longum

subsp. infantis S12 ATCC 15697 AP010889 58 乳児,哺乳牛の糞便,膣 subsp. longum E194b ATCC 15707 AP010888 58 乳児,成人

subsp. suillum Su 851 JCM 19995 AB924532 61.8 ブタの糞便 subsp. suis Su 859 ATCC 15707 AB116353 62 ブタの糞便

magnum RA3 ATCC 27540 M58740 60 ウサギの糞便

merycium Ru915B ATCC 49391 D86192 59, 60 ウシのルーメン

minimum F392 ATCC 27538 M58741 61.5 下水

mongoliense YIT 10443 DSM 21395 AB433856 61.1 馬乳酒

moukalabense GG01 JCM 18751 AB821293 60.1 ローランドゴリラの糞便 myosotis MRM_5.9 DSM 100196 KP718941 65.1 コモンマーモセットの糞便 pseudocatunulatum B1279 ATCC 27919 D86187 57.5 乳児,哺乳牛の糞便,下水 pseudolongum

subsp. globosum RU224 ATCC 25865 D86194 64 ブタ,哺乳牛,ラット,仔ヒツジの糞便,ウシのルーメン subsp. pseudolongum PNC-2-9G ATCC 25526 D86195 64.8 ブタ,ニワトリ,ウシ,仔ウシ,モルモットの糞便 psychraerophilum T16 LMG 21775 AY174108 59.2 ブタ盲腸

pullorum P145 ATCC 27685 D86196 67 ニワトリの糞便

reuteri AFB22-1 JCM 17295 AB613259 61.3 コモンマーモセットの糞便 ruminantium Ru687 ATCC 49390 D86197 57, 58 ウシのルーメン saeculare RA161 ATCC 49392 D89328 63 ウサギの糞便 sanguini AFB23-1 JCM 17297 AB559504 57.3 アカテタマリンの糞便 scardovii CCUG 13008 DSM 13734 AJ307005 60.1 ヒト臨床材料 stellenboschense AFB23-3 JCM 17298 AB559505 66.3 アカテタマリンの糞便

subtile F395 ATCC 27537 D89378 61.5 下水

thermacidophilum

subsp. porcinum P3-14 AS 1.3009 AY148470 61.2 ± 0.7 ブタの糞便 subsp. thermacidophilum 36 AS 1.2282 AB016246 56.9 ± 2.1 大豆凝乳工場の廃液

thermophilus P2-91 ATCC 25525 U10151 60 ブタ,ニワトリ,仔ウシ,ウシのルーメン,下水 tissieri MRM_5.18 DSM 100201 KP718961 63.7 コモンマーモセットの糞便

tsurumiense OMB115 JCM 13495 AB241106 53 ハムスターの歯垢 Aeriscardovia aeriphila T6 LMG 21773 AY174107 54.7 ブタ盲腸 Alloscardovia criceti OMB 105 JCM 13493 AB241105 53 ハムスターの歯垢

macacae M8 DSM 24762 JQ363617 50.1 アカゲザルの乳

omnicolens CCUG 31649 LMG 23792 AM419460 48 ヒトの臨床材料(尿,血液,尿道,口腔,扁桃腺,肺膿瘍) Gardnellera vaginalis 594 ATCC 14018 M58744 42 ヒトの性器や尿道

Parascardovia denticolens B3028 DSM 10105 D89331 55 ± 1 ヒトの虫歯 Scardovia inopinata B3109 DAM 10107 D89332 45 ± 1 ヒトの虫歯

(7)

科のほとんどの菌種はレベル 1(BSL1)として扱わ れているが,ヒトの口腔や臨床材料から分離された

Bifidobacterium dentiumと S. winggsiae の 2 菌種が

レベル 2(BSL2)として扱われている.

Bifidobacterium属のサブクラスター1内の系統的に

近縁な菌種が,B. adolescentis group,B. asteroides group,B. boum group,B. longum group,B.

pseu-dolongum group および B. pullorum group などの菌

種グループを形成する.その中で,16S rRNA 遺伝子の 塩基配列の相同性が 98%以上を示し,かつ DNA-DNA 相同性が高い菌種グループとして,① B. catenulatum および B. pseudocatenulatum,② B. coryneforme お よび B. indicum,③ B. gallinarum,B. pullorum お よび B. saeculare,の 3 つのグループが存在する.ま た,16S rRNA 遺伝子の塩基配列の相同性が 98.9%で, DNA-DNA 相同性が 40-70%をそれぞれ示す B. adoles-centisと B. ruminantium の 2 菌種間も上記 3 つのグ ループと同様の関係にある. 同様に,乳児から分離される B. infantis やヒト糞便 中の最優勢ビフィズス菌として分離される B. longum およびブタ糞便から分離される B. suis で構成される

B. longum group の 3 菌種は,互いに DNA-DNA 相同

性が 67-81%と極めて高いことから同一菌種にすべきで あるとの議論があった.2002 年には,リボタイピング や RAPD(Random Amplified Polymorphic DNA)タ

イピングの結果に基づき,これら 3 つの菌種がそれぞ れ独立したクラスターを形成することから,それぞれ の菌種は B. longum 内の 3 つの生物型(biotype)とし て分類すべきであると提案された(18).しかし,これ ら B. infantis,B. longum および B. suis の 3 菌種を 明確に識別する指標がないため分類に関する議論が絶え なかった.そこで,それまでに多くの研究者によって実 施されてきた糖の資化性試験などの表現形質の結果や分 子生物学的な試験結果など過去のデータを総合的に評 価することで,B. infantis,B. longum および B. suis の 3 菌種は,B. longum subsp. infantis,B. longum subsp. longum および B. longum subsp. suis として再 分類された(19).しかしながら,プロバイオティクス として極めて重要な菌種の一つである B. longum の亜 種レベルでの分類同定には上述の総合的なデータに基づ く必要があり,実践的な亜種同定法を見つけることが要 求された.そこで筆者らは,菌株識別法である AFLP (amplified-fragment length polymorphism) 法 や ハ ウ スキーピング遺伝子 7 種(clpC, dnaB, dnaG, dnaJ1,

purF, rpoC および xfp)の塩基配列に基づく MLSA (multilocus sequence analysis) 法 あ る い は MLST (multilocus sequence typing)法のそれぞれの手法によ

る系統解析が B. longum の亜種分類に有効であること を示した(図 2,3,4).その結果,ブタ糞便由来の B.

longum subsp. suis 株中のウレアーゼ活性を持たない

0.01 77 65 82 94 75 78 75 78 82 B.�breve�UCC�2003 (AB006658) DSM�20218 DSM�20088T ATCC�15702 ATCC�25962 ATCC�15707T ATCC�55813 ATCC�55814 ATCC�15708 DSM�20097 JCM 1269T Su�923 Su�903 JCM�7139� Su�868 Su�851T

Su�864 subsp. suillum subsp.�longum

subsp.�suis

subsp.�infantis

B.�longum�4���������16S�rRNA�������������%� Subspecies Strain Accession�No. 1 2 3 1 infantis DSM�20088T D86184 100

2 longum ATCC�15707T AB437359 99.67 100

3 suis JCM�1269T AB437360 99.80 99.73 100

4 suillum Su�851T AB924532 99.14 99.07 99.53

�2.�

図 2 16S rRNA 遺伝子の塩基配列に基づく Bifidobacterium longum 菌株の系統関係

16 株は,4 亜種の基準株が形成する独立した 4 つのクラスターに分布した.しかし,4 亜種の基準株間の相同値は >99.5%であり, 亜種同定することは不可能であった.

(8)

0.00 0.05 0.10 0.15 81 100 53 40 100 95 49 47 41 38 95 77 99 DSM�20218 DSM�20088T ATCC�15702 ATCC�25962 ATCC�15707T ATCC�55813 ATCC�55814 ATCC�15708 DSM�20097 JCM 1269T Su�923 Su�903 JCM�7139� Su�868 Su�851T

Su�864

subsp. suillum

subsp.�longum

subsp.�suis

subsp.�infantis

3.�

図 3  デジタル化した Amplified-Fragment Length Polymorphism (AFLP) のプロファイルに 基づく B. longum 16 株のデンドログラム

バーはミスマッチのバンドの割合(%)を表す.16 株は,4 亜種の基準株が形成する独立した 4 つのクラスターに分布し,基準株の位置に基づきそれぞれの菌株の亜種識別が可能であった.

図 4  ハウスキーピング遺伝子 7 種(clpC, dnaG, dnaJ1, hsp60, purF, rpoC, xfp)の配列を 連結した 4360 bp の配列長に基づく B. longum 16 株の系統樹 バーは 1%の塩基置換距離を表す.16 株は,4 亜種の基準株が形成する独立した 4 つのクラス ターに分布し,基準株の位置に基づきそれぞれの菌株の亜種識別が可能であった. �4.� 0.01 97 100 100 77 92 61 87 100 78 95 100 78 DSM�20218 DSM�20088T ATCC�15702 ATCC�25962 ATCC�15707T ATCC�55813 ATCC�55814 ATCC�15708 DSM�20097 JCM 1269T Su�923 Su�903 JCM�7139� Su�868 Su�851T

Su�864

subsp. suillum

subsp.�longum

subsp.�suis

(9)

菌株は B. longum の 4 番目の新亜種 B. longum subsp. suillumとして承認された(20). 5.ビフィズス菌の棲息場所 Bifidobacteriumは,ヒト,サル,ニワトリ,ウシ, ヒツジ,イヌ,ネコ,マウス,ラット,ハムスター,モ ルモット,ウサギ,ミツバチやマルハナバチの腸管,ヒ トの糞便あるいは膣や口腔,ウシやヒツジのルーメンな どに分布している.また,下水やヒトの病巣の臨床材料 からも分離される菌種がある(21–23)(表 3).ヒト糞 便中から分離されるビフィズス菌は B. adolescentis,B.

angulatum,B. bifidum,B. breve,B. catenulatum,

B. faecale,B. kashiwanohense,B. longum subsp

infantis,B. longum subsp. longum,および B.

pseu-docatenulatumの 9 菌種 2 亜種であり,とくに成人で

はB. adolescentis,B. longum subsp. longumおよびB.

pseudocatenulatumが主要構成菌種として分離される.

また,B. dentium,B. gallicum,B. pseudolongum subsp. globosum はまれにヒト糞便から,B. scardovi はヒトの臨床材料からそれぞれ分離されている.かつ て乳児型として捉えられていた B. breve や B. longum subsp. infantis,および口腔が分離源とされる B.

den-tiumは成人の胃や糞便から低菌数・低頻度で分離され ることが確認されている(24).近年,ヒトとビフィズ ス菌の共進化を調べる目的で,ゴリラなどの霊長類や コモンマーモセットなどの新世界ザルの糞便から,B.

aesculapii,B. biavatii,B. callitrichos,B. hapali,B.

moukalabense,B. myosotis,B. reutei,B. sanguini,B.

stellenbochense,B. tissieri など多くの新菌種が分離さ れている(25–27). 一方,乳や発酵乳からの分離例として,モンゴルの伝 統的発酵乳「馬乳酒」から B. mongoliense が,フラン スの生乳あるいは生乳チーズから B. crudilactis および B. mongoliensが,それぞれ報告されている(28, 29). また,市販ヨーグルトから酸素耐性のビフィズス菌とし て分離された B. lactis(30)は,ミルク中での増殖性 に優れた B. animalis であると指摘され,現在では B.

animalis subsp. lactis として再分類されている(31).

6.分類法の課題と今後 乳酸菌・ビフィズス菌の菌種同定は,分類同定技法の 進化および GenBank や DDBJ などの INSD に登録され ている DNA データの充実化とあいまって,これまでの 分類の基本となっていた,熟練した技術と多大な時間を 必要とする DDH 法から簡便・迅速な系統分類法に置き 換わる流れになっている. 16S rRNA 遺伝子やハウスキーピング遺伝子の塩基配 列に基づく系統解析は,DNA の塩基配列の解読技術が 進歩した今日においては極めて容易な手法である.目的 に応じて系統解析に用いる配列の長さや遺伝子の種類を 選択することができる.すなわち,対象となる菌株の簡 易的な系統解析は,16S rRNA 遺伝子の菌種特異的な配 列部分が蓄積された V1-V3 の可変領域を含む約 500 bp の部分配列を用いることで可能となる.16S rRNA 遺伝 子の配列に基づいてより正確な系統解析をする場合には 1400 bp 以上で未決定塩基が 0.5%以下の塩基配列が必 要となる(13).上述したように 16S rRNA 遺伝子配列 単独では解像度に限界があるため,現在ではハウスキー ピング遺伝子の塩基配列を用いた MLSA や MLST な どの系統解析が DDH 法を代替・補完するための手段と なっており,使用する遺伝子の選択が系統解析の解像度 を向上させる上での重要なファクターとなる.しかしな がら,すべての細菌に共通する 16S rRNA 遺伝子とは 違い,菌種によってゲノム上に存在する遺伝子の数や種 類が異なっていること(32),あるいは先行研究例がな ければ配列解読のためのプライマーが容易には入手でき ないなどの問題がある.そのため,現実的な MLSA な どの多相解析では,対象とする菌群に普遍的に分布する 2 種類以上のハウスキーピング遺伝子(300 bp 以上)を 用いることが推奨されている(13). 近年,次世代 DNA シークエンサーの普及により全ゲ ノム配列が低コストで比較的容易に解読できるようにな り,多くの菌種・菌株の全ゲノム配列情報がデータベー スに登録されるようになってきた.煩雑で経験を要し, 安定した解析結果を得ることが容易でない DDH 法を代 替・補完するための迅速でより正確な菌種同定法を求め 多くの研究がなされている.

Average Nucleotide Identity(ANI)法(33–35)は, 比 較 す る 菌 株 の 全 ゲ ノ ム 配 列 間 で ア ラ イ メ ン ト さ れ た 領 域 配 列 の 相 同 性 の 平 均 値 を 算 出 し,ANI 値 95-96%が DDH 法での 70%に相同する.16S rRNA 塩 基配列の相同性が高かった菌種間―① B. indicum‒B.

coryneforme(100%),② B. pullorum‒B. saeculare‒B.

gallinarum(>99.7%),③ B. catenulatum‒B.

kashi-wanohense(98.9 %) で の ANI は, そ れ ぞ れ 98.1 %, >97.0%,96.9%であり,これらの菌種の再分類の必要 性が示唆されている.一方,16S rRNA 塩基配列の相同 性が 99.5%と極めて高かった B. psychraerophilum‒B. crudilactis間の ANI は 85.9%であり,別種の関係にあ ることを明確に示している(36). また,ゲノム DNA 組成を特徴づける微生物分類の重 要な指標の一つとして用いられている DNA の G+C 含

(10)

量(7, 13)は,従来の測定法(37, 38)で求められ,そ の値は同一菌種内で 3∼5%の変動幅があることが確認 されている(39, 40).そのため,現実的には近縁種間 の違いを判断する指標になっていないのが現状である. しかし,全ゲノム配列の in silico 解析では同一菌種内 の G+C 含量の変動が 1%以内に収まることが示されて いる(41). さらには,Bifidobacterium 属に特有のコア遺伝子群 のみを抽出した系統解析(36)やゲノム上の全ての遺 伝子を対象として比較解析する whole-genome MLST 法(42)による詳細な菌株識別などの手法から新しい 分類体系を確立するための指標が見つかる可能性は十分 にある. ま と め 1960 年 代 に 確 立 し た 現 在 の 分 類 体 系 は,DDH や DNA の G+C 含量など,いわゆるウェット・ラボ実験 で得られるデータを基本として成り立っている.次世代 シークエンサーの普及により全ゲノム配列の解読が容易 となった現在,これまでの煩雑な操作と経験を必要とす る DDH 法に替わる分類標準法は,全ゲノム配列を in silicoで解析する方法に置き換わるものと期待する. さらには,細菌を単に核酸の塩基配列レベルのみで捉 えることなく,その表現形質の特徴がより反映される代 謝・合成系のゲノム情報に着目した新しい指標による分 類体系が構築されることを願っている. 引 用 文 献

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表 3 Bifidobacteriaceae 科の各属における構成菌種の基準株と棲息場所 属 名 菌      種 基  準  株 16S  rRNA 遺伝子配列 登録番号 G+C mol% 主な分離源
図 2 16S  rRNA 遺伝子の塩基配列に基づく Bifidobacterium  longum 菌株の系統関係
図 4  ハウスキーピング遺伝子 7 種(clpC,  dnaG,  dnaJ1,  hsp60,  purF,  rpoC,  xfp)の配列を 連結した 4360  bp の配列長に基づく B

参照

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