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球形共鳴器による水素の音速測定装置の開発

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Academic year: 2021

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(1)

長崎大学工学部研究報告 第 41 巻 第 76 号 平成 23 年1

球形共鳴器による水素の音速測定装置の開発

~測定原理とヘリウムによる半径較正~

山口朝彦*・桃木悟**・ジャンバル オダゲレル*・松崎勇人**

上滝祐介**・今道統也*・金丸邦康*

Development of Measurement Facility for Sound Speed of Hydrogen with

a Spherical Acoustic Resonator

~ Theory of Measurement and Calibration for Radius of Spherical Cavity ~

by

Tomohniko YAMAGUCHI

*

, Satoru MOMOKI

**

, Odgerel JAMBAL

*

, Hayato MATSUZAKI

**

, Yusuke UETAKI

**

, Toya IMAMICHI

*

and Kuniyasu KANEMARU

*

Thermophysical properties of hydrogen are needed to design equipments associated with hydrogen. The speed of sound is one of thermophysical properties itself and includes the important information of thermophysical properties, such as specific heat at ideal gas. In this paper, the measurement facility for sound speed of hydrogen with spherical acoustic resonator which we made and the theory of acoustic measurement are explained. We have calibrated the radius of the spherical cavity in this apparatus with high purity helium as reference gas at 100~1000 kPa and 40~100°C, and obtained the average radius of 25.016  0.014mm (0.055%).

Key words: sound speed, hydrogen, helium, spherical resonator

1. 緒言

化石燃料の枯渇や大気汚染,さらには地球温暖化の 主要因として考えられている二酸化炭素の排出など,

燃焼によるエネルギー利用は,そのエネルギー効率の 低さも相俟って,需要,供給の各方面で見直しが進め られている。化石燃料の直接燃焼に代わる新しいエネ ルギー利用法の一つとして,水素燃料電池がある。水 素をエネルギーキャリアとして,燃料電池の電気化学 反応によるエネルギー変換を利用すれば,オンサイト NOx,SOxなどの有害物質や二酸化炭素の排出がな く,熱効率もカルノーサイクルの制約に縛られない。

水素を利用するに当たっては,水素の熱物性を知る

ことが必要であるが,現状では高温,高圧域における 実測データがなく,実測データのある領域でも不確か さが明示されていないデータが多く見られる。そのた め,現在,NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発 機構)プロジェクトとして水素先端科学基礎研究事業 が産業技術総合研究所と九州大学により進められ,熱 物性チームが高温,高圧域の熱物性データを測定し,

新しい状態方程式を開発している1-2)。本研究では,こ のプロジェクトで開発している水素の状態方程式の 精度を確認し,向上させるために,球形共鳴器による 水素の音速測定装置を製作し,音波が水素中を伝播す る速度である音速を測定する。

平成22年12月26日受理

* 機械システム工学科 (Department of Mechanical Systems Engineering)

** 大学院生産科学研究科機械システム工学専攻

(Graduate School of Science and Technology, Mechanical Systems Engineering)

28

(2)

音速は,理論的にはエントロピー一定のもとで圧力 を密度により微分することで得られ,状態方程式の フィッティングや,P--T 型の状態方程式の微分精度 の確認に利用することができる。また,低圧極限の音 速データからは理想気体状態の比熱が求められるた め,高精度の音速データは状態方程式の基礎的な精度 を向上させることができる。本研究では,音速データ による状態方程式の気相域のフィッティングおよび 理想気体状態の比熱導出を目的とし,気体状態の水素 の音速を高精度で測定する。測定範囲は,一般実験室 で水素を用いた測定が可能な圧力1MPa未満,恒温槽 での温度設定が可能な室温付近から音響センサーの 作動温度範囲である 150℃以下とするが,パラ水素発 生装置の 33K 以下の低温状態や高温ガス炉による約 450℃ ま で の 測 定 実 験 , お よ び 高 圧 施 設 に お け る

70MPaの測定実験への拡張を考慮する。測定精度に関

しては,入手可能な測定機器などの性能を踏まえて,

拡張不確かさ 0.1%での測定が可能な装置の製作を目 標としている。

気体中の音速測定方法には,一定区間を伝播するパ ルスの伝達時間を測定する方法や,空洞内の共鳴周波 数 を 測 定 す る 方 法 な ど が あ る が , 本 研 究 で は ,

Moldover らが一般気体定数やボルツマン定数の高精

度測定で成果を上げ3-4)Hozumiらによる冷媒の音速 測定にも用いられている 5)球形共鳴器を用いた方法を 採用した。これは,半径が既知の球形空洞内部を測定 対象である気体試料で満たし,共鳴が起こる周波数を 測定することで音速を求める方法である。装置の主要 部分は球形空洞を有した容器と音波発振器および受 信マイクロホンのみで,構造が単純であり,音波発振 器とマイクロホンを外部に設置することで高温高圧 の測定にも拡張できる可能性がある。Moldoverらは球 形共鳴器を用いて1.7ppmの精度で一般気体定数R 測定しており 3),本実験においても共鳴周波数の測定 精度は十分に高く,球形空洞の半径,温度および圧力 の測定精度が拡張不確かさの大部分を占めると予想 される。

本報告では,球形共鳴器による水素の音速測定に関 する研究の第一報として,球形共鳴器による音速の測 定原理と,製作した音速測定装置の概要を説明する。

また,球形共鳴器の半径較正のために行なった,ヘリ ウムガスによる測定実験の結果を報告する。

2. 球形共鳴器による音速の測定原理

流体の粒子速度に関する速度ポテンシャルを,音 速をcとすると,動径r,方位角,仰角の極座標系

における音波の波動方程式は次式のようになる。

1 0 sin

1 sin sin

1 1

2 2 2 2 2 2 2

2 2

2

 

 

 



 

 



 

t c r

r r r r r

 

 

(1)

球形空洞内における共鳴には複数のモードがあるが,

その中でもラジアルモードと呼ばれる中心から放射 状に現れる球面波の共鳴モードを測定対象とすると,

方位角および仰角方向の微分項は消去できる。オイ ラー方程式および減衰のない理想状態を仮定した圧 力と密度の等エントロピー変化の式を用い,剛体の球 形空洞内面 (ra) で粒子速度が 0 であることを境界 条件として式(1)を解くと次式が得られる。

a z fln c ln

2 (2)

ここでfは共鳴周波数であり,zlnl次の球ベッセル 関数の極値を与えるn番目(n0, 1, 2…)の解である。n は動径方向のモード,lは仰角方向のモードを表わし,

一組のlnに対して方位角方向のモードm2l+1個存 在する。ここではラジアルモードを用いるためl=0 し,方位角方向のモードはm=01個のみである。上 述のようにzlnは球ベッセル関数から与えられるため,

球形空洞の半径aが既知であれば,測定周波数から音 速を求めることができる。

以上は,壁面の境界層などを考慮しない理想化され た状態での共鳴周波数と音速の関係を示したが,球形 空洞内壁近傍の温度境界層,粘性境界層,共鳴器形状 などによる補正を加えることで,音速の測定精度を向 上させることができることが Moldover らにより報告 されている6)

3. 測定装置

1は球形共鳴器の下半分の写真である。純銅製で,

半球状の窪みを持ち,上半分と組み合わせることで球 形空洞となる。組み合わせたときに,半球のエッジ部 が上下で一致するように合わせ面にはめ合い部を設 け,球形空洞内面の粗さはRa0.8以下に加工している。

Fig. 1 Picture of a lower side of hemispherical cavity 29

山口朝彦・桃木悟・ジャンバル オダゲレル・松崎勇人・上滝祐介・今道統也・金丸邦康

(3)

ある一定の音速に対しては,球形空洞の径が大きい方 が低い周波数で共鳴するため,マイクロホンによる周 波数測定にとっては径が大きい方が有利である。本研 究では,試料に水素を用い,将来的には1MPa以上の 高圧での測定へ拡張することを考慮し,耐圧性能と安 全性の面から容積を小さくするために,球形空洞の半 径は他の文献よりも小さめの25mmとした。これに合 わせて,音波の発振子および受信センサーには,必要 な性能を持つものの中で最小の1/4インチ径のものを 使用した。また,共鳴器の材料には温度の均一化を図 り,熱伝導率の大きい純銅を選択した。水素は金属の 脆化を引き起こすことが知られており,材料の選択に は注意が必要であるが,水素雰囲気中の純銅に関する 水素脆化の情報は入手できなかった。

2に測定装置の概略図を示す。球形共鳴器(1)は,

圧力容器上部のフランジから金属リングと水素導入 管により吊り下げられ,上部には 90 度の角度で音波 の発振子(2)とマイクロホン(3)が球形空洞内面との間 に段差のないよう設置してある。発振,受信の両方に,

100kHz までほぼフラットな特性を持つ Brüel & Kjær 社の1/4インチ自由音響場マイクロホン4939を使用し ている。水素の音速は常温常圧で約1500m/sであるこ とがわかっており,内半径25mmの球を用いて複数の モードで測定するには高い周波数まで測定が可能な センサーを使用する必要がある。発振子として使用す 4939 には,任意波形発生器 Agilent Technology 33210A (8)の出力を直接接続し,10Vp-pの正弦波電圧

をかけることで音波を発生させる。マイクロホン(3) にはプリアンプBrüel & Kjær2669 (4)が接続されて おり,受け取った圧力変化をコンディショニングアン Brüel & Kjær2690 (9)で増幅してロックインアン SIGNAL RECOVERY7265 (10)により特定の周波 数を検知する。

球形共鳴器(1)は圧力容器(5)に入れられ,圧力容器は シリコン油で満たされた恒温槽(6)に浸漬されている。

球形共鳴器内部と圧力容器内部は共鳴器左下の通気 口で継がれており,球形共鳴器を含む圧力容器内全体 を試料ガスで充填して実験を行なう。センサーとして 使用するコンデンサー式マイクロホンの性能を維持 するためにも,共鳴器の内外で圧力差がつかないよう 注意を払った。試料ガスは,油ロータリー式の真空ポ ンプ(16)と恒温槽(6)を用いて系全体を数回ベイキング した後に,水素ライン(14)またはヘリウムライン(15) から球形共鳴器内に直接導入される。球形共鳴器を満 たした試料ガスは通気口を通じて圧力容器内にも供 給される。

圧 力 計 に は ,Paroscientifc Digiquartz® Pressure Transducer を用いたSeries 1000 Transmitters (12)を使 用し,フルスケール(200psi=1.38MPa)0.01%の不確か さで圧力を測定することが可能である。圧力容器と外 形 1/8 インチのステンレスチューブで接続され,定常 状態において球形共鳴器内との圧力差はないものと する。温度は,球形共鳴器本体に直接差し込まれた Pt100 4 線式シース白金抵抗温度計(PRT) (7)を,

Agilent Technology 社デジタルマルチメータ 34420A (11)に接続して抵抗測定を行うことで求める。共鳴器 PRT は高熱伝導性の不揮発性接着剤を介して密着 させている。使用したPRTは,20℃から200℃まで20 ごとに10点の較正を行なっており,測定抵抗値をRt,

0℃における抵抗値をR0,温度をtとして次の二次式

1 At Bt2

R

Rto   (3)

で近似したときの標準偏差は0.0070Kである。

任意波形発生器(8),ロックインアンプ(10),デジタ ルマルチメータ(11)および圧力トランスミッタはパー ソナルコンピュータ(13)に接続されており,発振周波 数を変えながら自動的に計測を行なうことができる。

測定試料に水素を用いるため,球形共鳴器を除いた 装置の配管,バルブ類および圧力容器などの材料には,

すべて SUS316L を使用している。真空ポンプは防爆

仕様とし,水素を真空引きするときは,空気と混合し ても爆発限界の外になるようポンプの前で窒素を加 え,屋外に直接排気するよう専用配管に接続している。

1

2 3

5 6 7

12 8

9 10 13 11

16

14 15

4

Fig. 1 Schematic of the measurement apparatus 1. Spherical resonator, 2. Sonic oscillator, 3. Microphone, 4. Preamp., 5. Pressure vessel, 6. Thermostatic bath, 7. PRT, 8. Function generator, 9. Conditioning amp, 10. Lock-in amp, 11. Digital multi-meter,

12. Pressure sensor, 13. Personal computer, 14. H2 pipe line, 15. He pipe line, 16. Vacuum pump

30 球型共鳴器による水素の音速測定装置の開発

(4)

また,安全のため,装置上部を高精度の水素センサー で常時監視している。

4. 測定方法および測定手順 4.1 測定方法

本研究では,球形共鳴器内に音波を発生させ,共鳴 する周波数を測定して音速を求める。共鳴器の球形空 洞内面には,壁に段差なく取り付けられた径1/4イン チのマイクロホン 2個の丸型平面,径1mmの試料ガ スの導入口と圧力容器との通気口それぞれ1箇所,半 球同士の接続部があり,それ以外は粗さRa0.8以下の 滑らかな球面となっている。任意波形発生器で10Vp-p の正弦波を発生し,発振用のマイクロホンに送信して 球形空洞内に音波を発生させる。受信用マイクロホン の出力はアンプで増幅され,送信周波数と同じ周波数 の音波の受信強度をロックインアンプで測定する。送 信周波数を0から100kHzまで5Hz刻みで変化させて,

その受信強度から共鳴周波数を探す。

共鳴は,本報告で使用している動径方向のモード( ジアルモードと呼ぶ)のみではなく,仰角および方位角 方向のモードが多数存在する他,周波数の高い領域で は球形空洞内面の通気口やマイクロホンなどが原因 となり,予期しない共鳴が多数派生する。球形空洞の 半径,球ベッセル関数の解および予測される音速から おおよその共鳴周波数を予測して,測定結果を見なが ら実際の共鳴周波数を特定する。共鳴周波数の測定例 として,図3に,圧力500.08kPa,温度69.92℃におけ るヘリウムの測定結果を示す。図中でピークがある部 分が共鳴周波数であるが,本報告で使用する動径方向 (0, 1)(0, 2)(0, 3)(0, 4)モードの他に多くの共鳴 周波数が存在することがわかる。共鳴周波数の特定は,

圧力が低くなるほど共鳴の強度が小さくなり,周波数 が高くなるほど他の共鳴モードとの区別がつかなく なり,困難になる。ヘリウムガスでは,0~100kHz 間にラジアルモードの共鳴が4つ現われているが,音 速 が ヘ リ ウ ム よ り も 速 い 水 素 で は ,(0, 4)モ ー ド が

100kHzを超えてしまい,同じ条件で3つの共鳴周波数

しか得ることができない。

4.2 測定手順

本測定装置を 用いた音速の 測定手順を以 下に簡 単 に説明する。

1.測定装置内の気体を,測定試料ガスで置換する。

2. 恒温槽の温度を 100℃に設定し,真空ポンプに よって系全体を数Paまで真空引きする。

3. 気体の純度を確保するため,1.と 2.を数回繰り 返す。

4. 恒温槽の温度を,測定温度に設定し,共鳴器の 温度が定常になるまで待つ。

5. 試料ガスを所定の圧力になるまで容器内に充填 し,圧力および温度が安定するのを待つ。

6. 共鳴周波数測定用プログラムを起動し,周波数 を走査して測定実験を行なう。

7. 圧力を次の測定圧力に調整して,圧力と温度が 安定するのを待つ。

8. 6.と 7.を繰り返して,ある温度における圧力と 共鳴周波数の関係を調べる。

9. 恒温槽の温度を変えて,5.から 8.を繰り返す。

1.から 3.では,試料ガスの充填と高温での真空引きを 繰り返すことで,装置内部に吸着した不純物を脱着さ せ,測定実験に備えている。ターボ分子ポンプを使用 して,より低圧まで真空引きする方法もあるが,今回 目標としている不確かさのレベルではロータリーポ ンプによるベイキングの繰り返しで十分であると判 断した。一連の実験で,球形共鳴器の温度が微妙に変 動し,それに伴い内部の圧力も変化するが,それは測 定の標準偏差に含まれて表示される。

5. 測定条件

今回は,音速が既知の試料を用いた,球形共鳴器の 半径較正が目的である。恒温槽の設定温度は40℃から 100℃まで10℃刻み,圧力は1000kPa, 500kPa, 100kPa 3点で測定を行なった。リファレンスガスとしては,

純度が99.99999%のヘリウムガスを用いた。ヘリウム

ガスの音速の計算には,文献7)および8)の式を組み込 んだPROPATH9)を使用し,式(2)から球形共鳴器の半径 を逆算した。

6. 測定結果および考察

1に,ヘリウムをリファレンスガスとして共鳴周 波数を測定し,その結果を用いて式(2)によって計算し た球形空洞の半径の推算値を示す。圧力は,圧力容器

0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5

0 20 40 60 80 100

Amplitude ×103 [Pa]

Frequency [kHz]

He

(500.082±0.004 [kPa], 69.923±0.001 [℃])

Fig. 3 Measurement of resonant frequency of He gas

31

山口朝彦・桃木悟・ジャンバル オダゲレル・松崎勇人・上滝祐介・今道統也・金丸邦康

(5)

の出口側と入口側にそれぞれ設置された微流量調整 弁使って調整したが,温度が安定するまでに時間を要 し,微流量調整バルブで細かい調整が難しいために表 のような圧力値となっている。温度は恒温槽の設定温 度で調整するが,室内環境により若干変動する。全範 囲における半径の平均値および標準偏差は

] mm [ 014 . 0 016 . 25 

a (4)

となり,標準偏差は半径の0.055%である。この標準偏 差の値は目標として設定している測定の不確かさに とって無視できない大きさであり,球形空洞の半径は 温度および圧力の関数として定義しなければならな いことがわかる。図4に,圧力をパラメータにとった ときの,温度と半径の関係を示す。半径の温度依存性 については,銅の線膨張係数から計算した値とオー ダーが一致しており,温度上昇に伴う半径の増大は温 度による膨張の影響であると予測される。ただし,温

度による膨張であれば,右上がりのグラフになるため,

1000kPa,40℃の値と,100kPa,90℃および100℃の値 については,再現性の確認と,音速―半径―共鳴周波 数の関係が式(2)で十分かどうか理論の検証が必要で ある。圧力については,体積圧縮率から計算した半径 の変化は,図の範囲では温度による変化よりも2桁以 上小さく,変形は無視できると判断される。現時点で は,温度と同じレベルの変化が算出されており,式(2) の再検討が必要である。2.の最後にも記述したが,式 (2)は理想状態を仮定した時の式であり,以上の結果か らは,壁近傍の境界層など実在流体としての非理想性 を考慮する必要があることが予測される。

7. 結論

球形共鳴器を用いた水素の音速測定装置を製作し,

リファレンスガスとしてヘリウムを用いた半径較正 実験を行なった。理想気体状態を仮定して温度境界層 および粘性境界層の影響を無視し,共鳴器形状は真球 であり,その形状が圧力と温度の影響を受けないと仮 定した場合,球形空洞の半径として 25.016  0.014mm を得た。この標準偏差は半径の0.055%に当たり,目標 とする測定の不確かさ 0.1%を達成するには不十分な 精度であり,球形空洞の半径は測定時の温度と圧力の 関数として表わさなければならないことが明らかに なった。今後は,実験の精度を確認するとともに,非 理想性を考慮して再計算を試みる予定である。

謝辞: 本研究は独立行政法人 新エネルギー・産業技 術総合開発機構(NEDO)プロジェクトである「水素先端 科学技術基礎研究事業」の一環として行なわれている ものであり,ここに謝意を表す。

Table 1 Calculated Radius at given temperature and pressure Temperature

[]

Pressure [kPa]

Radius [mm]

Temperature []

Pressure [kPa]

Radius [mm]

Temperature []

Pressure [kPa]

Radius [mm]

40.11 1,080 25.003 69.91 965 25.007 99.73 972 25.016

40.29 504 24.999 69.92 500 25.014 99.74 500 25.031

40.21 100 25.018 69.93 100 25.037 99.75 100 25.031

50.00 960 24.997 79.87 964 25.010 Temperature and pressure are averages of one series of measurements.

・Radius is the average of (0, 1), (0, 2) and (0, 3) modes.

49.92 516 25.002 79.85 500 25.012

49.94 100 25.017 79.86 100 25.049

59.97 989 25.003 89.79 980 25.013

59.98 500 25.009 89.80 500 25.015

60.00 100 25.022 89.80 100 25.041

24.98 25.00 25.02 25.04 25.06

30.00 50.00 70.00 90.00 110.00

Radius [mm]

Temperature [℃] P = 1000 kPa P = 500 kPa P = 100 kPa

Fig.4 Temperature and pressure dependence of radius of the spherical cavity

32 球型共鳴器による水素の音速測定装置の開発

(6)

参考文献

1) Peter L. Woodfield, 新里寛英, 河野正道, 高田保之, 藤井丕夫, 高温高圧水素の粘性係数推算式の提案, 熱物性, 24(1), 2010, pp. 21-27.

2) 迫田直也, 進藤健太, 新里寛英, 河野正道, 高田保 之, 藤井丕夫, 高圧水素用バーネット式PVT性質測 定装置の開発, 熱物性, 24(1), 2010, pp. 28-34.

3) M. R. Moldover, J. P. Trusler, T. J. Edwards, J. B. Mehl, R. S. Davis, Measurement of the Universal Gas Constant R Using a Spherical Acoustic Resonator, Journal of Research of the National Bureau of Standards, 93(2), 1988, pp. 85-144.

4) M. R. Moldover, Optimizing acoustic measurements of the Boltzmann constant, C. R. Physique, 10, 2009, pp.

815-827.

5) T. Hozumi, T. Koga, H. Sato, K. Watanabe, Sound-Velocity Measurements for HFC-134a and HFC-152a with a Spherical Resonator, International Journal of Thermophysics, 14(4), 1993, pp. 739-762.

6) Michael R. Moldover, James B. Mehl, Martin Greenspan, Gas-filled spherical resonators: Theory and experiment, Journal of Acoustical Society of America, 79(2), 1986, pp. 253-272.

7) V. D. Arp, J. Low Temp. Phys., vol.79, (1990), p.93 8) R. D. McCarty and V. D. Arp, Adv. Cryogenic Eng., vol.

35, (1990), p.1465.

9) PROPATH Group, Program Package for Thermophysical Properties of Fluids: PROPATH,

http://www.cc.kyushu-u.ac.jp/scp/system/library/

PROPATH/PROPATH.html

33

山口朝彦・桃木悟・ジャンバル オダゲレル・松崎勇人・上滝祐介・今道統也・金丸邦康

Fig. 1 Picture of a lower side of hemispherical cavity  29
Fig. 1 Schematic of the measurement apparatus  1. Spherical resonator, 2. Sonic oscillator, 3
Fig. 3 Measurement of resonant frequency of He gas
Table 1    Calculated Radius at given temperature and pressure  Temperature  [ ℃ ]  Pressure[kPa]  Radius [mm]  Temperature[℃]  Pressure[kPa]  Radius[mm] Temperature [℃]  Pressure [kPa]  Radius[mm] 40.11  1,080 25.003  69.91  965 25.007 99.73  972 25.016 4

参照

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