博 士 ( 工 学 ) 川 瀬 正 明
学 位 論 文 題 名
加入者光線路構成技術の研究
学位論文内容の要旨
広 帯 域ISDNに 代 表さ れ る 情 報 化社 会 の 到 来 にむ け て , 情 報通 信 のイ ンフラ ストラ クチ ャで ある伝 送媒体 は従来 とは桁 違い の能カ が要求 され, 光フ ァイバ 線路技 術の研究開発が活発に行わ れてい る。
光ファ イバの 特徴 は低損 失,広帯域といった基本的な伝送特性の他,細径,軽量,無誘導といっ た長所 がある が,実 用的な 伝送 路を構 成する ために はそ の接続 ,保護 技術に関して従来の金属導 体に比 べて高 度な技 術が必 要に なる。 このた め,各 種構 造の心 線・ケ ーブル構造設計や,融着接 続技術 等の研 究開発 が行わ れ,1981年に 公衆通 信網の 中継系 に導入 が開 始されて長距離大容量幹 線の主 役にな ってい る。
一方, 加入者 系を 光化す るためには経済性の要求や建設・保守性の向上を実現する必要がある。
加入者 線路網 の特徴 は,光 ファ イバが 個々の ューザ に配 線され るため 面的に広がる線路網を構成 するこ とであ り,多 心高密 度の ケ―ブ ルから 配線, 引込 み用の 少心ケ ーブル等多種類のケーブル が必要 なこと ,配線 替え等 建設 後のア クセス が多い こと ,経済 性が大 きなウエイトを占めること 等,中 継系と は異な った要 求条 件を解 決する 必要が ある 。
また, 線路の 保守 は金属 導体の 地下ケ ーブル では ケーブ ル内に 乾燥空 気を充填し,常時そのガ ス圧を 監視す るガス 保守方 式が とられ てきた 。光フ ァイ バケー ブルも 導入の当初は金属導体ケー ブルと 同じガ ス保守 方式が 適用 されて きたが ,浸水 によ る機械 的強度 の劣化特性や損失特性への 影響の 解明に ともな い,試 験シ ステム 高度化 の研究 とあ わせて 浸水検 知システムを始めとする非 ガス保 守シス テムの 研究が 進め られた 。
本論文 は光フ ァイ バの加 入者系 への導 入に関 する 光ファ イバケ ーブル ,線路構成,保守システ ムに関 する研 究結果 をまと めた もので あり,7章 から構 成され る。 以下に 本研究 の主な 内容と 成 果を示 す。
第1章では 光ファ イバの 研究 の歴史 的な経 緯と加 入者光 線路 の研究 経緯を 述ベ, 研究 の背景 と
130−―
位 置付 けを明 確にし ,本研 究の 目的と 論文の 構成を 述べる 。
第2章では 加人者 光線路 の特徴 ,構 成と要 求条件 にっい て述 べ,問題点を明確化するとともに,
こ れを 満たす ための 配線法 ,損 失設計 ,信頼性設計等線路設計の基本的な手法にっいて記述した。
す なわ ち,網 状に展 開する 加入 者光線 路にお いて, 信頼性 と建 設後の 線路に 容易に アクセスでき る 融通 性を満 足させ る線路 構成 として ,光フ ァイバ の心数 を逓 減せず にケー ブルを ループ状に建 設 する 無逓減 ループ 配線が 適し ている こと, コネク タ接続 を基 本とす る線路 設備構 成モデルとそ の 損失 設計, 信頼性 の考え 方を 示した 。また,加入者光ファイバケーブルの基本構造,心数単位,
設 計条 件を述 べてい る。
第3章 では 加 入 者 光 線路 の 重 要 な 要求 条 件 で あ る 低コ ス ト化 を目的 として 提案し た簡易 構造 ケ ーブ ルにっ いてそ の構造 と特 徴,具 体的な 設計方 法と試 作ケ ーブル の特性 にっい て明らかにし て いる 。すな わち, 抗張力 体お よびパ イプを 偏心さ せた簡 易構 造のケ ーブル にっい て,光ファイ バ に所 要余長 を付与 する構 造設 計式を 与える ととも に,光 ファ イバ余 長の曲 げに起 因する損失増 の 推 定 式 を 与 え, 損 失 増 をO.ldB/km以 下 に する た め に は, 曲がり 振幅roで規格 化した 余長率
( £/rい) を0. 005(mm‑t) 以下に する必 要があ ること を明 らかにした。これらの設計条件に基 づ く試 作ケー ブルに っいて ,温 度,引 張,曲 げ,側 圧,し ごき の各特 性を評 価した 結果,いずれ の 特性 も設計 値と良 く一致 し, 設計の 妥当性 を検証 した。
第4章 で はSM型 加 入 者光 フ ァ イ バ ケー ブ ル の 設 計に っ い て ,SM型 光 フ ァ イバ の 基 本 特 性と 加 入者 への適 用に関 する問 題点 を明確 にし,それを解決する.ためのファイバパラメータの設計法 と スロ ット型 光ファ イバケ ーブ ルによ る高密 度ケ― ブルの 設計 法を明 らかに してい る。光ファイ バ パラ メ一夕 の設計 では, 基本 的な伝 送特性 要求条 件のほ か, 光ファ イバの ハンド リング中に生 じ る損 失変動 特性を 検討し ,損 失変動 を一定 値以下 にする ため の光フ ァイバ パラメ 一夕設計法を 明 らか にした 。ケー ブル構 造に 関して は,高 密度収 容構造 を検 討し, スロッ トの形 状と数,収容 テ ープ 心線数 ,口ッ ドの撚 り合 わせ本 数等の高密度ケーブル構造を明らかにした。また,防水テー プ を用 いた防 水光フ ァイバ ケー ブルの 構成法 を示し た。こ れら の設計 に基づ いてケ ーブルを試作 し ,試 作ケー ブルが 光ファ イバ ケーブ ルに要 求され る諸特 性を 満足し ている ことを 検証した。さ ら に, 実際に 現場環 境に建 設し た光線 路の特 性を調 査し, 設計 通りの 特性が 得られ たことを示し た 。
第5章 では 近 年,大 容量長 距離中 継系 に導入 が開始 されて いる 分散シ フトフ ァイバ にっい て,
分 散シ フトフ ァイバ による 中継 ,加入 を統一した光線路構成の可能性を探るため,分散シフトファ イ バの 加入者 系への 適用可 能性 にっい て検討 した。 その結 果,1. 55肛m帯でのみ使用する場合は
131
モー ドフィ ール ド径, 実効カ ットオフ波長の許容偏差は中継系のパラメ一夕の偏差より広く,将来 的 には コスト の低減 が可能 であ ること ,波長 多重で 使用 する場 合は1.3ロm帯にお ける コネク 夕 損 失が1. 55〃mに比 べて 大きく なるた め,1.3um帯で のパラ メ一 夕の許 容偏差 は中継 系の 規格 の約50%と 小さく なるこ と,こ れを 解決す るため にはコ ネク 夕技術 を現状 の融着接続と同レベル に 改 善 する 必 要 が あ るこ と を 示 し た。 ま た 伝 送速 度と して1.ssumで2.4Gb/s,1,3ロmで155 Mb/sを 考 え た 場 合 の 使 用 す る 光 源 の ス ペ ク ト ル 幅 に 対 す る 要 求 条 件 を 明 ら か に し た 。 第6章では 光加入 者線路 の保 守方式 にっい て,光 線路の 劣化 要因と 信頼性 にっい て検 討し, 非 ガス 化のた めの 課題を 明確に すると とも に,非 ガス化 を実現 するた めの 浸水検知技術とその適用 によ る非ガ ス保 守線路 構成法 にっい て記 述した 。まず ,従来 の光線 路構 成要素である光ファイバ ケー ブルお よび その接 続部に っいて ,非 ガス化 した場 合に予 想され る信 頼性劣化の要因と劣化の 程度 を明ら かに した。 っぎに 非ガス 線路 構成と して防 水光フ ァイバ ケー ブルと接続部の浸水監視 に っ い て検 討 し , 接 続部 の 浸 水 期 間を3ケ 月 , パルス 反射に よる 検出分 解能2 dBとして 浸水セ ン サ を 設計 し , 幹 線 ルー プ 距 離15kmの 場 合 に500m長の 分岐ケ ーブル20ルー ト以上 を1ループ の モ ニ タ フ ァ イ バ で 監 視 で き , ガ ス保 守 と 同 等 の信 頼 性 を 実 現 でき る こ と を 明ら か に し た 。 第7章 は 結 論 で あ り , 本 論 文 全 体 の 結 論 と ま と め を 述 べ , 成 果 の 総 括 を 行 っ て い る 。
学位論文審査の要旨
本 論文は 光ファ イバの 加入 者系へ の導入 に関す る光 ファイ バケー ブル,線路構成,保守システ ムの 設計 法の確 立を目 的とし て実 施した 研究結 果をま とめた もの であり ,7章から 構成さ れてい る。 論文 の主な 内容と 成果は 以下 のとお りであ る。
第1章 では加 入者光 線路の 研究経 緯を 述ベ, 研究の 背景と 位置 付けを 明確に し,研 究の目 的と 論文 の構 成を述 べてい る。
第2章 では加 入者光 線路の 特徴, 構成 と要求 条件にっいて述べ,問題点を明確化するとともに,
これ を満 たすた めの配 線法, 損失 設計, 信頼性 設計等 線路設 計の 基本的 な手法にっいて記述して
郎 久
則
一 利
正
井 間
柴
深 本
小
授 授
授
教 教
教
査 査
査
主 副
副
い る。 すなわ ち,信 頼性と 建設後 の線 路に容 易にア クセス でき る融通 性を満足させる線路構成と し て, 光ファ イバの 心数を 逓減せ ずに ケーブ ルをル ープ状 に建 設する 無逓減ループ配線が適して い るこ と,コ ネク夕 接続を 基本と する 線路設 備構成 モデル とそ の損失 設計,信頼性の考え方を示 し て い る 。 また , 加 入 者光 ファイ バケー ブルの 基本 構造, 心数単 位,設 計条件 を述 べてい る。
第3章 では 加 入 者 光 線路 の 重 要 な 要求 条 件 で ある低 コスト 化を目 的と して提 案した 簡易構 造 ケ ーブ ルにっ いてそ の構造 と特徴 ,具 体的な 設計方 法と試 作ケ ーブル の特性にっいて明らかにし て いる 。すな わち, 抗張力 体およ びパ イプを 偏心さ せた簡 易構 造のケ ーブルにっいて,光ファイ バ に所 要余長 を付与 する構 造設計 式を 与える ととも に,光 ファ イバ余 長の曲げに起因する損失増 の 推定 式を与 え,損 失増をO.ld B/km以下に するた めの条 件を 明らか にしている。これらの設計 条 件 に 基 づ く 試 作 ケ ー ブ ル に っ い て 評 価 を 行 い , 設 計 の 妥 当 性 を 検 証 し て い る 。 第4章 ではSM型 カ口 入 者 光 フ ァ イバ ケ ー ブ ルの 設計に っいて ,SM型 光ファ イバの 基本 特性と 加 入者 への適 用に関 する問 題点を 明確 にし, それを 解決す るた めのフ ァイバパラメータの設計法 と ス口 ット型 光ファ イバケ ーブル によ る高密 度ケー ブルの 設計 法を明 らかにしている。光ファイ バ パラ メータ の設計 では, 基本的 な伝 送特性 要求条 件のほ か, 光ファ イバのハンドリング中に生 じ る損 失変動 特性を 検討し ,損失 変動 を一定 値以下 にする ため の光フ ァイバパラメ一夕設計法を 明 らか にして いる。
ケーブ ル構造 に関し ては ,高密度収容構造を検討し,ス口ットの形状の数,収容テープ心線数,
ロ ッド の撚り 合わせ 本数等 の高密 度ケ ーブル 構造を 明らか にし ている 。また,防水テープを用い た 防水 光ファ イバケ ーブル の構成 法を 示して いる。 さらに ,実 際に現 場環境に建設した光線路の 特 性を 調査し ,設計 通りの 特性が 得ら れたこ とを示 してい る。
第5章では 近年 ,大容 量長距 離中継 系に導 入が 開始さ れてい る分散 シフ トファ イバに っいて , 分 散シ フトフ ァイバ による 中継, 加入を統一した光線路構成の可能性を探るため,分散シフトファ イ バの 加入者 系への 適用可 能性に っい て検討 してい る。そ の結 果,1. 55um帯でのみ使用する場 合 はモ ードフ ィール ド径, 実効カ ットオフ波長の許容偏差は中継系のパラメータの偏差より広く,
将 来的 にはコ スト の低滅 が可能 である こと ,波長 多重で 使用す る場合 は1. 3um帯 におけ るコ ネ ク タ 損 失 が1.55umに 比 べて 大きく なるた め,1.3ロm帯で のパラ メ―夕 の許 容偏差 は中継 系の 規 格の 約50%と 小さく なる こと, これを 解決す るため には コネク 夕技術 を現状の融着接続と同レ ベ ルに 改善す る必要 がある ことを 示し ている 。
第6章では 光加 入者光 線路の 保守方 式にっ いて ,光線 路の劣 化要因 と信 頼性に っいて 検討し , 非 ガス 化のた めの課 題を明 確にす ると ともに ,非ガ ス化を 実現 するた めの浸水検知技術とその適
用 による 非ガス 保守線 路構 成法にっいて記述している。まず,従来の光線路構成要素である光ファ イ バケー ブルお よびそ の接 続部に っいて ,非ガ ス化し た場 合に予 想される信頼性劣化の要因と劣 化 の程度 を明ら かにし ,非 ガス線 路構成 として 防水光 ファ イバケ ーブルと接続部の浸水監視につ い て検討 してい る。そ の結 果,ガ ス保守 と同等 の信頼 性を 実現で きることを明らかにしている。
第7章 は 結 諭 で あ り , 論 文 全 体 の 結 論 と ま と め を 述 ベ , 成 果 の 総 括 を 行 っ て い る 。 こ れを要 するに ,著 者は加 入者系 への光 ファ イバケ ーブル 導入に むけて線路構成法,ケーブル 設 計法等 の線路 構成基 本技 術と, 光ファ イバ線 路の非 ガス 保守を 可能とする信頼性,保守技術に 関 して理 論的, 実験的 な検 討を行 い,多 くの知 見を得 ると ともに その設計法を確立している。こ の 成 果 は 広帯 域ISDNに 代 表 さ れる 情 報 化 社 会 にお い て イ ン フラ ストラ クチ ャの構 築を可 能に す る技術 として 貢献す ると ころ大 なるも のがあ る。よ って 著者は 博士(工学)の学位を授与され る 資格あ るもの と認め る。