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77 本サービスに関する知的財産権その他一切の権利は著作権者に帰属します また本サービスに掲載の全部または一部につき無断複製 転載を禁止します 夏期講習高 3 難関私立大現代文第四講テキスト 以降の現代社会は 許容度の非常に高い社会 ある意味で寛容な したがって自由な社会であ

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第四講

  「様々な設問」を解く

5 10 次の文章を読んで、後の問題に答えなさい。 個人の自由を至上の価値として見出したことが、近代社会のひとつのメ ルクマールであろう。ミシェル・フーコーによれば、西洋における自由の 概念には、二つの源泉がある。ひとつは、人権思想に基づく自由、法理念 としての自由である。すべての個人は、本来的に自らの手元にある種の自 由を保持しており、 その一部はゆずり渡すことも可能だと考えられている。 もうひとつは、統治から離れることによって自由が生まれるという発想で ある。こちらの自由は、法権利の行使として概念化されるのではなく、単 純に、統治者からの被統治者の独立として知覚される。前者は、アイザイ ア・ バ ー リ ン が「 積 極 的 自 由 」 と 呼 ん だ 類 型 に 対 応 し て お り、 主 と し て、 啓 けい 蒙 もう 主義の中で主張された。後者は、消極的自由であり、経済学へとつな がっていく自由である。どちらの観点においても、近代の初期は、自由へ の闘い、自由を獲得するための闘いによって特徴づけることができる。 だが、今日、われわれは十分に自由な社会を生きている。二〇世紀末期

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─ 77 ─ Ⓒ RECRUIT 本サービスに関する知的財産権その他一切の権利は著作権者に帰属します。 また本サービスに掲載の全部または一部につき無断複製・転載を禁止します。 15 20 25 30 以降の現代社会は、 許容度の非常に高い社会、 ある意味で寛容な、 したがっ て自由な社会である。このことは、 今日では、 「人権」 (自由の第一の類型) の内実が、まさに禁止の中の禁止(自由の第二の類型にとっての最後の障 害 物 ) と も 見 な す べ き、 モ ー セ の 十 戒 を 蹂 じゅう 躙 りん す る 権 利 に ま で な っ て い る という事実のうちに、顕著に現れている。たとえば、プライヴァシーの権 利は、ある意味で、 姦 かん 淫 いん の権利である。幸福を追求する権利や私的所有権 は、盗みの権利である。報道の自由や表現の自由は、 嘘 うそ をつく権利である と 言 え な く も な い。 そ し て、 信 仰 の 自 由 は、 そ れ こ そ、 端 的 に 1 グ ウ ゾ ウ 崇拝の権利、偽の神を 崇 あが める権利以外のなにものでもない。 現在の人権が十戒を蹂躙する権利になっているという、ウィットのきい た解釈は、スラヴォイ・ジジェクによるもので、もちろん、これはいささ か言い過ぎではあるが、真実の一面をついている。いずれにせよ、人権に は、法や権力がタッチすることができないグレイゾーンがあり、このグレ イ ゾ ー ン を 利 用 す れ ば、 人 は 容 易 に、 「 十 戒 」 等 の 伝 統 的 な     に 違 反 す る こ と が で き る。 X こ れ ほ ど ま で に、 わ れ わ れ の 社 会 は 許 容 的 で ある 。 ということは、われわれは、啓蒙主義の時代に、西洋の人民と知識人が 夢 見 た 自 由 な 社 会 を す で に 獲 得 し て い る、 と い う こ と に な る の だ ろ う か。 ア

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35 40 45 しかし、何かがおかしい。何かがちがう。 *      *      * ミヒャエル・エンデの短編に、 「自由の 牢 ろう 獄 ごく 」と題した短い 寓 ぐう 話 がある。 こ の 寓 話 は、 民 か ら「 イ ン シ ア ッ ラ ー」 と 呼 ば れ て い る 盲 目 の 男 が、 教 カリーファ 主 ( イ ス ラ ム 国 家 の 最 高 権 威 者 ) に 話 し て 聞 か せ た 経 験 談 の 形 を 取 っ ている。 この男によれば、彼は若い頃、はぶりのよい商人だった。そして自らの 成 功 は、 自 身 の 能 力 と 2 ケ ン メ イ さ の せ い だ と 信 じ、 う ぬ ぼ れ て い た。 そ のため彼は 冒 ぼう 瀆 とく 的になり、 神(アッラー)が預言者を通じて     した法をないがしろにするまでになっていた。たとえば彼は、断食の月す らも無視して、飲み食いして過ごした。 その彼の前にあるとき美しい女が現れ、 彼を 3 ユウワク した。この女は、 彼 女 を 求 め る 彼 に こ う 言 う。 「 私 を 好 き な よ う に な さ い ま せ。 で も そ の 前 にお誓いください。あなたさまが今日もこれからも従われるのは、あなた さ ま の 意 志 で あ る こ と を 」 と。 彼 女 の 要 請 に 応 え て、 彼 は 彼 自 身 の 眼 まなこ に かけてこのことを誓った。そして、いよいよ彼はこの不思議な美女を抱こ うとするのだが、その瞬間、彼の身体は宙に浮き、星の世界の闇の中へと 飛び出してしまう。実は、女は、魔王イブリースだったのだ。気がついた イ

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─ 79 ─ Ⓒ RECRUIT 本サービスに関する知的財産権その他一切の権利は著作権者に帰属します。 また本サービスに掲載の全部または一部につき無断複製・転載を禁止します。 ときには彼は、巨大な円形の丸天井に 4 オオ われた建物の真ん中にいた。 この建物の円形の壁には、無数の閉じられた扉がある。彼は、ここから すぐに逃げだそうとしたが、どうしても逃げだすことができない。扉はあ りあまるほどあるのだから、脱出口はある。が彼の逃亡を妨げたのは、ま さにこの脱出口なのだ。扉が多すぎるのである。どの扉から出ていくべき か、彼はその理由を見出すことができない。一見したところ、どの扉も同 じに見える。だが、ある扉の向こうにはライオンが待ち構えているかもし れない。 また別のある扉は財宝への道に通じているかもしれない。 しかし、 これらのことをあらかじめ知ることはできない。結局、彼はどの扉を開け るかを決定することができず、そもそも扉に鍵がかかっているのかどうか すらも確認することができない。 や が て 彼 は あ き ら め、 扉 へ の 関 心 も う す れ て い っ た。 要 す る に、 Y あ れ ほど脱出することを渇望していた彼が、やがて何も欲しなくなった のであ る。 ここで右の寓話から引き出しておきたい教訓は、通常は解放を意味する 「 自 由 」 が、 ま さ に 束 縛 と 感 じ ら れ る こ と も あ る、 と い う こ と で あ る。 完 全 な 解 放 と 完 全 な 束 縛 が 同 じ も の に な っ て し ま う と い う     が 、 この寓話の教訓である。 ウ 50 55 60 65

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*      *      * だが、なぜ自由なのに不自由なのか。なぜ、十分に自由があるとき、不 自 由 を 感 じ て し ま う の か。 Z 自 由 が 不 自 由 へ と 反 転 す る の は、 ど の よ う な 機 制 に よ る の か 。 問 題 提 起 の た め に、 も う 一 度 ジ ジ ェ ク の エ ッ セ イ か ら ジョークを借りてこよう。このジョークは、旧東ドイツで語られていたも のだという。ひとりの労働者が、シベリアで働くことになった。彼は、シ ベ リ ア か ら 出 す 自 分 の 手 紙 が 、当 局 に よ っ て     な さ れ る だ ろ う 、 ということを知っていたので、シベリアへと発つ前に、親友にこう言った と い う。 「 俺 た ち の 間 で、 秘 密 の コ ー ド を 作 っ て お こ う。 手 紙 が、 普 通 の 青いインクで書かれていれば、その内容は真実だが、もし赤いインクで書 か れ て い れ ば、 そ こ に あ る こ と は 虚 偽 だ 」。 そ の 一 カ 月 後 に、 シ ベ リ ア に い る 男 か ら 親 友 に 手 紙 が 来 た。 文 章 は     い イ ン ク で 書 か れ て い た 。 次のように。     ここでは、すべてがすばらしい。店に品物がいっぱいあるし、食料も いっぱいだ。アパートは広くて、暖房も快適。西側からの映画も見ら れる映画館がある。きれいな女の子もたくさんいる。ここで不自由な こと、使えないものはただ一つ、     いインクだけだ。 もちろん、このジョークの趣旨は、シベリアには自由がない、というこ エ A B 70 75 80 85

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─ 81 ─ Ⓒ RECRUIT 本サービスに関する知的財産権その他一切の権利は著作権者に帰属します。 また本サービスに掲載の全部または一部につき無断複製・転載を禁止します。 とにある。ほんとうは、シベリアでは、店に品物がほとんどなく、欲しい ものも買えない。見たい映画を上映している映画館もない。女の子と遊ぶ こともできない。等々。 だが、ここに書かれていることを、虚偽としてではなく、そのまま文字 通りうけとった場合には、このジョークは、むしろ、現在のわれわれの状 況 の 記 述 に な る だ ろ う。 確 か に、 わ れ わ れ は 自 由 だ と 言 わ ざ る を え な い。 商品はたくさんあって、何を買ってもよい。いくらでも映画を見ることも で き る。 恋 愛 や 交 際 も 自 由 だ。 し か し、 た だ 一 つ 欠 け て い る こ と が あ る。 わ れ わ れ の「 不 自 由 」 を 分 節 す る 言 語(     い イ ン ク ) が な い の だ 。 「 自 由 か 不 自 由 か 」 と 問 わ れ れ ば、 十 分 な 自 由 が あ る と 言 う ほ か な く、 わ れ わ れ が い か に 自 由 か を     い イ ン ク で 書 く し か な い 。 し か し 、 に もかかわらず、われわれは、どこか根本的な部分で不自由だ。その不自由 を     す る 方 法 を、 つ ま り「     い イ ン ク 」 を わ れ わ れ は 持っていない。 あるいは、 われわれの状況を、 精神分析をはじめとする何らかの「治療」 を受けにきた精神疾患の患者に 喩 たと えてみることができる。普通の病気の場 合には、症状は問題(の一部)であり、患者は、医者に、それへの解決を 求めている。しかし、 精神疾患や神経症の場合には、 問題と解決の関係が、 C D オ E 90 95 100

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これとは逆になっていることに気づく。これらの場合には、 症状はすでに、 何らかの問題に対する応答(回答)である。患者は、何かの問題に応答し ようとして、症状を形成しているのだ。しかし、それは、何に対する応答 なのか、 何が問題なのか、 それがわからないのだ。普通の病気の場合には、 問 題 が 症 状 と し て 与 え ら れ、 医 者 は、 こ の 問 題 へ の 回 答 を 探 す。 し か し、 精神疾患では、回答はわかっているのだが、それが、どんな問題への回答 かわからないのだ。専門家に委ねられるのは問題を探すことだ。 現在のわれわれの状況は、この精神疾患のケースに喩えられる。どこか 空 虚 な 自 由、 奇 妙 な 5 ヘ イ ソ ク 感 を と も な う 過 剰 な 自 由 は、 何 か へ の 応 答 であり、 「症状」のようなものである。しかし、それは何への応答なのか。 何が問題なのか。それがわからない。   (大澤真幸『自由という牢獄』による) (注)メルクマール=目印、標識を意味するドイツ語。      ミシェル ・ フーコー (一九二六~一九八四) =フランスの哲学者。      ア   イ ザ イ ア・ バ ー リ ン( 一 九 〇 九 ~ 一 九 九 七 ) = イ ギ リ ス の 哲 学者。      モ   ー セ の 十 戒 =『 旧 約 聖 書 』 に お い て モ ー セ が 神 か ら 与 え ら れ た十の戒律。 105 110

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─ 83 ─ Ⓒ RECRUIT 本サービスに関する知的財産権その他一切の権利は著作権者に帰属します。 また本サービスに掲載の全部または一部につき無断複製・転載を禁止します。       ス   ラヴォイ・ジジェク(一九四九~   )=スロベニアの哲学者、 精神分析家。       ミ   ヒ ャ エ ル・ エ ン デ( 一 九 二 九 ~ 一 九 九 五 ) = ド イ ツ の 児 童 文 学者。

(9)

問一   傍線部1~5の片仮名を漢字に直して、記しなさい。 問二    空欄ア~オに入るもっとも適切な語を、次のa~rの中からそれぞれ一つ選んで、記しなさい。ただし、一つの語は 一箇所にしか入りません。 a   義務    b   権利    c   逆説    d   結末    e   規範    f   解決 g   表現    h   直訴    i   使命    j   解放    k   検閲    l   仮説 m   改善    n   没収    o   啓示    p   満足    q   回覧    r   聴取 問三    傍線部Xで筆者は「これほどまでに、 われわれの社会は許容的である」と述べていますが、 それは「われわれの社会」 がどのようになっていることをさしていますか。その説明としてもっとも適切なものを、次の1~5の中から一つ選ん で、記しなさい。 1   人権思想と民主主義が世界を席巻していること 2   第一の自由が第二の自由の最後の障壁を崩すまでになっていること 3   啓蒙主義の時代の知識人が理想とした二種類の自由を完全に享受できていること 4   グローバル化が進み、人々の権利意識が多様化して、何でも許されるようになっていること 5   無神論者が多数派となり、神の戒律はもはや守るべきものとは見なされなくなっていること

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─ 85 ─ Ⓒ RECRUIT 本サービスに関する知的財産権その他一切の権利は著作権者に帰属します。 また本サービスに掲載の全部または一部につき無断複製・転載を禁止します。 問四    傍 線 部 Y に「 あ れ ほ ど 脱 出 す る こ と を 渇 望 し て い た 彼 が、 や が て 何 も 欲 し な く な っ た 」 と あ り ま す が、 「 何 も 欲 し な くなった」のはなぜですか。その説明としてもっとも適切なものを、次の1~5の中から一つ選んで、記しなさい。 1   気が多すぎて、かえって混乱してしまったから 2   期待が大きすぎて、がっかりしてしまったから 3   許容範囲が広すぎて、やる気を失ってしまったから 4   恐怖にとらわれすぎて、前に進めなくなってしまったから 5   決断力がなさすぎて、きっかけをつかめなくなってしまったから 問五    空欄A~Eには、赤か青、いずれかの漢字が入ります。その組み合わせとしてもっとも適切なものを、次の1~5の 中から一つ選んで、記しなさい。 1   赤―青―青―青―赤 2   青―赤―赤―青―青 3   青―赤―青―赤―青 4   青―赤―赤―青―赤 5   赤―青―赤―青―赤

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問六    傍線部Zに「自由が不自由へと反転するのは、 どのような機制によるのか」とありますが、 「反転」をひき起こす「機 制」とはどのようなものですか。次の文章はそれを説明したものです。空欄Ⅰ・Ⅱに、本文の表現を用い、指定の字数 内でもっとも適切な語句で記述して、文章を完成させなさい(字数は句読点、記号、符号を含みます)   い か な る 禁 止 を も 乗 り 越 え て     ( 字 以 内 ) こ と は 、 あ ら ゆ る こ と が 許 さ れ る か ら こ そ へ と 人 を 導 い て し ま う。 つ ま り、 す べ て が 許 容 さ れ る こ と で     ( 字 以 内 ) 世 界 が 出 現 す いることになる。 Ⅰ Ⅱ

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─ 87 ─ Ⓒ RECRUIT 本サービスに関する知的財産権その他一切の権利は著作権者に帰属します。 また本サービスに掲載の全部または一部につき無断複製・転載を禁止します。 (次ページより解答欄)   

(13)

問一 1 2 3 4 5 問二 ア イ ウ エ オ 問三 問四 問五 問六 Ⅰ Ⅱ

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Ⓒ RECRUIT

本サービスに関する知的財産権その他一切の権利は著作権者に帰属します。 また本サービスに掲載の全部または一部につき無断複製・転載を禁止します。

(15)

 

第四講

  「様々な設問」を解く

 

解答

問一 1 2 3 4 5 問二 ア イ ウ エ オ 問三 問四 問五

偶像

賢明

誘惑

覆〔蔽〕

閉塞

(16)

─ 7 ─ Ⓒ RECRUIT 本サービスに関する知的財産権その他一切の権利は著作権者に帰属します。 また本サービスに掲載の全部または一部につき無断複製・転載を禁止します。 Ⅰ Ⅱ

〔人権が保障される〕

〔自由が束縛になる/解放が束縛である〕

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