固定資本と資本制経済
高倉泰夫
Abstract
French regulationists characterize two different stages of capitalist economy in 19th and 20th century as evolutional change from extensive to intensive system of accumulation. And now Robert Boyer wrote we are in new stage of extensive system of accumulation. I tried in this paper to expand their idea by focusing on fixed capital in late 19th and late 20th century which fits for extensive system and induces extensive relation between capital and labour.
はじめに
1)
レギュラシオニストの経済学者であるロベール・ボワイ工は1970年代以降
2)
の資本制経済は外延的蓄積体制へと転換したと指摘している。
レギュラシオン理論では,外延的蓄積体制としての19世紀と内包的蓄積体 制としての20世紀とに区分し,20世紀の中でもとくに第2次世界大戦後のア
メリカ合州国や西欧および日本での高度成長が持続した1950〜60年代の蓄積 体制を「フォーディズム」と規定している。そしてその「資本制の黄金時代」
では生産性の上昇と消費と投資の好循環が成立し,そこでは大量生産一大量 消費体制が全面開花することとなったとする。再生産表式にもとづいた説明 では,19世紀では第I部門が第Ⅱ部門よりもより高い成長をしめし,生産性 の上昇が労働者の実質消費の増加へとは必ずしも結びつかない状態にあった
のに対して,
2 0
世紀とくに「黄金の3 0
年」では第I
部門の成長と第E
部門の 成長とが平行している。そこでは第I
部門での生産性の上昇は資本の価値構 成を上昇させず,第 E部門での生産性の上昇率と実質賃金の上昇率とが等しく,利潤率も一定水準で維持されることとなる。
このような好循環の体制が
1 9 7 0
年代以降変化し,生産性の上昇が必ずしも 実質賃金の上昇とは直ちに結びつくとはいえなくなり,資本にとっては利潤 率の維持あるいは回復のために,労働分配率を低下させる方へと資本と賃労 働との聞の回路に変化が生じてきているようにみえる;しかし,本稿では,資本と賃労働の関係の分析ではなく,再生産表式上の 固定(不変)資本について
1 9
世紀後半のそれと1 9 7 0
年代以降のそれとの対比 を,理論上の仮定とその帰結の対比として考察することを目的としている。そして,
1 9 7 0
年代以降の固定資本の償却と更新のあり方の変化をとらえるこ とは,上記の資本と賃労働との関係の変化をとらえる一つの視点を提供する であろう。1
)ボワイエは次のように述べている。「北米では,もはや蓄積は大量消費を基軸とした内 包的蓄積ではなく,外延的な性格をもっ蓄積になり,生産様式の分化や不平等の強化に 基づいている。この変化は,長らく気づかれることが無かったが,現代資本主義を理解 する上で根本的な変化である。必要な変更を施せば,この変化は二度の石油ショック後,大部分の先進資本主義経済に広まっているといってよい
J
(中原隆幸訳「グローパリゼー ション時代の資本主義一一レギュラシオン的解釈ーJW
経済セミナーI J 5 1 8
号,1 9 9 8
年3
月,6 7
ページ)。2
)高木彰は1 9 7 3
年以降の資本制経済は情報段階という新しい段階に入ったとしている( W
現代経済学の基礎理論』創風社,1 9 9 6
年)。なお,筆者による書評はエコロジカルな 限界からみたものとなっている( W
立命館経済学I J 4 6
巻3
号,1 9 9 7
年8
月)。また,伊藤誠は資本制経済は,
1 9 7 0
年代以降再度転換して「資本主義市場経済の自己 再生力の強さ」をしめしており,そこでは「現実分析の規準としての原理論の意義がふ たたび大きくなって」いるとし,それゆえ「帝国主義段階以降,資本主義は欄熟し不純 化し」て第 l次世界大戦以降の没落期を迎えたという認識はあらためられなければならない,としている(Ii'現代の資本主義』講談社〔学術文庫J,1
9 9 4
年,1 7 1
ページ)。そし て次のように述べる。「いま先端的な情報技術の高度化にもとづく資本主義の再編が,こ うした歴史の流れをいわば再逆転し,自由で競争的な市場経済の活力を再生させてきて いるとすれば,そこには思わざる歴史の逆説があるJ
(向上)。3
)再生産表式にもとづいた場合のレギュラシオン理論の解説として,山田鋭夫『レギュ ラシオン・アプローチ‑21
世紀の経済学一』藤原書庖,1 9 9 1
年1" ‑ ' 4
,を参照さ れたい。また,ミシヱル・アグリエッタ(若森章孝他訳) Ii'資本主義のレギュラシオン理論一 政治経済学の革新一』大村書庖,
1 9 8 9
年,第1
章,および,A l a i n L i p i e t z
,B e h i n d t h e C r i s i s : The E x h a u s t i o n o f a Regime o f A c c u m u l a t i o n . A r e g u l a t i o n s c h o o l " p e r s p e c t i v e on some F r e n c h e m p i r i c a l works
,R e v i e w 0 / R a d i c a l P o l i t i c a l E c o n o m i c s
,v o
. l1 8
,n o . 1・
2
,S p r i n g
&Summer 1 9 8 6
,海老塚明訳「危機の背後に一蓄積体制の枯渇一J
(ロ ベール・ボワイエ,山田鋭夫〔共同編集J
Ii'危機一資本主義一.n [Ii'レギュラシオン・コレクション
1
.nJ藤原書庖,1 9 9 3
年),も参照されたい。4
)次の表も参照されたい( V i c t o rD . L i p p i t
,The R e c o n s t r u c t i o n o f a S o c i a l S t r u c t u r e o f A c c u m u l a t i o n i n t h e U n i t e d S t a t e s
,R e v i e w (
ずR a d i c a lP o l i t i c a l E c o n o m i c s
,v o
l.2 9
,n o .
3
,S e p t e m b e r 1 9 9 7
,p . 1 4
,t a b l e 1 )
。国民所得の割合としての賃金および俸給と企業利潤 年 賃金および俸給 企業利潤
1 9 8 0 62.2% 7.5%
1 9 8 5 59.5% 8.4%
1 9 9 0 59.8% 8.0%
1 9 9 5 59.0% 10.1%
〔出所J
B u r e a u o f t h e C e n s u s
,U. S . D e p a r t m e n t o f Com‑
merce
(I9 9 6 ) S t a t i s t i c a l A b s t r a c t 0 / t h e U n i t e d S t a t e s
1 9 9 6
,p . 4 4 9 . W a s h i n g t o n
,D . C . : U . S . Government
P r i n t i n g O f f i c e .
資本の有機的構成の上昇と償却年数一定の場合の 固定資本
ジョセフ・ギルマンの研究を参照すると,
1 9
世紀末から2 0
世紀の初頭にか けてのアメリカ合州国での資本の有機的構成はF+Z/V
の上昇としてだけ ではなく ,F/Z
の上昇としても起っていた(F
は名目固定資本量,Z
は流 動〔不変〕資本量,V は可変資本)。このように社会的労働の生産諸力が資 本の有機的構成の上昇として現れるとき,そのことはF
に対応する生産手 段生産部門の他の部門に対する比率を増大させることになる。ただし L Lでは固定資本の減価償却年数
η
を一定とする。ここで ,
C=f+Z
げ=F/n)
とすると,拡大再生産表式では(Cl+Vl 明 l
十哨舵1
汁 + 叫M
C 2 + V2 +MK2 +MC2 +MV2 = Xr r
, となるが,これはXr =C 1 +MC
1+C2 +MC2'
Xrr=V 1 +MV 1 +MK 1 +V2+MV2+MK2
と表される
i
ここで,資本の有機的構成のみが上昇したとする(C'/V'>
C/
V.。そして ,F+Z/V
およびF/Z
の上昇も同様に表現されうる)。また,剰余価値率
(M/V)
,および蓄積率(MC+MV/M)
は,それぞれ一定とす る。資本の有機的構成が上昇したあとのXr
を,X ' r =C'
l+ M C ' l +C' 2 + MC ' 2 '
とすればXr r
も,X
rr= V ' l + MV'l + MK'l
十 円 十MV'2+MK'2
, とあらわせる。ここで剰余価値率と蓄積率は一定であるので ,
X
rIの中のMK'l+MK
らの比率は変化しないことになる。そして,有機的構成の上昇に 応じて ,X'rlX
'rr>XrlXrr
, となる。このとき,実質賃金の上昇が生じていることは想定されているが,それ以 上に第
I
部門とくに生産手段生産部門の他の部門に対する比率の上昇という 形で,社会的労働の生産諸力の発展が結果することとなる。なお,剰余価値 率が変化しないとしたときでのこのような資本の有機的構成の上昇は利潤率の低下をもたらすことになる。
次に,固定資本の減価償却と更新の問題について見てみる。ここで減価償 却 額 D は , D=F/n ,更新額 R は, R=F{r/ ( 1 + r ) n ー l } , とあらわされ
る
(rは生産手段生産部門の年々の増大率であり,一定とする)。
D‑R=F{ l
土n
(1+ r r ) n ー リ
,1
となるが,資本の有機的構成 F+Z/V および F/Z の上昇に応じて,この更 新余剰 (D‑R) の額も増大していくことになる。この (D‑R) としての固 定資本の追加の形成に対応して,各部門の剰余価値から , MC+MV とは別 に,流動資本と可変資本の蓄積分が追加される必要があるが,そのことはこ の追加蓄積についても資本の有機的構成の上昇に応じて,生産手段生産部門 の他の部門に対する比率を高めることとなる。
ここで,資本の有機的構成が年々ゆるやかに上昇していくとすると,第 I 部門とくに生産手段生産部門の他の部門に対する比率は徐々に上昇してい
く。このとき,社会的労働の生産諸力の発展は第 n 部門に比べての第
I部門,
とくに生産手段生産部門の比率の上昇へと吸収されていく回路をここではも っているのである。ただし,それは資本制経済としては必ずしも安定的な回 路とはいえないであろう。また,そのような回路の存在は, 1 9 世紀末から 2 0 世紀初頭にかけてのアメリカ合州国での外延的蓄積体制とも対応しているこ
とになる。
5 )ギルマンによれば, 1 9 世紀末から 1 9 2 0 年頃までの 2 0 世紀初頭のアメリカ合州国では,
固定資本によって計算した場合(ストック・ベーシス 1 )でも,固定資本と在庫価値と しての流動資本で計算した場合(ストック・ベーシス 2 )でも,資本の有機的機成はゆ るやかに上昇し,剰余価値率はゆるやかに上昇して利潤率はゆるやかに低下している。
そして, 1 9 2 0 年前後を境に,資本の有機的構成はほぼ横這いとなり,利潤率もほぼ横這
いの傾向を示している(J o s e f G i 1 1 man , The F a l l i n g R a t e o f Pr
.oβt : M a r x ' s Law and i t s
S i g n i f i c a n c e t o T w e n t i e t h ‑ C e n t u
りC a t i t a l i s m , London:Dennis Dobson , 1 9 5 7 , c h a p t e r 5 ,
西川良一訳『利潤率低下の理論』雄揮社,
1 9 6 8
年,第5
章)。ここで,ギルマンの統計
(Appendix 2)
を利用しながら,流動資本/固定資本+流動 資本,の比率を計算してみると次のようになる(ここでの固定資本は減価償却後の数 値である)。すなわち,1 8 8 0
年43.3%,18 9 0
年40.0%,19 0 0
年35.9%,19 1 2
年30.0%,1 9 1 9
年27.0%,19 2 0
年26.5%,19 2 1
年26.0%,となり,これ以降大きな変化はなくなる。このことから,
1 9
世紀末から2 0
世紀初頭にかけてのアメリカ合州国では,技術革新と産 業構造の変化の中で ,F+Z/V
の上昇とともに ,F/Z
の上昇も生じていたといえる。なお,同時期の資本係数の変化についての,サイモン・クズネッツやダニエル・クリー マーなどの研究の紹介については,瀬尾芙美子『資本主義発展の研究一長期波動と循 環の計測的接近一.n (日本評論社,
1 9 6 4
年)の第5
章を参照されたい。また,最近のアメリカ合州国での資本の有機的構成については,生産的労働と不生産 的労働の区別を重視する視点からの研究として以下のものがある。すなわち,
Fred Mose1ey , The F a l l i n g R a t e o f P r o f i t i n t h e P o s t w a r U n i t e d S t a t e s Economy , London:Mac‑
m i 1 1 an
,1 9 9
1,および,Anwar M. S h a i k h and E . Ahmet Tonak
,Measuring t h e W e a l t h o f N a t i o n s : ・ TheP o l i t i c a l Economy o f N a t i o n a l A c c o u n t s , New York: Cambridge U. P . ,
1 9 9 4
,p p . 120~ 1 2 9
,である。6 )固定資本と流動資本を区別した再生産表式として示すと次のようになる。
(W
α=f+Z+ V+MK+MF+MZ+MV+aZ+a V
Xr,
lWs=f+Z+V+MK+MF+MZ
十MV+aZ+aV X
rr=f+Z+ V+MK+MF+MZ+MV+aZ+a V
ここで ,
W
ーは生産手段生産部門でありF
の形成と対応する。 Ws
は原材料生産部門で ありZ
の生産と対応する。(Z+MZ+aZ)F=
げ+MF)z (V+MK+MV+
ムV)F= ( j +MF)rr (V+MK+MV+a V ) z =(Z+MZ+aZ ) u
aZ
およびaV
は更新余剰 (D‑R) としての固定資本の形成に対応する追加流動資本 および追加可変資本である。ここではfはD
に対応しており ,f
の中に更新余剰 (D‑R)
は含まれている。なお ,MF
,MZ
,MV ;
は蓄積率の決定により定まる本来の蓄 積分である。また,以上の表現は,大島雄一「固定資本の再生産と「均衡発展経路」一一競争概念 としての組蓄積率の定立一
J
(平瀬巳之吉編『経済学・歴史と現代』時潮社,1 9 7 4
年, 所収)を参考にしている。7)この表記法については,ヨゼフ・シュタインドルの著書を参考にしている(J
o s e f
S t e i n d l
,M a t u r i t y a n d S t a g n a t i o n i n A m e r i c a n C a p i t a l i s m
,New York:Monthly Review P r e s s
,1 9 7 6
,p p . 169~18 1,宮崎義一他訳『アメリカ資本主義の成熟と停滞一一寡占と成
長の理論一』日本評論新社,1 9 6 2
年,232~240ページ)。なお,高須賀義博『再生産表
式分析』新評論,1 9 6 8
年,第3
編,も参照されたい。8
)置塩信雄は,豊倉三子雄の著書『景気循環の理論.n (ミネルウ'ァ書房,1 9 8 5
年)の書評 の中で更新余剰(D‑
R)による追加蓄積を斥けている( W
国民経済雑誌.n (神戸大J 1 5 3
巻5
号,1 9 8 6
年5
月)。すなわち,固定資本K
の増加率が利潤率r
にひとしいと仮定し,次に減価償却率を
1 η /
とせずに ,n
期後に利潤率 rで複利計算した総額がl
にひとしく なるような一定額d
を毎期の償却額とすれば,補填額K
t‑nはK
t‑nからKt
までのK
の 減価償却額にひとしくなるのであり,このときD>R
の問題は消失するとしている(前 掲「書評J
,1 0 8
ページ)。まず,置塩の想定する償却額の複利計算を考えるときでも,それは利潤率ではなく,
利子率の複利計算を考えるべきであろう。この場合には,利潤率と利子率との差額の複 利計算分は不足する。それは ,(D‑R)よりも小さいにしてもこの差額分は更新余剰とし て現われることになる。
次に,更新される
K
付の側から考えると,現実に更新期を迎えているn
期前の固定資 本はそれ以降今期まで生産過程で名目上はKt‑nの大きさのままで機能して更新期を迎え ているのであり,ここでは技術進歩や価値低下を捨象すれば,Kt
寸Zの額の固定資本が更 新される必要がある。実物資本としては K
t ‑
nの大きさは利潤率でも利子率でも増大してはいないのであり,Kt
‑‑nの大きさのままで更新期を迎える。すなわち,利潤率や利子率での増加ぬきに,(D
‑R)
の問題は考察されるべきであり,それらによる償却基金の増加をここにもちこ むことは,貨幣資本と実物資本とを同時に混在させてしまい,分析を不分明なものとす る。2
償却年数が短縮化する場合の固定資本と更新余剰前節では固定資本の減価償却年数
η
を一定としていた。ここでは,この 償却年数n
がm
へと短縮化する場合を考えるη ( >m)
。なお,固定資本の 増加率f
は一定として出発する。また,ここでの固定資本あるいは生産手段には情報機器やソフト・ウェアも含まれるものとする
i
それは1 9 7 0
年代以 降の資本制経済の変化をとらえるためであり,そのような固定資本概念の拡 張は償却年数の短縮化の想定ともみあうといえる。まず ,
n
が短縮化するとき ,j=F/n
は増大することになる。すなわち,F+Z/V
あるいはF/Z
が一定であっても ,n
がしだいに短縮化していくに つれてf
は増大していく。このことは,年々の流れあるいはフローでみた 資本の有機的構成( j +Z/ , v
そしてj / Z )
は上昇することを意味している。この上昇に応じて,第
I
部門の生産手段生産部門も他の部門に比べてその比 率を上昇させている。すなわち,そのときη
が m へと短縮化したとき ,F
が同一量であってもj ( n )=F/n
くj(m)=F/m
となり,この償却期間の短縮 化に応じて,フローとしての資本の有機的構成が上昇している。この
n
の短縮化は更新余剰(D‑R)
による追加蓄積にも影響を与えそれ を縮小させることになる。n年目と m
年目にそれぞれ更新期を迎えるとき の名目固定資本量は次のようにあらわされる (bo
は初年度に生産された生 産手段の価値量)。F( η ) =b 0 {(
1+r) +…+ (
1+ r ) n } F(m) =bo { (
1+r) +…+ (
1+r)m}
F( η ) >F(m)
であり ,D( η ) =F( η ) / n . D(m)=F(m)/m
である。ここでbo =R( η ) =R(m)
である。空位
D 出 2 . ‑ 1 2 ( η )‑D(m 土 佐 組 F
也1 ,
R(
作 Y
R(m)
b0 ‑
b0 ¥ n m )
また,F( η ) n F(m) + F(m) ( 1 +r)n‑m m +
一 =η ( ‑m)
(1+r)n‑m̲n‑ 1 笠 F(m) m F(m) m ‑¥
1. I I Jm
ここで ,
n
からm
への短縮は小さいと考えられるので, (1十r)n‑m>
( η ‑m)/m
が成り立つ(1 > (n‑m)/m> 0)
。すなわち ,D( η )/R(n)>
D(m)/R(m)
となる。このことは更新余剰(D‑R)
がn
の短縮化により縮小すること,そして,追加蓄積(率)も縮小することを意味している。そし て,このことは追加蓄積による固定資本量の増加率が減少することになる。
以上みてきたことから,生産手段の構成内容の変化と対応して
η
の短縮 化は,フローとしての資本の有機的構成を高めるとともに,他方で追加蓄積 を縮小させている。このような償却年数n
の短縮化に伴う年々の流れある いはフローとしての有機的構成の上昇と対応する,情報機器やソフト・ウェ アを含む生産手段生産部門の他の部門に対する比率の高さは,その生産手段 における技術進歩の速さとその広がりによって維持されることになる。ここでは,社会的労働の生産諸力の発展は,前節での名目固定資本量から みた資本の有機的構成の高度化という形をとらずに,技術進歩の速さと結び ついた生産手段の陳腐化の早さとその価値破壊の早さと対応した生産手段生 産部門の発展として現れることになる。また,生産手段生産部門と他の部門 との聞の安定性もこの技術進歩の広がりと速さに依存する度合が大きくなる であろう。そして,このような諸資本の競争を広汎に加速している技術進歩 の内容とその速さは,
1 9 7 0
年代以降の外延的蓄積体制としての資本・賃労働 関係を他方で必然化すると考えられる。9 )関連して,井上哲也「情報化関連産業の成長とその補捉における問題について
J (~金 融研究~
[日本銀行J,1 6
巻4
号,1 9 9 7
年1 2
月),およびf T
コンセプチュアライゼーショ ンが経済に与える影響についての研究会」中間報告J
(同誌)125~129ページ,を参照さ
れたい。1 0 )
森清は1 9 8 6
年に次のように述べている。「巨額投資を強いられる一方でハイテクは,こ とに商品化において「短命」だという特徴を持つ。これはメーカーばかりではなくユー ザーにも影響する。コンビュータをはじめME機器は,償却期間は長くて五年と考えて
おかねばならない。リースがほとんどで,それは五年が多い。したがって三年目ごろか ら買い換えを検討し,五年を待たずに機能アップした機器に取り替えるというパターン が多い。メーカーもユーザーも機器を「早期消費」する勢いで導入し,使わなければな らないのである。メカトロ町工場を取材していてはっきり判るのは,メカトロ化を徹底 する覚悟と技術をもって走っている企業だけが成功を予約されているということだ。‑一…つまり,ハイテクそのものが自転車操業を強いる性格を持っているとしかいいようが ない
J
(1第1 0
章 コンビュータ・システムと人間ーその現状と近未来一J
[星野芳郎 編『検証・コンビュートピアの現場』日本評論社,1 9 8 6
年],3 0 0
ページ)。このことは,現在でもあてはまり,また町工場だけでなく,先進国の経済の多くの分野にあてはまる といえよう。
む す び
1 9 7 0
年代以降の資本制経済における固定資本を前節のように理解すると き,情報機器やソフト・ウェアを含む生産手段における技術進歩の激しさは,さまざまの企業あるいはある製品の市場での優位をたえず転変させ,またそ の可能性をうみ出していく。このような急速な技術進歩は,市場の転変をた えず促しまた惹き起こしていくことで,機構は違うものの1