経営と経済第77巻第3号1997年12月
長崎県における施設園芸農業の展開と 農業廃ビニールの再生処理問題
諸泉俊介
Abstract
Recently,industorial horticultural facilities are expanding. A pile of agricultural waste-vinyle-film discharging from these facilities conse- quently becomes a social problem. When it is disirable that the waste- vinyle-film should be disposed recyclically, such recyclical disposal would pursuit in collaboration with various classes in a regional society. In this article, I investigate the present circumstances and issues about the recyclical disposal of waste-vinyle-film in Nagasaki prefecture.
1.施設園芸農業の拡大と農業廃棄物問題
近年わが国の食生活は極めて豊かになった。ことに野菜や果物については,
世界中から集められた食材が,日々われわれの食卓を飾ってくれている。し かし同時に,従来よりわれわれに馴染みの深い野菜や果物も,豊富に,しか も季節を問わず,店頭に溢れるようになってもいる。昔ならば初夏の味覚で あった「いちご」がクリスマスケーキを飾り,秋の運動会の楽しみであった
「温州みかん」が初夏には早くも黄色い姿を現わす時代である。
こうした青果物の周年化を支えているのは,一つには多様で高品質の食材 を求める消費者の嗜好であろうが,他方では,差別化され高付加価値をもつ 商品を市場へ送り出さんとする農業生産者の意向とそれを可能とする農業生
125
産技術の進展である。農業生産技術の面では,分けても,ガラス室やビニー ルハウスを利用した施設園芸の進展が大きな役割を果たしてきた。近年こう した施設栽培によって収穫される野菜の割合は大きく高まっており,例えば
「し、ちご」ではその 9割が,
Iトマト」や「ピーマン j ,
Iきゅうり」ではそ の
6割が施設園芸によって生産されている。施設園芸による青果物の周年化 については,季節感がなくなったことを嘆く声や,資源の有効利用・環境へ の配慮という観点から批判の声も聞かれるが,豊かな食生活の享受という点 から歓迎する声も強く,その勢いはいま暫くは弱まりそうもない。
さて,わが国において施設園芸が急速な発展を見せたのは昭和
40年代以降 のことであるが,そこでは農業用プラスチックフィルムの開発が大きな役割 を果たしてきた。この農業用プラスチックフィルムの利用は,苗床にかけて 育首を保護・促進する「マルチ j ,人が内部に入って作業ができる温室施設 である「ハウス j ,人が入れない小型のハウスである「トンネル」など多様 であるが,最近では主に天井部分だけにプラスチックフィルムを張り,路地 栽培の品質向上を目指した「雨よけ施設」も急速に普及してきた。こうした 施設はガラス室に比べて投資金額が少なくてすみ,また作付け・転作に自由 度が高いこともあって,小規模農地でも高所得経営を可能とする手段として,
わが国園芸農家に急速に受け入れられてきたのである。
しかし,このようなプラスチックフィルムを利用した園芸農業の発展の陰
で浮上してきたのが,使用された後の廃プラスチックフィルムの処理問題で
ある。現在園芸農業において使用されているプラスチックフィルムは,主に
塩化ビニールとポリエチレンである。なかでも,光透過性に優れ被覆材とし
てのバランスがよい塩化ビニールは,ほとんどのハウスにおいて用いられて
おり,生産量も多い;こうしたプラスチ、ソクフィルムは通常 2 ' " " ' ‑ ' 3 年の使用
の後には新しいものと交換されるが,しかし重要なのは,こうして出てくる
廃プラスチックが,簡単には処理できない産業廃棄物である点である i ポリ
エチレンは焼却しでも有害物質は発生しないが,しかレ焼却時にはひどい悪
長崎県における施設園芸農業の展開と農業廃ビニールの再生処理問題
127臭とばい煙を発し,また焼却灰が放置されることがあるため,野焼きは禁止 されている。しかしさらに処理の難しいのが塩化ビニールであり,これは焼 却時に有毒の塩素ガスを発生させるだけでなく,猛毒のダイオキシンが発生 する危険性も指摘されているのである。
かくして農業廃プラスチックは何らかの適正処理を要する産業廃棄物であ るが,わが国ではこうした農業廃プラスチックの処理量は年間
18万トン(平 成
3年)に上ると推計されている。現在この廃プラスチックは,再生処理,
埋立処理および焼却処理の三つの方法で処理されているが,平成
3年でみれ ば,再生処理されたものが
42,
161トン
(23.1%),埋立処理が
4, 1
656トン
(22.8%),焼却処理されたものが
74,
784トン
(41 .
4%)となっている。また処理 の困難な塩化ビニールについてみれば,その約
40%は再生処理されているも のの,埋立処理および、焼却処理もそれぞれ
25%を占めているのである i
近年,産業廃棄物埋立地の建設を巡って住民と業者とのトラブルが頻発し ている。地域環境保全や住民生活の安全を考えれば,産業廃棄物の埋立処理 は今後ますます困難になってこよう。経済活動全体からすれば廃棄物が貴重 な資源でもあるということを考えれば,産業廃棄物を何らかの形でリサイク ルする方向が模索されなければならない。農業廃プラスチックは,再生処理 あるいは焼却処理されることが望ましいのである。廃ポリエチレンについて は,燃焼時に高温を発するために,セメント工場などの燃料としてサーマル
・リサイクルすることも可能であるが,問題は焼却処理の難しい塩化ビニー ルであり,これは今後とも再生処理の方向を模索せざるを得ないのである i
かくして,わが国農業において施設園芸が重要な事業分野として成長する
にしたがって,農業廃プラスチックの適正処理は避けては通れない問題とな
りつつある。注目したいのは,処理の主体が各地域に分散する個別農業者で
あり,また適正処理の直接的影響を被るのが地域の住民であるため,廃棄物
処理の成否が地域社会全体に大きく影響を及ぼすという点である。果たして
農業廃プラスチックは,それぞれの地域社会において如何に処理されている
のであろうか,またそこには如何なる問題が存在しているのであろうか。こ うした点を,農業廃ビニールを中心に,長崎県を例にとって,考えてみるこ とにしよう。
2 .長崎県における施設園芸農業の展開とビニールハウス
長崎県の県土面積は
4,
089凶であるが,これはわが国国土面積の1.
08%に あたり,全国
47都道府県のなかでは
36番目の広さである。この県士のなかで 耕地が占める面積は
58,
700ヘクタール(以下,
αhと略)であり,これは全国 耕地面積の1.
15%に相当する。平成
6年に長崎県のこの耕地面積から生み出 された農業粗生産額は
1,
532億円に上るが,この額は全国農業粗生産額の
1.34%にあたり,全国順位は
29位と高い。長崎県は,工業県であるとともに,
農業県でもある。
しかし,山々に固まれ平坦地や大きな河川にそれほど恵まれているとはい えない長崎県では,米作よりもむしろ園芸畑作が盛んである。平成
6年度の 長崎県耕地面積
58,
700hoのうち,田は
26,
800hαであり,これは全国における 田面積の
0.97%を占めるに過ぎないが,畑の面積は
3, 1
900hαにおよび,全国 畑面積の1.
38%を占めている i 平成
7年における長
l崎県の農業粗生産額は
1
,
575
億円に伸びたが,そのうち園芸農業の粗生産額は
850億円であり,実に 農業粗生産額の
54%を占めるに至った。しかもこの農業粗生産額に占める園 芸粗生産額の比重は近年急激に上昇してきており,平成元年の
41%から
7年間で
13ポイントも高くなっている。なかでも果樹・野菜の伸びは高く,昭 和
62年から平成
7年の問に,果樹は1.
59倍,野菜は1.
64倍の拡大である。ま た,額は小さいものの,花きの伸びも極めて大きく,花き粗生産額は,昭和
62年の
26億円から平成
7年には
51億円へと
2.23倍の伸びを示しているのである
(表‑ 1)
。しかしここで注目したいのは,盛んな畑作生産に伴って,長崎県でも施設
栽培が極めて盛んになってきていることである。しかもこうした施設園芸は,
長崎県における施設園芸農業の展開と農業廃ビニールの再生処理問題
129表一
1長崎県の園芸粗生産額の推移
(単位:億円,倍) S 62 S 63 H 1 H 2 H 3 H 4 H 5 H 6 H 7 : H 7/ S 62
農業粗生産額い,
407, 1
494, 1
577, 1
674, 1
536, 1
618, 1
432, 1
532, 1
575: 111 .
9園芸粗生産額
I578 616 722 816 772 781 720 797 850: 147.1 構 成 比I41 .
1 41 .
2 45.8 48.7 50.3 48.3 50.3 52.0 54.0:果 樹 I152 182 212 251 259 259 184 241 242: 159.2 野 菜
I
199 226 275 300 273 277 313 308 327: 164.3ばれいしょ
123 100 110 132 141 123 115 119 153 124.4花 き
26 34 39 44 50 49 51 51 58 223.1 茶 19 15 18 18 18 20 19 16 18 94.7葉 た ば こ
59 60 68 70 31 53 38 62 52 88.1資料:長崎県農産園芸課資料より作成
実は長崎県が大きな生産シェアを誇る作物ほど,比重が高くなっている。例 えば,作付面積で
3.3%の全国シェアをもっ「いちご」では,作付面積に対 する施設面積の割合である施設率が,全国においては
82.9%であるのに対し て,長崎県では
14ポイント近くも高い
96.5%に達しており,また作付面積シ ェアで
2.0%である「レタス」においても,全国の施設率が
35.4%であるの に対して,長崎県では
62.6%と極めて高くなっている(表ー
2)0Iすいか」
の栽培では,長崎県の施設率は全国のそれに及ばないという例外もあるが,
表
‑2主要青果物の施設栽培状況(平成
6年)
(単位:ha
,
%)全 国 長 崎 県
作付面積:施設面積:施設率 作付面積:施設面積;施設率 作付シェア な す
15,
100 18.1 147 14.31 .
0 ト マ ト 13,
800 55.0 158 53.81 .
1きゅうり
18,
000 43.8 167 39.5 0.9かぼちゃ
17,
500 28.6 282 55.01 .
6 ピーマン 4,
370 40.5 35 5.7 0.8い ち ご
8,
610 82.9 285 96.5 3.3す い か
19,
400 72.2 355 35.81 .
8レ タ ス
22,
300 35.4 436 62.6 2.0資料[""第
71次農林水産省統計表 平成
6年
"'7年」より作成
「かぼちゃ」の栽培では,長崎県の施設率は全国水準よりはるかに高いので あり,従って,長崎県が高いシェアをもっ作物については,概して,施設栽 培化が進んでいるように思われる。
野菜における施設栽培の中心はハウス栽培であるが,ハウスを利用した「い ちご」の栽培は,現在長崎県全域に広がっている。さらに県北地域の松浦地 区や平戸地区では,
Iメロン」のハウス栽培も盛んになってきた。こうした
「いちご」や「メロン」といった野菜のハウス栽培だけでなく,さらに近年 では,従来は路地生産が中心であった果樹でも,ハウスの利用が急速に広が っている。例えば,ハウスを利用した「びわ」栽培は,長崎・西彼地域にと どまらず,県北地域の北松地区にまで広がっており,また「温州みかん
Jの ハウス栽培も,長崎・西彼地域から島原地域にまで広がりをみせている。長 崎県のハウス栽培は,野菜分野から果樹分野へと拡大しているのである。
野菜や果樹以上にハウスの利用頻度の高いのが,花き分野である。近年,
花きへの社会的需要が増加するなかで,長崎県でも花き栽培が盛んになって いるが,例えば長崎農協管内では,
Iきく」を中心にハウス(ここはおもに ガラス室であるが)栽培が行われており,また,島原半島の南高農協管内で もハウスを利用した「カーネーション」や「きく J の栽培が盛んに行われて いる。さらに諌早農協管内でも「カーネーション」や「きく」の栽培が盛ん であり,また佐世保農協管内では「カーネーション」や「バラ」の栽培が広 範に行われている。長崎県においてはこの
4地区が花き生産の盛んな地域で あるが,平成
7年における花き施設面積は,長崎農協管内が1
6.0ho,南高農 協管内が1
6.8ho,諌早農協管内が1
3.9hα,佐世保農協管内では11 .
7hoに及ん でいる。
このような状況の下で,長崎県におけるハウスの施設面積は着実な広がり
を見せている。すなわち長崎県におけるハウスの延べ施設面積は,昭和
62年
には8
81hoで、あったものが,平成
7年には
1,
303hoへと,約1.
5倍に拡大した
のである(表‑3) 。この間,野菜分野におけるハウス設置面積は36% と堅
長崎県における施設園芸農業の展開と農業廃ビニールの再生処理問題 131
表
‑3 長崎県のハウス延べ設置面積の推移(除く雨よけ施設)(単位:千
rrl) S 62 H1 H 3 H 5 H 7 H7/ S63果 樹
1,
352 1,
703 2,
210 2,
362 2,
372 175.4野 菜
6,
551 7,
792 8,
720 8,
837 8,
932 136.3花 き
906 ,1309 1,
479 1,
602 1,
722 190.1メ 口
為E
十 8,
809 10,
804 12,
409 12,
801 13,
026 147.9 資料:長崎県農産園芸課資料より作成実な伸び、で、あったが,近年ハウス栽培化が進む果樹分野では
75%という高い 伸びを示し,平成
7年には全体の
18.2%を占めるに至っている。さらに花き 分野では,ハウス設置面積の広がりは昭和
62年の
90.6hαから平成
7年の
172 hα
へと,実に
2倍に近い伸びを見せているのである。
かくして拡大を続ける長崎県施設園芸農業に対して,長崎県では現在,
I園 芸振興プラン
20 0 1 Jというスローガンの下に,園芸農業を振興しつつあ る。この「園芸振興プラン
20 0 1 Jにおける施策のなかには,
Iながさき ブランドづくり」や「省力化の推進」という展開方向とともに,重点施策と して「施設化の推進」が掲げられており,今後,
I品目,作型を的確にとら えた施設化」が,具体的には「作物に応じた簡易型・省力型・耐風型ハウス の導入」が,進められて行く計画になっている。従って,現在急速な拡張を 見せている長崎県のハウス施設面積は,今後もさらに広がって行くことが予 想される。それ故,長崎県においては,ビニールハウスから排出される廃ビ ニールの処理が,現在および今後とも,極めて大きな社会的‑経済的問題に なるものと考えられる。しかし,長崎県において,農業廃ビニール処理への 対応が十分であるかと言えば,実はそうでもない。そこには多くの問題を指 摘することができるように思われる。長崎県における廃ビニールの回収・処 理の実態と問題点とを見てみよう。
3.長崎県における廃ビニールの回収と問題点
平成
7年度における長崎県の農業廃プラスチックの排出量は,約
5,
700ト
ンと推計されている。しかし,このうち回収され適正処理されたものは,全 体の
43%にあたる
2,
459トンに過ぎない。農業廃プラスチック適正処理の比 率は,全国でも
40%前後であると言われており,処理の難しさを示している。
長崎県において回収・適正処理された廃プラスチックの内訳を見ると,処 理の難しい廃ビニールが,全体の
61%であるし
496トンを占めている。これ らの廃ビニールは再生処理か埋立処理が行われているが, しかし処理の佐方 は県下の各地域によって異なっている。すなわち,県下でも施設園芸が盛ん な長崎・西彼地域や島原地域では,すべての廃ビニールが再生処理されてい るのに対して,県央地域や県北地域では殆どが埋立処理されているのである
(表‑
4)。何故,地域毎にこのような格差が生じるのであろうか。
表
‑4長崎県における農業廃プラスチック回収実績(平成
7年度) (単位:
kg, %)回 収
主主ヨ邑ー処 理
方 法廃ビニール 廃ポリ 計 再生処理:
率埋立処理:
率長崎・西彼地域
106,
357 75,
060 18, 1
417 106,
357 : 58.6 75,
060 41 .
4島 原 地 域 , 1
038,
770 802,
290, 1
84, 1
060, 1
038,
770 : 56.4 802,
290 43.6県 央 地 域
95,
172 38,
209 133,
381 6,
016 4.5 127,
365 95.5県 北 地 域
255,
820 47,
665 303,
485 0: 0.0 303,
485 : 100.。
県 計 , 1
496,
119 963,
224 2,
459,
343, 1
15, 1
143 : 46.8, 1
308,
200: 53.2資料:長崎県園芸用等廃プラスチック適正処理推進対策協議会資料より作成
そこでまず,回収組織について見てみよう。長崎県における廃プラスチッ ク適正処理への取り組みは,昭和
54年以来の古い歴史をもっている。現在,
長崎県における廃ビニールの回収は,県下を
20に区切った各地区の「廃プラ
スチック適正処理推進協議会
J(以下,地区協議会)を実行主体として行わ
れている。このような各地区協議会が集まって,全県レベルでは「長崎県園
芸用等廃プラスチック適正処理推進協議会」が設けられているが,これはも
っぱら各地区協議会のとりまとめを行う組織である。このような二重の適正
処理体制は,他県でも大体同様である。こうした二重の適正処理組織のなか
で,各地区協議会が自立的な実行組織としての役割を担っていることは,廃
長崎県における施設園芸農業の展開と農業廃ビ ニールの再生処理問題
133ビニール処理の一つの特徴をなしている。
各地域の地区協議会を構成しているのは,農業生産者と地域の農協それに 市町村である。このなかで中心的役割を果たしているのは各地域の農協であ るが,その理由の一つは,農協が農家にプラスチックフィルムを販売してい るためである。地区協議会の多くは,実際には各地域の農協と一体化してお り,こうした各農協が,回収時間の設定や回収場所の提供だけでなく,処理 業者との処理委託契約および処理状況の管理という,いわば処理全体のコー デ、ィネイト機能を果たしているのである。
では,このような組織を以て廃ビニールは如何に回収されているのであろ うか。産業廃棄物である廃ビニールの回収と処理は,原則として,排出者で ある個々の農業生産者が行わなければならない。しかし長崎県における廃ビ ニールの一般的な回収方法は,排出者である農業生産者から農協が回収し,
これを農協が処理業者に処理委託するというものである。回収間隔や回収時 期は各地区の作物栽培の状況によってまちまちであるが,農業生産者は,年 に 1 ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ 3 回の指定された回収日に,泥やゴミを落とし一定量にまとめた廃ビ ニールを,各地区の農協が指定したストック・ヤードに運び込んでいる。農
図一 1
長崎県における農業廃ビニールの処理フロー
ピニールフィルム ポリエチレンフィルム
l校光
資料)ヒヤリングをもとに九経制にて作成出所
r長崎県県北地域廃棄物広域処理システム形成モデル調査報告書 J
43頁
業生産者から処理費用を徴収する場合には,ここで計量が行われる。こうし て農協のストック・ヤードに運び込まれた廃ビニールは,各農協の仲介によ って処理業者にわたり,埋立処理されるか,再生処理業者によってリサイク ル製品へと再生処理されることになるのである(図‑1 。 )
廃ビニールの回収および処理については,原則的には排出者である農家が 最終責任を負わなければならない。廃ビニールを含む産業廃棄物の処理では,
排出者が産業廃棄物処理業者に処理委託を行い,処理が確実に行われたかど うかを,マニュフェスト・システムによって確認する必要があるのである。
しかし長崎県では,この排出者の処理を各地区協議会が代行している。すな わち廃ビニールの処理は,各地域の農協を窓口として,地区協議会が処理業 者との間で,処理費用を含めた処理委託契約を結び,実際に処理を委託する
とともに,処理完了の確認も行っているのである。
さて,以上のような廃ビニールの回収において最も大きな問題は,回収に 要する費用を誰が負担するかという点である。回収および処理の費用は,排 出者である農家が負担するのが大原則であると,一般的には考えられよう。
しかし現状では,農家に大きな費用負担を強いれば不法投棄や不法焼却が増 え,環境破壊などのトラブルを引き起こすことも事実である。そこで長崎県 では現在,回収費用を農家・農協・市町村の三者が負担することを原則とし ている。しかしここに問題が生じるのである。
第一に,費用負担に対する市町村の対応が,地域によって異ならざるをえ ないことである。園芸農業を中心産業とする市町村では,行政が費用負担に 積極的に応じている。例えば,園芸農業が盛んな島原地区では,かつて不法 投棄によって河川が汚染され,また海に流れ出した廃ビニールによって漁業 者とのトラブルに
d悩まされたために,現在では農家に費用負担を一切求めず,
農協および行政で処理費用を分担している。このことが,島原地域における
廃ビニールの高い回収率と完全な再生処理に結びついているのである。しか
し,園芸農業のウエイトが高くない市町村では,たとえ廃ビ、ニールの排出が
長崎県における施設園芸農業の展開と農業廃ビニールの再生処理問題
135あっても,費用負担には消極的にならざるをえないのが現状である。
第二に,農協の費用負担に対する不満である。農協が回収システムの中で 中心的役割を果たし,また費用を負担しているのは,農協が農家にプラスチ ックフィルムを販売しているためである。しかし農家へは一般の業者もフィ ルムを販売している。長崎県の場合,農協が販売しているフィルム製品は全 県使用量の30% 強に過ぎないと言われる。販売業者が費用を負担すべきであ るなら,一般の業者も平等に負担すべきであり,さらには製造メーカーにも 負担を求めるべきである,という不満が出てくるのも当然であろう。廃プラ スチックの回収費用を,誰が,如何なる根拠で,どの程度負担するのかとい
うコンセンサスは,まだ出来ていないのである。
さらに第三に,現行の回収システムでは,各地域の地区協議会がそれぞれ 独自に回収を行うとともに,独自に処理業者との費用交渉を行っている。従 って,回収量は各地域でまちまちであり,地域によっては再生処理が可能な 規模に達しない場合も出ている。このことが,処理費用との関係で,地域に よっては再生処理事業を困難にしてもいるのである。次に,廃ビニールの再 生処理に目を転じよう。
4.廃ビニールの再生処理の現状と問題点
現行における廃ビニールの再生処理は,原料となる廃ビニールを洗浄した 上で切断し,熱処理を行って再生ビニール製品の原料に加工するものである。
この再生原料は,グラッシュあるいはペレ、ソトと呼ばれており;こうして生 産された再生原料は,主に関東地方の大手ビニール製品製造業者へ販売され,
床材や電線の被覆材として再利用されている。現在,九州における廃ビニー
ルの再生処理は,宮崎県の黒田工業(延岡市)および宮崎県産業廃棄物再生
事業協同組合(宮崎市)と鹿児島県の東南化工(鹿屋市)の三つの事業体に
よって行われている。このなかで,長崎県の廃ビニールを主に再生処理して
いるのは,民間の再生処理業者である東南化工である;東南化工を例にとっ
て,長崎県廃ビニール再生処理の現状と問題点を見ることにしよう。
東南化工は,長崎県の外にも佐賀県,熊本県および鹿児島県の廃ビニール を処理している。東南化工の資料によれば,同社が平成
7年度に調達した廃 ビニールは約 4 ,
200トンであったが,そのうち最大の1 ,
600トンは熊本県から,
次に多い
1,
100トンが長崎県から調達されている表ー
5)。しかし一見奇妙 にも見えるが,東南化工が立地する鹿児島県内での廃ビニール調達は,平成
7年度で2
50トンと極めて少ない。鹿児島県では,年間約3 ,
000トンの廃ビニー ルが排出されていると言われるが, しかし同県では広大な埋立地を所有して いるために,再生処理される廃ビニールは l割に満たないのが現状なのであ る。そのため東南化工では,原料の調達を,鹿児島県以外の長崎県にまで及 ぶ広い地域に求めざるを得なくなっている。逆に言えば,鹿児島県の状況が こうであればこそ,長崎県の廃ビニールは東南化工に再生処理施設を見出し えたのである。長崎県にとって,再生処理施設が遠く離れているという点が,
第一に指摘されるべき点である。
表
‑5東南化工の廃ビニール調達状況(平成
7年度)
(単位:トン)調 達 先 調 達 量 福 岡 県
37 佐賀 県
400長 崎 県 , 1
100自
民
本県
1,600鹿 児 島 県
250埼
玉県
800言
十
4,187資料:ヒアリングをもとに作成
さて,廃ビニール再生処理に関して第二に指摘すべき点は,その原料調達
の方法である。東南化工では,平成
3年以前においては,年間
13,
000トンの
廃ビニールを処理していた。当時廃ビニールは買い取り処理,すなわち再生
処理業者が原料として農家から購入する方式であり,九州各地から大量の原
長崎県における施設園芸農業の展開と農業廃ビニールの再生処理問題
137料を確保できたからである。しかし平成 3年以降は,この買い取り方式が大 きく転換する。すなわち,東南アジアから安いパージン原料が流入したため にグラッシュ価格が大幅に低落し,廃ビニールを購入してグラッシュを製造 すればコスト割れを起こす状況になったので、ある。しかし,だからといって 廃ビニール処理の必要が減少するわけでもない。そこで,廃ビ、ニール処理は,
それまでの買い取り処理から有償処理,すなわち農家から処理料を受け取る 方式へと転換されたのである。
買い取り方式における廃ビニールは商取引の対象たる有価物であるが,有 償処理における廃ビニールは排出者に所有権を残したままの廃棄物になるの であり,この平成 3年という時点が,廃ビニール処理事業における大きな転 換点となった。現在東南化工の年間処理量は,完全稼働時の処理量から大幅 に落ち込み,現行のグラッシュ価格水準に見合った,年間
4,
000トン程度に なっている。これが,現行の有償処理方式における再生処理施設の最低稼働 規模とみることができる。先に見たように,現在長崎県における廃ビニール の排出量は約
5,
700トンと見積もられている。しかし実際に回収されている 廃ビニールは,その
4割程度の
2,
500トン程度に過ぎなかった。従って,回 収率が半分に満たない現状では,現行の有償処理方式が維持される限り,再 生処理は県外に頼らざるを得ないのである。
さらに,廃ビ、ニール再生処理について第三に指摘しうるのは,再生処理費 用の格差である。東南化工の原料調達方法は,多くが,各県各地域に存在す る中開業者や収集・運搬業者が独自に廃ビ、ニールを回収し,それを同社に持 ち込むシステムである。長崎県から廃ビニールが持ち込まれる場合にも,各 地域の農協が回収した廃ビニールは,県内の収集・運搬業者の手を経て,東 南化工に搬入されている。ただし,地元の鹿児島県の場合には,農家が直接 東南化工に搬入するケースもある。
現在,廃ビニールの再生処理は,処理を依頼する排出者が処理費用を支払
う有償処理方式であるが,この,収集・運搬業者が受け取る費用も含めた最
終処理費用は,東南化工が原料を調達する地域によってかなりの格差が存在 する。すなわち,長崎県の処理費用はキロ当たり
17円程度と高いのであるが,
熊本県の処理費用はキロ当たり
12円である。また鹿児島県の農家が廃ビ、ニー ルを直接東南化工に持ち込む場合には,キロ当たり
5円の処理費用が徴収さ れており,鹿児島県の農家に東南化工が引き取りに出向く場合には,キロ当 たり
8円の処理費用となっている。したがって,廃ビニールの再生処理費用 は,排出地点と東南化工(鹿屋市)との距離によって異なる。すなわち,廃 ビニールの純粋な処理費用はキロ当たり
5円堤度であると推定でき,最終処 理費用との差額は輸送コストであると考えることができるのである。それ故,
長崎県における廃ビニールの再生処理には,純粋な再生処理費用の
2倍強の 輸送コストを要しているのである。
かくして長崎県における廃ビ、ニールの再生処理は,次のように特徴づける ことができるように思われる。
第一に,再生処理を遠い他県に依存していることである。ビニールハウス を利用した施設園芸は,大都市圏を抱える近畿,東海,関東地方では,近郊 農業として大々的に営まれているが,こうした地域では廃ビ、ニールの排出量 も多く,その再生処理事業を県単位で行っているところもあ d i しかしブ L 州 地域では,長崎県も含めて,各県の回収量が処理施設の最低稼働規模に達し ないために,再生処理事業は九州全域に及ぶ極めて広い範囲で行わざるを得 ないのが実状である。この九州全域での処理体系に,長崎県も依存している のである。
第二に,長崎県廃ビニールの再生処理地点が鹿児島県という極めて遠方で あり,このことが処理費用を大きくしていることである。この処理費用の中 で,輸送費用が大きな部分を占めていることは,すでに指摘した通りである。
第三に,再生処理事業が,東南化工のような純然、たる民間企業に委ねられ
ていることである。このことは長崎県の廃ビニール再生処理が極めて不安定
な位置にあることを意味している。例えばグラッシュ価格の低迷によって操
長崎県における施設園芸農業の展開と農業廃ビニールの再生処理問題
139業が悪化すれば東南化工は再生処理から撤退するかも知れず,また鹿児島県 が廃ビニールの再生処理に本格的に乗り出せば,長崎県の排出する廃ビニー ルは溢れ出てしまうからである。
第四に,長崎県の廃ビニール処理事業が,リサイクルの末端である再生ビ ニール製品製造工場から隔絶していることである。このことが,長崎県にと って,廃ビニールはうまく回収しえても,そのリサイクル全体に責任をもつ ごとを難しくしているのである。
5 .むすび:農業廃ビニールリサイクルシステム構築に向けて
現在,廃ビニールの再生処理技術は,ほぼ確定している)。従って,廃ビニー ルの再生処理に関する重要な問題は,
I入口
Jと「出口」の問題,すなわち 廃ビ、ニールの回収と再生された製品の利用市場の問題である。
第一に,入口である廃ビニールの回収については,行政を巻き込んだ, し っかりとした回収機関を設置する必要があるように思われる。例えば廃ビ ニール再生処理の先進県と言われる茨城県では,県が補助金を出し,市町村 が中核となって「市町村協議会」を組織している i 廃ビニールの処理が,行 政の問題として認識されているのである。すなわち,市民と農村とが共有す る農山村の自然環境保護には行政が責任をもつべきであるという認識がある とともに,廃プラスチック再生処理事業では,事業が定着する間,行政の支 援が少なからず必要であるという認識もある。長崎県の廃ビニール再生処理 事業が,事業として完全に定着しているとは言い難い現状においては,自治 体が,市民団体やボランティア組織をも巻き込んで,回収事業を支援すべき であるように思われる。
第二に,出口である再生製品の市場の狭隆さは,さらに大きな問題である。
グラッシュの用途はもっぱら床材の原料であるが,再生製品市場は,再生品
というイメージの悪さと,輸入パージン原料の安さから,極めて限られてい
る。長崎県では再生ビニール製造企業が遠い存在であり,出口の再生製品利
用については他地域まかせの状態にある。しかし,長崎県はわが国の食糧供 給基地であり,農業廃棄物の処理に対する責任は重い。その長崎県が廃ビニー ルのリサイクルシステムを構築せんとすれば,末端における再生ビニール製 品の用途拡大,新しい用途の開拓といった領域で,地域社会全体としての支 援体制が必要となるように思われる。
しかしさらに,廃ビニールの再生処理に関する第三の大きな問題は,処理 費用の負担方法であま;廃ビ、ニールの処理費用は,原則としては排出事業者 である農業生産者が負担すべきものであるが, しかし農業生産者に余りに重 い負担を強いることは,不法投棄,野焼き等の不法処理,野積みなどの問題 を招く。受益者負担の原則に立てば,農業生産者だけではなく,フィルム製 造メーカー,販売業者,再生処理業者などもまた受益者であり,さらに,不 法な廃棄処理が招く自然環境破壊から市民・農村共有の地域社会を保護する という観点からすれば,自治体もまた受益者と見なせないこともない。した がって,少なくとも廃ビニール再生処理が事業として軌道に乗るまでは,こ うした多様な受益者が費用分担についてのコンセンサスをつくり,一致協力 して再生処理システムを財政面から支援して行く必要があろう。
第四に,費用の観点から再生処理事業を如何に効率的に行うかという問題 も重要である。現在,各地域の協議会でバラバラに行われている回収事業を,
一定の排出量を確保できる範囲で一元化することが必要である。また,回収 した廃ビニールを再生処理施設へ搬送する費用を縮減するためには,例えば 隣県の佐賀県や福岡県の一部と共同して,適切な場所に新たな再生処理施設 を建設することも必要であろう。
以上のように,長崎県における廃ビニールの処理については,解決を要す
る問題がまだまだ多い。廃ビニールの再生処理事業は,本来は自立した産業
として運営されるべきであろうが, しかしこうしたいわゆる「静脈産業」に
おいては,経済的問題と環境保全の問題が複雑に絡み合っているが故に,産
業としての自立が難しい。豊かな自然環境を誇り,施設園芸にカを注ぐ長崎
長崎県における施設園芸農業の展開と農業廃ビニールの再生処理問題
141県が,今後とも自然に恵まれた豊かな地域で、あるためには,廃ビニールの再 生処理を始めとする農業廃棄物処理の問題に,地域社会全体の支援を要する
ように思われるのである。
註
1)わが国における農業用プラスチックフィルムの生産状況でいえば,
6割弱が塩化ビ ニール 4割弱がポリエチレン,残りがポリエチレンテレプラレート (PET) およ びフッ素樹脂である。
2
)これに対してトンネル用は塩化ビニールとポリエチレンとが半々であるが,マルチ 用被覆材のほとんどはポリエチレンである。
3
)いわゆる「廃棄物処理法」によれば,
I塩化ビニール,ポリエチレン等すべての合成 高分子化合物」は産業廃棄物に指定されており(同法第
2条),投棄の禁止(同法
16条) が規定されているほか,飛散・流出が禁止(同法1
2条)され厳重な保管・管理が義務 づけられている。また「悪臭防止法」第1
3条では悪臭を発する物の焼却禁止が定めら れており,さらに「大気汚染防止法」第
6条ではばい煙の発生が厳しく規制されてい る 。
4)
I長崎県県北地域廃棄物広域処理システム形成モデル調査報告書
J(九州地域産業活 性化センター,平成
9年
3月)
43頁を参照のこと。
5
)塩化ビニールをすべてポリエチレン等の他の素材に転換できれば廃棄物の処理も容 易になろうが, しかし塩化ビニールはソーダ業界で副生される塩素の利用用途として 重要な分野であり,また施設園芸農家にとっても使いやすい素材であるため,他の素 材への転換は今のところ困難であるように思われる。
6
)しかし,こうして稲作よりもむしろ畑作に比較的大きな比重をもっ長崎県であるが,
地域別にすこし細かく見ると,地域によって大きな特徴をもっていることがわかる。
長崎県において比較的広い耕地面積をもつのは島原半島を中心とする島原地域と,東
彼杵郡以北の県北地域であり,全県耕地面積に占める割合は島原地域が24.3% ,県北
地域が28.2% である。長崎県内ではさらに,長崎・西彼杵地域および県央地域がそれ
ぞれ14% 程度の耕作地面積を占めている。この中で県北地域は,ことに北松浦郡に比
較的広い水田地帯を擁し,もちろん畑作も行われてはいるが,耕作面積の65.4% が田
であり,稲作を中心とした地域である。北松地域は,長崎県田面積全体の37% を占め
ている。これに対して,雲仙岳の火山灰が堆積した広範な中山間地域を抱える島原地
域は田よりも畑が多く,畑が耕地面積の
50.1%と半数を占める畑作地域である。島原 地域の畑面積は,全県畑面積の
36.7%を占めている。県央地域は,水田耕作に比重が あるものの,概して言えば,畑および樹園地の割合が比較的均衡した地域である。ま た,山地が多い長崎・西彼杵地域では耕地面積の
62.7%が樹園地であり,ここは果樹 の生産を中心とする地帯である。長崎・西彼杵地域における果樹園面積は,全県果樹 園面積の
57.2%と,半数以上を占めているのである。かくして,長崎県の農業は,田 の北松地域,畑の島原地域,それに果樹の長崎・西彼杵地域,と特徴づけることがで きる。したがって,長崎県農業全体の強みをなす園芸農業は,地域的な片寄りを伴っ てもいるのである。
7)長崎県の畑作作物も大きな特徴をもっている。例えば野菜では,
r春はくさい」の生 産量が
14,
600トンと大きく全国生産量の
11 .
3%を占め,また「いちご
Jでは
6,
610トン を生産し全国シェアは
4.9%に上っているほか,
rばれいしょ」でも
109,
700トン(全国 生産量の
3.2%)を生産し,ことに「秋植えばれいしょ」では全国一位の生産量を誇っ ている。さらに果樹では「温州みかん」が
89,
800トンを生産して全国生産量の
7.2%を 占めるほか,
rびわ」では全国の
15.5%を生産し,全国一位の地位を占めている。これ らの外にも,
rだいこん
j,
rにんじん
j,
rたまねぎ
j,
rさやえんどう
j,
rさやいんげん
j,
「レタス
j,
rすいか
j,
rかぼちゃ」など,長崎県で生産される野菜の種類は極めて豊 富である。
8)
,
9) rr園芸振興プラン
20 0 1 j地区推進計画
(35農協)とりまとめ結果
j(平成
9年
8月,長崎県農業園芸課)による。
10) r
長崎県園芸振興プラン
2001j(平成
9年
4月,長崎県)。
11)地区協議会は,平成7
年には
18の組織が機能していたが,平成
8年には
2組織が増 えて現在の
20組織となっている。しか1..‑,長崎県の全市町村がこうした地区協議会に 組織されているのではなし未組織の地域も残っている。
12)
これは伝票によって廃棄物の流通を明確にし,確実に処理されたことを,排出者が 確認するシステムである。処理用の伝票は
4部からなり,排出業者,収集・運搬業者,
処分業者がそれぞれ一部ずつを保管し,処理が終了した後,排出者の確認のために最 後の処理完了伝票が排出者に郵送される。
註
13)廃ビニールの再生処理技術は,各社独自のものである。また製造される再生ビニー
ル原料も各社で異なり,東南化工の場合には薄いビニール小片状のグラッシュであり,
長崎県における施設園芸農業の展開と農業廃ビニールの再生処理問題
143これは主に床材として再利用されているが,黒田工業ではベレットと呼ばれる直径
5ミリ程度の粒子状のものも作っており,これは電線被覆などに再利用されている。
14)
かつては,北部九州においても,福岡県飯塚市に廃ビニール再生処理企業があった。
この企業は新鋭設備をもって操業を開始したが,
1 ~ 2年で赤字となり,休業に追い 込まれた。廃ビニール再生処理には大量の水を必要とするが,この企業のネックとな
ったのは水であったと言われている。
15)
東南化工・鹿屋工場は,昭和
54年,鹿児島市の木材商,東南貿易(現株式会社東南) の製造部門として設立され,翌日年からパレット製造および廃ビニール再生処理を手 がけたが,現在ではパレット製造からは撤退し,廃ビニール再生処理を専業としてい る 。
1 6 ) 東南化工は,グラッシュを関東のビニール製造企業に運んだ帰り荷を利用して,埼 玉県からも
800トンの廃ビニールを調達している。
17)
例えば,廃ビニール再生処理の先進県と言われる茨城県では,県単位での再生処理 を行っている。岡県では平成
7年に
15億円を投じて「茨城県園芸リサイクルセンター」
を竣工させるに到っている。茨域県は園芸農業日本ーを目指す園芸県であり,岡県の 平成
7年における園芸粗生産額は,農業粗生産額全体の
45%にあたる約
2,
200億円に上 っている。同センターでは,全県排出量の約
50%にあたる年間
7,
000トンの廃ビニール を回収している。また,山梨県では県が,群馬県では県経済連が中心となって,廃プ ラスチック再生処理事業を進めている
18)