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青果物市場・流通の構造変動に関する研究

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Academic year: 2021

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博 士 ( 農 学 ) 坂 爪 浩 史

学 位 論 文 題 名

青果物市場・流通の構造変動に関する研究

ー 大 規 模 小 売 企 業 に よ る 再 編 の 論 理 一

    学 位論文 内容の 要旨

  青果 物の市 場・ 流通は1980年代 半ば以降,青果物輸入の急増,産地直結など市場外流通の進展,

セリ 取引の 形骸化 ,商 物分離 取引に 代表さ れる卸 売市 場流通 の空洞 化など ,ま さに構造変動とも いう べき時 代に入 って いる。 こうし た変化 を主導 して いるの は,ス ーパ― を典 型とする大規模小 売企 業であ り,彼 等に よる仕 入方式 の構築 を主軸 とし た流通 経路, 取引方 法の 変容である。大規 模小 売企業 は,独 立零 細の専 門小売 店に代 わって 青果 物小売 段階の 主たる 業態 としての地位を確 立し ,これ を基礎 とし て,青 果物の 市場・流通構造の再編を行うようになってきているのである。

こ う した 大 規 模 小 売企 業 に よる 市場・ 流通 再編の 動きは ,第5次卸 売市場 整備基 本方 針(91年)

に み られ る よ う に ,従 来 の 青果 物市場 ・流 通に関 する政 策体系 の形骸 化を も進行 させる 段階に 至っ ている 。

  本論 文は, 以上 のよう な状況 をふま え, 大規模 小売企 業の仕 入方式 に焦 点をあてることによっ て, 大規模 小売企 業を イニシ 工一夕 ーとす る,80年代半 ば以降 の青果 物市 場・流通の構造変動の 実態 および その再 編の 論理を 明らか にしよ うとし たも のであ る。こ の課題 に接 近するため,既存 の統 計資料 を活用 し, それが カバ― してい ない部 分に っいて は,北 海道内 にお ける各流通主体を 対象 とする 事例分 析を 行って いる。 フィー ルドと して 北海道 を選択 した理 由は ,まず札幌圏とい う東 京以北 最大の 消費 人口の 集積地 をもっ ており ,分 析対象 の中軸 となる 大規 模小売企業の事例 に富 んでい ること ,お よび札 幌中央 卸売市 場が整 備さ れ,広 大な分 荷圏を もつ 消費地卸売市場と して 展開し ている こと ,さら に,北 海道は 近年, 青果 物産地 として の成長 が著 しく,新しい流通 をよ ルスト レ―ト に映 し出す 新興産 地に恵 まれ, こう した産 地化を 背景と した 産地卸売市場化の 動き も顕著 にみら れる など, 総じて 課題へのアプ口ーチに適した地域であると考えたからである。

  まず ,序章 では 上記の 課題を 設定し ,既存の研究動向を検討し,論文の方法,構成を概説した。

  第1章 では, 青果物 小売段 階にお ける 青果物 専門小 売店の 動向 ,およ び大規 模小売 企業の 進出 の 実 態を 統 計 分 析 し, 青 果 物小 売市場 が従 来の独 立零細 小売商 主体の 構造 から, スーパ ーなど

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チ ェーン 組織を もつ大 規模 小売企 業主体 の構造 に変 貌しっ っある ことを 抽出し ている。ただし,

小 売市場 は独占 化した とい う段階 には至 ってお らず ,未だ 零細小 売店な どを含 めた競争的な構造 に ある。

  第2章 では ,札 幌都市 圏に展 開する スーパ ー等 に対す る調査 に基づ いて ,大規 模小売 企業の 青 果 物 仕 入方式 を明 らかに してい る。大 規模 小売企 業の青 果物仕 入は, 主に3っの 仕入 経路, すな わ ち@産 地直結 ,◎産 地卸 売市場 ,◎消 費地卸 売市 場から 構成さ れてい ること ,およびその構成 比 はこれ まで主 流であ った ◎に代 わって,◎および@の比重が高まりつっあることが解明される。

  続 く 第3〜5章 は, 前 章 に お い て抽 出 し た 大 規模 小 売企 業の3大仕 入経路 それぞ れにっ いて , 取 引対象 に焦点 をあて た分 析を行 い,こ れを通 して 大規模 小売企 業によ る各仕 入経路の位置づけ 等 を考察 したも のであ る。

  ま ず 第3章 で は , 北海 道 内 の2産地 (羽幌 ・東川 )を素 材とし て, 仕入経 路の@ 産地直 結に つ い て分析 した。 大規模 小売 企業と の直結 化によ って 産地で は多品 目化強 制およ び広域集荷の恒常 化 等が発 生して いるが ,こ れらは 卸売諸 機能の 産地 への転 嫁に他 ならず ,こう して大規模小売企 業 は卸売 商排除 にとも なう 流通費 負担増を圧縮し,同時に産地の自立性を制約しているのである。

  第4章 では ,旭 川市場 を事例 としな がら, 仕入 経路の ◎産地 卸売市 場か らの直 接仕入 にっい て 取 り上げ た。大 規模小 売企 業が進 める産 地直結 など を背景 として ,消費 地卸売 市場の産地卸売市 場 化が広 範に生 じてい る。 そして 地場産 品の移 出相 手も, 従来の 卸売市 場から 大規模小売企業へ と 変化し つっあ る。大 規模 小売企 業は, 産地卸 売市 場と直 接提携 するこ とによ って差別化商品を 調 達 し , 消 費 地 卸 売 市 場 に 対 す る 依 存 度 を 最 小 限 に し て い る の で あ る 。   第5章 では ,札 幌中央 卸売市 場の仲 卸業者 に対 する調 査をも とに, 仕入 経路の ◎消費 地卸売 市 場 からの 仕入に っいて 分析 した。 消費地 卸売市 場の 仲卸業 者は大 規模層 ほど大 規模小売企業仕向 率 が 高 いが, 最大1社に 対す る仕向 率は低 く,大 規模 小売企 業によ って系 列化さ れて はいな い。

し かし, 大規模 小売企 業は ,仲卸 相互の 競争を 利用 して諸 負担を 仲卸に 徹底的 に転嫁しており,

そ れは大 規模小 売企業 が消 費地卸 売市場を, もっぱら低価格販売競争のための通常商品の仕入経 路 と位置 づけて いるか らで ある。

  終 章では 以上 の成果 をもと に,大 規模小 売企 業の仕 入方式 を中心 に, 青果物 市場・流通再編の 論 理にっ いて, 次のよ うな 結論を 得た。  .

  現 在の小 売市 場は, 一方で は大規 模小売 企業 が業態 として 主流と なる に至り ,差別化戦略と市 場 細分化 等から なる非 価格 競争の 局面を 部分的 に実 現しっ っある が,他 方でチ ェーンを形成しな い 独立零 細の専 門小売 店と の,あ るいは 大規模 小売 企業相 互間の 熾烈な 価格競 争を広範に残存さ

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せている。このような青果物小売市場の性格を背景として,大規模小売企業においても,価格競 争を勝ち抜くための通常商品と,差別化商品とからなる重層的な品揃え,およびそのための商品 調達を図る必要がある。そこで,差別化商品にっいては,その企業の独自性を保持,あるいは創 出すべく産地と直結し,自ら産地開発を行い,掌握していく。ただし,卸売商排除に起因する追 加的流通費の産地および消費者への転嫁には自ら限界がある。そこで,次に産地卸売市場を直接 捕捉し,産地開発を代行させ,差別化商品の調達を図っていくのである。こうして,消費地卸売 市場には,もはや通常商品の仕人チャネルとしてめ位置づけしか残らないこととなり,この狭め られた領域の中で熾烈な納入競争が生じる。大規模小売企業はこれを最大限利用し,仲卸業者に 徹 底 的 に 負 担 を 転 嫁 し , 通 常 商 品 の 低 価 格 仕 入 を 実 現 す る の で あ る 。   以上のような大規模小売企業による青果物市場・流通再編の進展は,産地の生産者や農協,あ るいは市場関係者などに対して,さまざまな負担の転嫁を強いるものであり,これに対抗する動 きを必然的に呼び起こしている。こうした対抗カの形成は,市場・流通の独占化に伴う弊害を抑 制するために重要なものであるが,大規模小売企業に比べて経済的力量の劣る主体による対抗カ には,おのずと限界があり,彼らを支援する政策が必要である。具体的には,@青果物小売段階 における水平的競争の維持,活性化策,◎大規模小売企業による負担転嫁のメカニズムが作用し ないような,独立専門小売店の存立のための卸売市場の維持及びその性格・機能の増進策,さら に,◎大規模小売企業のための仕入機関としての卸売市場にっいては,仲卸業者間あるいは卸売 業者を巻き込んで激化している過当競争を回避するため,同業者間の連携,協同化などの促進策 か重要である。

学位論文審査の要旨 主査

副査 副査 副査

教授 教授 教授 助教授

臼井 太田原 黒柳 三島

    晋 高昭 俊雄 徳三

  本論文は7章からなり,表23,図21および参考文献77を含む総ページ数117ぺージの和文論文 である。別に参考論文8編が添えられている。

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  青 果物の 市場・ 流通に おいて ,こ れまで は卸売 市場が 要の 地位に あり, 特に東京・大阪等,大 部市 に開設 され た中央 卸売市 場の大 規模 な卸売 業者が ,価格 形成お よび 流通を 主導しているとさ れて きた( 集散 市場体 系諭) 。しか し, 近年, 卸売市 場流通 の空洞 化, 制度の 形骸化などが急速 に進 んでい る。

  本 研究は ,青果 物市場 ・流通 の著 しい変 動を主 導する 勢カ に成長 した大 規模小売企業の青果物 仕入 方式の 構築 過程に 焦点を あて, その 実態を 分析す ること によっ て, 市場・ 流通再編の論理を 明ら かにし よう とした もので ある。

  まず , 序 章 で は ,課 題 を 設定 し,既 存の研 究動向 を検 討し, 論文の 方法, 構成 を概説 した。

  第1章 では, 統計を 用い て,青 果物小 売市場 が従来 の独 立零細 小売商 主体の 構造 から, チェー ン組 織をも つ大 規模小 売企業 主体の 構造 に変貌 しっっ あるこ とを明 らか にした 。ただし,小売市 場 は 独 占市 場 の 段 階 には 至 っ て お らず , 未 だ 零 細 小売 店 な ど を 含め た 競 争的な 構造に ある 。   第2章 では, 札幌都 市圏 に展開 する大 規模小 売企業 を対 象とし ,青果 物の仕 入経 路の実 態を分 析し た。そ の結 果,青 果物仕 入は主 に3っの経 路, すなわ ちぐD産地 直結, ◎産地卸売市場,◎消 費地 卸売市 場か ら構成 されて いるこ と,また,その構成比はこれまで主流であった◎に代わって,

◎お よび@ の比 重が高 まりつ っある こと を明ら かにし た。

  続 く 第3〜5章 で は , こ の3大 仕 入 経 路 別 に , 取 引 対 象 に 焦 点 を あ て た 分 析 を 行 っ た 。   まず 第3章で は,北 海道 内の野 菜産地 を対象 にして ,大 規模小 売企業 との直 結化 によっ て,産 地 で は 多 品 目 化 強 制 お よ び 広 域 集 荷 の 恒 常 化 等 が 生 じ て い る こ と を 明 ら か に し た 。   第4章 では, 大産地 を後 背地に 有する 旭川市 場を事 例と して卸 売市場 の機能 の変 化にっ いて分 析し ,地方 都市 の卸売 市場が 産地卸 売市 場化し っっあ ること を明ら かに した。 また,この変化は 大規 模小売 企業 が産地 直結を 進めた こと 等によ って生 じ,地 場産品 の移 出先も 従来の卸売市場か ら大 規模企 業へ と変化 してき ている こと を明ら かにし た。

  第5章 では, 札幌中 央卸 売市場 におけ る調査 から, 消費 地卸売 市場の 仲卸業 者は 大規模 層ほど 大規 模小売 企業 仕向率 が高い が,特 定の 企業に よって 系列化 されて はい ないこ と,しかし,仲卸 業 者 は 価 格 変 動 リ ス ク を は じめ と す る 様 々 な負 担 を 転 嫁 され て い る こ とを 明 ら か に した 。   終 章では ,以上 の成果 を総括 し, 大規模 小売企 業をイ ニシ エータ ーとす る青果物市場・流通再 編 の 論 理 に っ い て 考 察 を 加 え , さ ら に 生 産 者 の 対 応 方 向 と 政 策 的 支 援 に 言 及 し た 。   現 在の小 売市場 は,一 方では 大規 模小売 企業が 主流と なる に至り ,差別 化戦略と市場細分化等 から なる非 価格 競争の 局面を 部分的 に実 現しっ っある が,他 方で独 立零 細の専 門小売店との,あ るい は大規 模小 売企業 相互間 の熾烈 な価 格競争 を広範 に残存 させて いる 。この ような青果物小売

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市場の性格を背景として,大規模小売企業は価格競争を勝ち抜くための通常商品と,差別化商品 とからなる重層的な品揃えと商品調達を図る必要がある。そのため,差別化商品にっいては,そ の企業の独自性を創出,保持すべく,産地と直結して自ら産地開発を行うと同時に,産地卸売市 場と直接提携して産地開発を代行させ,差別化商品の調達を図る。また,通常商品にっいては,

活動領域を縮小された消費地卸売市場において生じる熾烈な納入競争を媒介として,仲卸業者に 徹底的に負担を転嫁して,これを調達するのである。

  さらに本論文では,こうした大規模小売企業の利害に基づく青果物市場・流通再編に対して,

産地の生産者や農協,あるいは市場関係者などを中心に,これに対抗する動きが活発化している ことを評価し, こうした対抗カを高めるため の政策的支援が必要であることを指摘した。

  以上のように,本論文は,かって通説だった卸売業者主体の集散市場体系諭に代わって,大規 模小売企業主体の新たな青果物市場・流通再編の論理を解明するという独創的な見解を提示した 点で,学術的に高く評価できる。また,大規模小売企業に関する統計資料が非常に少ない中で,

調査資料としての価値も高く,応用上の貢献も大きい。

  よって審査員一同は,最終試験の結果と合わせて,本論文の提出者坂爪浩史は博士(農学)学 位を受けるのに十分な資格があるものと認定した。

参照

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