「 チ ー ム 法」 案 騒 動後にお ける
従 業 員 参 加 の法 的位 置 づ け
C r o w n & C o rk Se al 事件を手が かりと して
橋 場 俊 展
は じ め に
米 国では, 労 働生活の質 改 善 (qualit y of w ork life) プロ グラ ム, ク ォ リテ ィ ・サ ー クル(qu alit y cir cle), チ ー ム制 度(s elf‑m anaged w ork te am ; s elf‑directed team), 労 使 共 同 委 員 会 (labor‑m a n age m entc o m mit te e)
などを 用 い て, 従 業 員 を 経 営上の 意 思 決 定に関わ ら せ る従 業 員 参 加
(em p loye ein v olv em ent) という 人 的 資 源 管理慣 行が, し ば し ば全 国 労
働 関 係 法 (N ationalLabor Relatio n s Act: 以 下, NL RA) 8 条(aX2) 違 反で
ある と さ れ廃 絶の憂 き 目にあっ てきた。 これ に対し, そもそも1 9 30 年 代に横 行し た偽 りの組 合 (sh am unio n) ともいうべき, 反 組 合 的 な 会 社 組 合 (c om pany u nio n) を 根 絶 する意 図で制 定さ れ た同 条 項が, 現 代の 従 業 員 参 加 を そ うし た悪 意 ある存 在と同 一 視し, これを 取 り締 まるの は 筋 違い である という 主 張が企 業 経 営 者 を 中心に繰 り 返さ れてきたの であ る。 N L R A を 司る全 国 労 働 関 係 局 (NationalLabo r Relatio n s B o ard : 以 下, NL RB) の厳 格 な 法 解 釈ぶり を 象 徴し た事 件, す なわちEle ctrom a‑
tio n 事 件 (1 9 92 年‖ )) や D u Pont事 件 (1 99 3 年( 2 )) を 契 機と して, 8 条 (a※2)改 定は不 可 避とする声が強 ま り, そうし た要 望は通 称 「チ ー ム法」
(Te am w orkfor E m ploye e s and M a nagers A ct) 莱(‥与' という 形に具 現 化さ れ た。 8 条(aX2)に但 書 を 付 け, 未 組 織 職 場の従 業 員 参 加につ いて,
そ れ が排 他 的 代 表た る労 働 組 合の地 位 を 代 替し ようとする類の もの でな
い限 り, た とえ その場で労 使の利 害 問 題が話し合わ れ た と して も合 法と することを 明 言し た チ ー ム法 案は, し か しなが ら時の大 統 領C linton
(W illiam J. Clinton) に よっ て葬 り 去ら れ たの である。
以 上の 一 連の騒 動卜1' は, 1 99 0 年 代 中葉の 出 来 事であっ た。 そ れでは,
これ 以降. 従 業 員 参 加の法 的 位 置づけは どう なっ て い るの であろうか。
相 変わ らず, N L R B は硬 直 的 なN L R A 解 釈 を 行い, 従 業 員 参 加 を 厳しく 取 り 締っ て来たのか, あるいは より 柔 軟 な法 解 釈に移 行して いるのか。
こ の点 を 明ら か にすること が, こ こ で の第1 の課 題となる。 こ の課 題 を 遂 行 する に当たっ て, 注目 に催 する N L R B 裁 定が存 在 する。 C row n Cork & Se al事 件 (2 0 01 年こ‑L"
) がそれである。 本 事 件 を 主た る切 りu に 据 えつ つ , 必 要に応じ て E le ctro m atio n 事 件以降の主だ っ た他の事 件 を 取 り上げ, 従 業 員 参 加の法 的位 置づけ を 把 握して いきたい。
次に, 上記 第1 の課 題に対 する結 論 を 述べること になっ て しま うが,
従 業 員 参 加に閲し理 解 を 示しつ つ, 合 法と違 法の境 界 を 明 確に し ようと
いうN LR B 局 委 員 会の強い意 志にも 拘わ らず. そうし た努 力は実 を 結 んで い ないのが実 状である。 こうし た状 況 を 踏 ま え, 現 在 も8 条(a)(2) 改 定 論 を 中 心に強 硬 なN L R A 改 定 案がく すぶり 続 けて いる。 こ の改 定 莱
の主だっ たものを 取 り上げ, そ れ らを 吟 味 すること が第2 の課 題となる。
これ らの2 つの課 題 を 達 成 することで, 従 業 員 参 加 を 取 り 巻 く 米 国の法 的 環境と そ れを 巡る諸 議 論 ・ 諸 見 解のあらましを 理 解できること になる であろう。
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「チ ー ム法」 案騒動後に お け る従 業員 参 加の法 的位 置づけ
I Cr o w n C o rk & Se al 事件の概 要とその イン パク ト
1 . Cr o w n C o rk & S e al社工場に お け る従 業 員 参加とN L RB 裁 定 事 件の舞 台とな っ たの は, Texa s 州Sugar Land に位 置 する C row n C o rk & Se al 社ア ル ミ ニウ ム缶 製 造工場である。 従 業 員 数 約1 5 0 名で未
組 織であるこ の工場は, 同 社に よ っ て1 9 90 年に買 収さ れ た。 当 該工場
では, 1 98 4 年の操 業 開 始 時か ら社 会 一 技 術 (So cio‑Te ch) システムなる 管 弾 手 法 を 実 践してきたのだ が, C row n C ork & Se al 社 もこれを 踏 襲し たの である( 6'。 こ の社 会 一 技 術シ ス テ ム の主 た る目 的は 「‑ ‑ ・多 数に渡 る常 設 的お よ び 一 時 的な チ ー ム, 委 員 会, 評 議 会 ( 全 体 的 な 委 員 会の こ と) ‑ の従 業 員に よ る参 加 を 通 じ 彼ら従 業 員に 工場 操 業の実 質 的 権 限 を 委 譲 すること'7'」 にあっ た。 既 述のように, 社 会 一 技 術シ ス テ ムは多 様 なチ ー ム, 委 員 会, 評 議 会か ら構 成さ れ るのだ が, 本 件で, N L R B ‑ の提 訴 対 象となっ たの はこれ らのう ちの 「生 産チ ー ム」 (Prod u ctio n
Team) ,
「組 織 審 査 評 議 会」 (O rganizationalReview B o a rd) ,
「技 能 修 得 認 定 評 議 会」(A dv anc e m entCertific ation Bo ard) , 「安全 委 員 会」(Safet y C o m mitte e) であっ た。 生産チ ー ムにつ いて は A , B, C , D の 4 チ ー ム が活 動して いたの で, し めて 4 種 類, 7 つの活 動 (チ ー ム ・ 評 議 会 ・ 委 員 会) が提 訴さ れ たこと になる。 以 下, 各々 の構 成お よ び活 動 内 容 を 簡 単に説 明しておこう。
ま ず, 生 産チ ー ムは, いわ ゆ る自 律 的 なチ ー ム制 度の ことであ り, 令 チ ー ムは経 営 側メ ンバ ー である チ ー ム ・ リ ー ダ ー 1 名と 生産 ・ 保 全 従 莱 員32 名の計33 名に よ っ て構 成さ れて い た。 これ ら生 産チ ー ム では, ① 生 産, ④ 品 質, ④訓 練, ④ 出 勤, ⑤ 安 全 性, ⑥懲 罰とい っ た事 項が議 論 さ れ チ ー ム と し ての意 思 決 定がなさ れ た。
一 例と して, チ ー ム に は各々
の事 項につき 次の よう な 権 限が付 与さ れ ていた。 ( 壬生産に関し て は, 坐 産ラ インをチ ー ム の判 断でス トップ さ せ る権 限 を, ② 品 質に関して は,
図1 提 訴の対 象と なっ た 7 委員 会 とマ ネ ジメ ン ト の関係
出所: 著 者作 成
ひっ かき 傷のある欠 陥 品 を 出荷し た際に, 出荷 を 停 止 する と ともに顧 客 に電 話し製 品 を回収 ・ 交 換 する権 限 を, ④訓 練に関し て は, フ ォ ー マル
あるい はイン フォ ー マ ルな 訓 練 を う ける チ ー ム ・ メ ン バ ー の人 選 を 行 う 権 限 を, ④出 勤 事 項につ い て は, チ ー ム ・ メ ン バ ー が要 求 する休 暇 を 認 め る か否か決 定 する権 限 あるいは欠 勤があっ た場 合その是 非 を 決 定 する 権 限 を, ⑤安 全に関して は, 事 故 を 調 査し安 全に関わ る問題 を 解 決 する 権限を. ㈲ 懲 罰 行 為に関しては. 業緯お よ び業 務 態 厚につ いてチ ー ム の
規 範 (n orm) を 満たさ ないメ ン バ ー がいた場 合, チ ー ムと し て どのよう な 対 応 をと る か につ いて決 定 する権 限 を委譲さ れて いたの である。 纏)の
懲 罰 行 為につ い て補 足し て おけば, チ ー ム は規 範 を 満た せないメ ン バ ー の相 談に乗 り, 必 要に応じて改 善 する旨 を口頭 もしくは文 書で誓 約さ せ る。 それでも 効 果が認め ら れず, 且つ チ ー ムが停 職や解 雇が妥 当である と判 断し た場 合, そうし た処 分 を 検 討 する よう 後 述の組 織 審 査 評 議 会に 提 案 すること になっ ていた( 8 )。
他 方, 組織 審 査 評 議 会, 技 能 修 得 認 定 評 議 会, そし て安 全 委 員 会はい ずれも12 名 程の メ ン バ ー で構 成さ れ て いた。 メ ン バ ー の内 訳は, 各生 産チ ー ムか ら 2 名 ずつ選抜さ れ た従 業 員 側メ ン バ ー 計8 名と数 名の経 営 側メ ン バ ー であっ た。 それ ぞ れの活 動 内 容 を 確 認しておけば, 生 産チ ‑
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「チ ー ム法」 案騒動 後に お け る従業員 参 加の法 的位 置づけ ムが 工場の方 針に則っ て運 営さ れ る ようモ ニ タリ ングすること, 就 業 規 則の修正を 提 案 すること, 生産チ ー ムか ら提 案さ れ たメ ンバ ー の停 職お よ び解 雇に関 する案 件 を 審 議 すること が組 織 審 査 評 議 会の役 割で あっ
た。 技 能 修 得 認 定 評 議 会の活 動 内 容は, 当該工場で実 施さ れて いる技 能 修 得 奨 励 加 給プロ グラ ム (Payfor A cquired S killsProgra m) の管 裡・ 運 営 を 行 うこと, お よ び技 能 を 修 得し た従 業 員 を 認 定し, その従 業 員の昇 給 を工場 長に提 案 することであっ た。 安 全 委 員 会は, 生 産チ ー ムが提 出 し た事 故 報 告 書 を 検 討し,その解 決 策 を 考 案 することを 使 命と して いた.
これ ら 3 つの評 議 会・委 員 会で決 定さ れ た事 項の多 くは,経 営 側メ ンバ ー 15 名か ら構 成さ れ る経 営チ ー ム (M a n agem e nt T e a m) に よっ て審 議さ
れ た後, 工場 長に よ る最 終 的 な 判 断 を 仰 ぐこと になっ て いた ( 図1 参 照(リ〕).
19 9 6 年1 0 月30 日, M artin Rodrigu ez なる人 物の申立(charge) に よ り, 以 上 み た生 産チ ー ム, 組 織 審 査 評 議 会, 技 能 修 得 認 定 評 議 会, 安 全 委 員 会がN LR B 地 方 支 局に調 査さ れ川 )\ それ ら活 動は, N LRA 8 条(a) (1)(l l) ぉ よ び 8 条(a)(2)̀' 2' 違 反である とする 「救 済 請 求 状」 (c om plaint)
が発せ ら れ た。 これ に対し, 行 政 法 審 判 官 (administrativ ela wjudge) が C r o w n C ork & Se al 社 側の主 張 を 支 持し, 救 済 請 求 状 を 却 下し たこと か ら, 提 訴 人が異 議 を 申し 立て, 本 件はN LR B 局 委 員 会の裁 定 を 仰 ぐこ と となっ たの である。
本 件 最 大の争 点は, 改めて 断るまでも ないであろうが, 生 産チ ー ム,
組 織 審 査 評 議 会, 技 能 修 得 認 定 評 議 会, そ して安 全 委 員 会がN LR A 2 条
(5)( 1 3 ) の定め る労 働 団 体 (1abor organiz ation) に該 当 するのか否か, 更に
いえばこれ らの活 動が使 用 者との 「折 衝」 (d ealing with) に該 当 する か 否か にある。 こ の点 を 検 討 する にあたり, N LRB 局 委 員 会は主と し て K e eler Bras s 事 件 (1 9 9 5 年(l l )) 裁 定と General Fo ods 事 件 (1 9 77 年̀' 5り 裁 定 を 参 照して い るo 前 者のケ ー ス では,
「苦 情 処 理 委 員 会」 (G rie‑
v anc e Com mit te e) と会社 側が 「受 け 入れ ることの 出 来る結 果に至るま
で, 双 方が自らの立場 を 主 張 する意 見のやり 取 り(ba ck a nd forth) を 行っ
た(1 6 )」 事 実 を 根 拠に, N L R A 2 条(5)の いう 折 衝が存 在 する との判 断が下
さ れ た。 逆に, 後 者の ケ ー ス で は, 職 務 充 実プロ グ ラム (job en rich‑
m ent pr ogr a m) の 一 環と し て用いら れ た各種 従 業 員チ ー ム/ 委 員 会の
活 動 内容 (チ ー ム内で の職 務 割 り 当て, ジョブ ・ ロ ー テ ー シ ョ ン の割 り 振 り, 残 業の ス ケ ジュ ー リング, 求 職 者の面接, 工場の安 全 検 査,
一 定
枠 内で の出勤/ 退 社 時 間 決 定 など) が 「従 業 員に対 する経 営 職 能の完 全
(flatly) なる委 譲( 1 7 )」 に相 違 な く, 従っ て使 用 者との折 衝はなかっ た と
の判 断がーF さ れ たのである。
N L R B 局 委 員 会は, Cr ow n Cork & Se al社工場で の従 業 員 参 加 活 動が Gene r al Fo ods 社のケ ー スと符 合 する と判 断し た。 す なわち, 生 産チ ー ムなど 7 つのチ ー ム ・ 評 議 会・ 委 員 会が,
一 昔 前の工場に おける第1 線
監 督 者と同等の権 限 を 行 使し ていた, あるいは組 織 審 査 評 議 会, 技 能修 得 認 定 評 議 会, 安 全 委 員 会か らの提 案 を 自ら拒 絶 すること は ほ と ん ど無 かっ た とする 工場 長の証 言 を 根 拠と して, これ ら 7 つ の従 業 員 参 加 組 織 は, 基 本 的に経 営 職 能 を 遂 行 することを 目 的と し て おり, そ れ故, 労 働
団体に は該 当しないとの判 断である( 1 8‑。
併せて, 局 委 員 会は,
「最 終 的且つ絶 対 的 (finaland abs olute) な権 限」 を 判 断 基 準と し て, 7 つ の従 業 員 参 加 組 織の活 動は折 衝に該 当 する とい う 事 務 総 長 (General Couns el) の認 識 を 否 定し た。 以下, 事 務 総 長の考 え を 今 少し詳 細に みてみ よう。 最 終 的且つ絶 対 的 な権 限 を 有し ていない 委 員 会は, 所 詮,
「自 分たちの決 定 事 項さえ も上位の経 営 者に提 案せ ね ば ならない し, あるいは 上位 経 営 者の提 案や拒 絶に基づきそ れ らを 修 正せ
ね ばならない( l 別」 の であっ て, こうし た やりとりは折 衝に他 ならない。
従っ て,
「7 つの委 員 会 (rplE 確に は, チ ー ム ・ 評 議 会 ・ 委 員 会: 訳 者) の ど れ 1 つ と して最 終 的且 つ絶 対 的な権 限を有して いないが故に, 経 営