エンドユーザを対象としたマッシュアップフレームワークの提案
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(2) Vol.2012-DPS-152 No.8 Vol.2012-GN-85 No.8 Vol.2012-EIP-57 No.8 2012/9/13. 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report 2 章で現状のマッシュアップと課題を述べ,3 章でエンド ユーザ向けフレームワークの設計方針を述べ,4 章で提案 フレームワークの概要について述べ,5 章でまとめる. . 2. 既 存 の マ ッ シ ュ ア ッ プ と 課 題 既存のマッシュアップでは,コアユーザが開発したもの を不特定多数のエンドユーザが利用することが多い.エン ドユーザにとって Web が身近になり,ニーズが多様化する 中,今後はエンドユーザも手軽にマッシュアップできるこ とが望ましい.手軽なマッシュアップとはエンドユーザが 提供されるモジュールを用いて,容易にニーズを満たすサ ービスを作り出すことと定義する.手軽なマッシュアップ. 図 1:マッシュアップフレームワークの分類. を実現するためには,以下の 2 点が重要となる. ・ プログラミングスキルや専門知識を必要としない手軽 さを有していること. また,データフローモデルとは異なるフレームワークを 利用したマッシュアップツールとして Intel@MashMaker が. ・ 様々なサービスを連携できる柔軟性を有していること. 挙げられる.Interl@MashMaker では 1 つの Web サービス. 次節以降,既存のマッシュアップの課題について述べる.. をモジュールとして扱い,現在閲覧している Web ページの 情報に対しモジュールを埋め込むことができるガジェット. 2.1 既 存 の マ ッ シ ュ ア ッ プ フ レ ー ム ワ ー ク. モデルのマッシュアップフレームワークである.しかし,. 代表的なマッシュアップフレームワークの例として,. 現在閲覧しているページの構造について理解が必要であり,. Plagger[3],Yahoo!Pipes[4],MicroSoftPopfly[5],Intel@. エンドユーザが利用するには難しい.同様なモデルを採用. MashMaker[6],iGoogle[7]などが挙げられる.図 1 に既存の. している iGoogle は Web サービスを 1 つのモジュールとし. マッシュアップフレームワークの分類を示す.図 1 では,. て扱い,1 つのページに表示するガジェットモデルで,モ. 既存のマッシュアップフレームワークを手軽さと柔軟性の. ジュールをドラック&ドロップするだけなので非常に手軽. 観点から分類している.. ではあるが,あらかじめコアユーザが開発したモジュール. 例えば,Plagger は様々な機能を持った Perl モジュールを. しか利用できず,エンドユーザが様々なサービスを柔軟に. 組み合わせ,マッシュアップを行う.モジュールの連結に. 連携させることは難しい.. は Perl を用いてプログラミングで行うプログラミングモデ. このように,様々なマッシュアップフレームワークが実. ルである.プログラミングモデルでモジュールの連携を実. 現されているが,プログラミングや専門知識が必要となる. 現するため柔軟性が高いが,十分なプログラミングスキル. か,利用が限られてしまうため,エンドユーザが利用する. と専門知識が必要となり,エンドユーザにとっては利用が. ことが難しい.. 難しい.. . また, Plagger とは異なり,柔軟性は低いが GUI ベース でプログラミングスキルを必要とせずマッシュアップが行. 2.2 既 存 の マ ッ シ ュ ア ッ プ フ レ ー ム ワ ー ク の 課 題 既存のマッシュアップフレームワークは,モジュールの. えるフレームワークも実現されている.Yahoo!Pipes は,. 詳細な設定部分や連携方式などのユーザインタフェースに. RSS フィードの読み込みや正規表現,並び替えなどの操作. おいてプログラミングスキルや専門知識を必要とするため. や Web サービスの操作をおこなう様々なモジュールの処. 難しいものとなり,また,様々な機能を実現する柔軟性を. 理の入出力をパイプで繋ぎマッシュアップを行うデータフ. 求めてもエンドユーザにとって難しいものとなり,コアユ. ローモデルのマッシュアップフレームワークである. . ーザが利用するにとどまっているのが現状である.目標と. Yahoo!Pipes と同様に Microsoft Popfly は Web サービスを. するフレームワークの課題はエンドユーザが手軽に使える. 1 つのモジュールとして扱い,モジュールの処理の入出力. 範囲で,これらのトレードオフを十分に考慮し,最大限の. を繋ぐデータフローモデルを採用している.これらのデー. 柔軟性を持たせることである.次章でその方針について述. タフローモデルのマッシュアップフレームワークは手軽さ. べる.. と柔軟さを適度に実現している.しかし,文献[8]で指摘さ れているように,エンドユーザは入出力の整合性を考慮す る必要があり,データフローの概念を理解するためにはあ る程度のプログラミングスキルや専門知識が必要となる.. ⓒ2012 Information Processing Society of Japan. 3. 設 計 方 針 エンドユーザ向けマッシュアップフレームワークの実. 2.
(3) Vol.2012-DPS-152 No.8 Vol.2012-GN-85 No.8 Vol.2012-EIP-57 No.8 2012/9/13. 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report 現にあたり,必要要件について述べる.既存のマッシュア ップフレームワークの課題とユーザインタフェースに必要 とされる要件[9]を参考にし,以下の必要要件を挙げる. シ ン プ ル な デ ザ イ ン : インタフェースにおいて情報を詰め込みすぎないこと が望ましい.余分な情報が関連する情報と競合して,相 対的に視認性を減少させてしまう.モジュールの詳細な 設定部分やインタフェースはシンプルなものとするこ とが望ましい. シ ス テ ム と 実 世 界 の 調 和 : システムはシステム指向の表現ではなく,ユーザに馴染 みのある表現,用語,コンセプトを用いて,ユーザが理 解できる表現を用いることが望ましい. . 図 2:フレームワーク概要. 解 り や す い ユ ー ザ ビ リ テ ィ : プログラミングを必要としない環境を作るため,システ . ActiveEvent . ム利用のためのオブジェクトや動作,オプションは可視 . 各モジュールの機能を通して起こるそのモジュールの状. 化して,操作方法や情報を覚えなくても,見てわかるよ . 態の変化を指す.この状態の変化に応じて他のモジュー. うになっていることが望ましい.モジュールの連携方式 . ルに対してメッセージを送る.また,メッセージと同時. においてはプログラミングモデルやデータフローモデ . に結果となるデータも送る.. ルは避けることが望ましい. . PassiveAction . . 自身以外のモジュールから何らかのメッセージを受け取. 4. 提 案 フ レ ー ム ワ ー ク 提案するフレームワークについて概要を述べる.提案す. って起こす自身の機能を指す.メッセージと共にモジュ ールの機能を起動させるためのデータを含む. Rule . るフレームワークでは,手軽さと柔軟性を実現するため,. ActiveEvent,PassiveAction に付随するルールである.例. イベント駆動型モデルを導入する.既存のマッシュアップ. えば,天気を扱うサービスのであれば,天気情報を表示. フレームワークでは,全てのサービスに対応するために,. するという ActiveEvent に対して,晴れの時,雨の時な. エンドユーザにとって複雑なモデルとなっているが,エン. どを決める.. ドユーザが最も多く利用するマッシュアップでは,イベン ト駆動型モデルによりエンドユーザ向けの実世界との調和. これらのインタフェースのみでエンドユーザが利用す. を実現し,ほとんどのマッシュアップに対応することが可. る多くのマッシュアップに対応可能となる.また,GUI を. 能である.また,シンプルなデザインと解りやすいユーザ. 通して各モジュール間の ActiveEvent と PassiveAction を連. ビリティを実現できる.以下に,必要要件とイベント駆動. 携させることにより,ユーザに解りやすいインターフェー. 型モデルの関連について述べる.. スも実現しやすくなる.図2にフレームワークの概要を示 す.. 4.1 シ ン プ ル な デ ザ イ ン 既存のマッシュアップフレームワークは専門的なパラ. 4.2 シ ス テ ム と 実 世 界 の 調 和. メータ設定など専門知識が必要となりエンドユーザにとっ. 従来のマッシュアップフレームワークではデータ指向. て難しい.イベント駆動型モデルでは,すべてイベントを. の表現を用いているものが多かった.しかし,本フレーム. 中心にモデルを構築するため,ごく少数のイベントとパラ. ワークのモジュールではイベント駆動型のモデルを中心と. メータのみでモデルを構築することが可能である.本フレ. して,ActiveEvent と PassiveAction がそれぞれ Web サービ. ームワークではモジュールのモデルを次のように定義する.. スを連携させる.例えば天気モジュールであればイベント. 各モジュールは独立した 1 つの Web サービスを扱っており,. として「雨の時」 「晴れの時」といった実世界に近い表現が. モジュールは以下のインタフェースを提供する.. 可能であり,メールモジュールでも「メールを送る」とい うエンドユーザが理解しやすい表現を用いることができる.. ⓒ2012 Information Processing Society of Japan. 3.
(4) Vol.2012-DPS-152 No.8 Vol.2012-GN-85 No.8 Vol.2012-EIP-57 No.8 2012/9/13. 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report. 知識が必要となるが,提案フレームワークではあらかじめ 4.2 解 か り や す い ユ ー ザ ビ リ テ ィ. 用意されたイベントのみを理解することによりマッシュア. 提案フレームワークでは,イベントとそれに関連するモ. ップを実現可能である.また,例えば,旅行をサポートす. ジュールのみがユーザに提供される.実際のフレームワー. るマッシュアップを作成する場合,旅行検索サービスモジ. クでは,各モジュールはそれぞれのサービスに対応したイ. ュールとマップサービスモジュールを用意する.旅行検索. ベントやモジュールアイコンをドラック&ドロップして,. モジュールは宿泊施設を検索することを ActiveEvent とし. ActiveEvent と PassiveAction をパイプで繋ぎ,マッシュアッ. て有する.また,マップサービスモジュールでは結果を表. プを画面に表示される.. 示するという PassiveAction を保持する.この場合も同様に, 検索というイベントを中心にマッシュアップを実現可能で. 4.5 提 案 フ レ ー ム ワ ー ク の 概 要. ある.. 提案フレームワークの構成について述べる.提案フレー. このように,各モジュールの ActiveEvent と PassiveEvent. ムワークは,イベントプロデューサー,イベントコンシュ. を繋げることで簡単にマッシュアップをすることができ,. ーマ,イベントブローカーの 3 つの要素から成る.. また,各モジュールを組み替えることによって,エンドユ. . ーザでも手軽に柔軟なマッシュアップを実現することが可. イベントプロデューサー: . 能である.. ActiveEvent が発行を管理する.例えば、送信ボタンや 結果を表示した時などにイベントの発行を行う. イベントコンシューマ: . 5. ま と め と 今 後 エンドユーザが Web サービスを日常的に利用するに伴. イベントプロデューサーが発行したイベントの内容を もとに様々な処理を行う.. い個人のニーズは多様化している.多様なニーズに対して. イベントブローカー: . マッシュアップは有効であるが,マッシュアップは現状で. 各モジュールで発行されるイベントを分類しモジュール. はコアユーザが利用するにとどまっている.本稿ではエン. の組み合わせ判定を行う.. ドユーザが Web サービスごとのイベントやアクションを 繋ぐことによって Web サービスを組み合わせ,容易に利用. Web サービスはあらかじめイベントプロデューサーに. できるようなイベント駆動型のマッシュアップフレームワ. 登録されて,マッシュアップはイベントプロデューサーを. ークの提案をした.今後,開発環境の実装と共に,エンド. 中心に実現される.イベントプロデューサーは Web サービ. ユーザにとって必要となるサービスと,既存サービスにお. スのイベントを監視し,イベントが発生するとイベントブ. けるイベント種別の検討を行い,ユーザビリティや性能面. ローカーにイベント発生を通知する.イベントブローカー. の評価を行う.. は,通知されたイベントの条件や種類を判別し,必要なら. . ばイベントコンシューマに通知する.最終的に,イベント. 参考文献. コンシューマは,受け取ったイベント通知をもとに Web サービスのモジュール同士を連携させ,マッシュアップを 実現する. 4.4 利 用 シ ナ リ オ 複数のモジュールを繋げて作るマッシュアップの例を挙 げる.例えば,株の売買をサポートするマッシュアップを 作るとする.サービスのモジュールとして株サービスのモ ジュールとメールサービスのモジュールを用意する.株サ ービスモジュールは 1 日の出来高がある閾値を超えるか超. 1) GoogleMaps, https://maps.google.com/ 2) 楽天トラベル, http://travel.rakuten.co.jp/ 3) Plagger, http://plagger.org/ 4) Yahoo!pipes, http://pipes.yahoo.com/pipes/ 5) Microsoft Popfly, http://www.popfly.ms/ 6) Intel@Mashmaker, http://software.intel.com/ en-us/articles/intel-mash-maker-mashups-for-the-masses/ 7) iGoogle, http://www.google.co.jp/ 8) J. Wong and J. I. Hong, Making Mashups with Marmite: Towards End-user Programming for the Web, In the proc. of the 2007 conference on Human factors in computing systems (CHI), pp. 1435-1444, 2007. 9) ユーザビリティエンジニアリング−ユーザ調査とユーザビリ ティ評価実践テクニック, オーム社, 2005.. えないかを ActiveEvent として保持する.一方,メールモ ジュールには PassiveAction としてメールを送る機能を有す る.株サービスモジュールにおいて,出来高が閾値を超え た場合,イベントが発生し,メールモジュールにイベント が通知される.通知されたイベントを受けて,メールモジ ュールではメールを送る.既存のマッシュアップフレーム ワークでは,利用されるデータやそれぞれの機能に対する. ⓒ2012 Information Processing Society of Japan. 4.
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