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Mixed autochthonous and allochthonous oyster beds of the Upper Cretaceous Izumi Group along the northern basin margin in the Mannou area, Kagawa Prefecture, Japan

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(1)

地質学雑誌 第117巻 第9号 523–537ページ,20119 JOI: JST.JSTAGE/geosoc/117.523 Jour. Geol. Soc. Japan, Vol. 117, No. 9, p. 523–537, September 2011 doi: 10.5575/geosoc.117.523

Mixed autochthonous and allochthonous oyster beds of the Upper Cretaceous Izumi Group along the northern basin margin in the Mannou area, Kagawa Prefecture, Japan

香川県まんのう地域に分布する上部白亜系和泉層群北縁相の自生・他生混在 型カキ化石密集層

Abstract

Six oyster-shell beds of exclusively Crassostrea sp. are exposed in a thick estuarine unit in the Campanian (Late Cretaceous) upper part of the Shiroyama Formation, Izumi Group, along the Doki River, Mannou area, Kagawa Prefecture, SW Japan. Five modes of fossil occurrence are observed in the oyster beds: (I) Relay type, (II) single-generation cluster type, (III) mixed type in upright and lying positions, (IV) closely packed side-lying type, and (V) scattered side- lying type. Five of the shell beds consist of more than one type of fos- sil occurrence, indicating a heterogeneous origin (i.e., both autoch- thonous and allochthonous), with the beds being of variable size, thickness, and shape. The sixth bed yields only allochthonous oysters (type IV). The former five shell beds were formed on a sandy tidal flat by the intermittent accumulation of autochthonous and alloch- thonous shells. The combined effects of (1) clustered oyster growth, (2) subsequent destruction by tidal currents or storms and short-dis- tance transportation, and (3) renewed clustered growth over several generations resulted in the formation of thick shell beds. These modes of fossil occurrence, formed under high-energy conditions on a sandy tidal flat, are in contrast to the oyster reefs of modern Crassostrea, which dwells in a sheltered muddy estuary environment.

The thick estuarine unit in the section along the Doki River suggests that in this part of the Izumi Basin, the rates of subsidence and sedi- ment supply were in balance during the Campanian. Moreover, the heterogeneous oyster beds may have formed in an estuarine environ- ment during occasional stagnation phases during a transgression re- lated to syn-depositional subsidence of the Izumi Basin.

Keywords: oyster bed, estuary, Izumi Group, northern margin of the Izu- mi Basin, Upper Cretaceous, taphonomy

吉川武憲

 安藤寿男

**

香西 武

***

 近藤康生

****

Takenori Yoshikawa

, Hisao Ando

**

, Takeshi Kozai

***

and Yasuo Kondo

****

2010914日受付.

201175日受理.

兵庫教育大学大学院連合学校教育学研究科 Doctoral program student of the Joint Gradu- ate School in Science of School Education, Hyogo University of Teacher Education, 942-1 Shimokume, Kato, Hyogo 673-1494, Japan

** 茨城大学理学部地球環境科学領域

Department of Earth Sciences, Faculty of Science, Ibaraki University, 2-1-1 Bunkyo, Mito, Ibaraki 310-8512, Japan

*** 鳴門教育大学自然系(理科)教育講座 Natural Science Education(Science), Naruto University of Education, 748 Takashima, Na- ruto-cho, Naruto, Tokushima 772-8502, Ja-

****pan

高知大学自然科学系理学部門

Science Unit, Natural Science Cluster, Kochi University, 2-5-1 Akebono-cho, Kochi 780-8520, Japan

Corresponding author; T. Yoshikawa, [email protected]

©The Geological Society of Japan 2011 523 は じ め に

カキ類は,ペルム紀に出現し三畳紀後期以降の浅海域に繁 栄した翼形亜網カキ目に分類される二枚貝類で,とくに中生 代後半には密集して生活するタイプの

Crassostrea

属(マ ガ キ 類 ) お よ び そ の 近 縁 属 が 現 れ た(

Komatsu et al., 2002; Sato and Komatsu, 2009

).そして,これらの属の 中には,泥質堆積物にしばしばブーケ状あるいは層状の大型 コロニーを形成する種がいることが知られている(

Stenzel, 1971;

鎮西

, 1982a, b

).

Crassostrea

属は,このような柔 らかい底質上に岩礁地帯と同様な硬質基盤を自身の殻で作る ことによって,これまで他の生物にとって生息に適していな かった不安定なニッチを獲得できたと考えられている(鎮西

, 1982a, b

).一方,一部の化石カキ礁は砂質な地層中にも見 られ,単世代または少数世代のコロニーが横に一列に並ぶよ

うな形態をなしており,泥質層中に見られる化石カキ礁との 形態の違いが指摘されている(鎮西

, 1971

).

日本の上部白亜系では,これまでに御所浦層群(岩崎・坂 本

, 1981;

廣瀬・近藤

, 1998; Komatsu, 1999;

小松

, 2004;

Komatsu and Maeda, 2005

),御船層群(

Tamura, 1977

),

姫浦層群(利光ほか

, 1990;

熊谷・小松

, 2004;

山口ほか

, 2008

),蝦夷層群(安藤ほか

, 2003

),そして,和泉層群(平 ほか

, 1979;

山本

, 1986;

利光ほか

, 1990

)などでカキ化石 密集層が見つかっており,これらの多くが

Crassostrea

と考えられている(小松

, 2004

).しかし,これらのカキ化 石密集層はその岩相や産状から様々なタイプに分類できるこ とから,自生的であるのか,それとも他生的であるのかにつ いては,タフォノミー解析による密集層の形成過程の詳細な 検討が必要である.

また,小笠原(

1999

)は,化石カキ礁が高時間分解能で

(2)

524 吉川 武憲・安藤 寿男・香西 武・近藤 康生 20119

の海水準変動解読の情報源になる可能性があることを指摘し て い る. さ ら に,

Ando

2006

) や

Kondo and Ando

2006

)は,カキ礁の形成過程を明らかにすることによって,

カキ礁が形成されやすい海進期堆積体の堆積過程復元にもつ ながる可能性を指摘している.

和泉層群北縁相から産出するカキ化石密集層は,本論で報 告する香川県まんのう地域(

Fig. 1

)だけに限られている

(平ほか

, 1979;

山本

, 1986;

利光ほか

, 1990

).この化石密 集層は,主に砂岩層中に見られ,平ほか(

1979

)は自生的 なカキ礁とみなした.一方,利光ほか(

1990

)は完全な自 生の産状とは言えないものの,近辺にカキ礁があったことは 確実であろうと述べている.このような産状の評価の相違 は,本地域のカキ化石密集層が非常に複雑な産状を示してい るからだと考えられる.

そこで本研究では,本地域のカキ化石密集層の詳細な観察 を行い,その産状を

5

つのタイプに細分化して検討するこ とで,カキ化石密集層の形成過程について明らかにした.さ らに堆積相と堆積相層序を記載し,和泉層群最下部にあたる 香川県まんのう地域土器川セクションの堆積環境を推定する ことを通して,和泉層群のカキ化石密集層の堆積学的・古生 態学的意義について考察することができたのでここに報告す る.

和泉層群北縁相の地質概説

和泉層群は,中央構造線の北側に沿って東西約

300 km

南北約

10

km

にわたって,四国西部から近畿西部にかけ て分布する.このような狭長な地質帯の形成は,中央構造線

の大規模な左横ずれ断層運動に伴う,横ずれ堆積盆としての 和泉堆積盆の特性が反映されたものと考えられている(平ほ か

, 1981; Tanaka, 1989, 1993;

岩本・宮田

, 1994;

山北・

伊藤

, 1999

など).

和泉層群はその岩相により,和泉堆積盆北縁に狭長に分布 する,主に厚い礫岩・砂岩や泥岩よりなる非タービダイト相 の北縁相,北縁相の南側により広範囲に分布する,礫岩・砂 岩・泥岩の互層よりなるタービダイト相の主部相,そして,

淡路島の一部などだけに分布する厚い礫岩・砂岩・泥岩より なる非タービダイト相の南部相の

3

相に区分されている(市 川ほか

, 1979;

近畿西部

MTL

研究グループ

, 1981; Moro- zumi, 1985

など).さらに

Yamasaki

1986

)は,阿讃山 脈地域周辺の北縁相を,領家花崗岩類との不整合面にのる砂 礫岩層を主体とした城しろやま山層と,その南方に整合的に分布する 連続性のよい厚い頁岩からなる引ひけ層に区分した.

本報告の調査地である香川県まんのう地域土ど き器川セクショ ンは,城山層と引田層最下部にあたる(

Fig. 1

).走向は

N70

°

E

EW

,傾斜は

30

°〜

40

°

S

で,南上位の地層が整合 一連に分布している.カキ化石密集層が産するのは城山層の 上半部である.

Morozumi

1985

)の和泉層群に産出する アンモナイトの生層序区分に基づくと,本調査地域周辺の和 泉層群は

Metaplacenticeras subtilistriatum

帯に相当し,

その地質年代はカンパニアン後期である.小玉(

1990

)に よる古地磁気学的研究でも,本調査地域周辺の堆積年代を約

77 Ma

と見積もることができ,この結果は,カンパニアン

後期とする

Morozumi

1985

)を支持する

.

城山層,引田層の堆積環境については,これまで以下のよ Fig.1.Geological map of the Mannou area (left) and sketch map of the studied route along the Doki River (right).

(3)

地質雑 1179 香川県の上部白亜系和泉層群北縁相のカキ化石密集層 525

うな研究がなされている.

Nishiura

1976

)は,阿讃山脈 東端に位置する引田地域(香川県東かがわ市)において,城 山層中の砂岩の粒度や鉱物組成などの検討を行い,和泉堆積 盆北縁に陸域があり,そこから流れ込む河川の影響で引田地 域に汽水域が存在したと推定した.さらに,辻野(

2004

は,兼かねわり(香川県さぬき市)の城山層上部に含まれる

Loxo japonica

Amano

)の産状から,兼割周辺に一方向流の卓 越する浅海があった可能性が高いとした.また,

Yamasaki

1986

)は阿讃山脈全域の引田層における放散虫などの産出 状況から,外洋的な環境が示唆されるとともに,和泉堆積盆 中心部の主部相に分布する乱泥流堆積物の分布が堆積盆の北 縁で急激に制限されていることから,北縁相分布域に急斜面 があるとした.西浦ほか(

1993

)は,阿讃山脈西部の北縁 相において,砂岩構成粒子のファブリックの検討などから,

北縁相分布域に

Yamasaki

1986

)が指摘したのと同様の 急斜面があり,さらに,北縁相に堆積する砕屑物は,北方の 陸域からほぼ南方に向けて供給されたとした.このような和 泉層群北縁相分布域の急斜面は,近畿西部の和泉山脈におい ても示唆されている(

Tanaka, 1993

).また,田代ほか

1986

)は,兼割産二枚貝化石の産出状況から,和泉層群基

底部近くの砂質岩には,極浅海要素の強い二枚貝(

Yadia, Loxo, Brachidontes

)を産するが,直上の泥岩部はかなり 沖 合 の 堆 積 環 境 を 示 す 要 素 に 富 む 二 枚 貝(

Portlandia, Thyasira, Periplomya

)で占められているとし,和泉層群 の急激な深海化を示唆した.

以上から,城山層,引田層の堆積環境の概要を総括すれ ば,砂岩・礫岩を主体とする城山層は主に汽水域から浅海域 であり,厚い泥岩層を主体とする引田層は,急激な深海化を 示すより沖合の環境であったと推定できる.しかし,岩相変 化が著しい城山層については,地域ごとの細部にわたる検討 が必要であり,引田層についても,その深度については,さ らに慎重な検討が必要である.

なお,本報告の中心となるカキ化石密集層は,「木戸の馬 蹄石」として香川県の自然記念物に指定されている.

堆積相と堆積環境

香川県まんのう地域土器川セクションにおける城山層と引 田層の最下部について,堆積相と堆積相層序を記載し,堆積 環境を考察する.本調査地域では,岩相,堆積構造,大型化 石,生痕化石,生物擾乱などの特徴から,

11

の堆積相が識 Fig.2.Classification of sedimentary facies of the Shiroyama Formation and the lowermost Hiketa Formation in the Izumi Group. md: mud, sdy md: sandy mud, vf: very fine sand, f: fine sand, m: medium sand, c: coarse sand, vc: very coarse sand, gnl: granule, pbl: pebble, cbl: cobble.

(4)

526 吉川 武憲・安藤 寿男・香西 武・近藤 康生 20119

Fig.3.Stratigraphic column of the section along the Doki River (Mannou area). Arrows: direction of paleo-currents. Paleo- current intensity is expressed by the thickness of the arrows, and the directions were derived from imbricated gravel and the maximum dip of planar cross-stratification (legend as in Fig. 2).

(5)

地質雑 1179 香川県の上部白亜系和泉層群北縁相のカキ化石密集層 527

別できた(

Fig. 2

).古流向の計測は,礫や粗粒砂のインブ リケーション,フォアセット層理の最大傾斜方向を用いて 行った.

Fig. 3

は,これらの結果を総合柱状図としてまと めたものである.

1.堆積相区分 堆積相1

堆積相

1

は,分級の悪い花崗岩質の基質支持灰白色塊状 細礫礫岩で,基質はアルコース質細粒〜中粒砂である.ここ には,やや角張った花崗岩の中礫〜大礫が散在する.本相 は,城山層の最下部に位置する層準に認められ,層厚

7 m

が露出し,上位の堆積相

2

に漸移する.

堆積相2

堆積相

2

は,分級の悪い〜普通の灰白色アルコース質中 粒〜粗粒砂岩で,セット層厚が

20 cm

程度の低角斜交層理 がある.ここには,円磨度が普通の中礫がレンズ状に挟まれ る,もしくは散在する.本相は層厚

5 m

が露出し,下位の 堆積相

1

から漸移するが,上位は露出がないため関係は不 明である.本相に含まれる粗粒砂のインブリケーションから ほぼ南東向きの古流向が確認できた.

堆積相3

堆積相

3

は,暗灰色塊状砂質泥岩で,多量の炭質物微片 が散在する.むらくも状の生物擾乱が著しく,一部に垂直性

管状生痕

Ophiomorpha

がみられる.本相は下位の堆積相

4

から漸移し,明瞭な侵食面を伴う上位の堆積相

7

または堆 積相

8

によって覆われる.城山層基底から約

185 m

の層準 には,薄い層状もしくは小さなレンズ状の化石層があり,保 存のよい合弁の

Brachidontes nankoi Ichikawa and Mae- da

を含んでいるが,主体はカキ殻片で,表面が摩滅した離 弁の

Eriphyla sp., Loxo sp., Placunopsis? sp.

などの数種 類の二枚貝殻片も含む.

堆積相4

堆積相

4

は,分級の悪い暗灰色塊状泥質細粒〜中粒砂岩 である.これらには,多量の炭質物微片と垂直性管状生痕

Ophiomorpha

が散在し,全体としてむらくも状の生物擾乱

が著しい.本相は,下位の堆積相

5

,堆積相

6

,または堆積

7

から漸移し,上位の堆積相

3

に漸移,もしくは明瞭な 侵食面を伴う上位の堆積相

7

によって覆われる.まれに軽 微な侵食面を持つ上位の堆積相

6

によって覆われる.城山 層基底から約

183 m

の層準には,ほとんど合弁であるが横 臥姿勢のカキが密集する化石層(

M2

)を伴う

.

堆積相5

堆積相

5

は,分級が中程度〜やや悪い灰色塊状細粒〜中 粒砂岩であり,粗粒砂を散在的にいくらか含むことがある.

これらには,生息姿勢を保持するカキ個体を含むカキ化石密 集層(

M1, M3

M6

)を伴い,垂直管状生痕

Ophiomor- pha

が散在する.本相は下位の堆積相

6

,または堆積相

7

ら漸移する.また,上位の堆積相

6

に軽微な侵食面によっ て覆われる場合や,堆積相

4

へ漸移する場合がある.本相 の一部は,明瞭な侵食面を伴う上位の堆積相

7

によって覆 われる.

堆積相6

堆積相

6

は,分級がよい〜中程度の暗灰〜灰色低角斜交 層理細粒〜中粒砂岩であり,時々カキ化石片が散在する.こ れらの一部には,セット層厚が

20 cm

以内のトラフ型斜交 層理が発達する.本相は下位の堆積相

5

,または堆積相

7

軽微な侵食面によって覆い,上位の堆積相

4

,または堆積相

5

に漸移するが,まれに明瞭な侵食面を伴う上位の堆積相

7

によって覆われることもある.

堆積相7

堆積相

7

は,分級のよい灰白色〜灰色トラフ型斜交層理 中粒〜粗粒砂岩であり,チャネル状・平面状の明瞭な侵食面 を基底に持つことが多い.これらには,トラフ型斜交層理 セットの基底も含めて円磨度のよい流紋岩〜デイサイト質火 山岩類の細礫や中礫が濃集した葉理を伴うことがある.本相 は,城山層上半部で厚く発達し,上位の堆積相

4

,または堆 積相

5

に漸移したり,堆積相

6

の軽微な侵食面によって覆 われたりするが,一部に明瞭な侵食面を伴う上位の堆積相

7

によって覆われる場合がある.本相基底部には,しばしばト ラフ型斜交層理のフォアセット層理が確認できる.その傾斜 から北〜東北東向きと西南西向きの古流向が確認できた.

堆積相8

堆積相

8

は,城山層の基底から約

205 m

と約

280 m

層準に認められる分級のよい灰白色〜灰色中粒〜粗粒砂岩で ある.本相は

10

20

°程度で傾斜する平板型斜交層理が発 達することで特徴づけられ,フォアセット層理の傾斜から北 東向きと北向きの古流向が確認できた.城山層基底から約

205 m

の層準にある砂岩層には,規則的に含まれるマッド

ドレイプが見出せる(

Fig. 4

).また,約

280 m

の層準にあ る砂岩層の基底の侵食面上には,円磨度のよい流紋岩〜デイ サイト質火山岩類の細礫〜中礫を含む.

堆積相9

堆積相

9

は,城山層の上部に挟まれ,堆積相

6

を覆い堆 Fig.4.Close-up view of a horizon located about 205 m above the base of the Shiroyama Formation (the location is shown in Fig. 10b). EB3: sharp erosional base. Facies 8, which overlies Facies 5 and 7, shows high-angle planar cross-stratifications with rhythmically intercalated mud drapes (arrows). A paleocurrent direction to the NE was estimated from the dip of the cross-stratification.

(6)

528 吉川 武憲・安藤 寿男・香西  武・近藤 康生 20119

積相

10

によって覆われる.本相は,分級が中程度で灰色の 塊状〜一部級化部がある礫支持細礫〜大礫円礫礫岩で,下底 にやや凹凸のあるチャネル状の明瞭な侵食面を持つ.また,

層厚

2

3 m

の単層が

3

枚あり,厚さ数

10 cm

以下のレン ズ状,層状の砂岩,砂質シルト泥岩を挟在する.本相に含ま れる礫は,流紋岩〜流紋デイサイト質の火山岩類の円礫を主 体とし,基質は粗粒〜中粒砂からなる.礫のインブリケー ションから,ほぼ北向きの古流向が確認できた.

堆積相10

堆積相

10

は,城山層最上部に挟まれる堆積相で,分級は よい〜中程度で,トラフ型斜交層理が発達する厚さ

6 m

灰色中粒砂岩からなる.下部は粗粒砂や細礫葉理が含まれ,

中礫も散在する.中部〜上部には,層厚数

cm

の砂質シルト 岩や細粒砂岩が厚さ数

cm

の砂岩泥岩互層を成しており,本 相下部と比べて細粒な堆積物を含む.中部には,円礫礫岩薄 層が

1

枚含まれる.本相は,下位の堆積相

9

から明瞭に岩 相変化することが確認できるが,上位層との関係は露出がな いため不明である.上位層との関連から,おそらく堆積相

11

に整合的に急変するものと思われる.

堆積相11

堆積相

11

は,厚い暗灰色平行葉理泥岩を主体とする単調 な堆積相であり,引田層最下部に厚く発達する.ここには,

まれに暗灰色砂質泥岩薄層を挟在し,生物擾乱や生痕化石は 稀である.引田層下限から約

10 m

上位の層準には,ブロッ ク状の泥岩層と長径

5 m

以上あるブロック状の分級のよい 中粒砂岩が挟在している.この岩塊は,周囲の走向傾斜と明 らかに異なり,スランプブロックである可能性が高い.

2.堆積相層序と堆積環境

土器川セクションの城山層〜引田層最下部は堆積相の分布 から,

A

から

E

5

つの層序ユニットに区分することがで きた(

Fig. 3

).その堆積相層序の特徴を記述し,想定され る堆積環境を考察する.

ユニットA

領家花崗岩類との不整合面は露出しないが,ユニット

A

は,不整合面の約

10 m

上位付近から堆積相

1

2

が順次 重なっている(

Fig. 3

).それより上位約

110 m

はユニット

B

まで露出がない.基盤や上位層との層位関係が確認でき ないが,ユニット

A

は,不整合面より上位で堆積相

1

から

2

へ上方細粒化する傾向があり,円磨度,分級ともに悪い花 崗岩質・アルコース質の粗粒砕屑物からなる.

堆積環境

:

堆積相

1

は,領家花崗岩類との不整合面の直上に 位置し,やや角張った花崗岩礫を含む基質支持の塊状礫岩で あることや,堆積相

2

が,低角斜交層理のある分級の悪い

〜普通の灰白色アルコース質中粒〜粗粒砂岩であり,円磨度 が普通の中礫がレンズ状に挟まれる,もしくは散在するなど の特徴から,花崗岩類の風化・侵食による河川成砕屑物と考 えられる(

Miall, 1992

).堆積相

2

で確認された南東向き の古流向や既存研究の和泉堆積盆復元(

Nishimura, 1976;

Yamasaki, 1986; Tanaka, 1989, 1993;

西 浦 ほか

, 1993

を考慮すると,このユニットは和泉堆積盆の北側にあった後 背山地の南斜面に発達した砂礫質河川堆積物と推測される.

ユニットB

ユニット

B

は,堆積相

5

6

7

が卓越する砂質ユニット で,堆積相

3

4

を挟在する.本ユニットの層厚は

150 m

に達し,研究対象とするカキ化石密集層を含む.本ユニット は,堆積相の層序的分布様式から,下部

50 m

のサブユニッ

B1

と上部

100 m

B2

2

分される.

B1

は,堆積相

7

を基底とし,その上位に堆積相

5

を挟在する堆積相

6

が厚 く重なるユニットであり,堆積相

4

の薄層を

1

箇所挟むだ けである.一方

B2

は,主に堆積相

7

を基底に堆積相

6

5

4

3

のように上方細粒化を明瞭に示す堆積相累重が繰り 返すユニットであり,層厚数

m

10

m

程度の堆積相累 重が,少なくとも

6

回ある.

B2

下部と最上部の

2

箇所に,

堆積相

8

が侵食基底面を伴って挟まれる.

堆積環境

:

サブユニット

B1

B2

ともに,生息姿勢を保持 するカキ化石密集層を伴う堆積相

5

を挟在している.また,

1

層準であるが,

B2

下部の堆積相

3

に保存のよい合弁の汽 水生二枚貝

Brachidontes nankoi

を含む化石密集層が含ま れる.これらから,本ユニットは,汽水域の堆積物であると 解釈できる.さらに,チャネル状に凹部を埋積する堆積相

7

や堆積相

8

が示す古流向には,主に北〜東北東向きを示す ものと,西南西向きを示すものの両方向がある.これらは,

潮汐流によって潮汐チャネルを埋積した砂質堆積物によって 形成されたと推測できる.本地域の北側に陸域があったとさ れていることから(

Nishimura, 1976; Yamasaki, 1986;

西 浦ほか

, 1993

),北〜東北東向きの古流向は上げ潮流による ものであろう.また,堆積相

8

の基底侵食面を埋積する平 板型斜交層理砂岩中に,地層断面で規則的な束をなすような マッドドレイプが確認できる層準があるが(

Fig. 4

),これ は潮汐バンドルの可能性が強い.これらからユニット

B

は,

潮汐流の卓越する汽水域の堆積物であると考えられる(

Dal- rymple et al., 1992;

坂倉

, 2004

).

B2

に少なくとも

6

回認められる上方細粒化堆積相累重は,

砂質潮汐低地から泥質潮汐低地への環境変化を示していると 考えられる.すなわち,砂質堆積相

5

6

7

は,砂質潮汐 低地堆積物であり,泥質堆積相

3

4

は,泥質潮汐低地堆積 物と推測できる.したがって,河口付近の汽水域,すなわち 広義のエスチュアリーにおいて,砂質潮汐低地から泥質潮汐 低地への変化が繰り返したことでサブユニット

B2

の厚い潮 汐堆積物が形成されたものと解釈できる.一方,

B1

には泥 質堆積物が極めて少なく,

B2

に認められるような明瞭な上 方細粒化サイクルがほとんどない.さらに,

B2

に比べ

B1

は堆積相

6

が主体であることなどから,

B1

から

B2

への変 化は,潮汐流などの水流の影響を受けやすい環境から,より 遮蔽された環境への移行が想定できる.堆積相

8

は,平板 型斜交層理がよく見られることから,潮汐チャネル内の砂堆 やチャネル内凹地を充填した砂層の可能性が考えられる

Dalrymple et al., 1992;

坂倉

, 2004

).

城山層基底から約

185 m

B2

の堆積相

3

に挟在する化 石密集層には,表面が摩滅した離弁の

Eriphyla sp.

Loxo

sp.

の貝殻片が多く含まれている.

Loxo

Eriphyla

は,外 浜や内側陸棚などの浅海域から報告されており(熊谷・小松

,

(7)

地質雑 117 9 香川県の上部白亜系和泉層群北縁相のカキ化石密集層 529

2004; Komatsu et al., 2008

),その中でもサントニアン階

〜カンパニアン階に特徴的な

Loxo japonica

の自生産状を 示す個体は,外浜堆積物からのみ見つかっている(熊谷・小 松

, 2004

).堆積相

3

から産出した海生種は,殻の保存状態 と産状を考慮すると上げ潮流や波浪などによって汽水域内に 運び込まれた可能性が考えられる.なお,日本から産出する

Loxo

は,

L. japonica

のみであることや,和泉層群から

L.

japonica

が産出すること(辻野

, 2004

)を考慮すると,堆 積相

3

から産出した

Loxo

は,

L. japonica

の可能性が高い.

ユニットC

ユニット

C

は,下底にチャネル状の侵食面を持つ堆積相

9

からなり,上限はユニット

D

へ明瞭な岩相変化をする.

本ユニットの層厚は約

10 m

である.ユニット

C

は,下位 にあるユニット

B

の堆積相

6

とはやや凹凸のあるチャネル 状の侵食面で接し,上位のユニット

D

の中粒砂岩(堆積相

10

)とは明瞭な岩相境界をなす.

堆積環境

:

本ユニットは,円摩度のよい礫支持礫岩の堆積相

9

から構成され,上下とは岩相が全く異なることから,大き な堆積環境の変化が想定される.ユニット

C

(堆積相

9

D

10

E

11

)と上方に細粒化する傾向が顕著であり,ユ ニット

E

が外側陸棚以深と推定できることから,ユニット

C

D

E

の予測される堆積環境も上方深海化する.した がって,ユニット

C

の堆積相

9

は海進期の外浜侵食で形成 される海進残留堆積物(海進性礫岩)と見なすのが最も考え やすい.ユニット

C

に含まれる礫のインブリケーションか ら得られたほぼ北向きの古流向は,北側にあった陸域

Nishimura, 1976; Yamasaki, 1986;

西浦ほか

, 1993

)に 向かう潮流もしくは寄せ波の向きを示すと考えられる.

ユニットD

ユニット

D

は,ユニット

C

の礫岩(堆積相

9

)に重なる 堆積相

10

からなる中粒砂岩主体の厚さ

6 m

のユニットで,

上限は露出がなくユニット

E

との境界は確認できない.

堆積環境

:

ユニット

D

に見られる分級のよい砂岩に見られ るトラフ型斜交層理は,上部外浜を代表する堆積構造である

(斎藤

, 1989

).ユニット

C

を挟んで下位に潮汐堆積物(ユ ニット

B

)があり,上位には外側陸棚以深の堆積物と推定 できる厚い単調な泥岩のユニット

E

(堆積相

11

)に覆われ ることも考慮すると,ユニット

D

は上部外浜の堆積物と解 釈するのが最も考えやすい.

ユニットE

ユニット

E

は,厚い泥岩からなる堆積相

11

から構成さ れ,上方の引田層の主要部に連続する.

堆積環境

:

下位のユニット

D

との境界は露出しないが,ユ ニット

E

は生物擾乱の稀な平行葉理の発達した暗灰色シル ト岩が連続する堆積相

11

からなり,エネルギーレベルの低 いやや還元的な沖合泥底環境が示唆される.また,スランプ 由来と考えられる砂岩と泥岩のブロックの存在から,本ユ ニットが和泉堆積盆北縁に想定されている斜面(

Yamasaki, 1986;

西浦ほか

, 1993; Tanaka, 1993

)の一部を構成する 場で形成されたものと考えられる.これらを総合すると,本 ユニットは明らかにユニット

C

D

より深海域の堆積物で

ある.さらに,本調査地域に連続すると推定できる兼割の泥 岩層(引田層)からは,かなり沖合の堆積環境を示す二枚貝

Portlandia, Thyasira, Periplomya

)が産出しており(田 代ほか

, 1986,

辻野

, 2004

),堆積相を含めた比較から,本 ユニットは少なくとも外側陸棚以深の堆積物と解釈できる.

和泉層群産カキ化石の形態

土器川セクションのカキ化石密集層は,城山層上半部のユ ニット

B

6

層( 下位より

M1

M6

)が露出している

Figs. 3, 5

).

6

層のカキ化石密集層のうち,泥質砂基質で ある

M2

を除く

5

層は,非常に硬い均質な砂岩層で構成さ れており単離が非常に難しい.そこで本調査では,

M2

のカ キ化石散在部の転石ブロックから合弁

1

個と破片数個を取 り出した.その合弁個体(

Fig. 6a

)の殻高は

20 cm

,殻長

10 cm

,殻幅は

5 cm

,左殻の殻厚は

3 cm

,右殻の殻厚

1 cm

であった.外形は殻頂角が約

40

45

°で,殻頂部 がやや尖って上に伸びた長卵形である.左殻の殻表には,不 明瞭ではあるが同心円肋の痕跡を残す突起部が認められる が,放射肋は確認できない.一方,地層断面におけるカキ化 石の観察では,カキ個体の多くは,殻高が

10

30 cm

程度 の長卵形と推定でき,左殻の殻厚は

1

4 cm

程度の中〜大 型個体からなっている.また,地層断面上のカキ殻の断面観 察で,葉状層間にチョーク層で充填されるチャンバーの発達 が確認できた(

Fig. 6b

).靱帯や筋痕などは確認できなかっ たが,殻構造と外縁の形態などから

M1

M6

のカキ化石 は,

Crassostrea

属と判断できる.

化石密集層中におけるカキ化石の産状型

6

層(

M1

M6

)の密集層中のカキ化石の産状は,密集 度,自生,他生の程度,成長様式などの特徴から,次の

5

タイプの産状型に識別できる(

Fig. 7

).なお,合弁個体が 直立かどうかの判断は,右殻が地層面に対して概ね

45

°以 上の傾きがあるかどうかを目安にした.

タイプⅠ.リレー型

直立姿勢を示している下方の合弁個体の上に別の合弁個体 が殻の一部を付着させて,上方に伸張している.多くても

3

4

世代のリレーが確認できる程度であるが,次世代のカキ が底質への埋没を防ぐために前世代の殻を底質として利用す るリレー戦略型成長様式(鎮西

, 1982b

)とみなされる.ま た,カキの成長と堆積速度がほぼつりあっている場合の,カ キ礁の上方への発達を示す自生的な産状と考えられる.

M4

の最上部,

M3

M6

の基底部にみられる.

タイプⅡ.林立型

横臥したカキ殻の上位に,複数の直立姿勢を示す合弁個体 が林立している.

2

3

個体による小規模なものから,数

10

個体以上による大規模なものまである.横臥したカキ殻を着 底基盤として,カキが生息姿勢を維持したまま成長した自生 的な産状と考えられる.本セクションでは,

M3

M4

に数

10

個体以上からなる密集部があるが,

M6

には

2

3

個体 の小規模な密集部から

10

数個体以上からなる密集部が散在 している.着底基盤となる殻が見られない場合でも,直立合

(8)

530 吉川 武憲・安藤 寿男・香西 武・近藤 康生 20119

弁個体が林立する場合は,このタイプに含めた.

タイプⅢ.直立・横臥混在型

横臥している合弁個体の密集部の中に,単独の直立してい

る合弁個体が混在している.直立個体と横臥個体の数の割合 は,一つの密集層中でも場所によって様々である.本セク ションでは

M1

M3

M6

の主要部を成す.横臥個体と直 Fig.5.Photographs of six oyster beds (M1–M6) in the section along the Doki River.

(9)

地質雑 1179 香川県の上部白亜系和泉層群北縁相のカキ化石密集層 531

立個体の両者に殻の保存の違いは認められない.この産状 は,自生的な直立した個体が潮汐流などの水流によって倒れ て横臥した状態や,本来の生息場所と隣接した場所に運搬さ れて堆積した個体を基盤として新たなカキが着底して成長し た状態を示す.よってこのタイプは,自生的な個体と他生的 な個体が混在する産状と考えられる.

タイプⅣ.横臥密集型

横臥した合弁個体が層状,レンズ状に密集している産状 で,まれに直立姿勢を示す個体が含まれる.離弁個体も含ま れることがあるが,合弁個体が半数以上を占める.潮汐流や

ストーム流などの影響によってそのまま転倒した半自生個体 や,本来の生息場所と隣接した場所に運搬されて堆積した個 体を示す他生的な個体が混在した産状と考えられる.この産 状は,

M2

の主体を成し,

M4

M6

の各部にレンズ状,あ るいは層状に挟まれている.

タイプⅤ.横臥散在型

横臥した合弁個体が互いに離れた位置で層状に散在してい る産状で,まれに直立姿勢を示す個体が含まれる.離弁個体 も含まれることがあるが,合弁個体が半数以上を占める.潮 汐流やストーム流などで本来の生息場所と隣接した場所に運 搬されて散在したことを示す,やや自生的な他生産状と考え られる.この産状は

M4

の基底部と

M3

M5

M6

の縁辺 部にみられる.

化石密集層中におけるカキの産状

ここでは,各カキ化石密集層の全体形状と産状の特徴につ いてまとめる(

Figs. 3, 5, 8

).露出がよい

M4

M6

につい ては,地層面に対して

60

°から垂直をなす露頭面にビニル シートを当てて殻の外形をトレースし,それをもとにスケッ チを作成し,産状型の分布の検討に用いた.他の

4

層につ いては,露頭面の観察から産状型の分布を判定した.

M1

:

堆積相

5

に含まれ,厚さ

0.4 m

,幅

3 m

の平坦な底面 を持つ上に凸のレンズ状をしている.基質はやや分級の悪い 中粒砂である.産状は,すべてタイプⅢであるが,密集度は 他の

5

層より低めである.殻高は最大個体で

21 cm

に達し,

左殻の殻厚は

2

3 cm

の個体が多いが,殻厚

1 cm

程度の Fig.6.(a): Articulated valves ofCrassostreasp. extracted

from bed M2, showing the inner sides of the left (L) and right (R) valves. (b): Polished section across articulated valves ofCrassostreasp. from M6.

Fig.7.Five modes of occurrence of oysters in the Doki River section.

(10)

532 吉川 武憲・安藤 寿男・香西  武・近藤 康生 20119

小型の個体も混ざる.

M2

:

泥質で分級の悪い細粒〜中粒砂岩の堆積相

4

に含まれ,

露出部は層状に分布しているが露出不十分で全体形は把握で きない.厚さは

1 m

ほどである.露出部の産状はすべてタ イプⅣである.殻高は最大個体が

18 cm

で,左殻の殻厚は

1 cm

以下がほとんどである.

M3

:

堆積相

5

に含まれ,断層によってブロック状に分断さ れているが,尖滅する右側の端が確認できるので全体形とし てはレンズ状であったことが推測できる.基質はやや分級の 悪い中粒〜粗粒砂である.密集層の下部〜中部の産状は,大 部分が殻高

20 cm

程度,左殻の殻厚

2

3 cm

程度の大型個 体からなるタイプⅢを示すが,殻高

30 cm

に達する最大個 体を含む数個の大型個体からなるタイプⅠを示す株状の小密 集部が底部に

1

箇所認められる.下部〜中部にかけて全体 的に小型のカキ殻片が多数散在する.上部の産状は,いずれ も殻高

10

cm

程度,左殻の殻厚

2 cm

以下の中型個体が タイプⅡをなしている.縁辺部はタイプⅤに漸移する.ま た,

M3

縁辺部の上部は,侵食面(

Fig. 10, EB3

)によっ て上端の一部が削られている.

M4

:

堆積相

5

に含まれ,厚さ

0.75 m

,幅

9.4 m

の平坦な 底面を持つ上に凸のレンズ状をしている.基質はやや分級の 悪い中粒砂である.構成するカキ殻はほとんどが殻高

20 cm

前後,左殻の殻厚

2

3 cm

程度の大型個体である.

産状は,右側の最厚部(

Fig. 8, M4-1

)の下部にレンズ状 にタイプⅣが分布し,その上部を覆うようにタイプⅢ,さら にそれを覆うようにタイプⅡが分布する.また,中央部から 左側方縁辺部の底部にうすくタイプⅤが広がり,その上位 に,タイプⅡが厚く分布する(

Fig. 8, M4-2

M4-5

).タ イプⅡの一部には,タイプⅢやタイプⅣを成す小密集部が認 められる(

Fig. 8, M4-3, M4-4

).

M4

の最上部には,タイ プⅠを示す株状の小密集部が

4

箇所認められる(

Fig. 8, M4-1, M4-2

).

M4

での最大個体の殻高は

35 cm

に達する.

M5

:

堆積相

5

に含まれ,尖滅する片側の端だけが確認でき ることから右側方に中心部を持ったレンズ状であったことが 推定できる.基質はやや分級の悪い中粒砂である.縁辺側に タイプⅤが中央側にタイプⅢが分布する.殻高の最大は

16 cm

であり,左殻の殻厚は

2

3 cm

程度の個体が多い.

M6

:

堆積相

5

に含まれ,厚さ

1 m

,幅

16.5 m

の平坦な底 面を持つ上に凸のレンズ状をしている.基質はやや分級の悪 い中粒砂で,粗粒〜極粗粒砂を散在的に含む.産状は,カキ 殻破片を多数含むタイプⅢが卓越するが,生息姿勢を示す個 体の割合や密集度,殻高などは場所によってばらつきが大き い.また,底部には,殻高

20 cm

左殻の殻厚

3 cm

程度の 大型個体を含むタイプⅣが層状に薄く分布するが,そこにタ イプⅠを示す株状の小密集部が

6

箇所に認められる.その 小密集部の基底は,いずれもタイプⅣを成す層より

5 cm

度下位の層準にある.また,小型のタイプⅡやタイプⅣの薄 層が散在しており,一部には底部のタイプⅣを成す層の上位 に,タイプⅡ,タイプⅣ,タイプⅡが順に重なっているのが 認められる(

Fig. 8, M6-2

).最上部は部分的にタイプⅡと タイプⅣが分布している.縁辺部はいずれもタイプⅤであ

る.殻高の最大は

31 cm

で,その個体の左殻の殻厚は

4 cm

であった.

カキ化石密集層の形成過程

M1

M6

の形成過程は,次の

3

段階にまとめることがで きる.第

1

段階は複数の小規模なカキ株と考えられる小密 集部の形成,第

2

段階は物理的営力(潮汐流やストーム流 など)による転倒と小規模な運搬による他生的な密集層の形 成,そして,第

3

段階は他生的な貝殻底質を利用した密集 層の大型化である(

Fig. 9

).これらから,前述の

6

層のカ キ化石密集層の形成過程は,タイプⅠ〜タイプⅤが混在し,

平坦な底面を持つ上に凸のレンズ状の密集層(

M1, M3

M6

)と,タイプⅣだけからなる密集層(

M2

)に

2

分でき る.

M1M3M6の形成過程

まず,詳細に観察できた

M4

M6

について考察を行う.

M4

を含む層厚

12 m

Fig. 3

中に図示)の堆積相層序は,

侵食性下底(

EB1

)に始まる堆積相

7

だけからなる下部(

0

5 m

),堆積相

5

を主体としその中部にレンズ状の堆積相

7

と堆積相

8

を含む中部(

5

11 m

),堆積相

4

3

からな る上部(

11

12 m

)に区分できる(

Fig. 10

).中部の

7

9 m

に あ る 堆 積 相

7

, 堆 積 相

8

は, 侵 食 性 下 底(

EB2, EB3, EB4

)を持ち,下位を切り込む下に凸のチャネルを埋 積した形状をなしている(

Fig. 10

).これらはいずれも堆積 相

5

で覆われているため,堆積相

7

や堆積相

8

から堆積相

5

へとわずかに上方細粒化するレンズ状の堆積ユニットを構 成している(

Fig. 10

).

M3

M4

はそれぞれ

EB2

EB3

に始まるユニットの上部に含まれており,

M3

の縁辺部の一 部は

EB3

によって侵食を受けている(

Figs. 4, 10

).また,

EB4

は,

M4

の右側縁辺部の下底から凹状に右側に伸びて いる(

Fig. 10

).これらから,

EB2

を持つ潮汐チャネルが 堆積相

7

で埋積された後,堆積相

5

の堆積する平坦な砂質 潮汐低地となり,そこに

M3

が形成された.その後,

EB3

により

M3

が一部侵食を受けた後,堆積相

8

によって埋積 された.その上位に堆積相

5

が埋積して平坦な砂質潮汐低 地となり,

M4

が形成されたと推測できる.

EB4

上の堆積

7

は,

M4

が形成される前に潮汐チャネルがそこにあった ことを示すと考えられる.

まとめると

M4

形成初期には,隣接した場所にあった複 数の小規模のカキ株が(

Fig. 9A

),潮汐流などの物理的営 力によって転倒横臥し,

M4

右側下部(

Fig. 8, M4-1

)のレ ンズ状のタイプⅣを形成したと考えられる(

Fig. 9B

).

M4

の底部に広がるタイプⅤを成す個体(

Fig. 8

)は,転倒した ときに周囲に散在した個体であろう.このレンズ状のタイプ

Ⅳや周囲に散在したタイプⅤの個体を基盤にカキが着底し,

その周囲にタイプⅢ,さらにタイプⅡが上方や左方に広がっ たと考えられる(

Fig. 9C

.

M4

の最上部は,タイプⅠやⅡの自生的産状を示す大型個 体が堆積相

5

に覆われている(

Figs. 8, 10

).この層準で何 らかの原因でカキが死滅した,もしくは,堆積速度が密集層 成長速度を大きく上回る急変が起きて密集層が埋没してし

(11)

地質雑 1179 香川県の上部白亜系和泉層群北縁相のカキ化石密集層 533

Fig.8.Outlines of the six shell beds and distribution of the different modes of fossil occurrence. The detailed sketches of M4 and M6 were initially drawn on transparent plastic sheets overlain directly on the shell beds in the outcrops.

(12)

534 吉川 武憲・安藤 寿男・香西 武・近藤 康生 20119

まった可能性が想定される.しかし,密集層上限は塊状砂岩 が続いており,明瞭な堆積構造や葉理等は残されておらず,

堆積速度の急変を示す直接的な証拠は今のところ認められな い.

M6

Fig. 8

)はタイプⅢの直立・横臥混在型が主体をな しているが,底部にタイプⅠの株状の小密集部が複数ある.

これらのタイプⅠの基部は,密集層基底よりわずかに下位の 層準にあることから,密集層形成初期には,まず独立した複

数の小型のカキ株が形成されたと考えられる(

Fig. 9A

).

その後,潮汐流やストーム流などの影響で,カキ株中の一部 の個体が転倒し,わずかに運搬されて,カキ株の間を埋めて タイプⅣの薄層理が形成された(

Fig. 9D

).そして,その 薄層理上面の横臥個体を基盤にして自生個体が生育し始め,

上方に成長していったと考えられる(

Fig. 9E

).また,

M6

の中部には断続的ではあるが明瞭なタイプⅣの薄層レンズが 含まれているとともに,最上部をタイプⅣの薄層が部分的に Fig.9.Model showing the formation of mixed autoch- thonous and allochthonous oyster beds.

Fig.10.(a): Photograph of shell beds M3 and M4. (b): Sketch of (a). (c): Stratigraphic section showing the facies succes- sion and erosional bases.

(13)

地質雑 117 9 香川県の上部白亜系和泉層群北縁相のカキ化石密集層 535

覆っていることから(

Fig. 8

),最低でも

M6

形成初期と合 わせて

3

回の転倒イベントがあったことが推測できる.た だし,中部のタイプⅣを示すレンズ状の層準には浅い起伏が あり,レンズによってわずかに層準がずれていることや,タ イプⅢ中に小型のカキ殻片などが多数含まれることなどか ら,一連のイベントの間でも小規模なイベントが数回生じて 段階的に形成された可能性がある.このような繰り返しによ り,タイプⅢのような複雑な産状が形成されたものと推測で きる.なお,

M6

上限と上位の堆積相

5

との関係は,

M4

様に明瞭な堆積構造はなく漸移的であり,

M6

が埋没した原 因を示す証拠は見出せない.

M1

M5

は密集層の一部が残されているに過ぎないので,

詳細な形成過程の復元は難しいが,いずれもタイプⅢを含ん でいる(

Fig. 8

).また,

M3

もタイプⅢを主体とし,底部 にタイプⅠの株状の小密集部を有する(

Fig. 8

).これらか ら,

M1

M3

M5

はいずれも

M4

M6

と類似した密集 層形成過程を推測することができる.

M1

M3

M6

の形成過程をまとめると,これらの密集 層は,汽水域の砂質潮汐低地において,生息場所,もしくは そのすぐそばに堆積した他生的なカキ個体に自生的なカキ個 体が付着して大型化していった,自生・他生混在型のカキ化 石密集層であると判断できる.いずれの密集層も,厚さが数

10

〜百数

10 cm

ほどあるので,このような混在型の密集層 が上方に成長するには相当長い時間を要したことが推測でき る.そしてこれは,その間密集層が埋没しない程度の安定し た堆積速度が維持されたことを暗示している.

M2の形成過程

M2

は比較的均質なタイプⅣの産状を示し,破片化や摩耗 をほとんど受けていない,大半が横臥した合弁・離弁個体で 構成される(

Figs. 5, 8

).さらに

M2

は,他の化石密集層 より泥質で生物擾乱の多い堆積相

4

に含まれている.上下 の堆積相や,

M2

以外の自生のカキ化石層が堆積相

5

に含ま れていることを考慮すると,

M2

は,堆積場付近の砂質潮汐 低地上に生息していたカキが,潮汐流やストーム波浪のよう な非定常的な水流で,隣接する泥質潮汐低地内に運搬されて 堆積した他生的密集層と考えられる.

和泉層群のカキ化石密集層の堆積学的・古生態学的意義 まんのう地域土器川セクションにおける和泉層群の城山層 から引田層の堆積相変化は,全体として河川〜潮汐低地〜外 側陸棚以深への海進傾向を示す(

Fig. 3

).特に,主に厚い 汽水成砂岩相(堆積相

5

8

)よりなるユニット

B

から,外 側陸棚以深成と考えられる厚い泥岩相(堆積相

11

)のユ ニット

E

への大きな堆積相変化が,基盤より上位

280 m

300 m

までの層厚

20 m

弱の間に認められる.また,そ の間にあるユニット

C

D

は,

D

の上限に露出がないが,

他は上下境界での堆積相変化が明瞭である.こうした顕著な 堆積相の層序的な変化は,ユニット

B–E

間で急速な深海化 が生じたことを示している.このような急激な深海化は,北 縁部に急斜面を持つ堆積盆(

Yamasaki, 1986;

西浦ほか

, 1993; Tanaka, 1993

)が,中央構造線の運動に伴って東進

す る( 平 ほか

, 1981; Tanaka, 1989, 1993;

岩 本・ 宮田

, 1994;

山北・伊藤

, 1999

など)ことによって起こったもの と推測できる.

また,城山層上半部の厚さ

150 m

に達するユニット

B

は,

自生的な個体を含むカキ化石密集層が形成される汽水域の堆 積環境が長期間にわたって継続し,潮汐チャネル〜砂質潮汐 低地の砂岩相が厚く発達したことを示している.これは堆積 盆が急速かつ継続的に沈降したことに加え,それに合わせて 後背地から河川成砂質砕屑物が多量に供給され,それを潮汐 流で運搬再堆積させる汽水環境が長期間継続したことを示し ている.和泉層群北縁相の分布する他地域からは,本地域に 見られるような厚い複数のカキ化石密集層や汽水成堆積相の 存在は報告されていないので,堆積盆沈降と砕屑物供給(も しくは堆積速度)のバランスが長期間保たれて厚さ

150 m

にも達する汽水成堆積相が形成された本セクションの存在は 特筆に値する.

一方,カキ礁やカキの生息場において,堆積物の急激な供 給による埋没や,急速な海進による水深の増大がカキ類の死 を意味すると考えると,本セクションの自生・他生混在型カ キ化石密集層が形成される期間は,カキが埋没しない程度の 安定した堆積速度やカキの生息に適した水深が維持されたこ とが推測できる.その期間は,カキ礁の上方への成長速度が

1

年に

1 cm

程度と見積もると(鎮西

, 1982a

),厚さが

1 m

ある

M6

形成時では約

100

年となる.さらに,本セクショ ンのカキ化石密集層が自生的なカキ個体と他生的なカキ個体 が混在することによってできていることから考えると,自生 的なカキ礁の成長に比べて転倒などのイベントが加わるため に,上方への伸長にはより多くの時間を要した可能性があ る.これらを総合すると,本地域における和泉層群形成初期 には,和泉堆積盆の急激な沈降とそれに伴う砕屑物供給がな された時期と,カキが埋没しない程度の安定した堆積速度が 維持された堆積盆沈降の停滞期があり,そのリズムを本カキ 化石密集層が記録している可能性が高い.

ユニット

B

中のカキ化石密集層は,

M2

を除きすべて堆 積相

5

に挟まれているが,密集層以外の層準には一部を除 きほとんど殻片が含まれていない.また,

M3

最上部の一部 がチャネル状の堆積相

8

によって侵食を受けていることな どから考えると,本密集層の形成位置が潮汐チャネルに近接 した砂質潮汐低地上の限られた場所であったことが推測でき る.

鎮西(

1971

)は,砂岩中にみられるカキ礁は,泥岩中に みられるもののように厚く発達せず,単世代または少数世代 のコロニーが横に一列に並ぶようなタイプに分類できると指 摘している.これは前述した本セクションにおける密集層形 成の第

1

段階に相当するものと考えられる(

Fig. 9

).

M3

M4

M6

では,単世代または少数世代の株状小コロニーが 点在するだけでなく,転倒した個体を着底基盤とする単世代 個体が間隔をあけて並列する様子を示している(

Fig. 8

).

より遮蔽された泥質干潟で形成される

Crassostrea

属の ブーケ状あるいは層状の大型カキ礁(

Stenzel, 1971;

鎮西

,

1982a, b

)に対し,本セクションに見られるような自生・

Fig. 3 . Stratigraphic column of the section along the Doki River (Mannou area). Arrows: direction of paleo-currents
Fig. 7 . Five modes of occurrence of oysters in the Doki River section.
Fig. 8 . Outlines of the six shell beds and distribution of the different modes of fossil occurrence
Fig. 10 . (a): Photograph of shell beds M3 and M4. (b): Sketch of (a). (c): Stratigraphic section showing the facies succes- succes-sion and erosucces-sional bases.

参照

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