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ニーバー思惟の特質 : バルトとの対比において(共同研究報告 : ニーバー研究) 利用統計を見る

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Title ニーバー思惟の特質 : バルトとの対比において(共同研究報告 : ニーバ ー研究)

Author(s) 鈴木, 幸

Citation 聖学院大学総合研究所 Newsletter, Vol.19-5 : 12

URL http://serve.seigakuin-univ.ac.jp/reps/modules/xoonips/detail.php?item_i d=2372

Rights

聖学院学術情報発信システム : SERVE

SEigakuin Repository for academic archiVE

(2)

12

【ニーバー研究】

ニーバー思惟の特質

―バルトとの対比において―

 2010年1月30日㈯、聖学院本部新館2階におい て、2009年度第3回ニーバー研究会が開催され、

聖学院大学総合研究所所長の大木英夫氏が発表さ れた。49名の参加者があり、標記のテーマの下、

ニーバー著『アメリカ史のアイロニー』(The Irony of American History, 1952)に対する考察が行 われた。以下に概要を記す。

 『アメリカ史のアイロニー』では、「アメリカ史」

を歴史研究としてではなく、神学的研究の対象と して捉えている。ドイツ語で「歴史」は、「ヒス トリエ」と「ゲシヒテ」と「ゲシェーエン」の3 語で使い分けられるが、バルトの神学が出来事そ のものについて表わす「ゲシェーエン」ならば、

ニーバーの言う「アメリカ史」は「伝統」として も捉える事のできる「ゲシヒテ」であり、人間の 内面性と関係する。ニーバーによれば、歴史と人 間、つまり歴史論と人間論は連結しているのであ る。また、「アイロニー」は、その歴史に関与す る人間に付随する問題として捉えられている。

本書は、冷戦の激化の中、ソ連のコミュニズムに 対抗・克服するため、アメリカにおけるデモクラ シーの原点に立ち戻ること、つまり「デモクラシー の強力な力」を蘇らせることを方針としている(第 1章)。そもそもアメリカは、第二次大戦後に「世 界共同体の中心」として担がれ、その膨大な責任 を負わされたため、デモクラシーの本質を取り戻 す必要があった(第2章)。ジェファソン主義の下、

成功と幸福が徳の基盤とされるが(第3章)、神の 恵みによって国家が徳を得たこと、そして、努力 する行為・献身が認められることが強調される(第 4章)。また、カルヴィニズムとジェファソン主義 の同一化から生じる自由論を指摘し、権力の専制 を恐れつつも、その必要性を理解した上で、デモ クラシーの持つ「生命力の勝利」が説かれた(第 5章)。国際的な階級闘争においては、ヒトラーと スターリンを比較し、長い歴史の中で忍耐が培わ れることが示唆される(第6章)。アメリカの将来

については、「アメリカ」を「アメリカ史の神学」

として捉えることで、世界共同体における立場を 確認し(第7章)、そして、歴史上の「悪」は思い あがりであり、そこに「アイロニーの源泉」があ ること、アイロニーは無意識的な弱さにあること が説明された(第8章)。

 本書は、アメリカ史及び世界史を「神学する」

ニーバーが見られることから、「新しい神学の試 み」と呼ぶことができる。そして、「世界」を共 同体・グローバリゼーションとして捉えているこ とからも、新しい視点・課題を取り組んだ最初の 神学者として、ニーバーを称えることができる。

また、ドン・キホーテを例に、新しい時代には新 しい人間理解・新しい政治・新しい世界の形成が 必要であることが説かれた。

 発表後の質疑応答では、神学と社会学との関 係、正しさの中にある悪、人は愛と寛大さを持っ て生まれること、アメリカとヨーロッパとの相 違、宗教家として神の言葉を語る重要性、ドグマ、

ニーバー自身のアイロニーについて、人間の内面 性、日本への影響、敗戦の経験が与える「目覚め」

と「生き返る」ことの可能性等、多岐にわたる活 発な議論が交わされた。

(文責:鈴木幸 聖学院大学大学院アメリカ・ヨー ロッパ文化学研究科博士後期課程)

(2010年1月30日、聖学院本部新館2階)

大木英夫 聖学院大学総合研究所所長

参照

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