• 検索結果がありません。

<地域研究>えのかま観光地区における経済波及効果の算定

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "<地域研究>えのかま観光地区における経済波及効果の算定"

Copied!
4
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

えのかま観光地区における経済波及効果の算定. 経済学部 4 年 1725246 岡本進太郎. 指導教員 居城琢. 1.はじめに. 昨年度、「江ノ島観光地区における産業連関分. 析」という題目で紀要論文を発表した。神奈川県. の藤沢市と鎌倉市にまたがる、江ノ島を中心とす. る観光地区を独自で設定、その地区の産業連関表. を作成し、分析したものである。. 今回は、その範囲を鶴岡八幡宮や小町通りのあ. る鎌倉駅周辺まで拡張した。また、連関表につい. ても従業者数による按分方式に加えて、独自の手. 法を採用することで、よりえのかま観光地区の実. 状に即した表の作成を心掛けた。. 産業連関表の分析については昨年度も実施し. たことから、本稿ではえのかま地区の産業の波及. 効果について考える。連関表作成時に移輸出入の. 推計を工夫したことで、地域内表でありながら、. 生産波及の対象を区分することが実現した。えの. かま地区の観光業がもたらす経済効果について. 言及したい。. 2.えのかま観光地区の設定. 冒頭より「えのかま観光地区」という言葉を何. 度も使ってきたが、ここで改めてその詳細な範囲. 設定をしたい。江ノ島電鉄(以後、「江ノ電」と表. 記)沿線で相模湾に面した海沿いの地域を独自で. えのかま地区と設定して、江ノ電鵠沼駅~鎌倉駅. の 12駅に渡る約 7kmの区間における地域を調査. することにした。 (表1,図1). 行政区分を超えたある一定の地域、区間におけ. る産業連関表の作成は日本においても非常に少. なく、えのかま地区(藤沢市片瀬地区と鎌倉市腰越. 地域・鎌倉地域を主とする区分)の産業連関表にお. いても私が調べる限り存在しない。このような国. や市町村別の区分ではなく、生活・産業区分で江. ノ島電鉄沿線の地区に焦点を当てることで、より. 現行のえのかま地区の実態に即した産業連関分. 析が可能となる。. 表1-えのかま観光地区の町丁一覧. ①藤沢市. (鵠沼駅,湘南海岸公園駅,江の島駅). 片瀬海岸 1,2,3/片瀬 3,4,5/江ノ島 1,2. 鵠沼松が岡 1,2,3/鵠沼海岸 1,2,3. ②鎌倉市. (腰越駅,鎌倉高校前駅,七里ガ浜駅,稲村ケ崎駅,. 極楽寺駅,長谷駅,由比ヶ浜駅,和田塚駅,鎌倉駅). 腰越 1,2,3,4,5/七里ガ浜 1,2/七里ガ浜東. 1,2,3,4,5/稲村ケ崎 1,2,3,4,5/極楽寺1,2,3,4. 坂ノ下/長谷 1,2,3/笹目町/雪ノ下 1,2. 小町 1,2,3/★材木座 1,3,5/由比ヶ浜 1,2,3,4. ★について. 「材木座 2,4,6」も町丁区分として存在するが、観光に. 特化した、実際に観光客が足を運びやすい江ノ電沿線と若. 宮大路周辺地区に限った範囲設定をしたことで除外した。. 鎌倉駅に隣接する「鎌倉市御成町」についてもえのかま. 地区から除外した。これは観光経済に特化した産業連関分. 析を進める上で、公務部門の生産による影響を少なくした. いことによる。御成町には鎌倉市役所や中央図書館がある。. 図1-えのかま観光地区の概要. 〈江ノ電 12駅、約 7kmの範囲に広がる地域がえ. のかま地区。(左が江ノ島地区、右が鎌倉地区)〉. 3.地域産業連関表の作成. 3.1 従業員数の確定と産業区分. 前述の通り、本稿が対象とする藤沢市鎌倉市に. またがる地区の産業連関表は存在しない。表の作. 成方法としては、ノンサーベイ法を採用した。. 表の形式については、平成 27 年の神奈川県産. 業連関表(13 分類)を基にして考え、サービスに関. する分類については細分化して作成した。13分類. の産業連関表では「11 公務」「13 分類不明」と表. される二分類については、本稿では含まずに考え. た。(表2). 以上より、えのかま地区における生産額は 15. 部門での推計となっている。. 本稿で作成する産業連関表は上記のように、サ. ービスが細分化されたことで 15分類とされるが、. 実際、その分類は複雑である。従って、ノンサー. ベイ法を利用するにあたり、私が 37 分類の統合. 大分類と108分類の統合中分類のデータを組み合. わせて付表を作成した。. 表2-域内産業連関表の作成にかかる産業区分. 3.2 産業連関表の作成. 産業連関表の作成は、「2.えのかま観光地区の. 範囲設定」に基づいて、「3.1 従業者数の確定と産. 業区分」から始まり、「(A)域内生産額」の推計を. 最初に取り掛かる。ここで本稿における連関表は. 神奈川県表の延長表となる為、少なからず神奈川. 県全体の産業構造の影響を受けるという問題が. 生じるが、出来るだけその実状に即した表の作成. を目指そうと、いくつかの産業については適宜修. 正を入れる形で対応している。. その後、「(B)中間需要部門」、「(C)域内需要部. 門」、「(D)移輸出・移輸入」の順でそれぞれ推計を. 行い、えのかま地区の地域内産業連関表を作成し. た。(図2). 図2-産業連関表の作成手順. . (A)域内生産額の推計. 【平成 27 年神奈川県産業連関表の県内生産額. ×域内従業者数(えのかま地区従業者数)/県内従. 業者数】をすることで按分的に導出した。. えのかま地区の範囲設定では、実態に即した観. 光地区としての設定をした。しかし、按分手法だ. けでは、神奈川県全体の経済構造に依存すること. になり、観光に特化したえのかま地区の産業連関. 表の作成が完全には出来ないと考えた。. そこで按分値に外部観光客からの観光消費額. を上乗せすることを試みた(平成 28年神奈川県入. 込観光客調査報告書、神奈川県観光客消費動向等. 調査参照)。これにより、神奈川県表の按分による. 域内住民の生活の域内消費と平均的な域外から. の消費に加え、観光地としてのえのかま地区独自. の追加的な観光消費が含まれた域内生産額の推. 計が実現する(観光消費額の内製化)。. また、藤沢市、鎌倉市はその地価が神奈川県内の. 平均と比較して高いことから、不動産消費額も必. 然的に高くなることが見込まれるので、こちらに. ついても独自の修正を試みた(平成 28年神奈川県. 地価調査参照)。. (B)中間需要部門、(C)域内需要部門. これらの部門については、「江ノ島観光地区に. おける産業連関分析(岡本・2019)」を参照。. (D) 移輸出・移輸入. えのかま地区産業連関表において、移輸出入部. 門は以下のように分類される。. A. 移輸出=①輸出+②(全国への)移出. +⑤α(神奈川県内への)純移出. B. 移輸入=③輸入+④(全国からの)移入. +⑤β(神奈川県内からの)純移入. ⑤α,βの純移出入が最大のポイントだ。これは、. えのかま地区が神奈川県内の経済に対してどれ. だけの移出入を行っているかを明らかにするた. めのものである。えのかま地区と近隣地区との関. 係を定量的に分析することを目指す今回の研究. では非常に重要だ。延長表の基となる神奈川県表. では、その対象地域が神奈川県単位である為、世. 界各国との輸出入、日本全国との移出入の言及に. 留まるが、えのかま表の作成過程ではそれらを利. 用しながら、神奈川県内とえのかま地区の純移出. 入についても推計したい。. まず始めに下の計算を実施して、暫定的に移輸. 出額を推計する。. ①輸出 =えのかま生産額×神奈川県. 輸出率(神奈川県輸出額/神奈川県生産額). ②移出(全国) =えのかま生産額×神奈川県. 移出率(神奈川県移出額/神奈川県生産額). ③輸入 =えのかま生産額×神奈川県. 輸入率(神奈川県輸入額/神奈川県生産額). ④移入(全国) =えのかま生産額×神奈川県. 移入率(神奈川県移入額/神奈川県生産額). その後、B の移輸入計については、「③+④」を. 計算する手法、暫定的に「需要合計-域内生産額. (ここでは移輸出が①②のみとして考える)」の差. 額を採って計算する手法という、2 つの手法によ. って、2パターンの推計値を出す。すると、そこ. に差が生じるのだが、それを「⑤神奈川県内との. 純移出入」の合計とみなす。. ここでは⑤の分解に際して仮定として、神奈川. 県表と同じ構造の移出率、移入率を採用したこと. から、②移出と④移入の比率を用いる。つまり、. ⑤を「②:④」の比率を用いて分けることで、⑤. からαとβを導出する。. 以上、(A)~(D)の手順から、えのかま観光地区. の地域内産業連関表を作成した。. 4. 対象地域別経済波及効果. 4.1 逆行列係数表の作成. 経済波及効果を算出するにあたり、逆行列係数. 表を作成する。レオンチェフ逆行列には、閉鎖型. 【(𝐼 − 𝐴)−1】すなわち域外への波及効果を考慮し. ないものと、それらを考慮する開放型【(𝐼 − (𝐼 −. 𝑀)𝐴)−1】が存在する。ここで I は単位行列、Mは. 移輸入係数行列、Aは投入係数行列を表す。本稿. では移輸入による域外への波及効果を考慮する. 開放型レオンチェフ逆行列を採用する。. では早速、えのかま地区の逆行列係数表を作成. するが、ここで先述の「B .移輸入」を、. 「B=M+N1+N2」、M=輸入係数行列、N1=移. 入係数行列、N2=純移入係数行列と設定する。. これは、逆行列係数表作成にあたり、一般的に【※. の(I-M)部分】のMは「B.移輸入係数行列」を示し. ており、対象の域内における生産波及を算出する. 立式であるのに対し、本稿では、【※の(I-M)部分】. を(I-M)、(I-M-N1)、(I-M-N1-N2)の 3 パターン. に分類し、「①神奈川県外の全国への生産波及」、. 「②神奈川県内への生産波及」、「③えのかま地区. 内への生産波及」をそれぞれ別個に算定しようと. 試みたことによる。したがって、ここでは【①.(𝐼 −. (𝐼 − 𝑀)𝐴)−1】、【② . (𝐼 − (𝐼 − 𝑀 −𝑁1)𝐴)−1 】、. 【③.(𝐼 − (𝐼 − 𝑀 −𝑁1 − 𝑁2)𝐴)−1】の3パターン. の逆行列係数表を作成した。. 4.2 地域別波及効果の算定. 武田(2017)は、地域内産業連関表の分析では、. 地域内の経済構造の把握や地域内経済波及効果. の推計に留まるケースが多いことを指摘する。地. 域間の相互依存関係や、それを考慮した経済波及. 効果を分析するためには地域間産業連関表(地域. 間表)が必要となることが示唆された。. しかし、ここでは地域内産業連関表においてそ. れぞれの対象地域を踏まえた逆行列係数表を作. 成することでその問題を解消した。えのかま地区. は設定した範囲が限定的であることに加え、本稿. では特に観光収入に関する波及効果の算定を目. 指したことから、域内の雇用者所得が増えて域内. 消費が増加することによる二次波及以降は考え. ず、直接効果からの波及効果を求めた。. 《表 3》では、「えのかま地区に訪れる観光客が. 100 万人増えた時の観光消費額の波及効果」を考. える。直接効果については、「観光消費額の内製化」. で参照した「神奈川県観光客消費動向等調査」を. 基に算出する。波及効果については、「4.1逆行列. 係数表の作成」で作成した 3 種類の逆行列係数表. を用いて対象地域ごとに生産波及の試算を行う。. 「神奈川県入込観光客調査報告書」によると、. えのかま地区には各年次で平均的に年間 1,000 万. 人以上の観光客が訪れている。そこから、100 万. 人が約 1ヶ月間の観光客数であると考えて波及効. 果を算定した。この波及効果はコロナ禍における. 約 1ヶ月間の緊急事態宣言(2020 年 4月、2021 年. 1 月)発令下における負の波及効果の測定につい. ても考えることが出来る。. 表 3―対象別経済波及効果. 表 3では、直接効果として、【一人当たりの観光. 消費額×100 万人】の生産者価格を挿入した。3分. 類の生産波及は次の通りであるが、その大きさは. 対象範囲が広がると共に拡大し、産業間を超えた. 生産波及を生んでいる。「9.運輸」はえのかま地区. までの公共交通機関の利用が含まれることで対. 象範囲が広くなるごとにその波及も大きくなる。. 一方で、「12.宿泊業、飲食宿泊サービス業」につ. いては、観光消費の波及効果ということもあり、. 対象範囲の拡大に対してほとんどその波及は拡. 大していない。えのかま地区内への波及と神奈川. 県内への波及を比較すると、その大きさは約 1.8. 倍になり、えのかま地区が神奈川県内経済に一定. の生産波及をもたらしていることも分かる。. 地域内産業連関表の作成にあたり、えのかま地. 区の範囲設定が限定的であることから、その波及. 効果が過小評価される可能性は完全に否定され. る訳ではない。しかし、このように対象範囲を変. えて、複数の逆行列表を活用した波及効果の算定. をすることで、よりその実状に即した波及効果の. 試算が出来たと考える。. 5.まとめ. 本稿ではえのかま観光地区における産業連関. 表の作成と、波及効果の算定を試みた。えのかま. 地区と他地域との連関を定量化し、対象地域ごと. にその波及の大きさの異なりを明らかにするこ. とが出来た。本研究が今後の産業間の繋がりを大. きくすることに貢献出来れば幸いである。. 統計資料. 平成 27年 神奈川県産業連関表. 平成 28年 神奈川県入込観光客調査報告書. 平成 28年 神奈川県観光客消費動向等調査. 平成 28年 神奈川県地価調査. 参考文献. 岡本進太郎(2019) 「江ノ島観光地区における産. 業連関分析」, 横浜国立大学地域実践教育研究. センター地域課題実習・地域研究報,p163~167. 浅利一郎、土居英二、中野親徳(2019) 「はじめ. よう地域産業連関分析(Excelで初歩から実践ま. で)基礎編」,日本評論社. 中谷勇介(2018)「ノン・サーベイ法による狭山市. 産業連関表の試作とその考察」西武文理大学サ. ービス経営学部研究紀要,第 33 巻,p3~14. 武田健太(2017)「地域内産業連関表を用いた県内. 外地域間産業連関表の作成とそれによる分析 : . 熊本県内外地域間の経済構造と熊本城マラソ. ンの経済波及効果」熊本学園大学経済論集,第. 23巻,第 1~4 号,p441~464

参照

関連したドキュメント

 本計画では、子どもの頃から食に関する正確な知識を提供することで、健全な食生活

平成 27

第1回 平成27年6月11日 第2回 平成28年4月26日 第3回 平成28年6月24日 第4回 平成28年8月29日

平成 27

○「調査期間(平成 6 年〜10 年)」と「平成 12 年〜16 年」の状況の比較検証 . ・多くの観測井において、 「平成 12 年から

平成 26 年度 東田端地区 平成 26 年6月~令和元年6月 平成 26 年度 昭和町地区 平成 26 年6月~令和元年6月 平成 28 年度 東十条1丁目地区 平成 29 年3月~令和4年3月

実施期間 :平成 29 年 4 月~平成 30 年 3 月 対象地域 :岡山県内. パートナー:県内 27

本協定の有効期間は,平成 年 月 日から平成 年 月