様式 C‑19
科学研究費補助金研究成果報告書
平成
21
年5
月29
日現在研究成果の概要:
本研究では、地下帯水層の貯留層としての性能、あるいは貯留後の超長期に渡る
CO 2
地中貯 留の安全性を評価の実施を目的として、超臨界状態における帯水層内での水CO 2
置換プロセ ス、貯留後の超臨界CO 2
の拡散や流動のプロセスを、非破壊検査法の1つであり、かつ、高精 度の分解能を有するX線CT法により評価分析した。具体的には、X線CT法を岩石への超臨 界CO 2
圧入室内実験に適用して圧入・溶解プロセスをX線CTスキャナーにより高精度に可視 化し、微視的な視点からCO 2
の岩石内挙動を分析した。交付額
(金額単位:円)
直接経費 間接経費 合 計
2007 年度 2,200,000 0 2,200,000 2008 年度 900,000 270,000 1,170,000
年度 年度 年度
総 計 3,100,000 270,000 3,370,000
研究分野:工学
科研費の分科・細目:総合工学・地球・資源システム キーワード:CO
2
地中貯留、X線CT、超臨界CO 2
1.研究開始当初の背景
地球温暖化が原因と考えられている異 常気象が世界各地で発生していることが報 告されている。このような地球規模での気 候変動の要因としては、石炭あるいは石油 といった化石燃料の大量消費によって大気 中に放出された温室効果ガスである二酸化 炭素(CO
2
)の急激な濃度上昇が挙げられ る。日本における大規模なCO 2
排出源とし て、工場などの産業部門および発電所等の エネルギー変換部門が全体の5割弱を占めており、有効な削減対象として注目されて いる。こうした大規模な排出源では集約的 に
CO 2
を集積することが可能であり、これ らを処分する方法として、地下深部の帯水 層にCO 2
を貯留する「地中貯留」が有望視 されている。地中貯留とは難透水性の地層を上部に 持つ帯水層に
CO 2
を貯留する方法である。ここでは、エネルギーコストの観点から深
度
1,000m
程度の帯水層が主な貯留対象となっている。深度に対する地下の温度と圧 研究種目:若手研究(B)
研究期間:2007〜2008 課題番号:19760587
研究課題名(和文) X線CT法による岩石内超臨界 CO2 移行プロセスの高精度分析 研究課題名(英文) Analysis of Migration Process of Super Critical CO2 in the rock by means of X‑ray CT
研究代表者:
佐藤 晃(SATO AKIRA)
熊本大学・大学院自然科学研究科・准教授 研究者番号:40305008
力の増加勾配をそれぞれ
30℃/km
および10.5MPa/km
程度と仮定すると、地下800m
以深の帯水層では温度と圧力がCO 2
の臨界 点を超えており、CO2
は高い圧縮性(気相 的)と大きい密度(液相的)を有する超臨 界状態となる。岩盤内における超臨界CO 2
の挙動に関して、これまで弾性波探査手法 が応用され、岩石試料を用いた検証が行わ れた結果、CO2
の挙動をある程度モニタリ ング可能であることが示されている。また、弾性波探査手法により圧入された
CO 2
の挙 動のみならずCO 2
の貯留量評価も試みら れている。これらの方法は、実フィールド における大規模なCO 2
の挙動モニタリング に応用できる反面、分割された領域での平 均的な現象を見ているに過ぎず、さらに微 視的な現象を捉えるには他の方法を用いる 必要がある。2.研究の目的
本研究では、地下帯水層の貯留層としての 性能、あるいは貯留後の超長期に渡る
CO 2
地 中貯留の安全性を評価の実施を目的として、超臨界状態における帯水層内での水
CO 2
置 換プロセス、貯留後の超臨界CO 2
の拡散や流 動のプロセスを、非破壊検査法の1つであり、かつ、高精度の分解能を有するX線CT法に より評価分析する。具体的には、X線CT法 を岩石への超臨界
CO 2
圧入室内実験に適用し て圧入・溶解プロセスをX線CTスキャナー により高精度に可視化し、微視的な視点からCO 2
の岩石内挙動を分析する。さらに、従来 から用いられている弾性波探査法による評 価結果を比較検討することにより、実フィー ルドにおけるモニタリング結果の高精度評 価に寄与するとともに、地中におけるCO 2
挙 動シミュレーションの高精度化のための資 料を供することを目的としている。3.研究の方法
(1)
岩石内超臨界CO 2
挙動可視化システムの 開発X線CTスキャナー内で超臨界状態を安定 的に維持しつつ、X線CT撮影が実施可能な 岩石内超臨界
CO 2
挙動可視化システムの開発 に主眼を於いて研究を実施した。具体的には、比較的密度が小さく引張強度の高いカーボ ンファイバー樹脂を用いた圧力容器を設計
図1超臨界
CO 2
貯留装置製作した。
(2)
超臨界CO 2
挙動定量化手法の開発空隙内が超臨界
CO 2
で置換されるプロセス、ならびに置換後の挙動をX線CT画像から 定量化する手法を開発した。また、画像デー タからの高精度変化量抽出法の開発を行い、
超臨界
CO 2
挙動の経時変化求め、X線CT画 像データから水→超臨界CO 2
の置換率を評価 する方法を開発した。4.研究成果
本研究では、超臨界
CO 2
の岩石内での圧入・流動の様子を、非破壊検査法の一つである
X
線CT
スキャナー法を用いて可視化し、X線 CT画像データから多孔質岩石試料内でのCO 2
の圧入・流動メカニズムを明らかにする とともに、空隙を満たしている水がCO 2
で置 換された量を示す置換率を定義し、岩石の構 造と置換率の関係、圧入方向と置換率の関係 について論じた。まず本研究では、岩石試料内部での
CO 2
流 動現象を産業用X線CTスキャナーにより 可視化するために、新たにX線CT用超臨界CO 2
流動試験システムを開発した。本試験シ ステムを用いて実験に供されたベレア砂岩 の固有浸透率の測定した結果、堆積層に対し て平行、垂直方向で透水特性に大きな異方性 があることを示した。次 に 、 本 シ ス テ ム を 用 いて 岩 石 試 料 へ の
CO 2
圧入試験を実施し、その様子をX線CT スキャナーにより可視化した(図2)。原画 像からはCO 2
の挙動を明瞭に判別すること はできなかったが、画像間差分法ならびにデ ータのスタッキングにより、CO2
の圧入によ り空隙内の水がCO 2
に置換の様子をとらえ ることができた。また、この結果より、実際に 岩石試料内部で水がCO 2
に置換された割合、すなわち、置換率
R V
を評価した(図3)。その 結果、固有浸透率の異方性と同様に、置換率 にも異方性があることが明らかになり、同じ 岩石試料であっても堆積層に垂直にCO 2
を図1
CO 2
注入時のX線CT差画像Replaced region
70
190mm
160mm 120mm
140mm
Tomography region
図3 圧入軸方向の置換率
R V
の分布図4
CO 2
圧入流量による平均置換率R V
の変化
圧入した場合には置換率は
0.4
程度の値を取 り、水平方向に圧入した場合よりも大きいこ とが分かった(図4)。水と
CO 2
の密度差の影響を検討するために、水平方向だけでなく鉛直方向に対して上向 き、下向きの3種類の方向に
CO 2
の圧入を実 施した。その結果、鉛直方向に圧入を行った 場合の方が貯留率がやや大きくなる傾向を 示した。地球環境産業技術研究機構(RITE)で用い ている
CO 2
貯留可能量の算定式から、本研究 で 定 義 し た 置 換 率R V
を 評 価 し た 結 果0.125<R V <0.250
程度であった。しかし、本研 究で用いたベレア砂岩の場合には、圧入方向 によりCO 2
の貯留量が大きく異なっていた。本研究で示したように岩石の異方性などを 事前に評価することにより、より詳細な地中 貯留計画の立案が可能になるものと考えら れる。
5.主な発表論文等
(研究代表者、研究分担者及び連携研究者に は下線)
〔雑誌論文〕(計5件)
①佐藤晃,有水拓人,田中克也,塩手隆志,
X線CT法による多孔質岩石内CO
2
流動お よび貯留現象の分析、Journal of MMIJ、掲載 決定済み、(2009)、査読有り②佐藤晃、有水拓人、米村拓峰、澤田淳、X線C T法による亀裂内トレーサー移行プロセス の可視化と分析、Journal of MMIJ、 掲載決定 済み、(2009)、査読有り
③米村拓峰、佐藤晃、X線CT法による亀裂内お よびマトリクス内部の移流・拡散現象の可 視化、第12回岩の力学国内シンポジウム講 演論文集、Paper No.7(CD-ROM)、
(2008)、査
読有り④有水拓人、田中克也、米村拓峰、佐藤晃、
X
線CT法による水-
空気置換プロセスにおけ る置換率と残留飽和度の評価、第12回岩の 力 学 国 内 シ ン ポ ジ ウ ム 講 演 論 文 集 、PaperNo.8(CD-ROM)、 (2008)、査読有り
⑤
A.Sato and A.Sawada, Analysis of tracer migration process in the crack by means of X-ray CT, Proceedings of 11th ISRM Congress, Vol.1, pp.15-18 (2007)
、査読有り〔学会発表〕(計11件)
①米村拓峰、佐藤晃、X線
CT
法による亀裂内 およびマトリクス内部の移流・拡散現象の 可視化、第12
回岩の力学国内シンポジウム、2008.9、宇部市
②有水拓人、田中克也、米村拓峰、佐藤晃、
X
線CT
法による水-
空気置換プロセスにお ける置換率と残留飽和度の評価、第12
回岩 の力学国内シンポジウム、2008.9、宇部市③田中克也、吉田和晃、佐藤晃、X線CT法に よる多孔質岩石内
CO 2
流動現象の可視化、材料学会第57期学術講演会、2008.05、鹿 児島市
④田中克也、有水拓人、佐藤晃、X線CTを用 いた多孔質岩石内
CO2
貯留分析、資源・素 材 学 会 九 州 支 部 平 成20
年 度 春 季 例 会 、2007.5、福岡市
⑤米村拓峰、佐藤晃、菅原勝彦、澤田淳、X線 CTによるトレーサー移行プロセス分析方 法の開発、資源・素材学会平成
19
年度春季 大会、2007.3.、東京都
⑥有水拓人、米村拓峰、佐藤晃、X線CT法に よる岩石内水−空気置換プロセスの可視か と 分 析 、 材 料 学 会 第 5 6 期 学 術 講 演 会 、
2007.05.、名古屋市
⑦有水拓人、米村拓峰、佐藤晃、多孔質岩空隙 内の水−空気置換プロセスの分析、資源・素 材 学 会 九 州 支 部 平 成
19
年 度 春 季 例 会 、-0.1 0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5
0 10 20 30 40 50
R ep la ce m en t ra ti o R V
10ml
Location x,mm
-0.1 0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5
0 5 10 15 20 25
M e an o f R ep la ce m en t ra ti o
Amout of CO
2 injection , ml
Type V
Type P
Case 2
2007.5、福岡市
⑧谷口貴子、緒方奨大、佐藤晃、菅原勝彦、X線
CT
透水試験の画像処理に関する検討、資 源・素材学会九州支部平成19
年度春季例会、2007.5、福岡市
⑨
A. Sato, A Sawada, Analysis of tracer migration process in the crack by means of X-ray CT, ISRM 2007, 2007.7., Lisbon
⑩米村拓峰、有水拓人、緒方奨大、佐藤晃、X 線CT法による亀裂内流動現象の可視化と 分析、第
28
回西日本岩盤工学シンポジウム、2007.9、宇部市
⑪佐藤晃、有水拓人、米村拓峰、谷口貴子、緒 方奨大、X線CTで岩石を"はかる"、資源・
素材学会平成
19
年度秋季大会、2007.9.宇部 市6.研究組織 (1)研究代表者
佐藤 晃(SATO AKIRA)
熊本大学・大学院自然科学研究科・准教授 研究者番号:40305008
(2)研究分担者 (3)連携研究者