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日本管理会 計 学 会 誌
管理会 計 学2000年 第9巻1号
論 文
ア ライア ンス戦略が財務業績に及ぽす 効果につ い ての 研究
一 ア ライアンス ・ コス ト低減 ・ 市場環境 ・ 財務状況iの相互関 係 一
鈴 木 浩三 *
〈論文 要 旨〉
わ が国の産 業界で はM &A や業 務 提 携 とい っ た 企 業 間のア ラ イア ン スが盛ん である. その 目 的に は差 別化や 低コ ス ト化 など がある が, 実 際に はコ ス ト低 減が主 要 な 目 的とな
る ケース が多い .
そこで本稿で は,経済企 画庁 「企 業 行動ア ンケート調 査」の データか ら日本の製 造 業 を対 象に対 数 線 型モ デ ル を用い て, 市 場 環 境の段 階 (成 長 ・成 熟 ・衰 退 )に応 じて
, ア
ライ アン ス戦 略 (M &A ・業 務 提 携)とコス ト低減 戦 略 (低減対象 :上 流 ・中流 ・下流コ ス ト)を組み合せ る場 合に,どの ような組み合わ せ が財 務 状 況に好 ま しい 作 用を与え る か を検証 し た.そ の結果, 「主要事業が成 熟市場に属する 企業が,中 流コ ス ト を低減対象 とする場合に おい て は,業務提携よ りもM &A を選択する方が短期 的に効果 を得る に は 好 ま し くなるが, 同 じ条 件で長 期 的 な効 果を得る に は業務提携を選択する ことが効果 的
と なる.」 こと な ど が検証 され た.
〈キーワー ド〉
ア ライア ン ス , M &A,業 務 提 携, コス ト低 減, 市 場 環境 産業ライフサ イク ル,対数線 形モ デル
2000年 4月12日 受付 2000年 9月 5日 受理
*東 京都 職 員研 修所 調査研 究 室 課 長補 佐
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管理会計 学 第9巻1号
1. は じめに
現在, M &A や 業務 提 携 とい っ た 企業 間関係の構 築 (以 下, 「ア ラ イア ン ス 」 とい う.)に よ り, 外部 経 営 資源の 活 用 や競 争優位の獲得を 目指す ケース が増 えて い る.従来 か らの垂 直 的な 企業 間関係や 企 業グル ープ 内の 結合関 係 と ともに, 異業種 間, ラ イバ ル 企業 間, 国際 間の ア ラ イア ン ス に よっ て競争優位の実現の ため の水平的な 企業間関係を構築する場合も増 えて い る. た とえば 経 済 企 画庁[9]に よ れ ば,日 本 企 業の 事業 再 編 におい て , 他 社 との ア ライア ン ス の重 視が 1990 年 代 後 半の 明ら か な トレ ン ド と なっ て い るが,その背 景に は,企業パ フ ォーマ ン ス
をア ライア ン ス に よっ て好ま しい もの に し ようとする意 図の存 在が推 定さ れる.
一方, ア ライア ン ス戦 略に よ る優位 性の獲得 に関する方 法 論につ い て は, Doz, Y.L. and G.
Hamel [3]が指摘 する よ うに, 競 争優位の獲 得の た めの ア ライ ア ン ス経 験が わが 国は もと よ り欧 米で も十 分で ない こ と もあ り, 定まっ た方 向性は確立 さ れてい ない 状 況にある.
しか し,ア ライア ン ス の効 果とし て の企業パ フ ォ ーマ ン ス を業 績に よっ て捉える なら ば, 業 績 と直結す る コ ス トマ ネジ メ ン トの観 点 を織 り交ぜ る こ とが重 要で ある.ま た, 鈴木[22]の と
お り, 現 実の ア ライア ン ス で はコ ス ト低 減 を目的と す るもの が実際 に多い .
そ うし た 認識 の下 に, 本稿で は コ ス ト低 減を 目的とするア ラ イ ア ン ス を中心に検討するが,
企業の コ ス ト構造 や競 争戦略の 規定要 因 と して の市場 環 境に も配慮 し な が ら, ア ラ イア ン ス ,
コ ス ト低減, 企業ポ ジ シ ョ ニ ン グ と して の市場 環 境,財務状況の 4者の相 互関係 を考 察す る. その 上で , 市場 環境の 段 階 (成長 ・成熟 ・衰 退)に応 じて,ア ライア ン ス 戦 略 (M &A ・業 務 提 携 )とコ ス ト低 減戦略 (低 減 対 象 :上流 ・申 流 ・下流 コ ス ト)を組み合せ る場 合 には, ど
の よ うな組み合わ せ が財 務 状 況に好ま しい 作 用をもた らすか を, 経 済企 画庁の 「企業行 動ア ン ケー ト調査」(濁 の データの 対 数 線形モ デル に よ る実証 分析 に よっ て考 察 する.
そ れ ら を 通 じて,ア ライア ン ス を検 討 する際の 基礎 的な評 価基準 と な り,
一般へ の 適用性を 有 する指 針の提 示 を試み る.な お本 稿で は, 価値 創 造 機 能の共 通 性や コ ス ト構 造の比較可能性
に着目する と ともに, 資金 運用等を主な目的とする M &A を分析か ら排 除する た め, 分 析 対象 企業を製 造業に絞るこ とにする .
2.先 行 研 究の状況
そこ で , M &A 及 び業 務 提 携の効果 ,コ ス ト低 減 戦 略, 産 業ラ イフ サ イクル等の 市 場 環 境の 各分 野に関する先行 研 究を整理 し, そ こか ら,本 稿の テ ーマ で あ る4要素 間の相互関係 を分析 する こ との意 味付 けを試み る ことにする.
2.1 ア ラ イア ン ス 戦略の効果
ア ライア ンス戦 略の効 果に関 する先行 研 究で は, 合 併 と提 携 を別個に扱 うこ とが通 例で ある
が, 合併によ る財 務 状況へ の効果 につ い て は先行 研 究の多 くが 「効 果なし」 と してい る. た と え ば, Odagiri and Hase [16】で は日本の企業で は収益 率 及び成 長率に関する合併の プラ
ス 効 果は ない , Koch [11】で は現代に おい て合併し た企 業の収 益増を指 摘 する証拠は存在 し ない ,
(注 〉経 済 企 画 庁が,東 京 ・大 阪 ・名 古 屋の 各 証 券 取 引 所 (1部・2部 )に 上場 す る 金 融 ・保 険業を除く企業 (約2,000社 )を対 象に,昭 和36年 以 降 毎 年1月に実 施 して い る 大 規 模 な 調 査で,景 気 や 業 界 需 要に関 す る 企業の見通しを毎 年 継続 的に質問する と ともに,その時々 の経 済 情 勢に応 じた 企 業の行 動を捉える た めの質 問 を実 施 し てい る.
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ア ラ イ アン ス戦 略 が 財 務 業 績 に 及ぼす 効 果につ いての研 究
星野[6]に よ れば, 日本の 企業合併に 関す る実 証 分析に よ れ ば 企業合 併を ミ クロ的な 企 業経 営上 の問題 と して考える と 企業合併は負の 効 果を もつ ,と述べ てい る .一方, 池田 ・土井【7]で は 日 本の場 合 に は合 併 に よ り長 期 的 な 業 績 改善が み ら れ る と さ れ, 清水[20]で も, 先行 研 究に よ れ ば合併によ る 急 成 長 や 財務状 況の 急速な好 転は 望 み薄で あ る が長期 的には会社の将 来の地 位の 確 保にプラス になる と さ れてい るな ど, 「一部効 果 あ り」とする例 もある.
しか し, 星 野の 研 究 対象デ ータ は 1955 年か ら1978 年まで , 清水の分 析対 象デ ータ も1949 年か ら 1995年 末ま で とい うよ うに, 従前のデータの 集 積 が あ る がゆえに, 少な く と も1990 年 代の ア ライア ン ス の 解明と して は 必 ず しも十 分 と はい え ない .
一方 ,多くの 研 究で は,提携 と 企業内部の 技術開発 力との 関係が論 じ ら れて い るが,研 究 開 発 コ ス ト な どの低減 につ い て は 議論が あ ま り及んで い ない .そうした中で 黒 川 ・平本[12]は,
日本の 中 堅 製 造 企業で は, 内部の研 究 開発 能 力が高い企業ほ ど資 本関係を伴わ ない 技 術 提 携を
締結す る 傾向にあり, 技術提携は 企業の成長 性には プラス, 生産性に はマ イナ ス に働 く傾 向が あ る と して い る.ま た,コ ス トマ ネ ジメ ン トへ の視点を含むWilliamson[26】で は, 不確 実 性が 高い と市 場取 引に よ る取 引コ ス トが増 大する の で企 業 間の結合が指 向さ れる と してい る. 提 携の コ ス ト低 減面で の 一般 的 な効 果に 関 して は , 橘川[10]の ように 企業集団の付加的機能
として 情報 交換, リス ク ・シ ェ ア リング, 取引コ ス ト削減を挙げ, そ れ ら が個々 の メ ンバ ー企 業の 競争力を高め るとい う経営史の 観点か らの 研 究が あ る.ま た, Doz, Y.L. and G. Hamel [3] は国際 競争の激 化の 中で 従来 と は 異 な る 新 た なア ライア ン ス が展 開さ れて い る との見地 か ら,
ア ライア ン ス に よ る価 値 創造,ア ラ イア ン ス 目 的の類型 ,ア ライア ン ス を行 う企業 間の統 治機 能, パ ー トナー企 業 間の価値 とコ ス トへ の影響, ア ライア ン ス形 態の選択な ど を論 じてい る, 一方, 竹田 [23]で は 企 業提 携の 方式を合弁企業, 契約 設定, 長 期 取 引 関係に 分類 し, さら に それ を事 業 活動 ご とに区分 し て, 技 術提 携, 調達提 携 ,生産提携, 販売提携の 4 つ の提携内 容 と して分 類 して い る.この 4つ は Value Chain に沿っ たもの で あ り, 中で も調 達 提 携 と 生 産提 携に 関 して は, その 目的と して コ ス ト低 減が存 在 する こ とが指摘さ れてい る点で重要で ある.
2.2 戦略的コ ス トマ ネ ジメ ン トとア ラ イア ン ス
戦 略論や 競争 優位に 関して はPorter[18]の ように多 くの研究がある.その 中の Shank, J. K
and V. Govindarajan [19]によれ ば, 戦 略 的コ ス トマ ネジメ ン トは コ ス トデータ を用い た戦 略 立案を内容 と し, 価 値連 鎖 分 析, 戦 略 的ポ ジ シ ョ ニ ン グ分 析 ,コ ス ト ドライバ ー分 析の 3つ の
会計 分析 手 法か ら成 り立つ と され る.価値連鎖分析で は企業を超 えた広い 視野 を持つ こ との必 要性, 戦略 的ポ ジシ ョ ニ ング 分析で は コ ス ト リーダーシ ッ プ戦 略を とる企業における 目標 コ ス
トの 管理の重要性, コ ス ト ドライバ ー分 析 で は 所与の環境で の コ ス ト発生 要素間の複 雑な相互 関 係の 理 解 の必 要性が指摘さ れて い る。つ ま り, こ の 3つ の 会計 分析 手 法は, それぞれ ア ラ イ
ァ ン ス , 低 減対 象 コ ス トの選 択, 市 場 環境へ の配慮に結びつ くわけで ,そ れ らをさ らに整理す
れ ばア ライア ン ス,コ ス ト低減, 市 場 環境と業績の 相互 関 係 を考 察す る視座 が得ら れ よう,
一方 ,企業 間の原 価 管理につ い て は,Cooper, R. and R. Slagmulder[2]の ように,サ プライ
ヤ ー ・ネ ッ トワーク内の企業の協 調 行 動を通 じ た組識 間原価 管理 に 関 す る 研 究 が あ る,ま た,
浅沼[1】は, 中核企業 とサ プライヤー問の垂 直 的な関係は コ ス トや 技 術 とい っ た経 済的 要 因 か ら
説明され るべ き と してい る.と藤 本[4}は, サ プライ ヤー ・マ ネジ メ ン ト とは境界 (イ ン ターフ
ェ ース )のマ ネジメ ン トで ある と述べ る.そ れ ら はい ずれ も水 平 的な 企 業間 関係 にも敷 衍で き
よう.
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