1.
研究背景滑らかな対象を扱う多様体論において
,
多様体(高次元の図形)の構造を調べるための重要な道具に微分 形式がある。これに対し, 1990
年代にRobin Forman
氏は離散的な対象であるCW
複体に対して組み合わせ的 に微分形式の定式化を与えた。この理論において滑らかな微分形式における外微分等と同等の重要な性質を 持つ演算がうまく定められている。このForman
氏によって整備された組み合わせ微分形式を用いて,
多様 体上で成立した微分形式に関わる定理の離散類似の研究が現在行われている。Forman
氏自身は[1
]におい てde Rham
の定理やNovikov-Morse
理論の再現を行っている。また, 2018
年に東北大学の渡邊一義氏は[2
] において組み合わせRicci
曲率を適切に定義し, Gauss-Bonnet
の定理の再現を行っている。本研究ではこれら の離散類似の一環として,
組み合わせ微分形式を用いたChern-Weil
理論の構成に向け単体複体上のベクトル 束の接続と曲率の定義を与え,
その性質を調べた。参考文献に挙げた先行研究では一般のCW
複体を扱って いるが,
本論文においては主にCW
複体として単体複体(高次元の多面体)を扱う。単体複体は一般のCW
複 体よりコンピュータ上でのアルゴリズム的な計算に適しているという利点がある。2.
研究結果主結果
1.
組み合わせ微分形式の二項演算として二種類の外積∧1,
∧2の定義を与えた。いずれの外積も双 線形性を持ちLeibniz rule
を満たす。また,
∧1は結合律を満たさないが符号付き可換性を満たし,
∧2は結合 律を満たすが符号付き可換性を満たさない。主結果
2.
二つの単体複体とその間の単体写像が与えられたとき,
値域上の組み合わせ微分形式から定義 域上の組み合わせ微分形式を与える引き戻し写像を定めた。この引き戻しは,
外微分及び二つの外積との可 換性,
合成に関する反変関手性を満たす。主結果
3.
単体複体上のベクトルバンドルを,
最高次数の単体上のcocycle
条件を満たす行列値関数の族と して定義した。またこのベクトルバンドルに対して共変外微分,
接続形式及び曲率形式を滑らかな場合の類 似により定めた。接続形式の定義に外積を用いているため,
その定義は二種類ある。曲率形式は接続形式か ら定めているため,
同様に定義が二種類ある。どちらの外積を用いて定めているかによって異なった性質を 持つ。参考文献
[
1
]Robin Forman, Combinatorial Novikov-Morse theory, Internat. J. Math. 13
(2002
), no. 4, pp. 333-368, DOI 10.1142/S0129167X02001265. MR1911862
[
2
]Kazuyoshi Watanabe, Combinatorial Ricci curvature on cell-complex and Gauss-Bonnet theorem, Tohoku Math.
J.
(2
)71
(2019
), no. 4, pp. 533-547. MR4043924
組み合わせ微分形式を用いたベクトル束の接続と曲率の理論
岩 下 沙絵子(指導教員 藤田 玄)
日本女子大学紀要 理学部 第29号(2021)
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