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展示ケース内の温湿度
著者 永田 四郎, 木本 朱美
雑誌名 古文化財教育研究報告
巻 4
ページ 25‑29
発行年 1975‑03‑31
URL http://hdl.handle.net/10105/400
展示 ケ ー ス 内 の 温湿 度
永 田 四 郎・木 本 朱 美
(奈良教育大学 理科教育研究室)
1.緒
古文化財などは多くの場合、大小各様のケース内に収納されて、長期間保存・展示されているが、
これらのケース内の温湿度状態が中の収納物の、外観形状や品質の保存に大きな影響を与えている と考えられる。従って、古文化財等の保存管理の点から、ケース内の温湿度状態を調べることは必 要であると思われるが、あまりその様な調査はされていないようである。
先に、物の保存に関連させて、木箱やトタン箱、プラスチック箱などの中の温湿度調査を実施し、
それぞれの箱の温湿度特性の幾っかを知ったが、更に今回は古文化財等の展示保管に用いている、
いわゆる陳列ケース内の温湿度状態の調査を試みた。
この調査ではまず、通常の状態でケース内外の気温と湿度の測定をおこない、つづいてケースを 中央で仕切って内容積を変えた場合、さらにケース内に水分を放出する物を入れた場合、乾燥剤を 入れた場合などについて実測していった。
ここには、今回の調査で得られた二三の事項について報告するが、器材も時間も十分でなく、ま た得られた結果についての検討もまだ十分でない。今後更に検討し調査をつづけてゆく所存 である。
この調査で使用した展示ケースは、薬師寺東院堂内にあるもので、薬師寺当局の特別の御好意に より使用が許可された。ここに謝意を表する次第である。
2.観 測 使用したケースは、右の写真で見られるように、ガラス戸入りの 木製うるし塗りで、全体の大きさは高さ189.5珊、桟364cm、
奥行91珊で、ケースの上部が展示室でその前面と側面とに6枚の ガラス戸が貼めてある。展示室の内容積は約3.5立方メートルで、
その天井や後壁にはやや隙間が多く、またガラス戸間にも隙間があ る。従って、ガラス戸を閉めても密閉状態にはならず、多少の空気
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の流出入はおこなわれている。なお展示室の底部は布張りである。
ケースが置かれている場所は、東院堂内の南部、須弥壇後方で、ケースの後壁は堂のしっくい壁 と近接し、その東側に大扉があるが、これは通常閉じられているので、このケースが外気に直接触 れることはほとんどない。
使用した器材は、ケース内外に通巻自記温湿度計3台と、これらの温湿度をチェックするための アスマン通風温湿計、および平田式蒸発計などである。
観測は毎週1回、木元が自記紙取替えと温湿度のチェックなどをおこなった。
5.観測の結果
▲.ケース内外の気温、湿度の日較差
前に、永田は寺堂内の気温日較差をTi、外気の気温日較差をもとし、1一Ti/Pの値を諸寺堂に
ついて求め、これらの値がそれぞれの寺堂についてほぼ一定になることから、これを室内気候を評 価するための一つの示標として提示した。これを室温緩和率(室温変化政和率)とよぶ。
これと同様にして、ケースや箱などにっいても簸和率が求められる。今、ケース内とケース外と
の気温日較差をそれぞれrTI、rTOとし、同じく湿度日較差をそれぞれrHI、THOとして、1
−け怖と上顆布。とを求め、これらをそれぞれ一般的に、気温緩和率および一湿度緩和率
とよぶと、この調査で得られた資料からは次表の如くなる。気温、湿度日較差は何れも旬平均値である。
第1表 ケ ー ス の気温、湿度緩和率
月 旬 けI rTOl一作Ⅰ/伽 nI rHOl−nH/mo
上 4.9℃ 7.2℃ 0.32 11野 27野 0.59 4 中 5.8 7.6 0.24
下 4.8 6.5 0.26
上 5.5 7.6 0.28
㈹ 5 中 4.7 7.1 0.34 下 4.7 6.5 0.28
14 28 0.50 12 32 0.62
33 0.58 30 0.53 30 0.60
32 0.53 31 0.65
0.57 14
14 12
15 11 上 4.2 6.0 0.30
中 4.2 6.1 0.31
0.29
A平均
1 4 5
8 史U 00
0 0 0
6 4 ■4一
9 0 4
2 3 3
0 0 0 2 5 6 3 2 2
7 0 9
3 3 2
上 中 下
8
2 3 4 5 4 4 6 7 5 2 2 2 5 1 8 只︶一只︶ 8 0 0 00 0 4 3 2 3 0 0 0 00 3 9 2 3 2 上 中 下
9
4 5 3O l 一4. 4 4 4 6 6 00
7 7 7 0 0 0 5 5 5 9 2 6 2 2 3 0 0 0 l 1 3 2 2 2 8 1 9 3 5 57 0 8 2 4 3 上 中 下
0 1
㈲
1 3 300 ︵X︶ 00
0 0 0 1 2 7 1 2 2 0 0 0 4 4 5 1 3 0 2 2 3上 4.8 11 中 3.3 下 4.1
上 2.4 12 中 2.6 下 3.O
B平均
4 5 6
5 4 5
3 3 5 2 2 2 0 0 0 2 4 9 2 2 13 .4一 2 1 5 0
3 3 4
0.26
A…… ケースを仕切らない。内容積約3.5ガ B……ケースを仕切る。内容積約1.75仇3
これから、このケースの気温級和率は、仕切らない場合と仕切った場合との平均値がそれぞれ、
0.29と0.26で大体等しいが、この種のケースとしては気温級和率は小さい方かもしれない。
湿度緩和率は仕切らない場合の平均値が0.57であるが、仕切って内容積が小さくなると0.83 と増大している。そして両者とも気温緩和率より2〜3倍も大きい。
これらのことから、この様なケースでは気温変化を政和するはたらきはあまり大きくないが、湿 度変化を緩和するはたらきは数倍大きく、いわゆる吸放湿作用が効いていると見られる。また、内 容積が小さくなると、気温変化はほとんど変らないが、湿度変化はかなり小さくなることは興味あ ることである。このことについては更に検討してみなければならないが、ケースを仕切ることで内 容積は半減しても、内壁面積は半減まではせず、体積に対する表面最の割合が増大しているので、
それだけ吸放湿効果が増したことと、仕切りに用いた発泡スチロール板が案外に吸放湿作用を持っ ているのではないかと思われる。
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B.ケース内に水分を放出する物を入れた場合の効果
陳列ケース内に水を入れたコップを入れてあるのをしばしば見るが、これはケース内の湿度がさ
がり過ぎて、収納物が乾き過ぎないようにとの配慮からである。
この調査でも次のようにしてその効果を調べてみた。すなわち、ケースの中央を縦に発泡スチロ ール板で仕切って二分し、片方には何も入れずそのままにしておき、他方には蒸発計2個を入れて 各1台の自記温湿度計を設置して記録を採った。この場合の蒸発計は直径8珊の円形漏紙の蒸発面
を持つものである。この観測で9月21日−11月5日の勘筒中の毎日の時刻別平均値を求めると 次の第2表の如くなる。
第2表 ケース内に蒸発計を入れた場合の温、湿度平均値
時 刻
9月21日
〔 リ
〜11月5。
8 12
9 00
6 6
1 1
9 只U
7 7
1 1
3 2
8 8
1 1
00 7
6 6
1 1
4 3
5 5
1 1
9 9
5 5
1 1
9 9
6 6
1 1
A B
温