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Title
耐久財独占企業の行動戦略
Author(s)
村田, 省三
Citation
経営と経済, 75(3-4), pp.31-49; 1996
Issue Date
1996-03-25
URL
http://hdl.handle.net/10069/28952
Right
http://naosite.lb.nagasaki-u.ac.jp
耐久財独占企業の行動戦略
Abstract In this paper, we consider the game strategic behavior of durable -goods monopolists under the perfect information. It is well known that a monopoly over durable goods might not be profitable.If the monopolists set a high price in the first period, the high-demand buyers will disapper from the demand curve in the second period. But if it be known perfect1y, he wi1lset a lower price in the first period. We will point out that the behavior taken by consumers in the first period is im -portant in determining the outcome of this durable-goods monopoly game. 目 次 序. 1.独占企業の行動戦略 1. 1 独占ゲームの類型 1.2 耐久財独占ゲーム .1. 3 耐久財独占ゲームの形式 1.4 耐久財独占ゲームの均衡(1) 1. 5 独占利潤と消費者余剰 2.耐久財独占ゲームの均衡について 2. 1 ゲーム均衡の矛盾 2. 2 耐久財独占ゲームの均衡(II) 2. 3 二つの耐久財独占ゲーム 3. 耐久財独占ゲームの解釈をめぐって
序.
不完全競争市場の分析には,たとえば,企業数が少数であるような,独占, 寡占市場の分析,また,情報の不完全性が存在するような市場分析,あるい は,市場への参入,退出に制約があるケース等の,実に多様な内容がふくま れている.とはいうものの,それらの研究は,基本的に独立なものであって, 相互の関連性ないしは,それぞれの分析レベルの統一性などについて配慮さ れることは少ない.また,そこで多用されるゲーム理論についても,結果的 には,極端に限定された問題についての分析に終始する傾向がある. ところが,現実のいわゆる“ゲーム状況"にあっては,多くの不明点を残 しながらも,プレイヤーは実際上,戦略決定をおこなっているのも事実であ る.将棋の名人戦をたたかう棋士は,起こりうるすべての展開を考慮すると き,最初の一手を指すことができない.この点をめぐって,伝統的な不完全 競争市場分析には,多くの配慮がある.もちろん,正確にいえば,ゲーム理 論が未整備であった当時は,そのような配慮が必要であったというべきであ るが,たとえば,屈折需要曲線モデルでは,自企業の戦略変更にたいする相 手企業の反応予想を,直観的ないしは経験法則的に与えたうえで,需要曲線 の屈折が起こることを指摘して,価格硬直性の発生可能性を論証するという 方式をとっている. そこでは,厳密なゲーム理論の適用による理論分析は存在しないにもかか わらず,モデルに登場する行動仮説,および,それから得られる結論は強い 説得力をもっ.ところが,この屈折需要曲線モデルを,ゲーム理論によって 解明しようとする研究はたいへん少ない.それは,このモデルから得られる 結果を厳密なるゲーム理論分析によって得ょうとすると,特殊な状況設定を 行わなければならないからであり,また同時に,そのような状況設定が,伝 統的な屈折需要曲線モデルのもつ一般的通用力を損なう可能性に配慮しての ことであろう.もちろん,このことは,いかなる経済理論モデル分析についても妥当する. しかし,ゲーム的でない,いいかえれば自然を相手とする状況にあっては, そのような理論分析も,ある種の理想状態におけるひとつの傾向ないしは予 想結果を指摘するものとしての意義をもつのにたいして,ゲーム的状況のも とでは,純理論的な研究はかならずしも現実のゲーム結果予想に寄与しない 可能性もある.ゲームにおいては,基本的な情報不完全性が存在しているた めに,本質的にゲーム結果を確定できないからである. 極論すれば,相手プレイヤーの行動が事前に確定できるようなものは,ゲー ムではないといってもよい.したがって,重要なことは,基本的な分析をゲー ム理論によってあたえるとしても,それを過度に制約的なものとみることな く,現実の経済行動と対比可能とするための多くの工夫が許容されてもよい ということである. 本稿では,幾つかの独占ゲームをめぐって,ゲーム理論分析を試みるが, そこでは,直観的にはよく知られた独占市場のゲーム戦略的行動に,可能な 限り標準的,あるいはシンプルなゲーム理論分析の考え方にもとづいて,多 方向からの解釈を与える.
1
.独占企業の行動戦略
1
.
1
独占ゲームの類型 独占において発生する可能性をもっゲーム状況は,複占あるいは寡占の ケースに対比すれば皆無といってもよいほど稀である.これは,独占の意味 からしても当然のことといえるが,独占企業といえども,場合によってはゲー ム的状況に置かれることもある.そのような特異ケースの代表的なものは, 次にあげるこつである.すなわち, ( i )参入企業とのゲームにみられるような,多くは表面上には登場しない 相手プレイヤーとのゲーム状況を考慮する必要のあるケース,(ii)独占企業の供給する製品が耐久財であって,次期の生産数量および製 品価格の決定において,今期あるいは過去の実績値との関連を無視で きないケース. ( i )は隠された相手プレイヤーの登場するケースであり, (ii)は過去 の自企業製品ないしは自企業行動が関連する,代表的消費者とのゲームであ る.いずれも,寡占市場のような,既に市場に存在している複数企業による, 理論的あるいは数理的には対等なゲームとは異なり,たとえば, (i)のゲー ムでは,参入企業は,場合によっては市場に参入しないことをも選択できる のであり, (日)にいたっては,独占企業が価格水準を自由に設定できるの にたいして,相手プレイヤーである代表的消費者の選択可能行動は購入量の みである非対称的なゲーム環境を提供する. このうち,特異性の観点からいえば, (ii)のケース,すなわち,耐久財 の独占ゲームについての考察は興味あるものとなる.というのも,そこで登 場するゲーム・プレイヤーは,常識的な意味では唯一の独占企業のみであり, 通常のゲーム均衡概念であるナッシュ均衡を求めようにも,そもそも,極大 化すべき各プレイヤーの利得関数そのものが二つは存在していないようにみ えるからである.このため,事態は一人ゲーム的な様相を呈することとなり, これにたいしてどのようなゲーム論的解釈を与えるかは一つの興味ある問題 となる.
1
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2 耐久財独占ゲーム ここで,耐久財独占ゲームをいくぶん正確に定義することとしよう. いま,ある耐久財を供給独占している企業があり,その耐久財は2期間の 耐久性をもつものとする.また,この独占企業は,この耐久財にたいする消 費者の需要関数を知っているものとする.この需要関数は,いうまでもなく, 財の耐久期間である2
期間をつうじてのものであるから,その点で通常の需 要関数とは幾分異なる性質をもっていることに注意せねばならない.通常の需要関数では,時間の概念は明示的に登場することはなく,価格水準と需要 量との関係は無時間的である.すなわち,そこでは,基本的に,その需要関 数が説明要因となるような全体モデルにおける 1期間の間に消費されつくし てしまう財を想定しているか,あるいは,耐久財であっても,当該期間をこ える部分についての分析は,消費者の効用関数に反映されているという想定 のもとに推論の複雑化が処理されている. もちろん, 2期間をつうじての需要関数も,基本的な意味では通常の需要 関数としての性格をもっており,仮に耐久財が l期間のみの耐久性しかもた ないものとすれば,この需要関数は通常の需要関数としての性質を保有する ものとなる.ところが,ここでは 2期間の耐久財を想定しているので,第 l 期においである価格水準が提示されたとしても,その価格水準に対応する需 要量を消費者が選択するとは限らない.そのため,用語の正確さを要求すれ ば,この耐久財をめぐる消費者の需要特性を示す関数を需要関数ということ はできない.そのため,本稿では,この関数を便益関数(図lのR曲線)と して,耐久財から得られる効用水準を金額表示するものとみる. いま,仮に,この R曲線が耐久財から得られる消費者の便益を表すものと すれば,そして,消費者は2期間を通じての便益(正確には購入費を差し引 いた余剰便益)を最大化するものと考えれば,図 1のように与えられた各期 の価格水準 (p1, P 2)のもとで,消費者の選択する需要量は (Ql=O,q2) となるであろう.この結果はけっして異常なものではない.というのも,仮 に第
2
期において値下がり (p1 >p 2)が予想されるならば,消費者は第1
期には購入しようとしないからである. もちろん,このことは割引率を考慮しないケースについて当てはまり,高 い割引率のもとでは上記のような結果にならない可能性もある.本稿では, 簡単のために割引率は 0であるものとするが,このことは,本稿での結論が 異常に高くない割引率のもとで妥当することを意味する.なお,念のために 付け加えれば,異常に高い割引率のもとでは,第 1期での余剰便益の最大化が
2
期間を通じての余剰の最大化と同等な内容をもつので,価格水準Pl にたいする第1
期の需要はちょうど便益関数に対応する数量となる.もちろ ん,第2期についても同様の結果となる.このことは,事実上 2期間モデ ルが各期に分離されたl期間モデルとなることを意味して,理論的には興味 ある分析を期待できなくなる. R 60 PlP
2
q q2 図1 耐久財の便益関数 さて,情報完全性のもとでは,以上に展開された消費者の推論を相手プレ イヤーである独占企業は知っているので,仮に第 1期に高価格を設定しでも 第2期には価格を低下させなければ販売不可能なことを確認する.ところが, 消費者も,このことを推理可能であるから,第 1期においては高価格での購 入を臆賭するとみられる.そうすると,独占企業は,第 1期における高価格 での販売をあきらめて,最初から低価格販売路線をとるかもしれず,場合に よっては,数量限定販売戦略によって第 1期の高価格販売を強行するかもし れない.かくして,事態は,利潤極大を目指す耐久財独占企業の,各期にお ける価格設定戦略と,それを購入しようとする代表的消費者の,余剰便益最 大化をめざしての,各期における購入量決定戦略がもたらすゲームとなる.1
.
3
耐久財独占ゲームの形式 ここで,耐久財独占ゲームの形式を再確認することとしよう.それは,以下のようにまとめられる. 一 耐 久 財 独 占 ゲ ー ム の 手 番 順 序 -( 1 )耐久財独占企業が第1期の販売価格 Plを提示する. ( 2 )消費者が第l期の購入量 qlを決定する. ( 3 )耐久財独占企業が第2期の販売価格
P
2
を提示する.(
4
)消費者が第2
期の購入量q2
を決定する. 一耐久財独占ゲームの行動基準一 ( 1 )耐久財独占企業は,耐久財の耐久期間である2期間をつうじての総利 得を最大化する価格戦略をとる.なお,生産費はOである. ( 2 )消費者は,耐久財から得られる余剰便益(消費者余剰)を最大化する ように購入量を決定する. 一耐久財独占ゲームをめぐる情報一 ( 1 )情報は完全である.したがって,消費者の便益関数は,消費者および 耐久財独占企業のどちらにも知られており,そのことを相互に確認し ていることを承知している.耐久財独占企業の生産費0についても同 様に完全情報である. ( 2 )完全情報であるから,独占企業および消費者のどちらの行動基準につ いても共有知識となっていることが仮定される. 以上のようなゲーム状況にあって,最初の手番は,耐久財独占企業の第 1 期における価格 (P1)の選択であるから,その決定にあたっては,それ以 降の,とくに第2期でのゲーム展開を先取りすることが必要となる.そのた め,先手である耐久財独占企業の推論は,すでに第 1期における価格 (pd およびそのもとでの第l
期の購入量 (qd が決定された後の第2
期価格の 決定から開始される.この決定には何らの困難もない.というのも,これは事実上,第
2
期のみの意思決定問題となるからである.そして,そこでは, 消費者の余剰便益最大化行動も単純化され,それはたんに,与えられた価格 (P 2) にもとづいて,便益関数に対応する購入量を選択するというものに なる.1
.
4
耐久財独占ゲームの均衡(1
)
以上のことを考慮しつつ,第2期における,耐久財独占企業の利潤最大化 問題; Max q2 (60-q2/2 -ql/2) を解けば, q2 =60-ql/ 2 = 0 という,第1期の販売数量と第2期の販売数量との関係が特定化される.こ の販売数量戦略が,独占企業の利潤最大化に必要とされるものであるけれど も,これより, P2 =30-Ql/2 も,第2期の販売価格戦略として,直ちに確認される.これは,第l期の販 売数量と第2期の販売数量の関係が与えられると,消費者の第2期における 耐久財にたいする評価が,第 1期の販売数量の関数として便益関数より求め られることより,第2期で実現可能な最高価格が,第1期の販売数量によっ て決定されることによる.したがって,第1期での独占企業による販売数量 が確定すれば,すべての変数の値は確定することになる. ところで,消費者は,第 1期の耐久財の販売量にたいして,いくらの値付 けをするであろうか.ここでは,完全情報を仮定しているので,第2
期にお ける独占企業の価格戦略については周知となっていることを考慮すれば,第 1期の販売数量にたいして消費者が支払ってもよいと思う最高価格は,便益 関数にもとづいて, Pl =90-3 Ql/ 4となる.このことは,消費者が,第2期においては,既に第1期で購入して いる耐久財と,第2期で新規に購入する耐久財の総量を所有するために,便 益関数にてらして,その評価額が一律に低価格となる事実にもとづいている. すなわち,第 1期で購入するときの評価は高いが,その財を 1期間所有した 後の第
2
期における評価は低くなるということである. 完全情報のもとでは,このような事実あるいは消費者の評価基準は,独占 企業にとって既知となるから,それにもとづく利潤最大化行動によって, MaxP
1 q 1 xP
2 q 2 より,60-5
ql/4
=
0
を算出することができる.その結果, ql =48 Pl =54 q2 =35 P2 =18 という,耐久財独占ゲームのナッシュ均衡戦略が得られる.1
.
5 独占手Ij潤と消費者余剰 これから 2期間を通じての独占企業の総利潤は, 3240となることが分か る.この利潤総額は,この耐久財がレンタルされるケースと比較すれば,か なり低い水準である.レンタルの場合には,各期における独占企業の利潤極 大化行動から容易に確認されるように,各期におけるレンタル価格は6
0
,レ ンタル数量は3
0
となるから2
期間を通じての利潤総額3
6
0
0
を獲得可能であ る.ただ,レンタルのケースでは,販売する場合とちがって,販売後のサー ビス等での費用を考慮する必要もあり,その対比は単純にはいかない.とは いうものの,そのようなレンタル料以外の費用要因からの影響を無視すれば, 耐久性をもっ財の販売は,耐久性のない財に比べて利潤の低下する傾向は指摘される. 一方,ゲーム均衡戦略における消費者の余剰便益については,図
2
の斜線 部分となる.ここで,第1期と第2期では,余剰の算出基準となる便益関数 が異なっていることに注目する必要がある.本来の便益関数は,いうまでも なく, R=60-q/
2 であるが,このままでは第 1期に購入された耐久財の耐久期間全体にわたる 便益評価に利用することができない.上式は期の便益評価関数であるか ら,第1期に購入された財から得られる 2期間にわたる便益はこれを上回 るのである.単純に考えれば 2期間モデルの場合には,便益も2倍になる と思われがちだが,そうではない.第2
期には,第1
期においてすでに購入 している高需要者は市場から消えており,残る低価格需要者に販売するため に企業は価格を低下させることを消費者は知っている.そのため,第 1期に 購入された財の第2期における評価は前述のように, P2 -30-ql/2 であり,その結果 2期間全体にわたる財の評価もまた,これをうけて, R=90-3ql/ 4 となる.これにたいして,第2
期に購入された財の評価は,本来の便益関数 90 60 54 R 18 1-一一一一一 48 84 120 図2 消 費 者 余 剰 qがそのまま適用されることとなる. いうまでもなく,ここにはある仮定が置かれている.すなわち期間の 財の便益については,その財の物理的効用を基準として評価するが,第 l期 における販売数量 (qr)が確定すると,それを基準として,第2期におけ る企業の利潤最大化行動にもとづく最適販売量戦略 (q2)と最適販売価格 (P2 )が, qlの関数として確定するので,その結果もとめられる予想販売 価格をもって第2期の評価に代えるという評価態度である. このことは,言い換えれば,第 1期には高価格需要者の主観的態度にもと づいて便益水準が確定するのにたいして,第2期では,低価格需要者の主観 にもとづく便益評価から決定される客観的市場価格をもって便益評価をおこ なうという態度を意味している.もちろん,ここでのモデルには,需要者側 として代表的消費者が考えられているから,高需要者も低需要者も,一人の 代表的消費者の行動として統一的に解釈されるものとみることはできる. し かし,この耐久財が複数個は必要とされない性質を持つものであるとき,こ の種の解釈には多少の論理的な不斉合性がつきまとう.
2
.耐久財独占ゲームの均衡について
2
.
1
ゲーム均衡の矛盾 耐久財を供給独占する企業にとっては,特別の状況を想定しないかぎり, 第2期における価格低下を避けることはできない.それは,すでに第 l期に おいて高需要者は購入済であることから,第2期における同財の追加販売は 必然的に低需要者を販売対象者とせざるをえないからである.前節までの分 析によれば,そのことは,結局のところ第 1期の販売価格の低下をもたらす. ところが,このような耐久財独占ゲームの分析手順は,基本的に,重大な矛 盾をかかえている.本節では,そのことを検討する. さて,前節までの分析を再考すると,結局のところ,この耐久財独占ゲームにおける戦略決定の住組みは以下のようなものである. 一耐久財独占ゲームの戦略決定一 第l期の販売量 qlが決定されると,第2期における企業の利潤極大化 戦略と,消費者の余剰便益最大化行動によって,第2期の販売量q2と第2 期の実現可能な最高価格P2が確定する.完全情報性の仮定によって,この ことは,耐久財独占企業にも,消費者にも知られるが, とくに,消費者によ って予想される第2期の価格付けにもとづく(第l期に購入される耐久財の) 第2期の評価を定め,それによって,第1期に購入する耐久財の(第1期に おける)評価が確定する.耐久財独占企業は,消費者の(第1期および第2 期の)評価にもとづいて利潤極大を達成する価格付け (P1およびP2)を企 業戦略として決定する. 以上のような戦略決定方法において,本当のところ最終的なゲーム決定権 をもっているのは耐久財独占企業と消費者のどちらであろうか.ここでの分 析に従うかぎりにおいては,それは決定的に独占企業の側に存在する.常識 的な意味では,これは異常な結論ではない.ところが,よく検討してみれば, 消費者が第 1期の購入量 qlを選択するさいには,その評価は,独占企業の 利潤極大行動にもとづいて成立するであろう第2期の実現価格を上乗せする 形式で行うのであり,その第2期の実現価格を実質的に決定するのは第1期 における消費者自身の購入決定量 (ql)であることに気づく. すなわち,このゲームの均衡戦略を実質的な意味で確定しているのは, じ つは,第 1期における消費者の購入量である.すなわち,第 1期における購 入量 (q1) が確定すると,それにもとづいて第2期における価格戦略 (P2) および販売量 (q2) が決定されることを知って,独占企業は第
1
期の価格 付け (pd を選択するというのが正しい解釈になる.この点をめぐって, ラスムセン (8Jの解釈は混乱している.すなわち,そこでは,第1期の購入に関する評価は,第 1期における購入量が確定しないと決定されないこと を見落としている. そこで,次に本来の耐久財独占ゲーム均衡をもとめることとしよう.いう までもないことだが,この分析は従来の分析とは異なった結論をもたらすこ とになる.そのことの評価については読者の批判を仰ぎたいと思う.
2
.
2
耐久財独占ゲームの均衡(1I) ここでは,前節に示された手順に従って,耐久財独占ゲームの正しい均衡 戦略を求める.とはいっても,パローC3J
およびラスムセンC8J
による 分析も部分的には正しいので,そのことを考慮して,変更されるべき部分の 検討を中心に議論する. まず,第 1期の購入量q
l
が確定すると,第 2期における企業の利潤極大 化戦略から,第2期の販売量q
2
が,q
2
=60-ql/
2 と決まり,それを販売可能な最高価格P
2
が,本来の便益関数より,P
2
=30-ql/2
と求められることは,従来の分析と同様である. ところで,このような反応関数を既知とする消費者は,第 l期に提示されP
,R
906
0
Plq
2
120 q 図3. 1 消費者の選択る価格Plにたいして余剰便益を極大化しようとするはずであるから,図3. 1における斜線部分の面積を最大化する購入量qlを選択することとなるが, これより, Max ((1/2) ((90-Pl)
+
((90-3ql/4) -Pl)J q 1+
(1 / 2) (( (60 -q 1/ 2) -qd
x ((60 -q 1/ 2 )一
(30-ql/4)JJJ が得られる.したがって,最適購入戦略は; ql =160一
8Pl/3 となる. 独占企業は,このことを知って,第l
期と第2
期の全体にわたる利潤極大 化価格戦略を決定するから, Max (P1 x q 1+
P 2 X q 2 ) fこだし, q 1 = 160 -8 P 1/3 P2 =30-ql/ 4 q2 =60-ql/2 を考察することより, Pl =75/2 となることが分かる. これによって,耐久財独占ゲームの均衡戦略はすべて確定して, Pl=37.5 ql =60 P2 =15 q2 =30 となる.このとき,耐久財独占企業の得る利得 (II) は,II =IIl + II2 である. =37.5
x
60+ 15x
30 =2700 , 2. 3 二つの耐久財独占ゲーム 本来の解釈にもとづく耐久財独占ゲーム均衡戦略によってもたらされると ころの企業の獲得利得水準は,ラスムセンで主張されているものよりもかな り低いものになる.また,各期における独占企業の価格戦略あるいは消費者 の購入量にしても,ラスムセンでの分析結果; Pl =54 ql =48 P2 =18 q2 =36 および, II =IIl + II2 = 54x
48 + 18x
36 =3240 , と比較すると大幅な違いが発生している. 前節での検討結果にもとづく耐久財独占ゲーム均衡のほうが,はるかに独 占企業の弱気を示すものとなっていることは容易にみてとれる.また,試み に,ラスムセンにおけるゲーム均衡戦略によって,第 1期の販売価格を与え てみると, Pl =54 ql =18 P2=25.5 q2 =51および, II =IIl
+
II2 =54 x 18+25.5 x 51 =2272.5 , となる.したがって,仮に何らかの理由によって,独占企業が第 l期に高価 格を付けても,消費者は第 1期にはほとんど購入せず,第 2期での値下がり を待つ姿勢が明確になる. また,これを別の角度からみれば,ラスムセンによるゲーム均衡にもとづ く第1期の販売量 (ql=60)にたいする消費者評価は, R(60) =90ー (3/4) x60 =55 であるにもかかわらず,実際には, Pl =37.5 での購入価格を実現しているともいえる.ここで,念のために,真のゲーム 均衡がもたらす状況を,以下に図解(図3. 2)しておこう.図中の斜線部 分は消費者余剰および企業利得である.このなかに,第 1期の価格水準と購 入量水準の決定における,独占企業と消費者のゲーム戦略的行動の反映を見 てとれるはずである. P.R 90 60 R =90-3ql/4 37.5 15 60 90 120 q 図3. 2 耐久財独占ゲームの均衡3
耐久財独占ゲームの解釈をめぐって
本稿では,ラスムセン等によって分析されてきた耐久財独占ゲームの,新 解釈にもとづく分析をおこなってきた.その結果,耐久財独占ゲームの主張 を正当に評価するならば,そのゲーム均衡は従来の分析結果とは異なったも のにならざるをえないということが明らかになった.とはいえ,ラスムセン の分析手法および分析結果も,ある特殊な状況のもとでは意味をもっ. たとえば,第1期に購入する需要者と,第2期に購入する需要者を区別し て考えるケースでは,その分析結果は正当なものである.この場合は,各期 の需要者は別人であるから,本来の耐久財独占ゲームのように一人の代表的 消費者を想定するわけではない.そのため,消費者の余剰便益最大化行動も, 各期における最大化行動に分離することができ,たとえば,第 1期に購入す る消費者の余剰便益最大化は評価関数; Pl =60-Ql/2 +30-Ql/4
=90一
3Ql/4 に基づいて行われると解釈する他はない.このとき,第 1期に購入される財 の,第2期における評価については,それが他者の行動に依存するため,第 1期購入者による戦略行動によってコントロールすることは困難を極める. いうまでもなく,このような状況は消費者にとって不利なものである.第2
期で購入する消費者の購入決定態度を左右することができれば,消費者余剰 はもっと大きなものになる. 一方,この耐久財が第2
期においては販売されないケースを考えると,第 2期における価格下落は起こらないことが事前に明確となるので,消費者が 第1期に購入する耐久財の,第2期における評価は,第1期の評価と同等な ものとなり,その結果,第 1期の購入価格の上限は期のみで考えたとき のゲーム均衡価格である, Pl =30の2倍,すなわち, Pl =60 となる.その結果,独占企業の利得は,第l期のみで得られ,第1期の販売 量である, ql=60 によって, II =3600 となる.このとき,この耐久財は,事実上,高需要者のみによって購入され る結果となり,消費者全体の便益を低下させることにつながる. また,販売ではなく賃貸のケースを考えると,消費者の便益は,もっぱら 本来の便益関数のみにもとづいて,各期別に独立的に決定されるから,ゲー ム均衡のもとでは, Pl =30 ql=60 P2 =30 q2=60 となり,独占企業の利得そのものは高水準; II =3600 に維持されるものの,実際の購入者(賃貸者)は相当に低価格水準での需要 者となる. このように,耐久財独占ゲームを多方向から解釈することによって得られ る様々なゲーム均衡のもとでは,異なった経済状況が発生する.耐久財独占 ゲームの分析について残された課題も,その点をめぐるものが多い.たとえ ば,第2期における生産数量制約のあるケースの分析等はそれにあたる.す でに,第
2
期における生産量が0
の場合の検討はおこなっているから,ここ でいうところの生産数量制約とは,第2期における生産数量が正値となるも のを指すことになるけれども,このような制約は,恐らくは第2
期に成立するであろう耐久財価格の水準に下限を与える.というのも,このような生産 数量の制約は,限定販売の性格をもつので,消費者がその上限数量を正しく 予想することができれば,完全情報のもとでは,それに対する評価の上限も また企業によって知られるからである.そうであるならば,第2期における 生産数量制約あるいは数量限定販売戦略と,第2期における販売価格の最低 保証との戦略的同等性も議論されてよいかもしれない. 参 考 文 献
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